漠風吟(ばくふうぎん) 偽りの公主、熱砂の愛 2024年 全26話 原題:漠风吟
第21話あらすじ
皇北霜は霍擎雲を慰め、すでに真実は明らかになったのだから自分を責めるなと諭す。霍擎雲は彼女と共に新たな生活を築くことを切に願うが、皇北霜は悩んだ末、二人の絆は深くとも縁は尽きたと悟り、この地に留まる決意をする。一方、格心薇は若問を挑発し「霍擎雲が皇北霜を連れていく」と告げ、彼の心を揺さぶろうとする。若問は平静を装いながらも、内心は複雑な思いを募らせていた。
皇北霜は両親の位牌の前で、霍擎雲への想いを静かに打ち明け、天に答えを委ねるかのように心を揺らしていた。その最中、若問が突如乱入し彼女を追い詰めるが、霍擎雲が現れて二人は激しい取っ組み合いへと発展する。混乱の中で若問は頭を打ち、意識を失う。格心薇は慌てて彼を抱え、必死に看病するが、若問は昏睡状態のまま目を覚まさない。彼女は涙ながらに本心を吐露し、若問への愛情を隠さずに語る。
その頃、皇北霜は議事堂で建築篇を探し求めていた。霍擎雲は厚かましくも同行を申し出、彼女と若問の間に取引があると推測しながらも協力を誓う。皇北霜は彼の執念に折れ、共に探索を始める。やがて巻物を発見すると、霍擎雲は自身の過去と宿命を語り、皆の仇を討つと決意を新たにする。皇北霜は冷淡を装うが、霍擎雲は彼女の心の奥を見抜いていた。
一方、若問は夢の中で幼い記憶を繰り返し目にする。砂漠で追われ、母が雲沛軍に惨殺される光景――その記憶は彼の心を深く抉り、正体の謎をさらに濃くする。神医が招かれるも、若問の魂は夢の世界に囚われており、自力で目覚めるしかないと診断される。格心薇は三日三晩眠らずに彼を見守り、やがて涙ながらに願いを込める。
奇跡のように若問は香りに誘われ目を覚ますが、一言も発さず無言のまま歩み出す。夢の中で見た場所を探し、失われた記憶を取り戻すために――。格心薇は必死に止めるが、彼の背を見送るしかなかった。
第21話は、皇北霜と霍擎雲の想いのすれ違い、若問の正体を巡る謎、格心薇の深い愛情が交錯する回。夢と現実、愛と宿命が絡み合い、物語はさらなる試練と運命の分岐点へと進んでいく。
第22話あらすじ
若問は幼き日の記憶を胸に、かつて黄天狂に救われた砂漠へと馬を駆る。過去と向き合う旅路の先で、彼は己の生い立ちを皇北霜に打ち明け、那戦への復讐を誓い合う。二人が編み出した策は、雲沛の面目を潰して那戦を誘い出すための偽りの婚礼――命懸けの賭けであった。
一方、格心薇は若問の心が自分ではなく皇北霜にあると知り、激しい失望に沈む。それでも彼女の前に現れる運命の符は、黄天狂の令牌と汾天に迫る戦の影であった。狼頭の護送、沙曲の警戒、霍擎雲の毒との死闘……それぞれが分かたれた場所で、戦いの前夜を迎えていく。
婚礼の日、汾天は祝宴に包まれた。若問と皇北霜は華やかに舞い、真実を隠した笑顔で賓客を迎える。その熱狂の裏で、呉将軍の刺客たちが潜み、那戦の軍勢が刻一刻と迫っていた。やがて那戦は怒りのままに汾天へ突入し、両陣営の激突が始まる。若問は挑発的に立ちはだかり、血と火に包まれた戦場は修羅の巷と化した。
その最中、呉将軍の鉤が若問の肩を裂き、那戦は彼の傷跡を見て「探し続けた子」と誤認する。憎悪と狂気に駆られた那戦の刃が霍擎雲を狙った瞬間、皇北霜がその身を投げ出し、一閃を受け止めた。倒れゆく彼女を抱え、霍擎雲は撤退を余儀なくされる。
怒号、剣戟、血の匂い――そして突如響き渡る轟音。汾天の城内で爆発が起こり、混乱は頂点へと達する。偽りの婚礼は遂に真の戦火へと変わり、若問たちの運命を新たな修羅場へと投げ込むのだった。
第23話あらすじ
皇北霜は鎧に守られ命をつなぎとめたものの、医師の診断は気血両虚。長期の静養が不可欠で、霍擎雲は彼女の傍らを片時も離れず看病を続けた。若問は那戦との死闘の傷を酒で紛らわせようとするが、格心薇はそれを許さず、彼を叱咤し奮い立たせる。冗談めかした言葉の裏で、彼女は若問の心の奥に潜む孤独と真実を問い質した。
やがて霍擎雲から届いた手紙で、若問は父・容若が雲沛国の重臣であった事実を知る。母を失った痛みと父への憎悪が胸を締め付けるが、格心薇は「ずっとそばにいる」と寄り添い、ついに二人は互いの想いを確かめ合う。一方、那戦は敗戦の責任を呉将軍に押し付け、再び大軍を汾天へ進軍させる。各部族から皇北霜の死を悼む奏章が届くも、彼は霍擎雲の策略に気づき疑念を募らせていた。
その頃、汾天では地盤沈下が発生し、民衆は恐怖に駆られ街を離れ始める。若問が募兵を試みても集まるのは老弱者ばかり。劣勢が濃厚となる中、霍擎雲は那戦の密命を察知し、夜佩と廉幻を欺くため空の棺を用意。皇北霜が姿を現すと、二人は驚きと喜びに涙した。霍擎雲は本物の遺詔と玉佩を託し、那戦に届けさせる。
それを開いた那戦は、霍擎雲こそが那延興であると知り衝撃を受ける。霍擎雲の脅迫と「皇北霜の死」の報が雲沛を縛り、那戦は撤退を決断。呉将軍は不満を抱くも逆らえず、精鋭は辺境へと退いた。汾天の民は胸を撫で下ろすが、若問の心には皇北霜を失った痛みが重くのしかかる。
だが霍擎雲は真実を明かし、皇北霜は彼の素性をすべて受け入れる。「あなたが誰であれ共に生きる」と誓った二人は、雪の夜、天地を証人に生涯を誓い合う。待ちきれない霍擎雲の求婚に皇北霜は微笑みで応え、深い口づけを交わす。荒波に揺れる大漠の只中、二人の絆は永遠へと結ばれていくのだった。
第24話あらすじ
霍擎雲は皇北霜との結婚後、幸福の余韻に浸るあまり政務を顧みず、沙曲は心配しつつも手出しできないでいた。一方、若問は汾天に長く留まれないことを悟り、生存の地を求めて雲沛攻略の計画を練る。格心薇は天都へ赴き、霍擎雲と協力して大漠奇巻の謎に迫ることを提案。呉将軍は天都への攻撃を促し、那戦は地形の複雑さを理由に勝算を問いただす。皇北霜の生存を知った那戦は、厄娜泣族を盾に書簡で威嚇し、返答がなければ死闘も辞さない構えを示す。
格心薇は皇北霜の無事を確認し伝書鳩で報告、雲沛は霍擎雲に皇北霜の遺体引き渡しを要求するが、霍擎雲は拒否。皇北霜は危険を承知で自らの調査を決意し、容老に相談して動きを制限しつつ、格心薇を通じて三疆城での密会を手配する。若問は砂漠で雲沛軍に挑みつつ、格心薇と共に三疆城に到達。格心薇は城の地形を調査し、溶洞の入り口を発見するが、那戦はその動きを察知し、討伐命令を下す。
一方、霍擎雲は皇北霜の性格の変化に気づき、偽者の可能性を疑いながら追跡の準備を整える。皇北霜は計画通り格心薇の容貌を利用して三疆城へ向かい、若問や格心薇と連携して大漠奇巻の秘密に迫る。汾天、天都、三疆城を舞台に、各勢力が策略と力を駆使して入り乱れる中、霍擎雲たちは危機回避と秘密の保全に奔走する。
第24話は、霍擎雲と皇北霜の夫婦としての絆、若問と格心薇の関係、そして大漠奇巻の核心に迫る戦略が交錯する、緊迫感あふれる展開が描かれる。愛情と戦略、陰謀と勇気が複雑に絡み合い、読者は彼らの決断と行動に釘付けになる。命を賭けた大漠の戦場と、人々の運命を左右する策略の数々が物語をさらに熱くし、次集への期待を高めるクライマックスとなる。
第25話あらすじ
突如訪れた流砂の罠は、若問と格心薇の運命を大きく狂わせた。二人は奈落のごとき溶岩洞窟へと呑み込まれ、若問は脚に深い傷を負い、格心薇は意識を失う。絶望的な状況の中、若問は迷わず自らの血を彼女に与え命を繋ごうとする。しかし目覚めた「格心薇」は、仮面の下に皇北霜の姿を隠していた。若問は驚愕しつつも彼女を救ったことで絆を深め、皇北霜は大漠奇巻を探し出した暁には必ず助けると誓う。
その頃、本物の格心薇と霍擎雲も洞窟へと侵入。血痕を発見した格心薇は若問を案じて名を呼び続ける。やがて四人は幾多の危険を乗り越え洞窟内で再会し、霍擎雲の献身的な手当と皇北霜の発見した『緑洲篇』と遺書によって、容若がこの洞窟に落ちていた事実が明らかになる。若問は父の運命に心を揺さぶられながらも、前へ進む決意を固める。
一方、那戦と呉将軍は執拗に追跡を続け、血痕を手掛かりに洞窟深くへ侵入。霍擎雲は雲沛の将兵に良心を呼び覚まそうとするが、那戦は冷酷に命を奪い、従者たちに追撃を命じる。その刹那、洞窟全体が激しく崩落し、霍擎雲たちは辛うじて脱出に成功するが、二組の恋人たちは混乱の中で離れ離れとなってしまう。
霍擎雲と皇北霜は洞窟の奥深くから出口を見出し、命からがら外の世界へ。格心薇と若問は断崖絶壁に直面するが、若問は身を挺して彼女を背負い、幾度も墜落の危機に晒されながらも、愛の力で登り切る。二人は砂漠を脱する手段を失いながらも雲沛軍を討ち倒し、馬を奪い逃走を図る。しかし那戦らも洞窟から這い出し、執念深く追跡を続けた。
やがて若問と那戦は宿命の対決を迎える。若問は兄弟を奪った仇敵に憤怒をぶつけるが、多勢に押され重傷を負う。格心薇は若問を救うため自ら跪き、那戦の臣下となる屈辱を受け入れる。だが那戦は約束を破り、若問を冷酷に射殺。最期の瞬間、若問は格心薇の懐に身を寄せ、彼女が自分の子を宿していることを知って安らかに息を引き取る。
愛する人を失った格心薇の慟哭は砂漠に響き渡り、残酷な運命を呪う。那戦はそんな彼女を容赦なく雲沛へ連れ帰り、城門に吊るして晒し者とする。第25話は、愛と犠牲、裏切りと残虐が交錯する衝撃の悲劇回であり、大漠奇巻の物語に深い哀切と決定的な転機を刻む。
第26話(最終回)あらすじ
広大な砂漠を駆け抜ける霍擎雲と皇北霜。二人の前に立ちはだかったのは、呉将軍率いる重兵の包囲網だった。霍擎雲は身を挺して皇北霜を守り、戦いながら敵を砂丘へと誘導する。熾烈な死闘の末、彼は自らの体を犠牲にして呉将軍を討ち取るが、その勝利の刹那、突如現れた流砂に飲み込まれ、姿を消してしまった。愛する者を失った皇北霜は、竹笛に託した哀切な旋律を奏で、空に響かせるのだった。
霍擎雲の死は霍言齊を深い悲しみに沈める。だが遺書に記された霍擎雲の出生の秘密と、皇北霜への深い想いは彼女の心を強く揺さぶった。一方、雲沛の那戦は勝利に酔いしれつつも、皇北霜を最大の脅威と見なし、格心薇を囮に新たな罠を張る。霍言齊は復讐を誓うが、皇北霜は無辜の民を守るため開戦を止め、みずから雲沛に赴く決意を固める。
鳳凰のごとく華やかに装った皇北霜が雲沛の大広間に姿を現すと、那戦と筑大人は驚愕した。皇北霜は誠意を示し、大漠統一への協力を申し出るが、その真意は格心薇を救い出すことにあった。だが那戦は約束を翻し、二人のどちらかを必ず死なせると告げる。姉妹は若問の思い出と刀を前に互いを思いやり合うが、隙を突いた反撃で格心薇が命を落とす。最期に彼女は「若問と出会えたことに悔いはない」と微笑み、皇北霜に別れを告げた。
その頃、沙曲が密かに仕組んだ逆転の策が動き出す。呉将軍の中に潜ませた内応と、霍擎雲に扮した偽装が那戦を追い詰めた。動揺した那戦は血を吐き、沙曲が本物の詔書を読み上げると、ついに命尽きた。大漠は新たな秩序を迎え、沙曲は各部族にオアシスを返還すると宣言。民に安寧が訪れる。
全てが終わった後、皇北霜は沙曲の腰に下げられた装飾品に目を留める。それは霍擎雲のものだった。驚きと歓喜の中、二人は抱き合い、永遠の愛を確かめ合う。霍擎雲は流砂の下に広がる無数の穴を通り抜け、運命に導かれるように彼女のもとへ戻ってきたのだった。
やがて格心薇も若安と名付けられた子を出産し、失われた命の灯を未来へと繋げる。砂漠を越えて歩み続ける皇北霜と霍擎雲。その姿は、大漠に刻まれた「愛と誓い」の永遠の証となった。
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