折腰 2023年 全36話 原題:折腰/[ヨミ]セツヨウ
第19話あらすじ
魏梁は小桃に、自分が大切にしている小兵器は魏劭が四兄弟のために特別に鍛えたもので、命と同じくらい大事な存在だと明かす。そのうえで、「それでも君に預けたい」と想いを打ち明ける。小桃は嬉しさを胸に秘めつつ、あえてとぼけた態度を取り、魏梁は真っ赤になりながら小兵器を彼女の手に押し込む。その様子を魏渠たち三兄弟が見逃すはずもなく、魏梁は外へ連れ出され、皆から総出で冷やかされる。かつて「乔家の女は娶らない」と言っていた約束を突かれ、魏梁は俸禄を分けるとまで言って許しを請う羽目になる。
一方その頃、魏劭は小乔と彩頭を買いに行く約束をして待っていたが、戻ってきた小桃の手に小兵器を見つけ、違和感を覚える。そこへ現れた小乔はすべてを察し、魏梁が小桃を想っていることを魏劭に伝える。魏劭は祝福する姿勢を見せるが、「自分も小乔を娶ったのだから当然だ」と何気なく口にした言葉が、小乔の心を曇らせる。彼女は不機嫌になり、先を早足で歩いてしまう。
街で小乔が選ぶのは、以前魏家四兄弟が勧めたような素朴な品ばかり。魏劭はそれを見て「小乔はこういうものを好まない」と思い込み、かつて戦馬を贈った自分の判断を正しいと信じてしまう。小乔はその視線に気づき、意地を張って「この簪も別に好きではない」と言い放つ。帰宅後も彼女は不機嫌なままだった。
そんな中、小桃は小兵器を手に浮かれながら、小乔に「これは魏劭が四兄弟の好みに合わせて作ったものだ」と話す。その言葉を聞いた小乔は、魏劭は贈り物が下手なのではなく、“自分にどう向き合えばいいか分からない”のだと気づき、同時に寂しさを覚える。
その夜、魏劭は小乔が選んだ贈り物がすべて徐夫人たちのためだと知り、自分の胸から小さな簪を取り出して差し出す。小乔は心から喜び、二人の間のわだかまりは一気に解ける。ただし小乔は「まだまだ開窍不足」と感じ、密かに次の一手を考える。
彼女は楊奉を引き留め、翌日、楊奉は「水利書を磐邑に忘れた」と言って魏劭に同行を願い出る。小乔も磐邑に行きたいと口添えし、魏劭はその期待に応える。二人の距離は、少しずつだが確実に近づいていく。
一方、博崖では比彘が大乔のために酸梅を取りに行き、薛泰の配下と衝突して重傷を負う。大乔は酸梅を口にしながら涙を流し、「もう二度と食べない」と誓い、平穏な暮らしを望む。比彘は身分の低さを気にしつつも、小乔に認められたいと願い、大乔は彼を乔家の婿、魏国の連襟として公にする決意を固める。
道中、小乔は流民たちに出会い、彼らの境遇を知る。後から追いついた魏劭は状況を理解し、彼らを磐邑へ移住させ、共に耕す道を示す。小乔はその場で魏劭の仁政を称え、民の信頼はさらに高まる。
夜の野営で、魏劭は小乔から一歩も離れようとせず、強い独占欲を見せる。「これ以上、誰にも心配させるな」――その言葉の裏にある想いを察した小乔は、彼をからかいながらも、確かな愛情を感じて微笑む。
その頃、乔越は美女を各地へ送り、和親を進める策を巡らせていた。だが乔慈はこれに強く反発し、国の在り方を巡る新たな火種が静かに生まれつつあった。
第20話あらすじ
魏劭は流民たちの定住地として、水源に近く地勢も安定した土地を選び、家屋建設と生活再建の準備を本格的に進める。魏渠らには建材の調達を命じ、魏朵には磐邑へ赴き、楊奉の水利書を取りに行かせた。すべてが秩序立って動き出す中、魏劭はふと小乔に天候予測ができるかと尋ねる。小乔が星象を少し学んだことがあると答えると、魏劭は教えてほしいと頼む。だが小乔は前回の観星台での出来事を思い出し、今度は楊奉も一緒に呼ぶよう要求する。魏劭は明らかに小乔と二人きりになりたい様子で即座に拒否し、小乔はその分かりやすさに思わず笑ってしまう。
夜、魏劭は小乔の髪飾りが変わったように見えたと言い、関心を示そうとするが、小乔はそれが勘違いであることを指摘する。実は飾りは変えておらず、向きを変えただけだった。言い繕えなくなった魏劭は、昨日小乔が姿を消した時の恐怖を正直に打ち明ける。父兄を失った過去がよみがえり、小乔まで失うのではないかという恐怖に、胸が締めつけられたのだと語る。小乔は静かにその話を聞き、魏劭の手を取り、「たとえ短い安寧でも、大切に守れば未来につながる」と伝える。そして一人の妻としてだけでなく、人臣としても魏劭に仕え、共に水渠を修め、天下を潤すと誓う。その真摯な言葉に、魏劭は深く心を打たれる。
一方、乔慈は和親政策に憤り、家を出る決意を固めて博崖へ向かう。乔夫人も同行し、大乔の住まいが荒れ果てているのを見て心を痛めるが、部屋に丁寧に手入れされた箜篌を見つけ、比彘が誠実に大乔を大切にしていることを悟る。こうして乔夫人は二人の関係を受け入れ、博崖に留まることを決める。
渔郡に戻った魏劭は、魏俨の接待を受ける。小乔は魏劭の傷を気遣い、酒を控えるよう助言し、魏俨は彼女の心配が真心であることを見抜く。魏劭は特産の酸果子を魏夫人に贈り、思わず顔をしかめるほどの酸味に場は和やかな笑いに包まれる。小乔はあえてこの果子を選び、「強い者同士がうまくやるには、どちらかが柔らかくならねばならない」と語り、魏劭はその深い配慮に感謝する。
その夜、魏劭は湯浴みの中で、小乔への想いが抑えきれなくなっている自分を自覚する。しかし同時に、父兄の幻影に責められ、仇を忘れてよいのかという葛藤に苛まれる。翌日、魏劭は磐邑を起点に水渠を各地へ広げる構想を発表し、諸侯の合意を得るため鹿骊大会を開く決意を示す。
魏俨は酒席で魏劭をからかいながらも、彼の迷いを見抜き、情と義の狭間で苦しむ姿に複雑な思いを抱く。その夜、魏俨は《渔山神女图》を描き、姿を描けぬ神女に想いを重ねる。
一方、魏劭は小乔の前から距離を取ろうとし、軍営に移ると言い出す。別れ際、小乔が触れた玉佩に過剰に反応し、冷たく背を向ける魏劭。その不可解な態度に、小乔は戸惑いを隠せない。
やがて魏劭が衙署に移ったと知った徐夫人は、彼の行動こそが小乔への深い情の証だと見抜く。鹿骊大会の準備を小乔に任せ、あえて逃げ場を塞ぐように布石を打つ。小乔も文人を動かし、世論づくりに動き出す。
衙署で一人過ごす魏劭は、「自由だ」と強がりながらも、暖炉を抱え、募る孤独に耐えていた。小乔を遠ざけても、心までは切り離せないことに、まだ彼自身が気づいていないだけだった。
第21話あらすじ
魏劭は衙署での仮住まいを続けていた。冷え込む夜には温かな姜湯が届けられ、手が冷えれば手炉が添えられ、食事も欠かさず用意される。その世話をしているのは小檀だが、実際にはすべて小乔の指示によるものだった。彼女は表に出ることなく、ただ魏劭が不自由なく過ごせるよう配慮していただけである。
真相を知った魏劭は、小乔の変わらぬ思いやりに胸を打たれ、衙署にいながらも彼女の存在を強く感じる。
小乔は鹿骊大会の準備に奔走し、各地の文人を探して宣伝を進めていた。その中で名高い才子・高恒の名を耳にする。一方、衙署では小枣が誤って魏劭の木匣子に触れそうになり、小乔はとっさに制止する。その瞬間、以前魏劭が異様なほど反応した「玉佩」のことが脳裏をよぎる。
その玉佩は、かつて蘇娥皇の腰にもあったもの――小乔の胸に、消えかけていた不安が再び広がる。魏劭と蘇娥皇の過去は、本当に終わっているのだろうか。思い悩んだ末、小乔はこれまでのような気遣いを控え、あえて距離を取るような対応をする。
しかし魏劭は、衙署が落ち着かないという理由で突然戻ってくると、小乔の膝に頭を預け、疲れた様子で休む。そして静かに木匣子を開け、その中身を彼女に見せる。
そこに収められていたのは、父兄の遺品と、あの玉佩だった。
魏劭は過去を語り始める。辛都の戦で戦死した兄は、生前この玉佩を二つに割り、一つを魏劭に、もう一つを蘇娥皇に託した。兄と蘇娥皇は婚約しており、兄は最期に魏劭へ二つの願いを残したという。
一つは「蘇娥皇を守ること」。そしてもう一つは、あまりに重く、今も口にできない願いだった。
小乔はすべてを察し、それ以上追及することなく魏劭を抱きしめる。言葉はなくとも、その腕の温もりが、彼の罪悪感と孤独を和らげていく。
やがて魏劭は小乔の小字を尋ね、「蛮蛮」と知ると、二人の距離はさらに縮まる。静かで、しかし確かな愛情がそこにあった。
一方、博崖では比彘のもとに辺州からの使者が三度も訪れていた。助力を乞う立場にあることを比彘は快く思わず、屈辱を感じていた。大乔は悩んだ末、鹿骊大会への参加を口実に、小乔へ助けを求める書簡を書く決意をする。
魏俨の周囲では、新たな騒動が起きていた。「于氏の女と私通し、笛を信物にした」という流言が広まったのである。徐夫人は激怒するが、魏俨は淡々と否定するだけで詳しい説明を避ける。
この違和感を見抜いた小乔は、自ら于氏の女を訪ね、巧みに話を引き出す。真相は単純だった。彼女は魏俨に一目惚れし、笛を拾ったことをきっかけに、既成事実を作ろうと虚偽を広めたのだ。
小乔は笛を取り戻し、流言を静かに収束させる。
軽薄を装う魏俨は「名節などどうでもいい」と笑うが、小乔は彼の本質を見抜いていた。もし本当に関係を持っていたなら、魏俨は必ず責任を取る男だ、と。その理解に触れ、魏俨は初めて「分かってもらえた」と感じる。
鹿骊大会の準備が進む中、高恒が校武場を見てついに詩想を得る。しかし完成した詩は大会ではなく、小乔を讃える内容だった。
魏劭はその場で詩を退け、小乔の手を取り、人前で堂々と立ち去る。嫉妬と独占欲を隠すことなく示した行動だった。
帰り道、同じ馬に乗る二人。小乔が簪を付けていない理由を巡り、言葉を交わすうち、魏劭はあの簪が決して「ついで」ではなく、心を込めて作ったものだと必死に説明する。
小乔はその姿に微笑み、胸の奥に甘い温もりを覚える。
夕陽に包まれながら並ぶ二人の影。
過去の因縁も、大業への責任も抱えたまま、それでも互いを求めてしまう――魏劭と小乔の関係が、決定的な段階へと踏み込んだ回である。
















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