子夜帰(しやき) 2025年 全38話 原題:子夜归
第31話あらすじ
夜明けとともに、武祯は静かに梅府を去った。馬車が動き出すと、集まった人々の視線が一斉に注がれ、噂と好奇のざわめきが広がる。梅逐雨はその背中を見送ることしかできず、胸に押し寄せる喪失感をどうすることもできなかった。
一方、国公府では、国公爷が娘の帰宅を喜ぶも、運び込まれる大量の荷物と和离書を目にし、怒りを露わにする。同じ頃、「柳太真」の姿をした梅四が梅府に現れたことで、世間はさらに騒然となる。武祯が去った直後に柳太真と親しげにしているという誤解が広まり、噂は瞬く間に尾ひれをつけていった。梅四は梅逐雨にすがりつき、身体が入れ替わったまま戻れない事情を打ち明ける。妖市へ行かねばならないが、妖たちを前にどう振る舞えばよいのか分からず、途方に暮れていた。
この騒動を聞きつけた国公爷と柳老爷は、怒りと困惑を胸に梅府へ乗り込む。目の前で親密そうに振る舞う二人を見て、柳老爷は衝撃のあまり気を失ってしまう。梅逐雨は必死に誤解を解こうとするが、柳老爷は娘の言動に違和感を覚え、偽物ではないかと疑念を抱く。
夜、武祯は梅四を連れて妖市へ向かい、身体を元に戻す方法を探す。梅四は初めて目にする妖市の光景に興味津々だが、武祯は突然倒れてしまう。駆け寄った无字书の診断により、武祯の身体は妖疮に侵され、もはや限界が近いことが判明する。
翌日、梅四は再び梅府を訪れるが、門は固く閉ざされていた。やむなく塀を越えようとしたところ、家僕の上に落下する騒ぎとなり、その場で武祯の重体を梅逐雨に伝える。知らせを聞いた梅逐雨は顔色を変え、迷いなく妖市へと駆け出す。
その頃、武祯は斛珠や柳太真の前で冗談めかしながらも、どこか覚悟を秘めた様子を見せていた。柳太真の身体に入った梅四を見て、かえって愛嬌が増したと笑うが、その裏には迫る別れの気配が漂う。梅逐雨は如意楼で武祯を見つけ、傷の具合を確かめようとするが、彼女は冷ややかな視線を向け、背を向けて去ってしまう。その態度は、二人の距離がいまだ埋まらないことを突きつけていた。
一方、柳太真は画館で、学子たちから梅四が嘲笑されている場面に遭遇する。かつて自分が拒んだことが原因だと知り、強い後悔を覚えた彼女は、心から梅四に謝罪する。その瞬間、人形が激しく震え、二人の身体は元に戻った。柳太真は、武祯の言葉を思い出し、この人形が“想いが通じた時”に反応するものだと悟る。自分が梅四に惹かれている事実に気づき、彼女は動揺のままその場を去る。
その頃、凌霄は突然現れた金光に縛られ、何者かに連れ去られてしまう。武祯のもとに届いた紙条には「凌霄を助けたくば来い」とだけ記されていた。急ぎ向かった先で待っていたのは、意外にも梅逐雨だった。彼は凌霄を人質に、ただ一度、食事の時間だけでいいから話をしたいと願う。柳太真は二人を残し、静かに席を外す。
梅逐雨は語る。自分がこの人の世に踏み入った理由、その始まりはすべて武祯だった。彼女が自分を避ける理由、そして隠している真実とは何なのか――。切実な問いを胸に、彼は彼女と向き合おうとしていた。
第32話あらすじ
梅逐雨は武祯との復縁を強く願い、彼女が何か重大な秘密を抱えていることを察する。しかし武祯は口を閉ざしたままで、真実を明かそうとしない。追い詰められた梅逐雨は、やむなく凌霄の命を引き合いに出し、武祯に真相を語らせる。武祯はついに、自分が「全妖」になる決意を固めており、そのためには百年もの閉関修行が必要だと打ち明ける。それは人としての生を捨て、梅逐雨と永遠に隔たれることを意味していた。梅逐雨は深く打ちのめされ、自分こそが彼女をここまで追い詰めたのだと自責の念に駆られる。
武祯はそのまま妖市へ向かうが、妖疮はすでに全身に広がり、容体は危険な状態だった。無字书は彼女を救うため、強引に妖丹を融合させようとするが、武祯は抵抗する術もなく苦しむ。一方、梅逐雨は武祯の身体が全妖化に耐えられないことを思い出し、凌霄を連れて急ぎ妖市へ向かう。柳太真もまた妖市に満ちる異様な煞気を察知し、武祯の体内で煞気が暴走し始めていることに気づく。梅逐雨と柳太真は無字书を制止し、結果的にその処置が煞気を抑える助けになっていたことが判明する。
激痛に耐えきれなくなった武祯は小猫の姿に変じ、人間界へと逃げ出してしまう。梅逐雨は必死に追いかけるが、柳太真は、煞気が制御不能になった場合は武祯を討たねばならないと厳しい現実を告げる。夜通し探し続けた末、梅逐雨は自宅で小猫の武祯を見つける。これまで幾度も出会ってきた小猫こそ彼女だったと悟り、深く詫びたうえで、煞气を鎮める茶を施す。
翌朝、目覚めた武祯は記憶を失っており、梅逐雨のことも分からなかった。彼女は自分を県主だと知らず、ただ「梅逐雨の妻」だと思い込んで無邪気に振る舞う。梅逐雨は柳太真や梅四とともに記憶回復の策を練るが、武祯は屈託なく日常を楽しむばかりだった。その夜、無字书が武祯を連れ去ろうと忍び込むが、梅逐雨に阻まれ、激しく対峙する。武祯は無字书を覚えておらず、十八年の想いを否定された無字书は怒りを露わにする。
翌日、梅逐雨は武祯を連れて祝馀仙草を探す旅に出る。一方、妖市では再び不穏な動きが起こり始め、無字书の憎しみもまた静かに膨れ上がっていく。郊外の廃屋で一夜を過ごそうとした二人の前で、突如として不気味な異変が起こり、新たな波乱の兆しが忍び寄るのだった。
第33話あらすじ
梅逐雨と武祯は、祝馀仙草を求めて旅を続ける途中、荒れ果てた古い屋敷で一夜を明かすことになる。夜更け、室内に置かれた掃把が不気味に震え出し、緊張が走るが、実は梅逐雨が火に近づきすぎ、妖の姿が反応しただけだった。梅逐雨はその掃把に祝馀仙草の行方を尋ねるが、手がかりは得られない。
翌日、二人は道中で不思議な老婆と出会う。老婆は祝馀仙草の名を知っており、村の端に住む郎中なら詳しい話が聞けると教えてくれる。しかし振り返ると老婆の姿は忽然と消えており、二人は不安を抱えながら郎中の家を訪ねる。そこには仙草を求める人々が集まり、奇妙な空気が漂っていた。
郎中は若者や老人を順に診察し、祝馀仙草を与えて送り出すが、皆どこか不自然なほど満足げである。違和感を覚えた武祯が診察を受ける番になるが、室内を覗いた瞬間、帘の向こうにいたはずの老婆が草の塊であること、そして逃げ道が完全に塞がれていることに気づく。一方梅逐雨は、この場を操る真の黒幕が別にいると見抜き、仙草と引き換えに「代価」を奪う残酷な真実を知る。
武祯を救うため、梅逐雨は条件を受け入れ、屋敷の中へ踏み込む。そこには迷魂陣が張られ、村人も建物も幻に過ぎなかった。正体を現した祝馀仙草の妖は、かつて人を救う医者でありながら、裏切りと誤解によって怨念に囚われていた過去を語る。梅逐雨が天師であること、そして武祯が前任の猫公と深い因縁を持つ存在であることを知り、仙草妖は真実に気づく。
妖気に耐えきれず倒れた武祯を前に、祝馀仙草は彼女が避けられぬ妖劫にあると悟り、自らの原身を差し出す決意を固める。それは、わずかでも彼女を救う可能性に賭けた、最後の選択だった。
一方妖市では、梅四が柳太真を湖畔へ案内し、新たに覚えた法術を披露する。萤火虫が舞い上がる幻想的な光景に、柳太真の心は静かに揺れる。だが背後では玄虺が力を隠しており、柳太真はその怠慢を厳しく指摘する。彼女が放った圧倒的な術によって無数の萤火虫が夜空を覆い、三人の関係にも微妙な変化が生まれ始めていた。
第34話あらすじ
梅四と柳太真が夜通し戻らぬまま京城へ差しかかったところ、黄左領に呼び止められる。黄左領は梅四の馬車に不審な物が隠されていると疑い、強引に検分しようとするが、柳太真は即座に法術で姿を消す。目の前で起きた異変に黄左領は誤解を悟り、その場を引き下がるのだった。
その後、玄虺は柳太真に、自身が数日後に去るつもりであることを打ち明け、別れの前に「見せたいものがある」と告げる。夜、玄虺は梅四の部屋に忍び込み、机の上に並べられた生の鶏の心臓と血を目にする。それは梅四が「妖になれる」という誤った噂を信じ、柳太真と長く共に生きるために自ら妖化を試みていた証だった。唯一の親友である梅四を案じる玄虺は、柳太真に彼を大切にしてほしいと頼む。部屋に飾られた自分の肖像画の数々を前に、柳太真の胸には複雑な思いが去来する。
一方、妖市では無字書が偶然、灰長老の姿を見つける。密会の中で灰長老は、妖市を去り梅逐雨に対抗するため力を貸してほしいと持ちかけるが、無字書は真意を疑う。すると灰長老は、長安がかつて邪煞诡婴によって築かれ、妖が地下へ追いやられた真実を明かし、诡婴を救い出し妖市の栄光を取り戻す野望を語る。
梅逐雨は記憶を失った武祯を連れ、常曦宮へ向かう。寡黙な五師兄や怯える連甫との再会を経て、武祯が敵ではないことを皆で伝える。猫公としての記憶も妖力も失った武祯だが、師兄が残した法陣に遭遇した際、常曦锏が反応し、彼女自身が無意識にそれを操って難を逃れる。その出来事に武祯は無邪気に誇らしさを見せる。
その夜、無字書は夢の中で邪煞诡婴の過去の戦場を目撃し、そこで謎の法器が現れ、そして消えたことを知る。目覚めた無字書は、その行方に強い疑念を抱く。
翌日、二師兄は武祯を連れ出し、梅逐雨に常曦閣の鍵を託す。治療の手がかりを求め、梅逐雨と師兄たちは文書を探すが成果は得られない。そんな中、武祯は鍛錬する武人たちを興味深そうに眺め、その無邪気な視線に梅逐雨は思わず嫉妬を覚える。
一方、梅四は柳太真の態度の変化に心を痛め、彼女が玉真坊にいると知るや否や駆け出す。逃げようとする柳太真を、梅四は正面から引き止め、二人はついに向き合うことになる。
子夜帰(しやき) 35話・36話・37話・38話(最終回) あらすじ
















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