似錦 ~華めく運命~ 2025年 全40話 原題:似锦
第16話あらすじ
第16集「願いの木と善安堂の闇」
陵水へ向かう旅の途中、姜似は姜湛に火起こしを命じ、一行は川沿いを進む。ふとした拍子に盧楚楚が水で足を捻ると、トラウマが残る水場にもかかわらず、姜湛は迷いなく川へ飛び込み楚楚を救い上げた。その成長に皆は胸を熱くする。やがて道中で「願い事が叶う」という伝説の木に出会い、旅の仲間は次々と願い札を結ぶ。余七は姜似の札を「掲げてやる」と言いながら、密かに自分の懐へしまい込んでいた。
一方、甄珩は桑奇を連れ、囚人を追うための策を仕掛ける。だが襲撃者は皆その場で自害し、情報をつかめないまま終わってしまう。空はやがて激しい雨となり、姜似たちは先へ進めず、近くの“善安堂”へ宿を求める。沈心児の母は普段外客を入れぬ方針だったが、雨に濡れた一行の様子に心を動かされ、一晩の宿を許した。姜似は礼として銀銭を渡し、「明朝すぐ発つ」と丁重に告げる。
その夜、眠る姜似の部屋に沈心児が忍び込み、その頬を撫でていく。翌朝、姜似は高熱で倒れ、余七たちは薬草採りに向かう。看病を任された龍旦が急に腹痛を訴えて席を外した隙に、再び沈心児が姜似に触れようとする。しかし目を覚ました姜似は違和感を覚え、もがく拍子に沈心児の喉仏を見て愕然とする。沈心児は女装した男だったのだ――。直後に沈心児の母が現れ、催眠煙で二人を気絶させてしまう。
余七たちが戻ったときには、姜似の姿はどこにもなかった。彼らが役所に駆け込むも、地元の知県はまるで相手にせず、捜査すら拒む。やがて善安堂を監視していた余七たちは、知県が沈心児の母から賄賂を受け取っている場面を目撃し、彼らが結託していると悟る。
同じころ、秦師匠が行方不明の妻・阿栄を探し善安堂に現れる。姜似はその阿栄と同じ牢へ監禁され、阿栄は「何度逃げようとしたが捕まった」と語る。彼女は姜似だけでも逃がそうと身を挺して助けるが、見つかってしまう。それでも彼女は「早く助けを呼べ」と叫び、姜似は一度牢を抜けるも再び捕縛されてしまう。
余七は龍旦に甄珩を呼びに行かせ、自らは単身で姜似救出へ踏み込む。姜似は「今自分が逃げれば、沈心児たちが証拠を消し、さらに多くの女性が犠牲になる」と言い、逃亡を拒む。その覚悟に余七は頷き、二人で形勢を伺う。
やがて沈心児が姜似を迎えに来ると、姜似は「名誉は失われた。連れて行ってくれるなら喜んで行く」と嘘をつき油断させる。そして沈心児の母が隠し持つ“重要な物”の情報を探ろうと質問し、沈心児が部屋を離れた瞬間、余七が飛び込み姜似を救出、沈心児を昏倒させた。
そこに甄珩が到着し、汚職の知県と沈心児の母子を次々と拘束。だが阿栄は逃走の中で命を落としていた。秦師匠は怒りと絶望のあまり犯人たちをその場で殺そうとするが、姜湛たちが必死に制止した。秦師匠は「阿栄が死んだ今、もう未練はない」と姜似に別れを告げ、去っていく。
甄珩は沈んだ表情の姜似に理由を尋ねる。姜似は声を震わせながら答える。「善安堂に連れてこられた女たちは、姑に迫られ、皆絶望していた。自分は……間違っていたのか」と。善安堂で見た闇は、姜似の心に深く刻まれるのだった。
第17話あらすじ
善安堂での一件から戻った姜似の胸中には、深く沈む影が落ちていた。甄珩(しんこう)は、姜似が“自分の責任ではないこと”まで背負い込んでしまっていると気づき、彼の内に広がる痛みを案じていた。一方、余七はいつものように陰ながら姜似を支え続ける。姜似の好物である桜の砂糖漬けを、わざわざ龍旦に買いに走らせるなど、その気遣いは細やかだ。龍旦は「なぜ甄珩を呼んだのか」と不満を零すが、余七は「姜似の役に立てるならそれで良い」と静かに微笑む。甘いものが苦手な甄珩に余七は気遣いを見せるが、彼の胸にも複雑な感情が渦巻いていた。
そんな折、姜似と余七は陵水へ向かう。姜似の姉・朱氏は、夫家の繁栄を願い寺で断食祈願を続けており、すでに三日を過ぎていた。心身が弱っている姉を案じる姜似だったが、姑は“嫁が弱っている姿を他人に見られること”を嫌い、不機嫌なまま一行を急がせる。
祈願を終え山を下りた直後、姉を乗せた馬車が突然暴走。御者は逃げ出し、馬車は断崖へ向かって疾走する。異変を察した余七と謝校尉が命懸けで馬を制御し、辛くも転落を免れた。あまりに不自然な暴走――姜似は明確な“悪意”の気配を感じ取り、真相を追う決意を固める。
しかし姑は、その馬を「狂暴化して使い物にならない」と殺すよう命じる。姜似は証拠隠滅を疑うが、姑は怒りをあらわにし取り合わない。余七と姜似が馬屋を訪れると、問題の御者は「数日前に現れた流民」であり、馬屋の者たちが食中毒になった日、彼だけが無事だったことが判明する。不自然に積み重なる偶然――陰謀の影が濃くなる。
その道中、姜似たちは父を葬るため身売りしたという若い女と遭遇する。三人の男に夫扱いされ困窮する彼女を、姉は不憫に思い救いの手を差し伸べる。姜似は警戒するが、姉の温情を止めることはできなかった。晴児と名乗るその女を迎え入れた後、芝居班を呼び屋敷で慰労の宴を開く姉。だが姜似は、晴児の周囲に漂う不穏さが拭えない。疑念に揺れる姜似へ、余七は「心配するな、全部俺が守る」と穏やかに寄り添うのだった。
第18話あらすじ
朱家の屋敷では、芝居の一件をめぐり、緊張が静かに膨れ上がっていた。姑は長女を呼び出し、「なぜ『釵頭鳳』など不吉な芝居を選んだのだ」と強く叱責する。まるで“意地悪な姑を世間に見せつけるために選んだのか”と言わんばかりの物言いに、長女は震えながら「自分が選んだのではない」と必死に訴えるが、姑は信じようとしない。
一方、芝居班では飛社長と燕娘が激しく対立していた。燕娘は飛社長から渡された口紅でアレルギーを起こし、本来自分が演じるはずだった役を奪われたと訴える。ところが口紅は孟先生が持ち込んだ品で、直前まで机に置かれており、誰でも手に取れた状況だった。そこへ今度は飛老板の靴に細工が見つかり、出演不能に。芝居が中止になれば朱家の面目は丸つぶれ、姉の立場はさらに危うくなる。
混乱の中、姜似は舞台で用いられるベールを手に取り、仮面をつけた“相手役”へ近づく。その男は余七に酷似していた。問い詰める姜似に、余七は「代わりに舞台へ出ることになった」と説明しつつ、「たとえ嘘だったとしても、お前を他人に嫁がせる気はない」と静かに告げる。その一言に、姜似の胸には甘さと不安が同時に揺れた。
その矢先、姉の娘・嫣嫣が行方不明になる。屋敷中が捜索に走る中、謝校尉が気絶した嫣嫣を抱えて戻ってくる。嫣嫣は「誰もいなかった」と言うが、姜似は“誰かに意図的に眠らされた”と直感。姉を陥れる罠が張られていると確信し、急いで姉を探しに向かう。見つけた姉は地面で眠っており、傍には濡れた着替えを取りに来た侍女が男物の靴を発見してしまう。孟先生が姿を見せると、姑と朱子玉は姉を疑い始め、姉は「嫣嫣を探しに来ただけ」と必死に訴えるが耳を貸してもらえない。
さらに飛老板が現れ、「自分と孟先生が密会していたところを姉に隠してもらったのだ」と証言するが、朱子玉は信じず、事態は混迷を極める。やがて気絶していた孟氏も目覚め、「若夫人に呼ばれここへ来た。晴児がそう言った」と主張。だが晴児は自分は舞を踊っていた、と反論する。
この時、余七が“踊っていたのは晴児の双子の姉”を連れて現れた。晴児は姉を庇うため一連の罪をかぶったと言い、場は騒然となる。姜似は姉に「これほど多くの出来事が重なるのは、偶然ではない」と諭す。姉も薄々気づいていたが、認めることが怖かったのだ。
姑はついに姉を呼びつけると、「妹を今すぐ追い出せ。あの女が来てから屋敷に災いばかり」と冷酷に命じる。長女は毅然と立ち向かい、「私は息子を産んでいないが娘は産んだ。七出に該当しない私を離縁するなど不可能」と反論。ついに嫁姑の関係は決裂寸前となり、姑は激昂する。
しかし裏では、姑自身も迷いを抱えていた。息子・朱子玉が問いただすと、姑は「本当に離縁するつもりはない。ただ嫁として威厳を示したいだけだ」と漏らす。
その頃、余七は龍旦に朱子玉を尾行させる。朱子玉は豪奢な衣服をまとった女性と密会していた。明らかに富裕層か貴族階級の令嬢。姜似は悟る――朱子玉はこの女性に取り入り、正妻の座を与えるために“姉を排除しようとしている”のではないかと。
複雑に絡む謀略と疑念。姜似はついに、朱家の奥深くに潜む闇へ踏み込む覚悟を固めるのだった。
第19話あらすじ
姜似は晴児を訪ね、彼に協力を求める。朱子玉はすでに二人を許すつもりはなく、自ら手を下して晴児を殺そうと企んでいた。しかし余七の機転で晴児は救出され、晴児も「やはり当たっていた」と協力の意思を示す。朱子玉は晴児の無事を知ってようやく安心するが、その後も行動は油断できなかった。朱子玉は雨児に手紙を届けるよう命じるが、雨児が外へ出ると姜似たちに阻まれる。晴児は自身の事情を雨児に伝え、姜似への手紙を託す。
姜似は手紙の内容を巧みに改ざんし、相手に会合の提案を行う。雨児が戻ると、朱子玉に「相手が面会を求めている」と報告する。やがて朱子玉はその相手と対面することになるが、そこに現れたのは崔明月だった。崔明月は朱子玉に、「なぜ晴児に手紙を届けさせたのか」と問い詰める。朱子玉は「晴児はもう死んだ。手紙を届けたのは雨児だ。計画が成就すれば、すべてを始末する」と冷酷に告げる。しかし姜似と晴児・雨児はその会話を外で聞いていた。
さらに事態は混迷を極める。孟先生は姜依との噂を流布し、余七は「姦通現場を押さえる」と宣言して人々を集める。朱子玉と崔明月は逃げようとするが、裏口は封鎖され、隠れ場所もない。崔明月は激怒し、「罠にかかった」と叫ぶが、逃走は不可能だった。その瞬間、姜似と姜依が姿を現し、朱子玉を追及する。姜似は崔明月の正体を見抜き、彼女が以前、兄を陥れようとしたが、自身の降格の恨みから姉を害そうとしたと指摘する。余七が投げた石によって、崔明月のベールが剥ぎ取られ、全貌が明らかになる。
騒ぎの中、長公主も現れる。崔明月は「すべて朱子玉に騙された」と訴えるが、朱子玉は「崔明月とは本心で両想い」と強弁し、長公主もそれを認める。姜似は、長公主が娘を甘やかすだけでは、やがて崔明月が自業自得の報いを受けるだろうと警告する。長公主が姜似を捕まえようとした瞬間、余七が現れ、長公主は従者を連れて退散する。
その後、朱子玉は姜依に謝罪し、離婚を請う。しかし姜依はただ離婚を望むのみで、朱子玉の父は家法で罰しようとするも、姜依は子供を連れて去ると決意する。姜似は、朱子玉が貴族の娘に近づくために正妻を害そうとした事実を突きつけ、離婚に同意させる。余七は手下を伴い朱子玉を制圧し、雨児の売身契を渡すよう迫る。朱子玉は渋々契約書を渡し、余七は「姉妹に手を出せば、さらなる報復を行う」と警告する。姜似は雨児に売身契を手渡し、二人は大喜びする。
さらに姜似は飛老板を訪れ、晴児姉妹を託す。飛老板は一枚の絵を姜似に手渡し、そこには彼の母親の姿が描かれていた。飛老板は幼少期に劇団で苛められ、逃げ出した際に姜似の母親に助けられ、彼女のもとで一年を過ごしたことを語る。姜似の母の慈愛が、飛老板を支え、ここまで耐え抜かせたのだという。
姜似たちが屋敷に戻ると、祖母は勝手な行動に不機嫌そうだった。しかし嫣嫣を呼ぶと、祖母は「まあいいさ、子孫には子孫の幸せがある」と微笑み、全ての騒動は一つの結末を迎えるのだった。
第20話あらすじ
姜依は姜似にこれまでの出来事を打ち明け、今はこうなってしまったが後悔はしていないと語った。かつて二人は深く愛し合った時期があったことを思い出させ、姜似はたとえ結果がどうであれ挑戦する価値はあるのではないかと考える。姜依は姜似が余七を意識していることを理解し、姜似もまた余七が同じ気持ちであることを感じ取る。
その頃、姜湛は金吾衛への出頭を果たし、正式に制服を受け取った。道中、店に保護料を要求しに来た者たちが現れたが、姜湛は即座に駆けつけて追い払う。その姿に盧楚楚も、かつての彼とは明らかに異なると感心する。姜湛が帰宅すると、祖母も喜び迎え、姜父は祝宴を催そうと提案。姜湛は余七も招くと宣言し、家族の絆を再確認するかのような宴が準備される。
一方、三女の縁談も話題に上る。叔母は三女を病弱な男に嫁がせることに懸念を示し、肖氏の側は縁談を強行しようとするが、二爺は激怒。肖氏は、正妻の母として自ら縁談を決めるのが当然だと主張し、権威を示そうとする。さらに側近を通じ、祖母の家印を使って縁談成立を画策するなど、権力闘争の様相も垣間見える。
その間、姜似と余七は月見に出かけ、静かなひとときを過ごす。余七は今夜の月が特に大きく美しいと語り、自身の望む生活—素朴で自由な小さな山村での暮らし—を想像する。姜似もかつて同じ夢を抱いたことを告白し、二人は共に未来の生活を描く。余七は姜似の考えに賛同し、「それなら約束だ」と応じる。姜似は余七への想いを詩に込めようと試みるが、なかなか言葉が定まらず、侍女に「気持ちさえ伝われば十分」と言われて思わず微笑む。
家族間では依然として権力や縁談に関する緊張が続くが、姜湛や余七、姜似たちの存在によって、少しずつ秩序と信頼が回復していく。姉妹や家族、そして愛する人々との絆を再確認しながら、各々が新たな生活への第一歩を踏み出す場面で物語は幕を閉じる。未来への希望と穏やかな幸福を予感させる、心温まる結末である。
似錦 ~華めく運命~ 21話・22話・23話・24話・25話 あらすじ

















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