折腰 2023年 全36話 原題:折腰/[ヨミ]セツヨウ
第1話あらすじ
魏劭(ぎ・しょう)率いる魏軍の鉄騎が大地を揺るがし、辺州城へと迫る。魏劭の進軍は、辺州と隣接する焉州(えんしゅう)にとっても他人事ではなく、まさに「唇亡びて歯寒し」の状況であった。喬家の次女・**小喬(しょうきょう)**は、魏劭が単なる征服ではなく、深い私怨を抱いて戦に臨んでいることを察し、祖父・喬圭(きょうけい)に過去の因縁を問いただす。
喬圭は重い口を開き、すべての始まりを語り出す。かつて彼が焉州牧に就任したばかりの頃、乱世を生き抜くために各勢力を結束させようと「鹿骊大会」を開いた。そこで魏劭の祖父と意気投合し、両家は同盟を結ぶ。魏国は水利技術で焉州を支え、焉州は兵力で魏国を守るという、互恵関係が築かれた。
しかし、その均衡は辺州の李肃(り・しゅく)の野心によって崩される。李肃は魏国に侵攻し、辛都を陥落させ、城内では虐殺が行われた。援軍要請を受けた喬圭は苦悩するが、出兵すれば焉州も壊滅しかねないとの判断から、出兵を断念する。その決断は、魏家にとって「裏切り」となった。
辛都では、魏劭の兄が彼を箱に隠し、最期に「喬家を信じるな」と言い残して命を落とす。魏劭は箱の隙間から父と兄が殺される光景を目撃し、さらに李肃が男丁皆殺しを命じる声を聞く。その瞬間、彼の心に消えることのない憎しみが刻み込まれた。
一方、喬圭もまた苦渋の決断を悔い続けていた。彼は魏家との和解を望み、魏侯夫人・徐夫人に書を送り、政略結婚による雪解けを提案する。徐夫人はこれを受け入れるが、小喬は理解していた――魏劭がこの縁談を、恨みを抱えたまま受け止めるだろうことを。
その頃、喬家では長女・大喬が無邪気に過ごしていたが、小喬は危機感を募らせていた。大喬の想い人が馬夫の**比彘(ひち)**であることを知る小喬は、姉が政略結婚の犠牲になる未来を恐れる。そんな中、良崖の世子・劉琰と叔父・劉扇が小喬への縁談を持ち込むが、その態度は傲慢で、目的は保身と財であった。
一方、魏劭は辺州城を包囲し、心理戦での制圧を狙う。軍師・公孫羊から「喬家の娘との婚約」が伝えられると、魏劭は激怒し、即時攻城を決断。激戦の末、魏軍は勝利し、李肃を捕らえる。魏劭は復讐の怒りに駆られ、李肃を惨殺してしまい、公孫羊はその苛烈さに危機感を抱く。
焉州では、小喬が大喬の幸せを守るため、自らが魏劭に嫁ぐ決断を下す。彼女は大喬を比彘と共に逃がし、代わりに自分が政略の矢面に立つ道を選んだ。喬家は最終的にその決断を受け入れ、小喬は焉州の要衝・**磐邑(ばんゆう)**を嫁資として差し出す覚悟を固める。
魏劭は小喬の到来を聞き、最初は殺意を抱く。しかし「磐邑を兵を使わずに得られる」と知り、彼女を城に入れることを許す。交渉の場では互いに一歩も譲らず緊張が走るが、ふと帘の向こうに立つ小喬の姿を目にした瞬間、魏劭の心にわずかな動揺が走る。
**深い憎しみに覆われた彼の心に、初めて差し込んだ一筋の光――**物語は、ここから本格的に動き始める。
第2話あらすじ
辛都を巡る交渉の場で、軍師・公孫羊は十四年前の惨劇に言及する。数万の無辜の命が失われたこの地に立つ重みはあまりに大きく、喬家側は言葉を失う。当時、焉州が魏国を救わなかった事実は否定できず、その罪は今なお重くのしかかっていた。魏劭は協議を拒み、一方的に磐邑を譲れと通告し、小喬に贈り物まで送る。使者たちは和解の兆しと受け取るが、小喬はそれを露骨な脅迫と見抜く。従わなければ武力で奪う――それが魏劭の本音だと悟った彼女は、彼の「本当に欲しているもの」を探る決意を固める。
小喬は密かに魏劭の過去を調べ、彼が李肃を惨殺し、祈福を禁じ、夜間の接近を極度に嫌う理由を知る。幼い頃、箱に閉じ込められたまま父と兄の死を目撃した記憶が、暗闇への恐怖と苛烈さを生んでいたのだ。辛都では戸籍調査が進められ、百姓たちは「皆殺しにされるのでは」と怯える。彼らは小喬に希望を託し、彼女が魏劭に嫁げば血の気は鎮まると信じていた。
赤衣をまとい橋に立つ小喬は人々の目を惹くが、魏劭はそれを虚飾と嘲る。だが小喬は百姓の声を聞き、彼が求めているのは土地でも勝利でもなく、失われた人心だと確信する。彼女はすぐに行動に移し、街路と井戸を整え、労働者に食を振る舞い、野花で荒れた街に彩りを与える。百姓は自発的に花を運び、城に温もりが戻り始める。
その光景を目にした魏劭は一瞬心を奪われるが、小喬の「婚姻で人心を得られる」という提案を策謀として拒絶する。彼にとって、李肃と同じく人心を操る者は忌むべき存在だった。
やがて百姓が「当街殺人」を訴え出る事件が起こり、事態は緊迫する。県令が魏劭を討とうとするが失敗し、魏劭は処刑を命じる。公孫羊と百姓は必死に制止し、県令が十四年間民を守ってきた人物であると明かす。県令は魏劭を「李肃と同類」と罵り、場は一触即発となる。
その時、小喬が前に出る。彼女はあえて「殺して恐怖で従わせればよい」と進言し、怒りを一身に引き受ける。魏劭は剣を小喬の喉に突きつけ、蛇蝎のごとき女と罵るが、最終的には県令を解放し、為政者としての度量を示す。百姓はこれに心を動かされ、戸籍登録と配給に応じ始める。
人々の怒りは小喬に向かい、彼女は澹台で孤立する。駆けつけた魏劭は彼女の首の傷に目を留め、薬を残して去る。小喬は祈福牌を魏劭に渡し、彼は「永結同心」の文字を前に、わずかな動揺を覚える。
だが現実は厳しい。魏国全土で深刻な食糧不足が判明し、磐邑の穀倉なくして民を養えないことが明らかになる。魏劭は祈福墙を壊し、仇恨を断ち切ると宣言し、辛都再建を誓う。その姿に小喬は彼の内なる善を見出し、磐邑の印信を自ら差し出す決断をする。
しかし、その信頼は踏みにじられる。魏劭は突然態度を翻し、十四年の血の恨みを婚約一紙で消せるはずがないと断罪する。喬圭が祖父を欺いたのと同じだと嘲り、喬家は決して信じないと突き放す。
小喬は悟る――祈福墙で見せた和解の言葉も、優しさも、すべては彼女を試すための仮面だったのだと。
第3話あらすじ
魏劭は小喬の行動を「喬家が仕掛けた陰謀」と断じ、情け容赦なく彼女を辛都から追放するよう命じる。魏梁・魏渠の両将は使者や侍女たちを力ずくで城外へ追い立て、小喬一行は完全に見捨てられる形となる。公孫羊は、すでに喬家が磐邑を差し出している以上、約を破れば天下の信を失うと諫めるが、魏劭は「退いて迫る手口だ」と聞く耳を持たない。彼は一歩でも譲れば、さらに付け込まれると考えていた。
追放された小喬の馬車は、怒りに煽られた百姓に取り囲まれ、石を投げつけられる。使者は「女に家を任せたのが間違いだった」と悔やむが、小喬は決して折れず、磐邑へ向かい徹底抗戦する決意を固める。
城外の林で一行が危機に陥ったその時、劉琰が兵を率いて現れ、窮地を救う。小喬は涙を装い、魏劭に追われる不安を訴えつつ、劉琰と手を組んで磐邑を守る提案をする。劉琰は彼女を「珍宝」と呼び、同行を即断するが、叔父・劉扇は喬家への不信を忘れるなと釘を刺す。
一方、焉州では喬圭や弟・喬慈が小喬の身を案じ、逃亡中の大喬もまた妹を案じて心を痛める。比彘は大喬を伴い、磐邑へ向かう決断を下す。
小喬と劉琰は磐邑に入り、城を掌握する。だがこの報は魏劭の逆鱗に触れ、「私通」と断じて討伐を宣言する。小喬は悪夢にうなされ、魏劭が家族を殺す幻を見て、必ずこの惨劇を止めると誓う。
劉琰は小喬に婚姻を迫り、劉扇は県令・楊奉を使って聘礼を進めようとする。魏劭軍が迫る中、劉扇は百姓を煽って城を守らせる策を提案。城中では「魏劭は屠城に来る」「劉琰こそ良縁」との噂が流れ、小喬はこれが意図的な扇動だと見抜く。
やがて小喬は、硫磺を積んだ荷車を見かけ、嫌な予感を抱く。彼女は楊奉に「百姓を傷つけるなら戦は止めるべき」と告げ、劉琰にも念を押す。しかし真の狙いは別にあった。劉琰は硫磺を使い、永寧渠の堤を破壊して辛都を水没させる計画を立てていたのだ。小喬はその非道に愕然とし、彼が守ろうとするのは自国の民だけで、他国の百姓の命など顧みないと悟る。
小喬の態度の変化に気づいた劉琰は彼女を軟禁し、小桃らも拘束する。実のところ、小喬は磐邑の門を開かせるための道具に過ぎなかった。
魏劭は磐邑を攻めるが、実際は牽制に留めていた。しかし城中の百姓が狂信的に抵抗する様子と、地に残る硫磺の痕跡から、劉琰の計画を察し、李肃以上の残酷さを感じ取る。そこへ城内の穀倉が炎上する。魏劭はこれを好機と見て総攻撃を命じ、劉琰は城を捨てて逃亡する。
城に入った魏劭は小喬を探し回り、小桃と楊奉から、彼女が密かに魏軍を助けていた事実を知らされる。驚きと不安が交錯する中、水缸から這い出た小喬の前に、魏枭が現れる。父兄の仇として弓を引き絞り、矢を放つ――小喬は必死に逃げ出し、物語は緊迫の局面で幕を閉じる。
















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