蜀紅錦~紡がれる夢~ 2024年 全40話 原題:蜀锦人家
33話 あらすじ
趙修縁は、自分が趙家の織錦の「花本」を白晟に渡してしまったことを認める。季英英は、趙家の主事であり“趙錦王”とも称される立場の彼が、そこまで重要なものを他人に預けたことを厳しく指摘する。そのうえで、楊二叔・楊聚礼を家法により処罰し、官府へ引き渡す決断を下す。
趙修縁は屋敷に戻り、配下に花本と織工を厳重に守るよう命じる。机の上に置かれた季英英の肖像を見つめながら、「いつからすべてが変わってしまったのか」と独りごちる。さらに、牛五娘が五日間何も食べていないと聞き、身を案じて彼女を訪ねる。牛五娘は、数日後に母の誕辰があり、遠くからでもいいから様子を見たいと願い、趙修縁はそれを受け入れる。彼女は彼が同じく“何も持たない者”だからこそ理解してくれるのだと、胸中で呟く。
一方、季英英と楊夫人は宗親たちを集め、楊聚礼が族譜から除名され、すでに官府に引き渡されたことを正式に告げる。楊夫人は、宗親たちが家規に縛られ操られていた事情を説明し、季英英に自分へ語った言葉を改めて皆の前で話すよう促す。
季英英は、楊家の家規がかつて繁栄をもたらしたのは事実だが、百年以上が経ち、今の時代には合わない部分が多いと指摘する。楊家が再び発展するためには、家規の改正=革新が必要だと訴える。楊夫人は宗親たちに「追及か、革新か」を問い、全員が革新を選ぶ。楊夫人は商い用の印章を季英英に託し、楊家改革を引き継いでほしいと正式に任せる。
その頃、牛五娘は母の誕辰宴が開かれる楼の上に立ち、趙修縁との因縁を語る。彼女は、自分が彼を選んだ理由が「季英英に見込まれた人だから」だったと明かし、季英英には真心の友と家族がいるのに、自分にはなぜそれがないのかと苦悩を吐露する。趙修縁が季英英の人柄を語ると、牛五娘は突然短剣を取り出し、自分自身を刺して楼から身を投げてしまう。
激怒した牛瑾は、牛五娘の命を賭けた策を「愚か」と切り捨てる一方、趙修縁も女に嵌められた愚か者だと嘲る。こうして趙修縁は、牛五娘殺害の嫌疑を着せられ、牛瑾に幽閉される。
季英英のもとに、石榴(ざくろ)と短い言葉が届く。それが楊静澜からの合図だと悟った彼女は、陳三郎たちに山で石榴を摘ませ、さらに颦儿に自分の衣を着せて囮にする。尾行を警戒し、楊静澜の身に危険が及ばぬよう計ったのだ。
季英英は、かつて楊静澜と石榴を摘んだ場所へ向かい、岩に刻まれた文字を見つける。彼が近くにいると確信した彼女は、「私は無事だ」と語りかけ、髪を一筋切って荷包に入れる。
「青絲を約とし、あなたの帰りを待つ。戻ってきたら、私を迎えに来てほしい」――そう誓いを残して立ち去る。後から現れた楊静澜は、その荷包を静かに拾い上げる。
その後、楊大郎は錦州を調べ、益州から行ったはずの織工がいないことを知る。季英英は、錦州は白晟が仕掛けた煙幕にすぎないと見抜き、事態の深刻さを悟る。
彼女は益州城の各錦戸を集め、対策を協議し始める。それは、益州全体の錦業の命運を左右する、大きな局面の始まりだった。
34話 あらすじ
白晟は、南詔の武器と兵士の装束を牛瑾に差し出し、「南詔兵に扮して騒ぎを起こせばよい」と唆す。牛瑾は“自分たちで自分たちを攻める芝居”だと見抜くが、白晟は兵を持たないため、実行は牛瑾次第だと告げる。さらに白晟は、益州に自分の“忘れ物”があると言い、それが益州錦業そのものだと暗に示す。「浣花渓がある限り、また翹楚は生まれる。野火は尽きぬ」――この好機は一度きりだと白晟は言い、牛瑾は提案を受け入れる。ただし騒ぎは大きくしすぎるなと釘を刺され、牛瑾も「ここは自分の益州城だ」と応じる。
一方、楊静澜は季英英から贈られた荷包を手に物思いにふける。高放に「想ってくれる人がいるのは幸せだ」と言われるが、そこへ節帥の配下・薛将軍が現れ、節帥は事情があって会えないと告げる。罪臣の身である以上、避嫌は当然だと楊静澜は理解しつつも、白晟と牛瑾の結託、そして牛瑾の兵権集中が放置されれば大乱になると危惧する。しかし薛将軍は、だからこそ節帥は動けないのだと言い残して去る。
楊静澜はそれでも手をこまねいてはいられないと決意し、益州へ戻る準備を始める。高放には「人質」を探すよう命じ、節帥には自分が身の安全を確保でき次第、必ず戻って罪を請うと伝えてほしいと託す。
その頃、趙修縁と趙老太爺は拘束されていた。趙老太爺は「機会があれば逃げろ。生きることが何より大事だ」と諭し、趙修縁は生きる意味を見失った心境を吐露する。だが老太爺は、彼こそが趙家を再興できる存在だと信じる。まもなく老太爺は連れ去られ、趙修縁は白晟を呼び出す。白晟は欲しいのは趙修縁一人だと認めつつ、老太爺の処遇は牛瑾次第だと言う。さらに「南詔へ行けば季英英にも会える」と囁き、季英英を“狼のように手なずける”様を見せると不穏な言葉を残す。
諸葛鴻から、楊静澜が無事に戻ったこと、しかし趙家の人々が姿を消したことが季英英に伝えられる。張刺史に調査を依頼しようとするが、彼は出立直前、南詔兵に扮した牛瑾の手勢に殺害されてしまう。さらに寧黛が飛花会を襲い、織工たちを連れ去り、陳三郎や颦儿も捕らえられる。盛大郎の名を呼ぶ寧黛に返事はなく、桑十四郎が背負う薬箱を見て盛大郎本人だと誤解し、彼も拉致してしまう。
事態の深刻さを悟った季英英は、白晟がより狂気じみた行動に出る前に、自ら動く決断を下す。白晟と密会し、年老いた者や未成年者の解放と引き換えに、自分が同行することを提案し、白晟はこれを受け入れる。こうして季英英は彼と共に姿を消す。
その裏で、牛瑾は穆節帥を殺害し、自ら節帥の座に就く。従わぬ者は次々と粛清され、益州は完全に牛瑾の支配下に置かれる。
離れた地で、楊静澜と季英英は一つの山河を隔て、互いに向かって夫婦の礼を交わす。楊静澜は薛将軍に長安への報告を託し、自身は南詔へ向かう覚悟を決める。
――季英英を置き去りにはできない。
二人の道は再び交わるため、運命の歯車は大きく回り始める。
35話 あらすじ
白晟と季英英は馬車で南詔へ向かう旅を続けていた。白晟は、ここから益州城まではすでに千キロ以上離れていると告げ、颦儿たちは先に出発して、すでに落ち着いた頃だろうと話す。夜になると一行は野営し、白晟は季英英に南詔王妃の衣を着るよう命じる。もし拒めば、彼女が最も大切にする者を殺すと赤虎に命じるなど、白晟の狂気はますます露わになる。
衣を替えて現れた季英英の姿に、白晟は言葉を失う。しかし季英英は彼を一切相手にせず、黙々と食事を済ませる。白晟の軽薄な言葉にも動じず、彼女は「蘇武牧羊」の故事を引き合いに出し、どれほど屈辱に耐えようとも、必ず祖国へ帰る意志を示す。部屋へ戻ろうとした瞬間、季英英は突然ふらつき、料理に薬が盛られていたことを悟る。白晟に抱きかかえられながらも、彼女は必死に自らを守り、白晟の言葉を冷たい眼差しで見つめ続けた。
翌日、一行は南詔に到着する。王府の門前では寧黛が出迎え、白晟は王妃を休ませているからと声を潜めるよう注意する。王妃の衣をまとった季英英を見て、侍女たちは神女ではないのかと噂するが、寧黛は厳しく叱責する。白晟は季英英を彼女の部屋へ案内し、益州から持ち帰った花草を見せ、早くこの地に馴染んでほしいと語る。だが季英英は、花も人も故郷を離れれば枯れてしまうと静かに答える。
その後、白晟は王兄・晟丰佑と清平宮の杜彦に謁見する。杜彦は白晟の益州行きを咎めるが、白晟は南詔の錦業のためだと主張し、連れてきた職人たちが月に五十反の蜀錦を織れると説明する。ただし水土不服を理由に、最初の一か月は休ませたいと申し出、晟丰佑はこれを認める。話題はやがて“神女”に及び、杜彦は王妃ではないかと皮肉を言い、晟丰佑は季英英を呼び出す。
殿前に立った季英英は、大唐の礼を堂々と示し、外邦の礼は捕虜や裏切り者だけが行うものだと言い放つ。彼女は自らの蜀紅絲を差し出し、南詔の織錦は益州では妃の下着にすぎないと痛烈に批判する。そして、南詔だけの新たな錦――「南詔錦」を作り出す取引を提案し、完成すれば人々を帰国させるよう求める。晟丰佑は一年の期限を条件にこれを承諾し、期限を過ぎれば毎日十人を処刑すると冷酷に言い渡す。白晟の制止も聞かれず、杜彦が監督役に任命される。
杜彦は織房に乗り込み、織錦を強要する。抵抗した者はその場で殺され、季英英は怒りと悲しみに震えながらも、なす術なく見守るしかなかった。さらに杜彦が颦儿たちに手を下そうとした瞬間、季英英と白晟が駆けつけ、彼らは白晟の配下だと主張して事なきを得る。去り際、季英英は仲間たちに「必ず生き延びて」と言い残す。
帰り道、季英英は白晟にこれ以上自分を追い詰めないでほしいと訴える。しかし白晟は聞き入れず、その執着と狂気は、二人の関係をさらに深い闇へと引きずり込んでいくのだった。
36話 あらすじ
季英英は部屋で一人、晟丰佑と交わした「一年で南詔独自の錦を織り上げる」という約束を思い返し、心を乱していた。机に身を預け目を閉じたその時、頬に触れる気配を感じる。目を開けると、そこに立っていたのは楊静澜だった。夢だと思う季英英に、彼は現実だと告げ、二人は涙ながらに抱き合う。楊静澜は彼女を連れて逃げ、後から工匠たちも救い出すと約束するが、季英英はそれを拒む。彼女はすでに南詔王と取引を交わし、自らを犠牲にして皆を守る道を選んでいた。
楊静澜は、いつになったら自分のことを優先してくれるのかと問いかける。季英英は、益州ではすでに牛瑾が節帥となり、仮に脱出しても帰る場所はないと静かに語る。そして、それぞれが得意な道を進もうと決める。自分は錦を織って人々を家へ帰し、楊静澜には「帰る場所」を守ってほしい――そう言い残し、二人は涙の別れを告げる。
楊静澜が去ると、そこに寧黛が現れる。彼女は、季英英を連れ出さなかったことに安堵しつつも、一年後には必ず彼女を連れて南詔を去り、二度と戻らせないよう告げる。寧黛は迷いながらも、白晟を“かつての南詔白王”に戻したいと願っていた。
一方、白晟は季英英に蜀錦に関する多くの書物を持ってくる。益州にもない資料に、彼女は彼の長年の策謀を感じ取る。二人は蚕糸や染色について研究を進め、白晟の母が遺した蜀錦の衣から、糸質こそが違いの原因だと見抜く。さらに白晟は養蚕の地へ彼女を案内し、そこで慕兰と出会う。慕兰は季英英を警戒しつつも、彼女の知識に触れ、やがて毒を解くことになる。目覚めた季英英は、感謝の印として桑の葉の図を描き、白晟に託す。
その後、二人は染色の研究を続けるが、寧黛が白晟の誕生日祝いとして菓子を持参する。白晟は季英英に祝いの言葉と“贈り物”を求め、白布に絵を描かせる。彼女が即席で描いた丸を「寿桃」だと言うと、白晟は満足げに笑う。
しかし白晟は、季英英が危険にさらされているという偽の情報を流し、楊静澜を誘き出す。寧黛の協力もまた罠だった。白晟が楊静澜を殺そうとすると、季英英は自分も一緒に殺すよう迫り、白晟の真情を賭けに出る。白晟は将棋で勝負を提案し、季英英が勝つごとに、楊静澜に用意した十二の刺客を一人ずつ減らす条件を出す。
激しい攻防の末、楊静澜は重傷を負う。追い詰められた季英英は、簪を自らの喉元に突き立て、彼を解放するよう叫ぶ。最終的に白晟は二人を殺さず、織房に閉じ込め、「生きても死んでも二度と会うことは許さない」と言い渡す。
愛と執着、犠牲と狂気が交錯する中で、季英英の選んだ道は、さらに過酷な運命へと続いていく。
蜀紅錦~紡がれる夢~ 37話・38話・39話・40話(最終回) あらすじ
















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