蜀紅錦~紡がれる夢~ 2024年 全40話 原題:蜀锦人家
29話 あらすじ
酒楼で食事をしながら、季英英は楊夫人に楊家の宗親制度について率直な意見を述べる。
この制度は一見秩序を守るためのものだが、あまりにも古く、今では外から利益を得るよりも、身内同士で搾取し合う仕組みになっていると指摘する。楊夫人は、そんな話をして罰を受けるとは思わないのかと問うが、季英英は「それこそが楊夫人が自分に見せたかった現実だ」と言い切る。
季英英は、宗親会で対立が起きると分かっていながら自分を送り出し、二叔と争う状況を整え、さらに“小繍錦”の件を通じて制度の腐朽を見せたのも、すべて楊夫人の計算だったと見抜いていた。錦繍という娘さえも、その一環だったのではないかと問いかける。
楊夫人がその意図を問うと、季英英は「楊家を立て直すための“刀”として、自分を必要としているのだ」と答える。
楊家を変えるには、まず何が楊家を縛っているのかを理解しなければならない――そう語った矢先、隣室では楊静瀾と宗親たちの会合が始まっていた。
官服を着ていない楊静瀾に対し、二叔は「今日は督査ではなく、ただの甥だ」と圧をかけ、家の帳簿を調べたことを厳しく非難する。楊静瀾は、帳簿調査がどの家規に反したのかと問い返すが、宗親たちは家規を暗唱し、彼を押さえつけようとする。
二叔はさらに、祠堂を開いて兄夫婦に裁きを仰ぐと強硬姿勢を示す。一方その頃、季英英は楊夫人に「宗親そのものより厄介なのは、彼らが振りかざす“家規”という刀だ」と語り、変革には新しい制度を作るしかないと断言する。
楊静瀾は場の空気を変えるため、自分が帳簿を調べた理由を明かす。
それは太子が錦を求めており、楊家との距離をあえて示すことで公正さを証明するためだった。結果として帳簿に不正はなく、楊家の錦の品質も問題ないことが分かったと語る。この説明に宗親たちも一旦は納得する。
そこで楊静瀾は、帳簿は調べられないが「家規は改めるべきだ」と提案する。多数決の原則を持ち出し、反対する二叔を押し切って家規改正が決まる。
季英英は楊夫人に、自分の狙いは楊家の家規だけではなく、錦業全体の規矩を変えることだと明かし、すでに飛花会で新たな仕組みを動かしていると告げる。
やがて季耀庭は新しい錦坊制度を掲示するが、客足はすぐには伸びない。人々は様子を見ており、宗親たちが季英英にどう出るのかを見極めていた。
一方、趙修縁は牛五娘を使って長安の富裕層に働きかけ、趙家の錦が楊家より優れているという印象操作を進める。
季英英は楊静瀾に、亡き楊老爺が描いた彼の肖像画を見せ、「過去は過去として手放し、生きている人を大切にしてほしい」という楊夫人の言葉を伝える。
その後、二人は名馬・踏雪を見に行き、季英英は蜀錦を吐蕃や江南など、広い世界へ売り出したいという夢を語る。それは蜀錦のためであり、同時に自分自身を世に示すためでもあった。
しかし長安では楊家錦の評判が落ち、宗親たちは季英英に圧力をかけ始める。それでも彼女は残った錦を必ず売り切ると宣言し、さらに蜀錦を吐蕃へ輸出する計画を打ち出す。
楊夫人たちは、その大胆な挑戦に期待と不安を抱きながら、彼女に慎重に進むよう忠告するのだった。
30話 あらすじ
季英英は地図を広げ、玉玲珑に吐蕃への行き方を尋ねる。しかし玉玲珑は険しい表情で「熟練の者でも通れない道だ」と告げ、張騫でさえ無理かもしれないと語る。言葉を重ねるうちに感情が高ぶり、玉玲珑は地図の一か所を指して、そこが“奪命山”であり、かつて父を失った場所だと明かす。季英英はそれ以上何も言えず、沈黙する。
そこへ白晟が現れ、吐蕃行きに同行したいと申し出る。商人としての利益が目的だと言いつつも、実はこの困難な道を自分の力で切り開きたいのだと本音を明かし、季英英だからこそ同行したいのだと語る。その言葉に、彼女は一抹の警戒心を抱く。
帰宅した季英英は、白晟の同行について楊静澜に報告する。楊静澜は白晟に裏があると疑い、牛瑾との関係を示す証拠が必要だと考える。二人は顔を近づけて策を相談し合い、冗談混じりのやり取りの中で、楊静澜は「いざという時は“夫君”と呼ぶのが一番の防身術だ」と笑い、和やかな空気のままその場を後にする。
飛花会では、誰が同行するかを拳遊びで決め、桑十四や盛大郎らが選ばれる。颦儿も行きたがるが、母の病を理由に残ることを決意し、桑十四は無事に帰ってから再会しようと約束する。こうして一行は出発の準備を整える。
その頃、玉玲珑は酒楼で、かつて季英英と出会った日のことを思い出していた。荷包を売っていた少女に麺を振る舞い、女性が商いをする苦労を語り合った――その少女こそが季英英だった。思い出に背中を押され、玉玲珑は酒楼を一時閉めて同行を決意する。「店はいつでも再開できるが、知己は得難い」と語り、仲間に加わる。
一行が吐蕃への道を進む一方、益州城では季英英たちがすでに出発したとの報告が趙修缘のもとに届く。さらに、錦州の錦坊が三倍の賃金で織り手を募集している告示が張られ、背後で別の動きが進んでいることが示唆される。白晟もまた、楊静澜が表向きは少人数で動いているものの、裏で手を打っていると見て、部下に軽率な行動を慎むよう命じる。
やがて趙修缘は楊二叔を捕らえ、白晟の言伝として「家主の座を得られれば、望むものは手に入る」と聞かされる。各勢力の思惑が交錯する中、季英英たちはついに奪命山へと辿り着く。玉玲珑は父を失った場所を前に胸を痛め、季耀庭がそっと彼女を慰める。
しかしその先で一行は山賊に襲われ、激しい戦いの最中、盛大郎が泥潭に落ちて命を落としてしまう。仲間の死を前に、季英英は涙に暮れ、これ以上犠牲を出したくないと吐蕃行きを断念し、引き返したいと強く思うのだった。
31話 あらすじ
盛大郎の死を前に、季英英は涙が止まらず崩れ落ちる。楊静澜はそっと寄り添い、彼女を慰める。季英英は、危険や怪我、病に倒れる者が出ることは覚悟していたが、まさか突然命を落とすとは思っていなかったと語り、恐怖から「もう戻ろう」と口にする。これ以上、誰かが犠牲になるのを見たくないのだと訴える。
しかし楊静澜は、ここに至るまでの道は皆が自ら選んだものであり、最初から結末が分かる者などいないと諭す。さらに、彼らが率いる立場として退けば、この商路を信じる者はいなくなると告げる。その言葉を聞き、季英英は涙を拭い、玉玲珑と季耀庭の安否を気にかける。楊静澜は必ず二人を救い出すと約束する。
一方、山賊に捕らえられた玉玲珑と季耀庭は木に縛られていた。玉玲珑は隙を突いて一人の山賊を殺してしまい、仲間の仇を討とうとする者が彼女を殺そうとするが、頭領は今回の目的は金だと制止する。季耀庭は、玉玲珑を殺せば一文も得られないと告げ、麓に見える馬車が高価な楊家錦を積んでいることを示す。これを聞いた頭領は二人を生かし、連れ去ることを決める。
その頃、節帥は牛瑾を家宴に招き、好物の魚でもてなす。節帥は、魚は美味でも急いで食べれば喉に刺さる、と意味深な言葉を投げかけ、触れなければ害のないものも、動かせば傷を負うと諭す。牛瑾はこれを警告だと受け取り、深く胸に刻む。
山中では、季英英が桑十四郎たちに命じて馬車の周囲に罠を掘らせる。白晟はその程度で足りるのかと尋ねるが、季英英は彼が赤虎ただ一人しか連れていないのか確認し、状況に応じて備えを整える。彼らは山洞に身を潜める。
その間に、楊静澜は単身で山賊のもとへ向かい、季耀庭と玉玲珑を救出する。山賊たちは車隊を狙って様子見に二人を向かわせるが、仕掛けられた罠にかかり命を落とす。頭領は罠の存在を悟る。
やがて季英英と白晟は山洞を出るが、二人はわざと用意された穴に落ちる。すると山上に潜んでいた赤虎が部下を率いて現れ、山賊を一掃する。季英英は、赤虎が動くことを最初から読んでいたと明かす。楊静澜と季英英は仲間たちを落ち着かせ、ここで一夜休み、翌日再出発することを決める。
夜、桑十四郎は一人、盛大郎の薬箱を手に涙をこぼす。季英英は慰めに行こうとするが、楊静澜が代わりに向かう。
一方、益州城では楊静澜が残していた者たちが白晟の屋敷に踏み込み、関係者を捕らえ始める。白晟も牛瑾もこの動きを知り、牛瑾は張刺史が関与を避けていることから、節帥が自分たちを見限る可能性を悟る。
白晟は南詔へ戻ろうとするが、楊静澜は彼に「蜀錦の私売」の件で長安へ行くよう迫る。両者は譲らず膠着するが、季英英が間に入り、互いに一歩引く策を提案する。白晟が牛瑾との癒着を認めるなら、より大きな利益を与えると持ちかけるのだ。
最終的に、楊静澜が長安で立ち回り、白晟は季英英と共に吐蕃へ向かうことで合意する。白晟が牛瑾との関係を白状すると、物陰に潜んでいた長安の工部侍郎らが姿を現し、事態は一気に核心へと近づいていく。
32話 あらすじ
牛瑾は腹心の部下二人を呼び出し、三人は生死を共にしてきた仲だと語る。長安での取り締まりが厳しくなり、すべては楊静澜が益州で暗躍し、自分に不利な噂を広めているせいだと恨みを口にする。そして、いずれ追い詰められた時には節帥を裏切り、自分の側につくよう二人に迫る。拒んだ一人はその場で牛瑾に殺され、残る一人には、もし自分が節帥になれば地位を与えると約束する。
一方、季英英、玉玲珑、季耀庭、桑十四郎の四人は吐蕃に到着していた。その頃、楊静澜は白晟が営帳から姿を消したことに気づき、逃走しようとする彼を見つける。白晟は楊静澜の鋭さを認めつつ、取引を持ちかける。牛瑾から与えられた令牌があれば益州城を自由に出入りでき、密輸も可能だと明かし、その令牌を差し出そうとするが、楊静澜はこれは自分を牛瑾の手で殺す罠だと見抜く。
剣を突きつけられた白晟は、逆に自ら刃に身を預け肩に傷を負い、楊静澜に罪を着せる形を作る。南詔の白王が負傷した責任を誰も負いたがらず、結果として楊静澜が疑われ、白晟は混乱に紛れて逃亡する。
その頃、牛瑾は先手を打ち、益州城中に楊静澜の指名手配書を貼らせる。さらに楊家では二叔が再び騒ぎを起こし、楊大郎や宗親たちに圧力をかけ、自ら主事の座に就こうとする。
そこへ季英英が帰還し、大きな箱を二つ開けると、中には吐蕃から持ち帰った宝物が詰まっていた。彼女はこれが受注分の尾金であり、さらに新たな注文も取ってきたと告げる。しかし役人が現れ、二叔は「楊静澜の妻だ」として季英英を捕え、拷問すれば居場所を吐くはずだと主張する。
季英英は毅然と拒み、懐から和離書を取り出す。出発前、危険を案じた楊静澜が書いてくれたもので、今や二人は無関係だと宣言する。二叔はそれなら楊家に入る資格はないと言うが、季英英は「無事に戻ったら主事にする」という楊夫人の言葉を持ち出す。宗親たちもこれに同調し、注文書に署名されているのがすべて季英英の名であることを突きつけられ、二叔は言葉を失う。
屋敷に入った季英英は、床に伏す楊夫人の姿を見て事態を察する。毒に侵されたと聞き、夫人だけが使う物を探させると、印章が出てくる。季英英は「吐蕃の神薬で楊夫人は回復した」という噂を流させ、宗親を集める。
印章を手にした季英英は、重要なことはすでに楊夫人から託されたと宣言する。二叔が疑うと印章を示し、夫人が目覚めた証だと押し切る。反論できなくなった二叔に、季英英は季耀庭を密かに同行させる。
案の定、二叔は趙修縁と密会し、その場を季英英に押さえられる。追及されると、二叔はすべて白晟の指示だったと吐露し、事後には「ある物」を得る約束だったと白状するのだった。
蜀紅錦~紡がれる夢~ 33話・34話・35話・36話 あらすじ
















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