長楽曲～白い愛、黒い罪～ 2024年 全40話 原題：长乐曲
第16話 あらすじ
蘇生の幻影と裏切りの影
陳家の老伯の遺体を改めて調べた顔幸は、その身から漂う奇妙な匂いに気づく。それは腐敗を遅らせる薬物であり、すでに老伯はかなり前に死亡していた証だった。真相を求めて史策庫に籠もる顔幸。だがそこでは、静かに彼女を狙う陰謀が進んでいた。
沈渡は過去を思い出す。幼き日、母から自白書の偽造を強いられた記憶。父の無実を信じ筆を拒んだ彼に、母は「それでは家族の死は無駄になる」と迫った――その痛みは今なお彼の胸に刻まれている。
一方、江湖には「死者を蘇らせる門派」の噂が広まり、その背後に「蘇生術の達人・陳火蛾」の名が囁かれていた。やがて顔幸は母がその“奇跡”を信じ、蛾の形をした玉佩を抱いて拝んでいる姿を目撃する。必死に連れ帰り「こんなものを信じてはならない」と戒めるが、民衆は次々と連れ去られ、不気味な影が社会を覆っていった。
やがて史策庫で火災が発生。幸い顔幸は脱出していたが、事件はますます混迷を深める。沈渡は彼女を救い出し、煙塵を吸い込んだ顔幸を抱えて帰宅。目覚めた顔幸は助けてくれた沈渡に感謝しつつ、彼の衣に錦繍坊事件と同じ粉が付着していることに気づく。その正体は西域の植物を砕いたもので、「幽霊市場」に通じる手がかりだと師匠は告げた。
やがて沈渡と顔幸は互いの距離を縮める。顔幸は沈渡の目を癒す薬を調合し、彼に全て飲ませる。帰ろうとした彼女の腕を掴み「共に食事を」と誘う沈渡。その静かな誘いに、二人の間に芽生える絆の気配が漂う。
しかし安らぎは長くは続かない。陳守傑が梁に吊され、炭火で責められる場面に遭遇した顔幸は、それが韓世元と三姉の事件と酷似していることを指摘。さらに現場に潜んでいた不審者が捕らえられ、それが史策庫の季方鳴であることが判明する。季方鳴は「顔幸の証言が必要で探していた」と弁明するが、その行動は不自然きわまりない。火災の背後にも彼の影が見え隠れする。
顔幸はあえて「陳守傑が自白した」と偽りの情報を流し、季方鳴の出方を試す。案の定、牢に現れ陳守傑を抹殺しようとした瞬間、沈渡たちに捕らえられる。暴かれたのは衝撃の過去――季方鳴はかつて錦繍坊の孔先融と繋がり、落第後にその紹介で陳守傑と結託し、官職を得ていたのだ。
死者蘇生の幻影、権力に絡む裏切りの網。そして次なる陰謀の糸は、すでに沈渡と顔幸の足元へと忍び寄っていた。
第17話 あらすじ
錦繍坊の真実と蘇生の影
捕らえられた季方鳴は、錦繍坊で起きた数々の冤罪事件について「必ず復讐する」と憤りを露わにする。沈渡による取り調べの場には来羅織も姿を現し、沈渡は「聞くだけなら構わぬが、余計な手出しは審問妨害の罪に問う」と警告する。季方鳴は、当時の疑念から陳守傑を探ったこと、そして彼の妻・陳氏が錦繍坊の刺繍師であり唯一の生存者であったことを告白した。やがて彼は衝撃の事実を口にする――自ら陳氏を殺したが、陳守傑は生かし続け、苦痛を与え続けたのだと。
しかし顔幸は問いかける。「苦しんでいるのはあなた一人ではない。陳守傑もまた同じだ」と。さらに、陳氏が屋根裏に隠していた布を提示し、「死の間際、彼はずっとこの布の方角を見ていた。何かを伝えようとしたのではないか」と迫る。季方鳴は動揺しつつも否定するが、陳守傑は真実を告白する。当時の事件は自分たちの過ちであり、孔先融を裏切ったことに他ならなかったと。衝撃を受けた季方鳴は、ついに「自分は利用され、誤って人を殺したのか」と悟り、錦繍坊事件は英王が異端を排除するために仕組んだものだと語る。
沈渡はこの事実を必ず太皇太后に報告すると約束。だが顔幸は「それを話せば、自分が危険に晒されるのでは」と不安を漏らす。沈渡は「太皇太后が望むのは天下の太平。案ずるな」と答え、支えとなる。羅織は顔幸に「我が元へ来ないか」と誘うが、顔幸は「良き鳥は木を選んで止む」と答え、なお留まる意思を示した。
その裏で、潘馳に護送を依頼した顔幸は「戻ったらご馳走する」と約束し、彼の協力を取り付ける。潘馳は沈渡に催眠薬を仕込んだ扇子を渡し、「牛一頭でも確実に倒せる」と笑う。顔幸は錦繍坊を探る夜道で幽霊火を目撃し、蛾形の玉佩が散乱する怪現象に遭遇。沈渡は以後、彼女に護衛をつけるようにしたが、顔幸はうっかり催眠薬を撒き散らし、自ら気絶。沈渡はまたも彼女を抱きかかえて帰ることとなった。
翌朝の朝議で沈渡は、民衆の間に広がる「死して復す」の噂が混乱を招いていることを報告。来羅織は「陳火蛾は確かに死んだ」と証言するも、過去に自ら「死して復す」と発言したことが人々の信仰を煽っていた。太皇太后は憂慮し、沈渡に事件の徹底調査を命ずる。だが賢王は「いかに調べても何も出てはこまい」と冷笑を浮かべ、背後に渦巻く思惑を隠そうとはしなかった。
錦繍坊の惨劇が覆い隠していた真実。蘇生の幻影に踊らされる人々。そして権力者の影が、再び沈渡と顔幸の前に立ちはだかろうとしていた――。
第18話 あらすじ
揺れる想いと再審の火蓋
夢の中で顔幸は、雲雀から「沈渡と結婚するのだから、すぐに出て行け」と告げられ、さらに「真実と沈渡、どちらを選ぶのか」と迫られる。焦燥の中で「何も選ばない」と叫んだ瞬間に目を覚ました彼女の前には、錦繍坊の記録文書を整理し終えた沈渡が待っていた。沈渡は旧事件の再審理を決意し、顔幸は大きな喜びに包まれる。やがて沈渡は太皇太后の前で堂々と陳述し、ついに再審を承諾させる。その陰には、顔幸の粘り強い追及があった。
一方、雲雀と景林の間には不穏な火花が散る。景林は「雲雀の家は錦繍坊と取引していながら無傷で済んだのはなぜだ」と問い詰め、雲雀は「私を尋問する気か」と反発する。彼女の素性と事件との関わりが、じわじわと明るみに出ようとしていた。
その頃、永安公主は汝寧長公主を訪ね、再審の開始を告げる。汝寧長公主は「死人は戻らない」と突き放すが、心中に波紋を隠せない。さらに永安公主は、前回の賢王来訪の際に占いを受けたと語り、自らも占ってほしいと頼むが、汝寧長公主は「修行が浅い」と拒んだ。外で待っていた沈渡に、永安公主は「冤罪を免れる策がある」と意味深に告げる。
その直後、潘馳が雲雀の両親を伴って現れ、「雲雀は沈渡と結婚する」と言い出す。沈渡は唖然としつつ、両親に錦繍坊事件について語るよう促す。雲雀の両親は脅迫されて口をつぐんでいた過去を明かし、「証拠を雲雀に持たせ、役所に通報させろ」と命じた人物の存在を吐露する。真実を知った雲雀は「何があろうと家族と共に立ち向かう」と決意を固める。
やがて永安公主主催の宴が開かれ、成人式を迎えた娘が帰還する。その祝宴の最中、突如として火蛾が現れ、永安公主の命を狙う。沈渡は剣を抜いて追撃し、ついにその正体が陳火蛾であることを見破る。駆けつけた顔幸は、彼の胸に手を添え「あなたの秘密を見つけた」と告げるのだった。
宿命の糸が再び絡み合い、封じられた過去が牙を剥き始める。再審の行方、そして「死して復す」の幻影――すべての真実は、いよいよ目前に迫っていた。
第19話 あらすじ
真実の笛、揺らぐ絆
沈渡と顔幸の前に立ちはだかったのは、死んだはずの陳火蛾だった。彼の正体は「鏡像人間」。心臓が右にあったため、これまで幾度の死線をも生き延びてきたのだ。主君・来羅織への忠誠を告げた陳火蛾は、顔幸を捕らえて逃走する。しかし沈渡が立ち塞がり、壮絶な一騎打ちの末に首を斬り落とすも、自らも重傷を負って倒れてしまう。
荒れ狂う雨の中、必死に沈渡を抱え帰還する顔幸。医師を呼びに走った景林は戻らず、彼女は自ら手当てを施し、震える手で傷口を塞ぐ。その傍らで、沈渡から贈られた笛を握りしめる顔幸。「あの罪容所の苦難を耐えた人だから、今回もきっと乗り越えられる」――彼女の祈りは、やがて沈渡の命を繋ぎ止めた。
一方、宮中では太皇太后が来羅織を叱責する。陳火蛾が御査司に紛れ込んでいたのを見逃した責を問い、俸給を減らす処罰を下した。英王はその温情に苛立ち、羅織への寵愛の深さを痛感する。
やがて意識を取り戻した沈渡は、顔幸の手にある笛に目を留める。それは幼き日、罪容所で出会った少女に託した自分の笛だった。毎日こっそり食べ物を運んでくれた少女――それが顔幸だったのだと悟り、二人の過去が静かに結びつく。だが、顔幸が「三か月で離婚する約束だった」と独り言のように呟いた時、その場に居合わせた陸垂垂が真実を知ってしまう。彼女は驚きつつも秘密を守ると誓い、逆に顔幸に「誰と結婚したいのか」と問いかけるのだった。
その後、陸垂垂と雲雀は偶然意気投合し、縁結びの祈願へ行こうと約束する。服選びに付き合う顔幸を見て、沈渡は彼女の心が別の縁に向いているのではと落胆するが、やがて誤解が解け安堵の笑みを見せる。
一方、芝居小屋で鬼面と再会した陸垂垂は、その仮面の下が来羅織であると知ってしまう。恐怖を抱きながらも彼女は秘密を胸にしまい、誰にも告げないことを誓うのだった。
そして迎えた明聖観での縁結び祈願。陸垂垂と雲雀が去った後、顔幸と徐想仁が二人きりで言葉を交わす。徐想仁は「沈渡との結婚は偽りで、法律上も離婚できる」と陸垂垂から聞いたと告げる。動揺する顔幸は、徐想仁を深く尊敬してはいるものの、それ以上の感情を抱くことはないと答える。しかし彼女の胸中には、陸垂垂の無邪気な言葉がいつか大きな災いを呼ぶのではないかという不安が、確実に芽生え始めていた。
愛と過去の秘密が絡み合い、離婚の約束、真実の笛、そして縁結びの祈願が揺さぶる第19話。
二人の絆は試練を越え、真実の愛へと辿り着けるのか――。
第20話 あらすじ
兄妹の誓いと毒の影
縁結びの祈願の帰り道、徐想仁は顔幸に「血はつながらずとも兄妹の契りを交わしたい」と提案する。驚きつつも温かな気持ちでそれを受け入れた顔幸は、彼から異良人を指揮する令牌を託される。「いずれこの令牌がお前の命を救う」との言葉を胸に、顔幸は新たな絆を得たのだった。
その頃、陸垂垂は江郎行と偶然出会い、占いへと向かう。一方、潘馳は「美女蛇が見られる」との噂に疑念を抱き、調査を進める。夜更け、人身売買で連れてこられた女性を救出した潘馳は、彼女が持つ蛾形の玉佩に気づく。それは甘南道から来た者が持ち込んだものだという。陳火蛾の影と繋がる手掛かりに、潘馳の胸はざわめいていた。
沈渡を案じつつも、顔幸の心は揺れていた。雲雀は「徐想仁が好き」と打ち明けるが、その言葉に顔幸は複雑な違和感を覚える。互いの心が交差する中、雲雀と陸垂垂は変わらず友情を深めていった。
一方、宮中では太皇太后が沈渡の功績を称え、顔幸に恩賞を与えようとする。顔幸は女官の試験を受け、自らの力で地位を勝ち取りたいと願い出る。徐婉は「これは褒賞であり同時に試練。もし落ちれば六部から除名される」と告げるが、顔幸は覚悟をもって受け入れた。徐婉はさらに「沈渡はいつもお前を大切にしろと言っていた」と伝える。支えられてきた思いを知った顔幸は、心に他の人を想いながらも「三か月の約束が尽きるまで、一日一日を大切にしよう」と決意を固める。
その裏で永安公主は密かに動き、顔采薇を呼び寄せる。差し出された茶を飲むしかなかった采薇は、帰宅後に倒れ、陳火蛾の毒に酷似した症状を示した。家族は動揺し、父は「証拠もなく皇室を疑えば一族皆が危うい」と諫めるが、顔幸は「命を賭しても采薇を救う」と誓う。
解毒の手掛かりを求めて書物を漁る顔幸。そこへ陸垂垂が母を訪ね、同席していた来羅織と対面する。陸垂垂は「鬼面は親切にしてくれたのに、なぜ悪人と言われるのか」と訴える。来羅織は「私を鬼面と思ってくれればいい」とだけ答え、密かに薬の処方箋を手渡す。「私から受け取ったとは言わないでくれ」と告げる羅織。その行為は慈悲か、それとも新たな罠か――。
毒の影が忍び寄り、友情と信頼、そして命を懸けた誓いが交錯する第20話。
顔幸は姉を救えるのか。そして沈渡との約束の行方は――。
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