千輪桃花〜永遠に咲き誇る愛〜 2024年 全40話 原題:千朵桃花一世开
第37話あらすじ
天命は暮懸鈴の手から「情脈」を自身へと移した代償に、耐えがたい激痛に苛まれていた。かつて颢天が言った「情脈を得た者は颢天のみに忠誠を尽くす」という言葉が、脳裏で響く。立つこともままならぬ天命を支えた封遥は、静かに問う――玄信が弟であることを、いつから知っていたのかと。天命は苦く笑い、「早すぎも遅すぎもない、全ては運命のままに」と答えた。封遥は弟が生きていることに安堵しながらも、もはや姉弟の絆は過去のものだと悟る。玄信は天下を思う正道の人、だが自分はこの世の穢れに深く染まった身。再び会えたとしても、どう向き合えばいいのか――封遥は迷いを吐露し、天命に約束を求めた。「擁雪城に来た以上、どんなことがあっても玄信を傷つけないで」と。
一方、傅滄漓は黒木印を天命に託し、阿宝を戦いに巻き込まぬよう命じる。天命は「魔尊を倒さねば、すべてが滅ぶ」と言い、決意を固める。
その頃、暮懸鈴は観心法印を握りしめ、宴桐が語った言葉を反芻していた――「魔尊の中には玉闕の気が宿り、謝雪臣がいずれ目覚める」。真相を確かめるべく、暮懸鈴は酒壺を手に魔尊のもとを訪れる。挑発的に言葉を交わす二人。魔尊は冷徹に「最も楽しいのは人を殺すことだ」と言い放つが、暮懸鈴は一歩も引かず、「死ぬなら苦しまぬ方がいい」と返す。その挑発に魔尊は怒り、彼女の首を掴み「混沌を望むなら、他のすべてを捨てろ」と告げた。
その瞬間、魔尊は暮懸鈴の体に刻まれた観心法印に気づく。「俺の心を見たいなら、見るがいい」と挑発する。暮懸鈴はその隙に彼の傷跡を覗き見るが、魔尊は冷たく拒絶した。「憐れむな。その傷は熔淵の時に得たものだ」と。しかし、暮懸鈴は腕の傷を指し「これは阿珠が残したもの」と断言。動揺した魔尊は激しく否定し、彼女に立ち去るよう命じた。直後、宴桐が倒れ、魔尊が拘束される。天命が駆けつけ、痴影に黒木印の剣で魔尊を討てと命じるが、暮懸鈴は咄嗟に魔尊を庇った。天命はまたも計画の破綻を悟り、封遥に「心配するな、手はある」と低く答える。
やがて、目覚めた暮懸鈴は魔尊が懸鈴花を見つめている姿を見つける。彼女は自らと謝雪臣の過去を語るが、魔尊は興味を示さない。暮懸鈴は切り替え、取引を持ちかける――「私はあなたに味方し、混沌の力をすべて捧げる。その代わり、高秋旻たちを解放し、共に棲鳳林へ行って長生蓮を採り、均天剣を取り戻すのです」。魔尊は承諾。彼にとって価値あるものは力のみだった。
二人は棲鳳林へ向かい、幻境の試練に直面する。暮懸鈴は以前の経験から素早く抜け出すが、魔尊は幻の阿珠に出会う。偽りと知りながらも、心を乱さず幻を斬り捨てた。再び合流した二人は、長生蓮の地へ進む。
その胸中には、混沌の力と長生の謎――そして、それぞれの決別の覚悟が静かに燃えていた。
第38話あらすじ
棲鳳林を後にした暮懸鈴の心には、ふとした悪戯心が芽生えていた。隣を歩く魔尊をからかおうと、彼女は目を輝かせる。伝説の「浄化の水」に魔尊を落とし、彼の魔障を少しでも清めたい――そんな密かな思惑を胸に、暮懸鈴はそっと彼を押そうとする。しかし、魔尊はすべてを見抜いていた。「その冗談、いつまで続けるつもりだ」と冷ややかに言い放つ。軽口の応酬の中、暮懸鈴は自分の手首からブレスレットが消えていることに気づき、慌てて探し始めた。だが心の奥底では、魔尊に水へ触れさせたいという願いを捨てきれずにいた。
その時、突如として現れた風襄尊者が二人の前に立ちはだかる。彼女の鋭い視線が暮懸鈴の手に握られた長生蓮を捉えるや否や、容赦のない攻撃を繰り出した。暮懸鈴が身構える間もなく、魔尊が閃光のように動き、彼女を抱き寄せて危機を退ける。風襄は冷然と告げる。「暗域の者が、よくもここまで来たものだ」。彼女が魔尊の身に渦巻く魔気を指摘すると、魔尊の瞳が鋭く光り、即座に反撃に転じた。暮懸鈴は必死に間に入り、二人の激突を止めようとするが、魔尊が腕を振るった瞬間、空は暗雲に覆われ、昼が闇へと変わった。そこに現れたのは潜光――風襄の宿命の相手であった。
暮懸鈴はその光景を見て、まるで輪鏡上神が仕組んだ罠のようだと悟る。魔尊は冷然と言い放つ。「神など知るものか。俺は神すら屠った。運命を書き換えることなど造作もない」と。そして彼は、かつて潜光に命を代償とする取引を持ちかけたのは、風襄と彼を再び会わせるためだったと明かした。暮懸鈴の胸には、言葉にできぬ痛みが走る。魔尊はその代償の重さを理解しつつも、「俺を理想化するな」とだけ残し、立ち去ろうとした。暮懸鈴はそれを追い、共に行くと告げた。
一方、風襄と潜光は静かに対峙していた。風襄は悟る――自らの破局突破は、潜光の命を犠牲にしたものだった。涙に霞む視界の中、彼女はその贈り物を拒み、首を振った。しかし潜光は穏やかに微笑み、「六千年の間、君の一日輪廻を毎日見つめてきた」と語る。その想いは深く、海のように静かだった。彼は風襄の記憶から自らを消す決意を固め、術を唱える。風襄は眠りにつき、潜光は光となって空へと消えていった。
夜が明けると、風襄は目を覚ました。昨日の記憶は失われ、潜光の名を聞いても、ただ茫然と首を振るだけだった。彼女は「この地を離れ、外の世界を見たい」と語り、静かに去っていく。その背を見送る暮懸鈴に、魔尊は言う。「彼女が本当に忘れたのか、それは彼女だけが知っている」。風襄は一人、歩きながら確信していた――潜光の力では、彼女の望みなしに記憶を消すことなどできない。痛みを抱えたまま、それでも記憶を手放さないと心に誓う。
第39話あらすじ
怒号と共に魔尊の力が奔騰し、天地を揺るがす咆哮が響いた。彼の手から放たれた九日の力が玉闕を覆う禁制を次々と破壊し、封印の陣は粉々に砕け散る。天命は愕然とした――魔尊が長年抑え込んできた力をこの一瞬に凝縮させ、すべてを突破したのだ。魔尊は高らかに笑い放つ。「熔淵も、玉闕も、天命の殺陣も、俺を縛ることなどできぬ!」その言葉は天界をも震わせた。天命は天命書を握りしめ、混乱の中で新たな攻撃を仕掛けようとするが、魔尊は逆にその書の内部へ踏み込み、万物の理を司る典籍を破壊しようとする。だが、書の深奥で目にしたのは、万年前の昭明と阿珠の愛――決して裏切らぬ絆の記憶だった。胸を衝かれた魔尊は剣を握りながらも心揺れ、複雑な面持ちで書を離れる。
均天剣を手にしようとする魔尊だが、その剣は意思を持つかのように拒み続ける。魔尊は冷笑し、「ならば奪い取るまで」と力ずくで剣を掴み、激烈な一閃で天命の殺陣を粉砕した。すべてを破り去った彼は暮懸鈴を伴い去り、呆然と立ち尽くす天命のもとに颢天が降臨する。颢天は怒りに燃え、天命が命令に背いたことを叱責。「我に従うか、ここで消えるか」と冷酷に迫り、力で彼を支配した。絶望の淵で天命は座り込み、封遥が駆けつける。彼女は颢天の脅威を恐れず、「天命を連れ戻す」と誓った。
颢天は冷笑し、反逆者への裁きを下そうと攻撃を放つ。だが封遥は毅然として立ちはだかり、天命はその姿に心を動かされ、ついに反撃。自らを犠牲にしてでも颢天を止める覚悟を見せ、「駒である俺にも、主を壊す力はある」と神窍を砕こうとする。慌てた颢天は情脈を解除し、天命を制止。嘲るように天命が「お前でも慌てるのだな」と言うと、颢天は憤然と姿を消した。瀕死の封遥を抱き締め、天命は初めて素直な想いを吐露する。封遥は微笑み、「私が愛したのは、あの雨の日のあなた」と告げ、彼の腕の中で静かに息を引き取った。
一方、魔尊は暗域に戻り、阿珠との婚約書を手に苦悩する。憎しみに囚われた己を悔い、幻影として現れた阿珠の声に耳を傾ける。「聖君でも堕神でも、全ては汝の心が選ぶ道」。その言葉に魔尊の心は静まり、ついに真の自我を取り戻した。
天命は封遥を葬り、そこへ玄信が現れる。封遥が自分の姉だったといつ知ったのかを問う天命に、玄信は「血の予感で気づいていた」と語る。二人が語らう中、颢天が再び現れ、世界の滅亡を告げる。
人間界では颢天が襲来し、街が炎に包まれる。玄信は仙盟を率いて民を守り、高秋旻と傅瀾生が空船で救援に駆けつける。昭明は欲影と痴影を天命捜索へ送り、ついに再会。彼らは颢天の力そのものを利用して彼を滅ぼす策を立てる。だが、その計画を聞いた暮懸鈴は、自らも加わると強く主張。輪鏡上神から時空の鏡を取り戻し、万年前の颢天と今の颢天を同じ時に引き合わせ、互いに滅ぼし合わせる――運命を塗り替える最終計画が、今、動き始めた。
第40話(最終回)あらすじ
時空の鏡の神秘が再び輝きを放ち、暮懸鈴は万年前と現在を結ぶ橋を開いた。天命、昭明、そして彼女――三人はそれぞれ過去の自分と対面し、颢天に対抗する最後の計画を告げる。万年前の昭明、阿珠、天命は未来を信じ、ためらうことなく協力を約束した。二つの時空が繋がれ、昭明は万年前も現在も颢天に忠誠を誓うふりをして、彼を罠へと誘い込む。ついに二人の颢天が同じ時空に相まみえ、天地が震えるほどの異変が起きた。策略を見抜いた颢天は冷笑し、「この世に我を縛る理などない」と嘯くと、二人の昭明の心に囁きを放つ。孤独と絶望を突きつけ、阿珠や暮懸鈴への愛を疑わせ、彼らの心を闇に沈めようとした。昭明の心は揺らぎ、世界の理そのものが崩壊しかける。
計画の猶予は線香一本分――暮懸鈴と天命は焦燥の中で時を繋ぎ止めようとするが、颢天の干渉により時間は無情に流れ落ちる。暮懸鈴は自らの混沌の力を全て天命に託そうとするが、天命は「お前に傷を負わせたくない」と拒み、自らを犠牲にして彼女を守ろうとする。二人の想いが交差する中、暮懸鈴は昭明を救うため阿珠と共に過去と現在の時空を駆け抜ける。二人の女性は愛と信念で昭明の心を呼び覚まそうとし、ついに命を懸けて混沌の力を注ぎ込んだ。
閃光が奔り、昭明は正気を取り戻す。その瞬間、二人の颢天は剣を交え、時空を裂く激闘が始まった。世界を揺るがす衝突の果て、二人の颢天は昭明の剣に倒れ、長き戦いは終息へと向かう。万年前の昭明は再び己の定めへと帰還し、阿珠と再会。阿珠は「たとえ妖后と呼ばれようと、あなたと共に歩む」と誓うが、昭明は天下のために愛を断ち、再び均天剣を手に天を討つ道を選ぶ。
天命との再会の場で、昭明は穏やかな笑みを浮かべ、「颢天が滅んだ後、お前は何を思う」と問いかける。天命は「因果はすでに定められている」と応じ、昭明は後悔なく剣を受けた。かくして昭明は再び熔淵の底に封印され、阿珠は涙を流しながらも天命との対抗を放棄する。
阿珠は時空の鏡を輪鏡上神に託し、人間界へ降りる決意をした。「天命、これからはあなたの人生を生きて」と微笑み残し、彼のもとを去る。天命は静かに天命書を破棄し、運命の鎖を断ち切った。
やがて目を覚ました暮懸鈴は、足首の鎖霊環に触れながら、懸鈴の木の下に立つ一人の男の姿を見る。魔功で花を咲かせたその人に、彼女は息を呑む――謝雪臣。名を呼ぼうとした瞬間、男は微笑み、彼女の名を口にした。溢れる涙、再びめぐり逢った最愛の人。暮懸鈴は笑みを浮かべ、二人は強く抱き合う。長き戦いの果て、ついに運命は静かに輪を閉じたのだった。
千輪桃花〜永遠に咲き誇る愛〜 全話あらすじ キャスト・相関図
















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