惜花芷~星が照らす道~2024年 全40話原題:惜花芷
目次
第36話あらすじ「蒋徵之、花蓉を利用して顧晏惜暗殺を企てる」
顧晏惜は金陽での混乱が広がる前に、捕らえた関係者を貨物に偽装して皇都へ送り、改めて真相を糾す決意を固める。その裏で、七星楼の重鎮・曾铭が刺客に襲われ、家族を皆殺しにされる悲劇が起きる。曾铭は「帳簿はすでに他人に託した」と告げて抵抗するが、刺客に刺され息絶える。彼が命を賭して守った帳簿の行方をめぐり、事態は急転する。
蒋徵之は曾铭の死を知ると、関係者を抹殺せよとの命を下す。さらに曾铭が花芷に木箱を託していたことが判明し、彼女を事故に見せかけて葬るよう指示する。蒋父は「皓月仙使が皇都に移送されれば蒋家は終わりだ」と警告し、七宿司使の肖像を見せる。その顔が花蓉の知る顧晏惜であると悟った蒋父は、花蓉を利用して顧晏惜を暗殺する計画を立てる。蒋徵之は苦悩しながらも家のため命令に従う。
顧晏惜が皇都へ戻ると聞いた花蓉は見送りを望み、蒋徵之は「贈り物がある」と告げて共に港へ向かう。一方、沈淇と六皇子は街で曾铭の遺体を発見し、花芷に報告。花芷は木箱を壊して帳簿を取り出し、沈淇に託して城外へ逃がすと、自らは顧晏惜を救うため港へ走る。
船上で蒋徵之は顧晏惜に贈り物の箱を渡すが、顧晏惜はその不穏な気配に気づき手を止める。そこへ花芷が駆け込み、危険を叫んだ瞬間、箱が爆発。蒋徵之は吹き飛ばされ、花芷も衝撃で倒れる。水面に沈む顧晏惜を見て、花芷は迷わず川へ飛び込む。
やがて再会した二人は互いの無事を確かめ、花芷は涙ながらに「もう後悔したくない」と抱きつく。顧晏惜は蒋府を急襲し、黄知州と蒋大漕を捕縛。拷問の末、花蓉が乱葬崗に捨てられたと知る。花芷が駆けつけると、花蓉はすでに簪で自害しており、懐には「蒋徵之を愛して幸せだった」と遺書が残されていた。
黄知州と蒋大漕は牢内で口封じに殺され、皓月仙使だけが生き残る。顧晏惜は陳情とともに皓月仙使を陸路で皇都へ護送し、花芷を李猴らに託して水路で守らせる。
涙と血の果てに、真実の炎がいよいよ皇都を焦がし始める──。
第37話あらすじ「花芷を守るため、花家が財産を捧げる」
顧成焘は皓月を召し出し、彼女を「天枢使」に任命して禁宮の天文院に祀り上げる。皓月は「命を懸けて陛下に尽くす」と誓い、顧晏惜の前でも笑みを浮かべ「ただ良い取引をしただけ」と語る。その冷ややかな瞳に、顧晏惜は薄ら寒い予感を抱く。顧成焘は彼に、「旱魃が続く中、皓月に祈雨を命じる。雨が降れば朝廷の威信、降らなければ皓月を殺して民の怒りを鎮める」と告げた。
その頃、花芷は帰宅し、目の前に運び込まれた花蓉の亡骸に崩れ落ちる。悲嘆に暮れる間もなく、天枢使による祈雨の儀が始まるという知らせが届く。花芷は民とともに儀式の場へ向かい、皓月が天に祈る光景を見つめる。雲が渦を巻き、民衆が歓喜して跪く中、ただ一人、花芷だけが立ったまま空を見上げていた。雨は降らず、皓月はその失敗を花芷のせいにして、彼女を宮中に連行させる。
顧成焘の前に引き出された花芷は、「祈雨を妨げた理由は何だ」と詰問される。沈黙を貫く彼女に、帝は「恐れて口を閉ざすのか」と嘲る。だが花芷は毅然と顔を上げ、「陛下は神を信じるほど臆病だ」と返す。顧成焘は笑みを消し、「お前の商売、赎銅法の抜け道、隠し財産――すべて把握している。花家の男は永遠に赦さぬ」と宣告する。その言葉に、花芷の瞳は静かに燃えた。
顧晏惜は殿外で彼女を待ち、沈黙のまま家まで送り届ける。花芷は放心したように帰宅し、金庫を開けては中身をかき乱し、「顧晏惜と出会ったことを後悔している」と泣き叫んで倒れる。その時、聖旨が届き、花芷が全財産を投じて皇都近郊三州の運河を整備することを許すとの詔が下る。顧晏惜は「花家の男は戻らぬ」と夫人たちに告げ、屋敷は深い沈黙に包まれる。
目を覚ました花芷のもとに顧晏惜が薬を携えて現れる。花芷は彼の肩にもたれ、「捧げなければどうなるのか」と呟く。顧晏惜は「君を守る羽になる。共に皇都を離れよう」と告げ、刀を捨てたことを明かす。花芷は微笑み、「もう迷わない」と応える。彼女は「男たちが戻らないなら、北地へ行って家族を迎えたい」と言い、顧晏惜も同行を約束した。
花家では四夫人が集まり、花芷の覚悟を悟る。花芷は家印を取り出し、「財を分け、北地へ逃げよ」と命じるが、三夫人は印を奪い投げ捨て、「この財は皆で築いたもの。花芷一人のものではない」と言い切る。話し合いの末、全員一致で「花芷を守るために財産を捧げる」と決める。
夜更け、帳簿を前に悩む花芷の手を、顧晏惜がそっと握る。「もう一人で背負うな。ずっとそばにいる」と囁く。花家は全財産を投じて運河整備を始め、沈家も、商人たちも支援を申し出る。顧晏惜は凌王府の財産をすべて差し出し、太后の想いをも託す。
「これで、私たちには何も残らないわね」と微笑む花芷に、顧晏惜は懐から玉の腕輪を取り出し、静かに彼女の手首にはめる――それは、過去の別れと再生の証であった。
第38話あらすじ「顧晏惜、命を懸けて宮中へ花芷に会いに行く」
花家では三夫人と念秋が必死に帳簿を突き合わせ、河道修復に必要な資金を算出するが、なお二十万の不足が判明する。各方面から資金を集め尽くし、もはや打つ手がない。そんなとき、喪服姿の花琴が屋敷を訪れた。放蕩の末に夫・孫掌柜を亡くした花琴は未亡人となり、今や孫家の主導権を握っていた。彼女は不足分の二十万を迷いなく差し出し、花家の窮地を救う。こうして花芷と顧晏惜は、顧成焘が定めた期限内に資金を揃え、堂々と慶帝に報告へ赴く。花芷は河道修復の全帳簿を自ら確認する許可と、花家旧宅を仮住まいに使う願いを申し出る。顧成焘は反対せず、彼女が退出した後に顧晏惜も去った。帝は歯噛みしながらも、二人に手出しできなかった。
河道工事が始まると、夫人たちも現場に出て労働を手伝い、花家は再び質素な生活に戻る。だが、家族が無事であることに皆は心から感謝していた。顧晏惜は現場で花芷を支え、彼女が穏やかに笑う姿を見つめる。かつての焦燥と悲しみは消え、今の花芷は一日働いて一日を生きる日々を慈しんでいた。顧晏惜は「河道が完成したら太后に頼んで婚姻を整えよう」と言うが、花芷は笑って「今のあなたは一文無し。私にはせめてこの玉の腕輪があるわ」と返す。
現場には子供たちの姿がなく、花芷は村の子らを集めて識字を教え始めた。やがて大人たちも学びを求め、昼は工事、夜は授業という生活が続く。六皇子も加わり、皆の間に小さな希望が灯る。そんな中、花霊のもとへ鄭知が現れ、「職務を終え、資金も蓄えた。今日はお前を迎えに来た」と告げる。花芷は子供たちの成長に胸を打たれ、「河道が完成したら学堂を建てたい」と語る。
そのころ、皓月は祈雨を続けるも、雲は集まりながら雨は降らない。やがて惠王・顧宴睿が初めて皓月を見て心を奪われ、皓月は夜空を見上げて「明日、雨が降る」と予言する。翌日、本当に雨が降り、慶帝は天枢使・皓月に褒美を与える。だが、顧晏惜が宮中に顔を出すことが減り、食事にも同席しなくなったことで、顧成焘の胸には不満と猜疑が渦巻く。
やがて河道が完成し、工人たちは爆竹を鳴らして歓喜した。だが、その祝宴の最中に新たな聖旨が届く。皓月が顧成焘に「花芷は資金集めで民を扇動し、講義を開いて人心を集めている」と讒言したのだ。激怒した顧成焘は花芷を「奉天女」として天文院に入れるよう命じる。
花芷は清めの儀を経て顧成焘の前に進み、「一度入れば白髪になるまで出られぬ」と告げられる。だが彼女は毅然と答える。「陛下の心には真心はない。顧晏惜はもう以前の彼ではない。私は閉ざされても、彼と同じ空の下に生きている。私たちの絆は陛下には永遠に届かない」と。
顧晏惜は七宿司を鄭虎と陳情に託し、単身で宮中へ突入する。血にまみれながら花芷のもとへ辿り着き、算盤の駒を握らせる。「宮ではこれが使いづらいだろう」と微笑んで倒れる彼に、花芷は涙をこらえた。顧成焘は激怒し、顧晏惜を慎閣に幽閉。長青は薬を与え、「必ずまた会える」と励ます。
花芷は天文院に入り、天枢使・皓月の傍らに仕えることとなった。
一方、顧晏惜は床に伏しながらも、皓月の侍女が自由に宮を出入りするのを見逃さず、陳情に命じる――「皓月を監視しろ。彼女が何を買っているのか、すべて調べよ」と。
第39話あらすじ「皓月、花芷暗殺を企てるも疑念を抱かれる」
慎閣に幽閉された顧晏惜を案じる花芷は、宮中の地図を調べ上げ、彼の居所を突き止める。彼女は夜更けに一人、風筝(凧)を作り、「南風知我意、吹夢到西洲」と詩を記した。月明かりの下、凧は静かに夜空へと舞い上がり、慎閣の高い壁を越えて風に乗る。顧晏惜がその凧を見上げた瞬間、冷たい宮廷に差し込む小さな温もりが胸を満たした。
一方、天文院では、皓月が花芷の生家に男子が残っていると知り、珍しく同情の色を見せる。「陛下を恨まぬのか」と問われた花芷は、「恨んでも仕方がない。民を守れたなら、犠牲も無駄ではない」と静かに答える。その潔い姿に、皓月は「少し羨ましくなった」と漏らした。
その頃、陳情は皓月の購買記録から、多量の法具と薬材が運び込まれていることを掴む。中でも「紅粉」という名の粉末は、張医正でさえ正体を特定できず、毒性の有無も不明だった。顧晏惜の指示を受け、芍薬が調査を始める。彼女は「紅粉を知れば、花姉と兄が戻ってくる」と聞かされ、希望に駆られて凌王府へ急ぐ。
花芷は皓月の観星録の誤りを見つけて書き直し、皓月を驚かせた。花芷の天文への理解は専門家にも劣らず、皓月は故郷「氷海」の話を語り出す。花芷はそれが北地であると察するが、皓月は「余計な詮索は命を縮める」と冷たく制した。夜空に月華がかかり、翌日には久々の雨。慶帝は喜び、皓月は「五日後の天寿節に、煙火を用いた祈雨を行う」と宣言する。
天寿節の朝、芍薬はついに紅粉の正体が「雄黄」――強力な毒であることを突き止める。彼女は薬店を駆け回り、全てを買い占めるが、その動きを皓月の侍女が尾行。秘密が露見するのを恐れ、芍薬を事故に見せかけて殺そうとする。凌王府は放火され、火の手が広がる中で芍薬は炎に閉じ込められる。絶望の中、沈焕が駆けつけて彼女を抱きしめ、「もう離さない」と叫びながら脱出を試みる。倒れた梁が彼の脚を打ち、芍薬は幼少期の火災の記憶を重ねながらも必死に彼を支え、濡れ布で包んで火の海を突き抜けた。陳情が駆けつけた時、二人は黒煙の中から現れた。
炎の跡で芍薬は涙ながらに「怖さよりも、好きの方が勝った」と沈焕に告白する。二人は花家へ避難し、芍薬は紅粉の用途――祈雨の煙火に混ぜれば毒気が充満すること――を伝える。しかし、顧晏惜は幽閉中、陳情らは官位が低く、直接慶帝に報告できない。焦る彼らの前で、六皇子が立ち上がり、「自分が太后に会いに行く」と申し出る。
夜、天寿節の宴が盛大に始まる。惠王・顧宴睿が酒を献じ、慶帝は上機嫌で飲み干す。六皇子と芍薬は太后のもとへ駆け込み、皓月の陰謀を密告。吉時が訪れ、皓月が火筒に点火。夜空に華やかな火花が広がる中、皓月は慶帝を見つめ、慶帝も勝ち誇ったように微笑む。その時、太后は陳情に懿旨を下した――「今すぐ宮へ戻れ」。
顧成焘は宴の場で立ち上がり、冷ややかに言い放つ。「七宿司が火薬をすり替えずとも、私は最初から皓月に点火させるつもりなどなかったのだ」。
皓月の顔が、蒼白に染まった。
第40話(最終回)あらすじ 「花家再会、晏惜と花芷の結婚」
天寿節の宴で皓月の陰謀が明らかになる中、顧成焘は七宿司に命じて反乱を鎮圧しようとする。しかし皓月はすでに刺客を放ち、慶帝が命を狙われる。絶体絶命の瞬間、顧晏惜が身を挺して陛下を救い出す。父・顧成焘はその姿を見て、満面の笑みを浮かべた。反乱は鎮められ、皓月は捕らえられる。彼女は昭国出身であり、一族を大慶の兵に殺され、懐王の細作として復讐のために生きてきたことを明かす。顧成焘は「蟻が大樹を揺るがすようなもの」と嘲るが、皓月は「陛下こそ疑心暗鬼」と言い返す。その瞬間、惠王が彼女を刺し殺した。
顧成焘は安堵した矢先、突如吐血し倒れる。実は皓月が惠王と共謀し、慶帝の酒に毒「碧信」を仕込んでいたのだった。惠王もまた皓月の策に嵌まり、避毒丹に騙され毒に侵される。狂乱の中、惠王は慶帝を人質に取るが、顧晏惜が袖箭で彼を射抜き、事態を終息させる。顧晏惜は慶帝に「陛下を父のように思っている。七宿司は皇都を守る剣だ」と語りかける。だが、顧成焘は毒に耐えきれず崩御。後継が定まらず宮中は騒然とする中、太后が姿を現し、「顧家にはまだ皇嗣がいる」と告げ、六皇子・顧宴昭を指名する。
北地にも赦免の詔が届き、花家の男たちは帰還を許される。花芷と顧晏惜は出迎えに向かい、花屹正と家族が涙ながらに再会を果たす。花芷は父の前で顧晏惜の手を取り、共に祠堂で林婉に礼を捧げる。「もう一人ではない」と語る花芷に、顧晏惜は「彼女と共に生きる」と誓う。花屹正も二人を祝福し、顧晏惜の変化を認める。
芍薬は「和楽郡主」に封じられ、沈焕と互いの想いを確かめ合う。陳情も抱夏への恋を堂々と語り、花家には穏やかな幸福が戻っていた。花芷は民の礼に則った婚礼を望み、顧晏惜もそれに同意。婚礼当日、顧宴昭が摂政王として祝福に訪れ、「花太傅として教育を担ってほしい」と申し出る。彼が贈った「同心結」を見つめながら、二人は言葉なくして心を通わせる。
「朝廷に花太傅がいなくても困らないが、山や湖には花芷が必要」と微笑む花芷に、顧晏惜は「君のすべてを支持する」と答える。婚服をまとった二人は、家族や友人たちの祝福の中で三拝九叩を終え、正式に夫婦となる。
その後、花家の商いはますます繁盛し、三夫人や秦姨娘、念秋らがそれぞれの役割を果たす。沈焕と芍薬、陳情と抱夏も穏やかな幸せを紡ぎ、三夫人は孤児院に目を向け、邱姨娘は学堂を支える。やがて芍薬は花芷の手紙を顧宴昭に届ける。そこには「私たちは海上にいる」と記されていた。海を渡る船の上で、顧晏惜は静かに微笑む――「花芷がどこへ行こうと、共に見届けたい」と。
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