錦嚢風月譚(きんのうふうげつたん) 清光が照らす真実

錦嚢風月譚

錦嚢風月譚(きんのうふうげつたん) 10話・11話・12話・13話・14話 あらすじ

錦嚢風月譚(きんのうふうげつたん) 清光が照らす真実 2025年 全36話 原題:錦囊妙錄

第10話 あらすじ「秘薬と錦囊」

一通の遺言が呼び覚ました疑念は、ついに“生と死”、そして“血の秘密”へと踏み込んでいく。

羅疏と斉夢麟は、喬如蕙の主治医であった華大夫を訪ねる。
ちょうど華大夫の元には一人の妊婦が来ており、どこか不釣り合いなほど上質な衣と金銀の装飾を身にまとっていた。
彼女は「従妹の娘で、金を借りに来た」と説明されるが、その態度や身なりに、羅疏は強い違和感を覚える。

華大夫は、喬如蕙が流産によって体を壊し、長く療養を続けていたことを認める。
表向きには病死とされた彼女の死に、“妊娠”という新たな影が浮かび上がる。

喬家に戻ると、喬若蘭は姉の残した手紙を抱きしめ、涙にくれていた。
羅疏はそれらの手紙を丁寧に読み解き、喬如蕙の文才がごく初歩的なものであったことを確認する。
かつて何慎微が提示した遺言書には、詩句を交えた整った文章が記されていた――
その文体は、手紙のそれとは明らかに異なっていた。

羅疏は、手紙を流産の前後で分類し、文体と心情の変化から、遺言書が“本人の手になるものではない可能性”を強く疑い始める。

一方、何慎微のもとに、先ほどの妊婦が訪ねて来る。
彼女の存在は、何慎微と深く結びついているかのように見え、喬若蘭は激しく動揺する。
さらに蔡捕頭の調査により、何慎微が寺に納めた寄進金は、彼の申告していた二百両ではなく、わずか五十両であったことが判明。
“信仰心”とされていた行為までもが、虚飾であった可能性を示し始める。

華大夫は何慎微に、“秋娘”という妊婦が間もなく出産を迎えること、いつ家に迎え入れるのかを尋ねる。
そして「もし喬若蘭さえいなければ」と、不穏な言葉を残す。
喬如蕙の死の背後には、新しい命と、それを巡る欲望が、静かに蠢いていた。

その頃、斉夢麟と羅疏の間には亀裂が走る。
感情を抑えきれず、斉夢麟は羅疏に決別を口にしてしまうが、すぐに後悔する。
そして彼は、自分こそがかつて“錦囊”を買い取った人物であると明かす。
羅疏はそれを知らず、激しく動揺する。

そんな最中、喬若蘭は何者かに誘い出され、羅疏とともに拉致されてしまう。
犯人の狙いは、喬家の秘薬の調合法。
喬若蘭は必死に抵抗し、わずか一部しか書き記さなかった。

運命の糸が絡み合うように、その場に斉夢麟が湖遊覧で現れ、羅疏たちは水中へと身を投げる。
斉夢麟の必死の救助によって、羅疏は助け出されるが、喬若蘭はなおも危険の中に取り残される。

その時、人々の口から、ある衝撃の事実が告げられる――
「羅疏こそが、“錦囊”である」と。

斉夢麟は、羅疏の正体を知り、言葉を失う。

遺言の謎、新しい命の影、秘薬を狙う者たち、そして明かされていく羅疏の過去。

“真実”は、いよいよ彼女自身の秘密へと、踏み込もうとしていた。

 

第11話 あらすじ「偽りの遺言と血の代償」

べては“愛”と“欲望”がもたらした、取り返しのつかない選択だった――。

拉致事件から救出された羅疏は、県衙で手当を受けながら、斉夢麟と激しい言葉を交わすことになる。
斉夢麟は自ら持参した鶏スープを差し出し、羅疏に“錦囊”であることを改めて告げる。
だがそれは、彼女を思いやる言葉でありながら、羅疏にとっては出自を突きつけられる残酷な一言でもあった。

「あなたには及ばない。でも、父の権勢にすがるだけの無能よりは、まだましよ」

羅疏の言葉は、斉夢麟の心を深く傷つける。
彼は“気の毒に思っただけだ”と理解できないまま、翌日、町を去る決意を固める。
見送りの人々の中に、羅疏の姿は最後までなかった。

一方その頃、喬家の遺産を巡る黒い真相は、ついに核心へと迫っていた。

何慎微はすでに秘伝とされる金蕊酒の“処方”を手に入れ、華大夫の勧めで、妊娠中の秋娘を妻として迎える。
だが完成した酒は、色も味もまるで別物。
買い手からは詐欺だと罵られ、何慎微は自分が“偽物の処方”を掴まされたことを知る。

追い詰められた彼は、華大夫にすがるが、そこからさらに深い闇へと引きずり込まれていく。
秋娘は盗みの罪で捕えられ、屋敷は混乱に陥る。
その現場に現れた羅疏は、県衙による徹底捜査を宣言し、韓慕之の兵によって、ついに華大夫までもが拘束される。

そして、羅疏の口から語られたのは、衝撃の真実だった。

喬如蕙の“遺言書”、そして何慎微が提示していた数々の手紙――
それらはすべて、何慎微自身の偽造であった。

華大夫は、何慎微に薬を与え、「滋養強壮剤」と偽って喬如蕙に服用させた。
その薬は彼女の体質と相性が悪く、やがて“病死”という形で命を奪った。
すべては、喬家の財産を我が物とするための計略だった。

さらに、秋娘との関係は喬如蕙の存命中から続いており、彼女の死は“邪魔な妻を消すため”でもあった。

決定的な証拠として、羅疏は生存していた喬若蘭を呼び出す。
拉致の混乱の中、彼女をわざと“行方不明のまま”にしていた羅疏の一手は、何慎微を完全に追い詰めるための布石だった。

ついに何慎微は崩れ落ち、すべてを認める。

――喬如蕙が、自分と秋娘の関係を知った夜、華大夫に相談し、「この薬を飲ませれば永久に解決する」と言われたことを。

愛も、欲も、そして恐れも、すべてが一つに絡まり、一人の女性の命を奪った。

羅疏は真実を暴いた。
だが、守りたいと思った人の心は、もう手の届かない場所へと遠ざかっていた。

“錦囊”として、そして一人の人間として――
羅疏の孤独は、静かに、次なる運命へと歩み始める。

 

第12話 あらすじ「刃より鋭い真実」

真実は、刃よりも鋭く、人の心を切り裂く――。

喬如蕙の死の真相は、ついに完全な形で明らかにされる。

彼女は生前すでに、夫・何慎微が愛人を囲っている事実に気づいていた。
何慎微は、喬如蕙が妹・喬若蘭に助けを求めることを恐れ、彼女が送った手紙を差し押さえ、筆跡を真似て“偽の手紙”を書き直すという、卑劣な工作まで行っていた。

そしてある夜、何慎微は華大夫から渡された“薬”を運び、喬如蕙に飲ませようとする。
拒む彼女に無理やり薬を飲ませ、ついにその命を奪った――。

真相を知った喬若蘭は、怒りに駆られ何慎微を斬ろうとするが、羅疏はその腕を止める。

「あなたが彼を殺しても、復讐は終わらない。県衙が必ず、正しく裁かせる」

その言葉に、喬若蘭は涙と共に刀を置く。

だが何慎微はなおも責任逃れを試み、「私は華大夫に操られた“刀”にすぎない」と主張。
華大夫はそれを全面否定し、二人は互いに罪をなすりつけ合う泥沼の攻防へと突入する。

やがて何慎微は、“白蟻”の二番手・白紙扇が華大夫であると暴露し、さらに切り札として、妊娠中の秋娘を証人に立てようとする。

しかし秋娘は、「何も知らない。この子は何慎微の子ではない」と冷たく言い放つ。

その瞬間、何慎微は知る――秋娘の子の父は、華大夫だったという、残酷すぎる真実を。

怒り狂った何慎微は華大夫に斬りかかろうとするが、韓慕之によって制止される。

事件は終結へ向かうが、喬若蘭の心には深い悲しみが残っていた。
酒造所を訪れ、姉に教わった酒造りの日々を思い出し、声を殺して泣く彼女に、羅疏は静かに告げる。

「しっかり生きて。それが、喬如蕙への一番の弔いだから」

一方、韓慕之は匪賊“白蟻”の殲滅を強く主張し、ついに平陽衛が出動。
帰還した軍が連れてきた首領を見て、羅疏たちは息を呑む。

その男は――町を去ったはずの、斉夢麟だった。

彼はすでに平陽衛の副千戸となり、誇らしげな笑みを浮かべて立っていた。

第13話 あらすじ「運命を縛る鎖」

この世には、愛よりも重く、誠実よりも硬い鎖がある。
それは――「身分」と「宿命」。

県丞は韓慕之に、羅疏との関係について率直に告げる。
二人は住む世界が違い、韓慕之の将来の義父が羅疏を受け入れるはずがない。
韓慕之は志高く、いずれ朝廷に名を刻む人物であり、その道を女の情に阻ませてはならない――
それが県丞の本音だった。

斉夢麟はその場に割り込み、「男が自分の無力を女のせいにするのは、男らしくない」と辛辣に切り捨てる。
彼は平陽衛の公文書を差し出し、匪賊討伐への協力要請に署名を迫る。
それは同時に、韓慕之への痛烈な皮肉でもあった。

一方、県丞を縛る“鎖”もまた、静かにその姿を現す。

幼いころから婚約者として定められていた棗花。
素朴で、まっすぐで、誰よりも誠実なその娘を、県丞は受け入れることができず、長年、逃げ続けてきた。

斉夢麟は棗花の存在を知り、彼女を連れて県衙へ現れる。
棗花は県丞に真正面から問いかける。
「いつ、私と結婚するの?」
県丞はついに、「君とは結婚できない」と言い切る。
その言葉に、棗花は深く傷つき、涙と怒りを胸に去っていく。

県丞は、棗花が実は父に助けられた妊婦の娘であり、母を失った後、父が“童養媳”として迎えようとしたが、自分はそれを拒んだ過去を語る。
それでも、その決断が棗花の人生を縛ってしまった事実は、消えることがなかった。

そんな折、県衙に投げ込まれた一通の匿名の手紙が、新たな波紋を呼ぶ。

「銭大友は白蟻の共犯者である」

背後には張公公という巨大な権力者がいると噂される男。
この告発は真実か、それとも新たな罠か――。

県丞はこれ以上深入りすることを禁じるが、羅疏は自ら鉱山へ赴き、真相を確かめることを選ぶ。

流民に扮して潜入した羅疏と斉夢麟。
顔を煤で黒く塗り、飢えたふりをして配給の列に紛れ込む。
そこで二人は、粗末な食事と、不自然に一鍋だけ用意された白米に違和感を覚える。
それは、拉致された女性たちのために用意されたものではないか――。

羅疏はさらに、かつて寺で出会った弟子の姿を見かけ、この鉱山がただの採掘場ではないことを確信する。

そして夜。
簡素な寝床で、斉夢麟は羅疏に床を譲り、自らは冷たい地面に身を横たえる。

愛も、志も、正義も――すべてが、目に見えぬ鎖に絡め取られていく。

物語は、“白蟻”の真の闇へと、さらに深く踏み込んでいく。

 

第14話 あらすじ「闇の底で名を呼ぶ声」

夜の鉱山は、昼よりも雄弁に罪を語る。
闇に紛れた囁き、錆びた鎖の音、そして――戻れぬ道を選んだ者たちの吐息。

深夜、羅疏は密かに宿舎を抜け出し、鍵の掛かった部屋の様子を探ろうとする。
そこへ現れたのは、白蟻の幹部・拝月。
羅疏はとっさに「防寒具を探しているだけだ」と言い繕うが、空気は一瞬にして凍りつく。
さらに監督役の王茂が現れ、羅疏を部屋へ戻すよう命じる。

その場で交わされた拝月と王茂の会話は、この鉱山が単なる採掘場ではないことを裏付ける。
拝月は「気性の荒い女を急ぎ用意しろ」と命じ、王茂に「自分につけば厚遇する」と甘い言葉を投げる。
かつて香堂にいた頃の“人身売買のネットワーク”を口にし、王茂はついに拝月の側につく決断を下す。

羅疏が戻ると、斉夢麟は戸の隙間から拝月の姿を確認する。
王茂の突然の見回りに、羅疏は「今は夫婦だ」と囁き、二人は同じ寝台に身を横たえる。
生死の狭間で交わされる“偽りの夫婦”という芝居は、この潜入がもはや後戻りできない領域に入ったことを示していた。

一方、県丞は正式に部下を率いて鉱山へ乗り込み、「婚約者・棗花を返せ」と銭大有に突きつける。
銭大有は張公公の名を盾に抵抗するが、県丞は鉱山の納税義務を突き、帳簿の提出を命じる。
出てきた帳簿はすべて偽造。
それは、この地が国家の目を欺く“闇の経済圏”である証拠でもあった。

しかし、肝心の棗花の姿はどこにも見当たらない。
銭大有も不安に駆られ、周囲を探らせるが、誰も“女を拉致した者”はいないと答える。
鉱山全体が、一つの巨大な嘘で覆われている。

作業に戻った羅疏と斉夢麟は、県丞が必ず自分たちに接触してくると悟る。
だが銭大有の手下が張り付き、蔡捕頭との接触は阻まれる。

そんな中、拝月は再び鉱山に現れ、張公公へ“女を急ぎ用意するよう”命じて去っていく。
斉夢麟はとっさに糞桶を拝月にぶちまけ、罵声と混乱の中で二人は難を逃れる。

だが、この一瞬の反抗は、彼らの“存在”を闇の中に刻み込んでしまう。

羅疏は密かに鉱山内部へ戻り、地下室に閉じ込められた棗花を発見する。
彼女は確かにここにいる――
だが、救い出すには時期尚早。
羅疏は県丞に密告し、今は動くべきではないと判断される。

そして、羅疏が再び潜伏地へ戻ったその瞬間、運命の歯車は最悪の方向へと噛み合う。

突然現れた拝月。
羅疏の変装用の歯が打ち抜かれ、その正体が暴かれる。

「やはりお前か。お前でなければ、私はこんな姿にはならなかった――」

憎悪と狂気を滲ませたその声とともに、拝月の手が羅疏の首へと伸びる。

闇の底で、本当の名前を呼ばれた瞬間、羅疏の命は、静かに締め上げられていく。

鉱山は、もはや“調査の場”ではない。
それは、人の尊厳と命を喰らう、巨大な“巣”そのものだった。

 

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