掌心~宮廷に響く復讐の鈴音~

掌心~宮廷に響く復讐の鈴音~

掌心~宮廷に響く復讐の鈴音~ 1話・2話・3話・4話・5話 あらすじ

掌心~宮廷に響く復讐の鈴音~ 2025年 全30話 原題:掌心

第1話 あらすじ

康周元年。新帝が即位すると同時に、皇権を脅かす世族を抑え込む政策が本格化し、朝廷では「礼」と「武」をめぐる激しい対立、いわゆる礼武之争が勃発する。皇帝の威を盾にした酷吏(苛烈な取り締まりを行う役人)が横行し、些細な言動や噂ですら罪に問われる息苦しい時代が到来していた。そんな中、右相が「夢」を理由に告発され失脚するという前代未聞の事件が起きる。夢の内容が不敬に当たるとされただけで罪に問われたことで、都では「夢を見ること」そのものが恐怖の対象となり、民衆は夜も安らかに眠れなくなっていく。

その異様な空気の中で、ただ一人、世間の流れに逆らう存在がいた。それが心医(心の病を診る医師)である葉平安である。白衣に身を包み、赤い傘を差し、常に鈴を手にした彼女は、人々から「巫医」「怪しい女」と恐れられ、道行く人々は彼女の姿を見るだけで逃げ出すほどだった。理性を重んじる大理寺丞・元少城もまた、彼女の“夢を覗く力”など迷信に過ぎないと考え、冷ややかな目で見ていた。

ある日、都の大通りで事件が起きる。将軍・厉俊に率いられた兵たちが、錯乱状態に陥った兵士・胡生を追っていた。胡生は自分は反乱など起こしていないと必死に叫ぶが、周囲は聞く耳を持たない。そこへ偶然居合わせた葉平安は、胡生の眼差しが虚ろであることから、彼が反乱者ではなく、心の病――癔症(精神的錯乱)に陥っていると見抜く。彼女は巧みに言葉を操り、胡生の前にいる兵士たちを「共に戦った仲間」だと思い込ませ、胡生から武器を手放させることに成功する。しかし、理屈や医術よりも「疑わしきは斬る」を信条とする厉俊は、葉平安の説明を聞き入れず、胡生をその場で斬り殺してしまう。この理不尽な処刑は、葉平安の心に強い憤りと決意を刻み込む。

葉平安の心医館は日常的に民衆からの嫌がらせを受けていた。菜葉や腐った卵を投げつけられ、「夢で罪に陥れる女」と罵られる日々。それでも彼女は動じず、ある日、口から火を吹く奇術めいた演出で人々を脅し、「このまま居座れば、今夜必ず心に抱いた夢を見る」と告げる。夢が罪になる時代、その一言で群衆は蜘蛛の子を散らすように逃げ去るのだった。

一方、朝廷では補闕の鄭元が、権臣・杜梁に取り入りながらも、不安と恐怖に苛まれていた。右相が夢一つで罪に落ちた理由を知りたい鄭元は、同じく杜梁に仕える徐清から、右相が「夢の中で礼珂が皇帝即位の場に現れた」ことが不敬とされたと聞かされる。以来、鄭元は眠れぬ夜を重ね、悪夢に苦しむようになる。彼は侍女・陸丹心を使い、密かに葉平安を屋敷へ招く。

葉平安は部屋の灯りを落とし、酒を含んで吹きかけ、鈴を揺らすことで鄭元を半ば催眠状態へ導く。そして彼の心の奥に潜む恐怖――見えない誰かに監視され、秘密の手紙が露見する不安を言い当てる。葉平安が「手紙」の存在に触れた瞬間、鄭元は彼女を殺そうとする衝動に駆られるが、彼女が内容までは見えていないと知り、ひとまず解放する。

しかしその夜、葉平安は刺客に襲われる。間一髪で逃げ延び、刺客たちの会話から黒幕が鄭元であると知った彼女は、翌日直接問い質しに向かう。ところが、鄭元はすでに何者かに殺害されており、そこへ駆け込んできた家宰が、匕首を手にした葉平安を目撃する。こうして葉平安は殺人犯として投獄されてしまう。

大理寺丞の元少城が取り調べを担当するが、彼は真相に興味を示さず、最初から葉平安を有罪と決めつけ、認罪書に署名するよう迫る。葉平安は彼の経歴を挙げ、軍功により出世しただけの無能な官だと痛烈に皮肉るが、元少城は聞く耳を持たず、死罪を下す。

ところが、都では「葉平安は人の夢を覗いた」「鄭元の夢の秘密を知ったため殺された」という噂が独り歩きし、ついには皇帝の耳にまで届く。興味を持った皇帝は葉平安を召し出し、元少城の反対を押し切って、彼女にその“窥梦”の力を示すよう命じる。葉平安は対象として元少城を選び、彼の腕に残る火傷の痕から、火に対する恐怖と、幼少期に家族を火災で失った過去を暴き出す。権力への強い執着と恨みを感じ取ったものの、それを口にすれば皇帝の怒りを買いかねないと判断し、「叶わぬ恋から生じた恨み」と嘘をつく。元少城も否定できず、皇帝は葉平安に「一日以内に無実を証明せよ」と猶予を与える。

元少城は渋々ながら葉平安と共に捜査を開始し、更夫が打更の時刻を改ざんしていた可能性に辿り着く。本来の時刻なら、葉平安にはアリバイが成立するはずだった。さらに調べを進めると、鄭元の屋敷から侍女・心児と小厮・肖全が姿を消していることが判明。郊外で肖全の遺体が見つかる一方、心児は行方不明となる。

だが、ここで物語は大きく反転する。心児の正体は陸丹心であり、彼女は一年前から葉平安が鄭元のもとに潜り込ませた内通者だったのだ。胡生事件で葉平安を鄭元の目に留まらせ、食事に薬を盛って不眠と幻覚を引き起こし、すべては“夢を見る女”という噂を作り上げるための布石だった。葉平安が投獄された後、噂を広めたのも陸丹心であり、すべては皇帝の前に進み出るための計算だったのである。

同じ夜、曾轩という男が元少城を訪ね、鄭元から託された一通の書簡を渡す。それは杜梁の贪墨(汚職)を告発する決定的な証拠だった。元少城は「信頼できる人物に渡してほしい」という鄭元の遺志を聞き、曾轩を守ると約束する。しかし、彼はその直後、突如として剣を振るい、曾轩を斬殺する。血飛沫を浴びた元少城の表情は冷酷で、この物語が単なる冤罪事件ではなく、より深い闇と復讐へ向かうことを強烈に印象づけて、第1話は幕を閉じる。

第2話 あらすじ

鄭元の屋敷には、霓裳という名の歌姫が囲われていた。彼女はもともと貧しい家の娘であったが、その美貌と琵琶の腕を鄭元に見初められ、半ば強引に屋敷へ連れてこられた存在である。霓裳は一曲奏で終えるたびに「約束どおり自由にしてほしい」と願い出るが、鄭元はその場では優しく応じながらも、実際には決して逃がさない。杜梁から“贈り物”として与えられた彼女は、鄭元にとってただの慰み者に過ぎず、鄭元が殺されたその夜でさえ、霓裳は何も知らぬまま琵琶を弾き続けていた。

一方その頃、元少城は密かに陸丹心の首元にある梅花の胎記を拭い隠す。これは、鄭元邸から姿を消した「心児」を特定する唯一の手がかりが、その胎記であったからだ。陸丹心の正体が露見すれば、葉平安の計画は一気に崩壊する。元少城は表向きは葉平安と距離を取りながらも、知らぬ間に彼女の策の一端を担う立場に置かれていく。

葉平安は、曾轩が行方をくらませている以上、必ず元少城のもとに現れると見抜き、采莲に命じて元少城の屋敷を密かに監視させる。同時に、杜梁が贪墨した官銀を溶かして証拠を消そうと動くことも予測し、その動向を陸丹心に追わせる。すでに葉平安の視線は、冤罪の晴らしだけでなく、朝廷の腐敗そのものへと向けられていた。

元少城は杜梁の屋敷を訪れ、鄭元から託された告発の手紙をその場で焼き捨てる。忠誠を示すための芝居であり、杜梁はそれを信じ、元少城を義子として迎え入れ、賭坊の管理を任せると申し出る。元少城は、賭坊の利益そのものより、そこに集まる人脈と情報こそが真の価値だと理解しており、あえて斉君山と名分を争うことはしないと告げる。このやり取りの裏で、杜梁はすでに「元少城が曾轩を殺した」ことを把握しており、更夫の時刻改ざんも含め、すべてが杜梁の掌の上で進んでいたことが明らかになる。

葉平安と顧二娘は、もともと静かに生きることを望んでいた。しかし顧二娘は、葉平安が心の奥に抱える過去の痛みと復讐心を解き放たぬ限り、どこへ行っても悪夢に囚われ続けると悟り、危険を承知で彼女と共に都へ来たのだった。葉平安は、その献身に深い感謝を抱きながらも、自らの選んだ道が周囲を巻き込んでいる現実に、わずかな迷いを覚える。

その頃、斉君山は葉平安を宮中へ向かわせないため、ならず者の郭义を使って医館で騒ぎを起こさせる算段を立てる。葉平安が宮中に辿り着けなければ、期限切れで処刑される――それが狙いだった。同時に斉君山自身は、杜梁の命で官銀処理に動く。一方、斉君山と通じていた女官・伍显儿は事態を察し、海尚书に密かに知らせを入れる。

案の定、郭义は医館で刃物を突きつけ、「巫医が民を惑わした」と叫び、葉平安の命を脅かす。しかし葉平安は、郭义がかつて科挙を目指した読書人であり、理想を失って道を踏み外した人物だと見抜く。孔孟の教えを引き合いに出し、自身もまた無実の存在であると静かに語りかけると、郭义の心は崩れ落ち、彼は泣き崩れて刃を捨てる。駆けつけた海尚书は騒ぎを収め、葉平安の「心を治す力」に深く感嘆し、今後力を貸すことを約束する。

元少城は、部下から「葉平安を始末すべきでは」と進言されるが、彼女にはもはや証拠がなく、宮中へ行っても無力だと判断する。ところが皮肉にも、郭义が残していた記録帳から、鄭元が死んだ夜に打更の時刻が半刻遅れていた事実が判明する。その記録は葉平安のもとへ届けられ、決定的な証拠となる。

葉平安は宮中で皇帝に謁見し、更夫の記録と、陸丹心が事前に写し取っていた鄭元の密書を提出する。皇帝は一度は激怒したふりを見せるが、葉平安の受け答えが的確であること、そして裏に潜む腐敗を察し、彼女を罰することはなかった。ただし、「窥梦」の術を公に語ることは禁じ、今後は慎めと釘を刺す。この展開すら、葉平安の計算のうちであり、彼女にとって重要なのは裁きそのものではなく、皇帝の心に疑念の種を植え付けることだった。

やがて刑部の捜査により、官銀を溶かす工房が発見されるが、銀はすでに移されており、杜梁は「小さな損失で済んだ」と胸を撫で下ろす。一方、元少城は葉平安が完全に身を引いたことに驚き、自分が彼女を見誤っていた可能性を感じ始める。そんな中、官道で輸送中だった八万両の銀が消えたとの報せが入り、さらなる波乱を予感させる。

その夜、葉平安が一人碁を打っていると、追われるように霓裳が現れる。助けようとした瞬間、葉平安はそれが芝居であることを見抜き、距離を取る。霓裳は正体を明かし、追手は自分の配下である晋夫子だと告げる。そして彼女は、鄭元を殺すつもりだったと語り、その結果が葉平安の冤罪につながったことをほのめかす。葉平安は不誠実な態度に背を向けようとするが、霓裳が「通泉」と「御史案」という言葉を口にした瞬間、足を止める。それは、葉平安が追い求める真の復讐と深く関わる事件だった。

こうして、葉平安と霓裳――それぞれ異なる恨みを抱く二人の女が、同じ闇を見据えて手を組むことになり、物語はさらに大きな陰謀へと踏み込んでいく。

 

第3話 あらすじ

押送中だった軍饷(軍資金)八万両が忽然と姿を消すという一大事件が発生する。現場を預かる将軍・厉俊は、これを明確な「盗難事件」と断じ、まずは関係者を拘束し、拷問によって真相を吐かせるという、いかにも武官らしい即断即決の対応を取ろうとする。一方で大理寺丞・元少城は、同じ事件を前にしながらも全く異なる姿勢を見せる。彼は力で押さえつけることよりも、状況を丹念に洗い出すことを重視し、まずは押運官に対し、行程中に起きた「不審な出来事」を一つ一つ語らせるのだった。

その中で浮かび上がったのが、通泉県で耳にしたという不気味な童謡である。子どもたちが口ずさんでいたその歌は、かつて朝廷を揺るがした大事件――监察御史・余乾による放火惨案を題材にしたものだった。兆丰二年、余乾は数多くの女子を焼き殺した罪により極刑に処され、その一族三十余名も皆殺しにされた。この事件は当時の民衆に強烈な衝撃を与え、正義の裁きとして歓迎される一方で、あまりに苛烈な処断に疑問を抱く声も残した。そして今、童謡は「余乾は死して厉鬼となり、冤魂となった女たちを操り、通泉の山中を彷徨わせている」と語る内容だった。

その噂は、押送官兵たちの心にじわじわと恐怖を植え付ける。やがて夜、隊伍が深山へ入った瞬間、濃霧が立ちこめ、視界は一気に閉ざされる。霧の中に浮かぶ人影、耳元で響く女の笑い声――それはまさに童謡が語る“冤魂”そのものだった。兵たちは恐怖に耐えきれず、次々と気を失って倒れ、目を覚ました時には、軍饷を積んだ馬車は跡形もなく消え去っていた。

厉俊は直感的に「賊が遠くへ逃げる時間はない」と判断し、残された車轍の跡を追って山中を捜索する。しかし元少城は、車轍の深さや乱れの少なさに違和感を覚える。八万両もの重い銀を積んだ馬車であれば、もっと深い轍が残るはずだ――つまり、銀は山中へ運ばれたのではない可能性が高い。彼の推理は理にかなっていたが、厉俊はなおも山狩りを続行し、この時点では二人の判断が噛み合わない。

だが視聴者に対しては、早い段階で真相が明かされる。この軍饷失窃事件は、単なる盗賊の仕業ではなく、葉平安が主導する、極めて周到な計画だった。葉平安自身、かつて余乾の御史案によって人生を破壊された被害者の一人であり、この事件の“冤魂”と呼ばれた者たちの無念を背負っている。彼女は陸丹心、采莲らと手を組み、余乾事件の真実を世に問い直すと同時に、腐敗した権力層への抗議として軍饷を“奪った”のだった。

軍饷は山中にはなく、圣都でも最も貧しい地域・邙沟へと運び込まれていた。入り組んだ河道と湿地、極度の貧困ゆえに官の目が届かないこの地に、葉平安たちは銀を沈め、さらに水母を利用して水面を覆い、痕跡を巧みに消していた。これは単なる隠匿ではなく、「本来民を守るための軍饷が、民の苦しみの底に沈んでいる」という、痛烈な象徴でもあった。

元少城は出自が贱籍でありながら、自力で官にまで上り詰めた人物である。その過程で邙沟の実情もよく知っており、「軍饷は川の近くにある」という確信を強めていく。これは偶然ではなく、彼自身の過去と経験が導いた推理であり、元少城が単なる冷静な官吏ではなく、現実を知る男であることを示す重要な描写となっている。

一方、葉平安は聖上からの口諭を受け、**「掌心使」**という新たな立場を与えられる。これは正式な高官ではないものの、皇帝直属で動ける特殊な存在であり、彼女に大きな自由と同時に危険をもたらす称号だった。葉平安はその令牌を元少城に見せ、わざと別の方向へ意識を逸らそうとするが、元少城はそれを見抜き、なお河道周辺の捜索に固執する。ここで二人は、初めて対等な「棋敵」として盤上に向かい合うことになる。

同時に朝廷では、梅伯温を中心とする梅党と、齐君山の勢力が水面下で牽制し合いを始める。葉平安という存在は、もはや一介の心医ではなく、権力構造そのものを揺さぶりかねない存在となっていた。杜梁は警戒を強め、葉平安の動向を探らせるが、まだ決定的に動くことはできない。海宜平と梅伯温の会話で語られる「急げば変を生む、静観すべし」という言葉は、この物語が一気呵成ではなく、長期戦の知略劇であることを印象づける。

その裏で、元少城は杜梁の手に落ち、厳しい拷問を受ける。それでも彼は軍饷の行方について一切を語らず、沈黙を貫く。その姿は、かつて葉平安を冷酷に裁こうとした官吏とは別人のようであり、彼の内面に芽生え始めた「正義への意識」を静かに示している。

葉平安は、元少城が監視され、自由に動けない状況を把握した上で、次なる一手を考え始める。それは、軍饷を安全に回収しつつ、齐君山と杜梁の対立を利用し、互いに噛み合って自滅させるという大胆な策だった。誰かを正面から討つのではなく、欲と疑念をぶつけ合わせて崩壊させる――この「狗咬狗」の構図こそ、葉平安が選んだ復讐の形である。

こうして第3話は、
軍饷事件の真相が明らかになる一方で、葉平安と元少城が完全に「盤上の対手」となり、互いの知略と信念を試し合う段階へ入ったことを鮮明に描き出し、物語を次なる局面へと押し進めていく。

 

第4話 あらすじ

杜梁はついに元少城を捕らえ、軍饷の行方を吐かせるために苛烈な拷問を加える。血に染まりながらも、元少城は「軍饷は自分の手元にはない」と一貫して否定し続ける。むしろ彼は、賭坊から軍饷が見つかったこと自体が“嵌められた証”だと主張する。自分以外に軍饷の所在へ辿り着ける者がいないからこそ、誰かが意図的に賭坊を利用して罪を着せようとしている――そう論じ、もし杜梁が自分をここに閉じ込め続ければ、真の黒幕に辿り着く糸口すら消えると迫る。杜梁は熟考の末、七日の猶予を与えるが、元少城は自ら五日で足りると申し出る。その代わり、「なぜ賭坊に軍饷があると知っていたのか」と逆に問い返し、杜梁の内心を鋭く突く。

解放された元少城は、全身血だらけの重傷を負って戻ってくる。医女・白笙は献身的に治療を施し、周囲は「協力関係にあるはずの杜梁が、ここまで非道なことをするとは」と憤る。しかし元少城自身は、最初からそれが“協力”ではなく、“相互利用”に過ぎなかったと理解していた。彼は心中で静かに誓う――今日受けたこの仕打ちを、必ず杜梁に返す、と。

白笙は、傷ついた元少城を見つめながら、長らく仕舞い込んでいた喜服を取り出す。それはかつて、元少城の兄・元贺生と結ばれる日を夢見て用意したものだった。理想を語り合っていた頃の二人を思い出しながら、今や権臣のために身を削る現実に、白笙の心は冷え切っていく。元贺生は彼女の変化に気づき、「弟を守るためだ」と苦しい胸の内を明かすが、白笙は「もしあなたも同じように重傷を負って戻る日が来ても、私はもう関わらない」と言い残す。ここで描かれるのは、権力闘争が個人の人生と愛情をいかに踏みにじるかという、静かな断絶である。

一方、葉平安は元少城が思いのほか早く釈放されたことを知り、裏で杜梁との取引があったと察する。夜、陸丹心は葉平安の傍らに寄り添い、彼女が毎晩悪夢にうなされていることを知っているからこそ、手を握り「今夜は安心して眠って」と囁く。葉平安は束の間、心から安らいだ微笑を浮かべるが、その裏には消えぬ記憶の影が横たわっている。

その頃、街を歩いていた霓裳は背後の視線に気づき身を隠すが、螳螂の後に蝉あり――彼女を捕らえたのは元少城だった。やがて元少城は葉平安のもとへ現れ、「軍饷の行方を知る者は、まさに君が待っている人物だ」と告げる。そして、杜梁や鄭元が葉平安にどれほどの恨みを買ったのか、核心を突く質問を投げかける。葉平安は「鄭元の件はすでに聖上が裁いた。杜梁とは面識もない」と冷静に答えるが、元少城はその言葉を信じない。

彼はさらに踏み込み、十数年前の御史案――余乾による放火と大量処刑の事件に言及する。その瞬間、葉平安の表情が凍りつく。彼女は「知らぬはずがない」と答え、あの事件で百人以上が命を落とした事実を淡々と口にする。元少城は、もし当時余乾・鄭元・杜梁が結託していたなら、生き残った被害者が復讐に動くのは当然だと示唆し、葉平安こそがその当事者であると半ば断定する。さらに、軍饷を賭坊に絡めて杜梁を嵌めたのも葉平安だと見抜く。

ここで葉平安は、ついに隠していた真実を明かす。軍饷は賭坊ではなく河道に隠されていること、そして杜梁が失脚すれば元少城にとっても不利益にはならないことを告げ、共闘を持ちかける。元少城はこの提案を受け入れ、軍饷を杜梁に渡さない決意を固める。厉俊がすでに自分が欺かれたと気づき始めている今、猶予はない。葉平安がこの段階で真相を打ち明けたのは、元少城に迷う時間を与えないためだった。

案の定、厉俊は山中で焚き火の痕跡が残る洞穴を発見し急行するが、中にあったのは泥と砂だけ。完全に出し抜かれたと悟った厉俊は激昂し、捜索の矛先を河道へと戻す。一方その裏で、元少城は邙山の谷叔に助力を求め、軍饷を山中へ移す。谷叔は元少城を我が子のように思い、「数日後に差し出せば大功だ」と諭すが、元少城は沈黙を守る。

彼の脳裏には、幼少期の記憶が甦っていた。贱籍として生まれ、幾度頭を下げても食べ物一つ得られなかった日々。父は身分を脱するため闇の拳闘に身を投じ命を落とし、母も後を追うように病死した。焼かれる両親の亡骸にすがりつこうとして負った火傷――それが、彼の腕に残る痕だった。その時、彼は誓ったのだ。「鼠のように生きるこの運命から抜け出し、たとえ鼠でも大地を震わせられると証明する」と。そして「誰もが安らかに暮らせる世」を夢見た少年の誓いは、今も彼の中で燃え続けている。

やがて葉平安は邙山へ向かい、霓裳を連れ戻す。実は彼女が捕らえられたのも、すべて葉平安の計算だった。再会した二人は互いの成功を祝し合い、「元少城はもう同じ船に乗った」と確認する。しかし、杜梁を完全に追い詰めるには、まだ一手足りない。鍵を握るのは女官・伍显儿だと葉平安は見定める。霓裳は万国香で、齐君山と伍显儿が密かに通じていたことを知っていた。

葉平安は意図的に伍显儿へ近づく。聖前で顔を合わせたこともあり、伍显儿は葉平安に強い興味を示し、その“厚顔無恥”とも言える大胆さを面白がる。助力は断られるものの、伍显儿は海宜平の名を挙げ、「あの府の真珠粉は実に良い」と意味深な言葉を託す。それは、新たな協力者への静かな橋渡しだった。

その夜、葉平安は再び炎に包まれる悪夢を見る。はっと目を覚ますと、陸丹心が着替えている背中に、刺青が覗く。葉平安は気づかぬふりをして目を閉じ、陸丹心が「財布を作りたい」と刺繍の図案を尋ねると、ただ「葉」の一字だけを望む。陸丹心が去った後、葉平安は笑みを消し、静かに灯を吹き消す。

かつての敵は、今や同じ目的を持つ仲間となった。
しかし、その結束の裏では、疑念と秘密が静かに積もり始めている――第4話は、協力と裏切りが紙一重であることを鮮烈に示し、物語をさらに深い闇へと導いていく。

 

第5話 あらすじ

葉平安は、伍显儿から託された「珍珠粉」の言葉を頼りに、重臣・海宜平の邸宅を訪ねる。しかし、身分のない彼女は最初は門前払いを受ける。ところが「伍显儿が珍珠粉を所望している」と伝えた途端、門番の態度は一変し、即座に屋敷の中へ通される。
このやり取りから、葉平安が扱っているのは単なる薬や贈り物ではなく、権力者同士をつなぐ“合図”であることが分かる。

屋敷の中では、ちょうど術士による奇妙な祭祀が行われていた。葉平安が理由を尋ねると、それは海宜平の妹・海嫣のための法事だと明かされる。海嫣はかつて屋敷で起きた火事をきっかけに精神を病み、以来「疯魔之症」を患い、毎月のように祈祷を続けているのだという。

葉平安は自ら海嫣に会わせてほしいと願い出る。何を見ても口外しないと約束し、部屋に通されると、彼女は言葉を発することなく、海嫣と同じように彩色水墨で絵を描き始める。
同じ行為を静かに重ねることで、葉平安は海嫣の警戒心を解き、少しずつ心の距離を縮めていく。やがて海嫣は葉平安に興味を示し、近づいてくる。

葉平安は海嫣に、母親の姿を描いてみるよう促す。絵が完成したその瞬間、突然海母が部屋に現れ、激怒して葉平安を叱責する。娘に余計な刺激を与えたと責め立てられ、場の空気は一気に険悪になる。
しかしその直後、海嫣が母親からもらった「小玩意」を口にすると、海母は激しく動揺する。それは、長く閉ざされていた娘の心が確かに動いた証だった。
海母は態度を改め、葉平安に深く感謝する。この出来事によって、葉平安は海宜平の信頼を得ることに成功する。

その後、葉平安は本題として杜梁の贪墨(横領)について切り出す。自分は虚職であり、正式に告発する立場にないこと、しかし証拠は確かに存在することを伝え、海宜平に協力を求める。
海宜平は「民を害する者は許さぬ」と応じ、力を貸すことを約束する。さらに葉平安は、杜梁を追い詰めるための実働役として元少城を推薦する。

葉平安が屋敷に戻ると、姑母・顾二娘が捕えられたという知らせが届く。ほぼ同時に、杜梁から「屋敷に来るように」との使いが来る。葉平安は、これは明確な脅しであると理解しながらも、拒むことができず杜梁のもとへ向かう。
一方、陸丹心は異変を察し、この情報を元少城に伝える。

杜梁の屋敷で、葉平安は顾二娘の解放を求める。しかし杜梁はこれを拒否し、さらに葉平安を殺そうと刃を抜く。
その緊迫した瞬間、海宜平から「診察を頼みたい」との使者が到着する。杜梁は表向きの体裁を保つため、仕方なく刃を収め、葉平安を手放す。
権力と権力の牽制が、辛うじて葉平安の命を救ったのだった。

同じ頃、元少城は海宜平を訪ねる。二人の会話の中で、海宜平は一幅の絵を示し「何が見えるか」と問いかける。元少城は「万国来朝の盛世」と答えるが、海宜平は「私は色しか見えない。赤橙黄緑青藍紫だ」と返す。
それは、理想や幻想ではなく、現実と本質を見ることこそが官の務めだという教えだった。
元少城はその言葉を受け止め、最大の誠意として軍饷を差し出す。これにより、彼は正式に“表の権力構造”の一角へと足を踏み入れる。

葉平安は海宜平の屋敷に身を寄せることになり、翌朝、海嫣が新たに描いた絵を見せに来る。その絵の中には、手首に梅花の印を持つ少女が描かれていた。
葉平安は激しく動揺し、海嫣にその少女を見たことがあるのか、そしてその場に海宜平もいたのかと問い詰める。
その声を聞きつけた海宜平が部屋に飛び込み、会話を強引に遮る。葉平安はそれ以上追及せず、急いで屋敷を去る。

その後、葉平安は一軒の廃宅を訪れる。そこは、彼女の過去――顾清として生きていた頃の記憶と深く結びついた場所だった。
医師の両親を持ち、人の心を癒したいと願っていた顾清は、その才を恐れられ、利用される。杜梁や郑元、齐君山らは彼女を騙し、少女たちを廃宅に集め、辱め、最後には火を放った。
逃げ出す者は矢で射殺され、炎と悲鳴が夜を覆った。

顧清は物陰からその惨状を目撃しながら、何もできなかった。
その罪悪感と後悔が、今の葉平安を形作っている。
廃宅の前で、葉平安は膝をつき、涙を流す。
復讐は憎しみだけではなく、「取り返しのつかない過去」から生まれているのだと、改めて示される回となった。

 

掌心~宮廷に響く復讐の鈴音~ 6話・7話・8話・9話・10話 あらすじ

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