山河枕(さんがしん)~Promise of Love~2025年 全40話 原題:『山河枕』
第31話 あらすじ
幾多の困難を乗り越えてきたことで、楚瑜と衛韞の絆はこれまで以上に深まっていた。楚瑜は、世間の偏見や政治的な障害がどれほど大きくとも、これからは衛韞と肩を並べて生きていくと決意する。一方、陸七八は衛韞のために戦場で失われていた愛用の長槍を見つけ出してくる。槍を受け取った衛韞は、言葉では言い尽くせない感謝の思いを込めて陸七八を固く抱きしめた。
温泉別荘での滞在中、陸七八は北岐の兵器工房を見学する機会を得る。そこで彼は、八角弩を搭載した戦車という驚くべき兵器を目にする。その精巧さには思わず感嘆するが、同時に、その兵器の試験のために北岐が多くの無辜の民を犠牲にしてきたことを知り、深い衝撃を受ける。陸七八は「もし自分なら、こんな犠牲を払ってまで兵器を作ろうとは思わない」と強く感じ、人の命より武器を優先する北岐のやり方に疑問を抱くのだった。
その頃、鳳陵城の戦場では楚臨陽が血まみれになりながら戦い続けていた。長年国のために戦い続けてきた彼は、すでに命を捧げる覚悟を決めており、たとえ戦死しても国を守る盾になるつもりだった。数で圧倒する北岐軍を前にしても一歩も退くことはない。そんな絶体絶命の状況の中、ついに朝廷の援軍が到着し、北岐軍は退却を余儀なくされる。
城門から飛び出してきた宋清平は、楚臨陽に抱きつきながら涙を流し、北岐軍が退いたことを知らせる。そこへ楚瑜たちも帰還し、衛韞は北岐王・蘇燦が討たれ、青州と鳳陵の戦いが大勝に終わったことを伝える。しかし楚臨陽は、自分が重傷であることから宋清平の将来を案じ、再び彼女を突き放してしまう。想いを拒まれ続けた宋清平は深く傷つき、ついにこれ以上彼を追いかけないと決意する。
戦が一段落した夜、楚瑜は優しく衛韞を慰める。衛韞は思わず彼女を引き寄せ、静かに口づけを交わす。戦乱の中で芽生えた二人の想いは、もはや揺るがないものとなっていた。
やがて一行は華京へ帰還する。久しぶりに子どもたちと再会した謝韻は涙を流して喜ぶ。朝廷では衛韞が北岐王を討った功績を認められ、宋文昌や宋世瀾も高く評価される。しかし王靖之は、青州失陥と北岐への降伏を理由に顧楚生を糾弾する。だが衛韞は、顧楚生の降伏は時間稼ぎのための策略だったと弁護し、その働きを称えた。皇帝はこれを喜び、顧楚生を吏部尚書に昇進させる。
その後、衛韞は楚瑜の功績も称えてほしいと進言するが、皇帝は話題を変え、この件を避ける。昼食に呼ばれた席で皇帝は、衛韞が楚瑜を「衛大夫人」と呼ぶことに不満を示す。彼は衛韞を、感情に左右されない無敵の将軍にしたいと考えていたのだった。
一方、都では衛韞の人気が急上昇し、多くの女性が彼の肖像画を買い求めていた。宋世瀾はそれを聞いても気にする様子はなく、むしろ衛韞の武勇に素直な敬意を抱いていた。やがて楚瑜は車椅子の楚臨陽を押しながら、静かに自分の思いを語り始めるのだった。
第32話 あらすじ
陸七八は、戦場で負傷して歩行が困難になった楚臨陽の姿を見て胸を痛める。そこで彼は知恵を絞り、木牛流馬と名付けた特製の椅子を作り上げた。軽くて動かしやすく、折りたたみもできる便利な椅子で、楚臨陽の生活は少しずつ楽になっていく。
その夜、仲間たちは集まって語り合い、久しぶりの平穏な時間を楽しんでいた。衛韞と楚瑜は目を合わせると、静かに席を立ち、人の少ない場所へと向かう。衛韞は朝廷で皇帝から楚瑜のことを牽制されたことに悩んでいた。楚瑜は優しく「皇帝には皇帝の考えがある」と諭すが、衛韞はそれでも彼女に正式な名分を与えたいと願っていた。
一方、宋清平は鳳陵へ無断で向かった罰として家に閉じ込められていた。皆と再会できず、孤独な日々を送っていたのである。
その頃、北岐では王位を巡る思惑が渦巻いていた。蘇燦の死後、李長明は冷静に状況を見極め、王位争いの行方を見守っていた。趙玥は雲陽長公主から「天下を得るには冷酷さが必要だ」と諭されるが、彼は愛する人と共に天下を治めたいと願っていた。
一方、謝韻は楚瑜の縁談を進めようと、春風楼で見合いを開く。そこには宋世瀾や顧楚生も呼ばれていた。しかし楚瑜の心は最初から衛韞にしか向いていない。顧楚生は思い切って愛を告白するが、その瞬間、衛韞が現れる。
衛韞は皆の前で楚瑜への想いを堂々と宣言する。楚瑜も彼の手を取り、「愛するのは衛韞だけ」とはっきり答える。謝韻は二人の姿に喜び、結婚の話を進める決意をするが、顧楚生は静かにその場を去る。
実はこの一件は皇帝の思惑でもあった。皇帝は衛韞が恋に溺れることを望まず、顧楚生を使って彼を試していたのである。だが衛韞はその意図を理解しながらも、あえて世間に自分の愛を示した。
やがて皇帝は楚瑜を宮中へ呼び出し、彼女を昭華の号を持つ誥命夫人に封じようとする。だが衛韞はその意味を理解し、顔色を変える。それは楚瑜を永遠に「衛家の内宅の女」として縛ることを意味していたからだった。
第33話 あらすじ
楚瑜がまだ何も答えていないうちに、衛韞は思わず口を開き、皇帝の提案を断ろうとする。彼は強い口調で、楚瑜は本来内宅に閉じ込められるような女性ではなく、戦場で軍を率いる将の器だと主張する。彼女ほどの才能を持つ人物を、ただの誥命夫人として屋敷の中に閉じ込めるべきではないと言い切ったのだ。
しかし、この発言は皇帝の怒りを買うことになる。皇帝は表情を曇らせ、衛韞を即座に連れ出すよう命じる。緊張した空気の中、楚瑜は慌てて進み出て場を収めようとする。皇帝は彼女をじっと見つめ、「誥命夫人の称号を受けるつもりはあるのか」と問いかけた。
楚瑜は少しも臆することなく答える。自分は刺繍も女工も得意ではなく、皇帝が望むような賢淑な妻にはなれないと正直に語り、誥命を辞退すると告げたのだった。だが皇帝は態度を硬化させ、「これは恩賞であり、拒否は許されない」と言い切る。すでに誥命の衣装は衛家へ送られており、もし従わないなら囚人の服を着ることになる、と厳しく迫る。
一方で、この騒動の中で顧楚生は皇帝の信頼をさらに得ることになる。皇帝は彼の働きを評価し、何か望みはないかと尋ねる。顧楚生は父の名誉を回復したいと願うが、かつての秦王事件は関係者が多く、皇帝も容易に覆すことはできないと説明する。それでも皇帝は彼に、父がかつて就いていた高位の官職に戻る意思があるかと尋ねた。
楚瑜は誥命を受けざるを得なくなったものの、思いのほか落ち着いていた。彼女にとって重要なのは名誉や地位ではなく、「一人の人と共に生きること」だったからだ。衛韞と心を通わせている今、それだけで十分だと感じていた。
楚錦と宋清平は彼女を慰めようと衛家を訪れるが、楚瑜があまりにも平然としているため拍子抜けしてしまう。むしろ、恋に悩み続ける宋清平のほうが落ち込んでいる様子だった。
その頃、衛韞は陸七八や宋文昌と共に宜香楼へ出向き、酒を飲みながら女性たちを呼んで遊び始める。友人たちは彼がわざと自分の評判を落とそうとしていることに気づいていたが、衛韞は何も説明しようとはしない。ただ「いつか必ず、堂々と楚瑜の手を取れる日が来る」と心の中で誓っていた。
夜、楚瑜たちは屋根の上で酒を飲みながら語り合う。酔った宋清平は「世俗なんて捨てて旅に出よう」と言い出し、楚瑜と共に自由に生きたいと叫ぶ。そんな彼女の姿に楚錦は苦笑するが、友情の温かさに包まれたひとときだった。
翌朝、衛韞は夜明け前に楚瑜の窓辺へやって来る。中には入らず、窓越しに会話をするだけだった。彼は宜香楼で勝ち取った「常勝将軍」という名のコオロギを彼女に見せる。青楼へ行ったことを知った楚瑜はわざと怒るふりをするが、慌てる衛韞の姿に思わず笑ってしまう。
実は衛韞が評判を落としているのは、皇帝の期待する「完璧な将軍」という立場から自分を外すためだった。だがその結果、民衆の間では彼の評判が急速に落ち始めていた。
そんな中、北岐からの密報が届く。趙玥が長公主を丁重に扱っているという知らせだった。しかし楚瑜は、それでも彼女が事実上の囚われの身であることを理解している。彼女は決意を固める。どんな困難があっても、必ず北岐から長公主を救い出すと。
第34話 あらすじ
北岐では、ついに趙玥が王として即位する日を迎える。儀式の準備が整う中、雲陽長公主が現れ、これまでの苦労が実ったことを喜ぶ。そして彼女は、すでに大遂皇帝が和談に前向きな姿勢を見せていることを伝える。北岐は使者を送り、正式な交渉を始める予定だという。
さらに雲陽長公主は、大遂の長公主・李長明を交渉の切り札として利用するべきだと提案する。しかし趙玥は即座に拒否する。彼にとって李長明は政治の道具ではなく、愛する女性だったからだ。
雲陽長公主は不満を隠さないが、表向きは受け入れる。ただし「もし王としての責任を忘れれば、李長明の命も守れない」と冷酷な言葉を残す。
やがて大遂元楽六年、趙玥は正式に北岐王として即位する。儀式を終えるとすぐに李長明のもとへ向かい、いつか彼女を王后にすると誓う。
一方、大遂では宋清平が罰として家で写経をさせられていた。兄たちは妹を心配し、こっそり外出させる計画を立てる。
その頃、楚臨陽は戦傷のため車椅子生活を送っていたが、宋清平の存在が彼に再び立ち上がる希望を与えていた。楚錦と宋文昌の協力で二人は再会し、楚臨陽はついに愛を告白する。「必ず立ち上がり、堂々と迎えに行く」と約束するのだった。
同じ頃、楚錦は子どもを助けようとして顔に傷を負ってしまう。自分の容姿を気にする彼女は落ち込み、楚瑜の家に身を寄せる。そこへ駆けつけた宋文昌は、彼女の外見ではなく優しさに惹かれたのだと告白する。
その夜、衛韞は疲れた様子で帰宅し、楚瑜を見るとすぐに抱きしめる。彼にとって彼女の存在こそが唯一の安らぎだった。
一方、朝廷では王靖之の不正が発覚し、皇帝は彼を引退させる。その結果、顧楚生は丞相へと昇進する。彼は北岐との和談と長公主救出を提案するが、皇帝は慎重に検討すると答える。
退朝後、顧楚生と衛韞は短く言葉を交わす。衛韞は「自分は出世のために戦っているのではない」と言い、顧楚生は「危険な立場に立ち続けるべきではない」と忠告する。二人の価値観の違いが、静かな緊張を生み出していた。
第35話 あらすじ
宮門を出た顧楚生は、馬車が壊されていることに気づく。そこへ衛韞が現れ、同じ馬車で帰ろうと誘う。その馬車は楚瑜が彼のために用意した特別なもので、内部には温かい茶まで用意されていた。
衛韞はどこか誇らしげにそれを見せつけ、顧楚生の肩に腕を回して離さない。顧楚生は苦笑しながらも相手にしない態度を取る。
途中、空から紙の蝶が舞い落ちてくる。楚瑜が用意した驚きの演出だった。衛韞は子どものように喜び、馬車を飛び降りて蝶の舞う方向へ走っていく。残された顧楚生は呆れながらも、その純粋さに複雑な思いを抱く。
一方、朝廷では顧楚生が文官の中心として台頭し、衛韞は武官の代表的存在となっていた。しかし衛韞は楚瑜のために何度も皇帝の意向に逆らっている。
北岐では雲陽太后が王権を安定させるため、趙玥に二人の妃を娶らせる。しかし李長明は策略を巡らせ、病を装って趙玥を自分のもとへ呼び寄せる。趙玥は新婚の夜にもかかわらず妃たちを残して彼女のもとへ向かうのだった。
大遂では宋世瀾が鎮西大将軍に任命され、青州と鳳陵の軍務を任される。そして彼は突然、皇帝の命として衛韞を軍械司へ送ると宣言する。事実上の軟禁だった。
宋文昌は必死に止めようとするが、宋世瀾の決意は固い。衛韞は仕方なく命令に従うことになる。
しかし楚瑜は決して動じない。「どんな困難でも一緒に乗り越える」と彼を励ます。二人の絆はむしろ強くなっていた。
その頃、北岐では李長明がさらに大胆な行動に出る。趙玥との関係を誇示するように振る舞い、太后を挑発する。母子の対立は激しくなり、趙玥はついに「母は権力しか愛していない」と言い放つ。
太后は涙を浮かべながら和解を装い、代わりに趙玥へ別の妃と床を共にするよう求める。国家のため、趙玥はやむなく承諾するのだった。
しかし侍女は李長明に伝える。趙玥はかつて「いつか必ず正妻として赤い衣を着せる」と誓っていた、と。北岐の宮廷では、愛と権力が複雑に絡み合いながら、さらに大きな波乱へと向かっていくのだった。
















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