放送予定
●【日本初放送】日テレプラス 2026年 1/3(土) 17:00~
| 麗将軍~忠誠に咲く愛~ |
| 2025年 全24話 約15分 |
| 原題:不负将军不负卿 |
目次
- 1 あらすじ
- 2 相関図
- 3 キャスト
- 4 全24話、話数ごとのあらすじ
- 4.1 第1集 「血盟の十三人、消えた将軍」
- 4.2 第2集 「仮面の名は薛十三」
- 4.3 第3集 「疑念と毒の香り」
- 4.4 第4集 「揺らぐ復讐と黒き火薬」
- 4.5 第5集 「交錯する策謀、見抜かれた仮面」
- 4.6 第6集 「明かされる真実、血盟の再起」
- 4.7 第7集 「嫉妬と裏切り、引き金となる真実」
- 4.8 第8集 「仇敵との対峙、交錯する想い」
- 4.9 第9集 「奪われた玉座とすれ違う想い」
- 4.10 第10集 「幻境を破る一手」
- 4.11 第11集 「金色の仮面が暴く真実」
- 4.12 第12集 「斬首の夜、王都に走る血の誓い」
- 4.13 第13集 「生還の代償、蠱に縛られた運命」
- 4.14 第14集 「逆光の再会、毒を宿した誓い」
- 4.15 第15集「秋霜の誓い、闇を越える視線」
- 4.16 第16集 「紅蓋の下の身代わり、散りゆく灯火」
- 4.17 第17集 「仇と赦しの狭間で」
- 4.18 第18集「白髪に宿る宿命」
- 5 第19集 「麒麟の血、交わる宿命」
- 6 第21集 「血の記憶、和平への誓い」
- 7 動画配信
あらすじ
戦乱に揺れる北昭国で、生きるために男の姿になり、玄甲軍で武功を重ね将軍となった周初(ジョウ・チュー)。しかし凱旋直後、無実の罪を着せられて仲間もろとも死罪に。周初は腹心の徐寒之(シュー・ハンジー)の裏切りを確信し、胸に復讐の炎を宿す。命からがら生き延びた彼女を救ったのは、かつて戦場で剣を交えた南越国の将・尚可封(シャン・コーフォン)だった。共通の敵を持つ二人は手を組み、周初は侍女「薛十三(シュエ・シーサン)」として徐寒之のもとへ潜入するが、そこには王家を揺るがす巨大な陰謀が渦巻いており…。愛と憎しみと策略が複雑に絡み合う中で、周初、徐寒之、そして尚可封の運命は予想もしない方向へ動き出す。
相関図
キャスト
徐寒之(シュー・ハンジー)/ガオ・ミンチェン
周初の元腹心
周初(ジョウ・チュー)/ホー・シュエンリン
玄甲軍で武功を重ねた将軍
全24話、話数ごとのあらすじ
第1集 「血盟の十三人、消えた将軍」
登瀛楼の女将として穏やかな日々を送る薛十三。だがその正体は、かつて北境を震撼させた雲麾将軍・周初であった。男装して玄甲軍を率い、数々の戦場を制した彼女は、命を賭して南越の敵将・尚可封の陣営へ単身潜入し、囚われていた副将・徐寒之ら十三人の将士を救出。敵の糧倉を焼き払い、血盟を交わした十三人と共に戦果を挙げ、北境に勝利をもたらした英雄であった。
しかし、凱旋を迎えるはずの帰還の道は、想像を絶する裏切りと陰謀の幕開けだった。宮殿への帰還直前、徐寒之だけが単独で召され、その直後、空から降り注いだのは祝福ではなく無数の矢。玄甲軍の将士たちは次々と射殺され、歓喜の凱旋は一瞬にして血の海と化す。周初を守ろうとした阿力と何頭目は、真相を求めて奔走するが、すでに運命の歯車は逆戻りできないところまで回り始めていた。
大殿に辿り着いた周初の目に映ったのは、太子の戴冠式を執り行う徐寒之の姿だった。信じていた副将の裏切りとも取れる光景に、周初は涙に濡れた瞳で刀を構えようとするが、その瞬間、放たれた一矢が彼女の身体を貫く。振り返った時、そこにはもはや誰の姿もなく、英雄・周初は生死不明のまま歴史の闇へと消えていく――。
血盟を交わした十三人はなぜ抹殺されたのか。徐寒之は敵なのか味方なのか。そして、周初の身に何が起きたのか。数年後、薛十三として生きる彼女が背負う秘密と復讐の物語は、ここから静かに幕を開ける。
第2集 「仮面の名は薛十三」
玄甲軍が宮中で無残にも皆殺しにされたという報せは、徐寒之自身の耳にも届く。動揺する彼は禁軍を集め、父王に真相を問いただそうとするが、側近・韓琦により制止され、事態は闇の中へと押し込められていく。一方、矢に倒れ生死の境を彷徨っていた周初は、思いもよらぬ人物によって救われていた。かつての宿敵、南越の主将・尚可封である。彼は今や南越から北昭に派遣された特使として宮廷に滞在しており、秘術である蠱毒を用いて周初の傷と醜い瘢痕を癒やし、彼女に新たな命を与えた。
尚可封は周初に、玄甲軍壊滅の裏に徐寒之の存在があると告げる。父王の信任を得るため、周初と玄甲軍を切り捨てたのだという言葉は、周初の心を激しく揺さぶり、彼女の中に燃え上がる怒りと憎しみを決定的なものにする。信じていた副将への疑念と復讐の念を胸に、周初は尚可封と手を組む決意を固める。
彼女は周初という名も、将軍としての過去も封印し、「薛十三」と名を変えて女の身に戻る。そして、太子・徐寒之の私邸であり情報収集の拠点でもある登瀛楼へ、卑しい侍女として潜入する。表向きは詩画や酒宴を楽しむ社交の場だが、その裏で無数の秘密と陰謀が行き交う登瀛楼は、復讐の第一歩を踏み出すにはこれ以上ない場所だった。
薛十三は、同じく下働きとして蔑まれていた阿四を助けることで人心を掴み、宰相と徐寒之の密会情報を入手する。復讐の刃を振り下ろす絶好の機会が訪れ、彼女は暗殺計画を練り上げるが、思わぬ事態が起こる。宰相は何者かによって先に殺害され、第一発見者となった薛十三が、逆に殺害の容疑者として追い詰められてしまうのだった――。
復讐を誓った彼女に、早くも新たな試練が立ちはだかる。
第3集 「疑念と毒の香り」
宰相殺害の第一発見者となった薛十三は、瞬く間に容疑者として包囲され、ついには太子・徐寒之から「周初ではないか」という決定的な疑いの目を向けられる。玄甲軍の将軍・周初と瓜二つの顔立ち、そして並外れた胆力と洞察力──彼の胸に芽生えた疑念は、ただの偶然では済まされなかった。追い詰められた薛十三は、自らの潔白と「自分は周初ではない」ことを証明するため、女性であることを示すという大胆な行動に出て、その場を切り抜ける。さらに彼女は、真犯人を二十四時間以内に突き止めると宣言し、あえて自らを囮にして真相究明へと踏み出す。
現場に残された一本の糸を手がかりに、薛十三は事件の背後にある周到な仕掛けを読み解いていく。そしてたどり着いた結論は、皮肉にも「犯人は徐寒之自身である」というものだった。真偽はともかく、薛十三の鋭い推理は徐寒之の心に深く刺さり、彼はこの謎めいた侍女に強い関心と警戒心を抱くようになる。一方、皇太子・徐景之と寧郡王もまた、登瀛楼で起きた宰相暗殺を重く受け止め、背後に潜む陰謀を暴くべく独自に動き出していた。
その裏で、南越の特使・尚可封は、別の思惑を胸に秘めて暗躍していた。彼は南越への献上品に毒を仕込み、徐寒之を暗殺することで、自身の不穏な計画を一気に前へ進めようとする。しかし徐寒之は警戒心が極めて強く、献上品の異変を察知して尚可封の毒殺計画を未然に防ぐ。表向きは何事もなかったかのように収束するが、宮廷の水面下では疑念と策略が複雑に絡み合っていく。
そんな中、薛十三は献上品の管理を任され、毒入りの賀礼を手にしていたが、女将がその功績を横取りしようと強引に奪い取ろうとする。もし賀礼の中身が改められれば毒が露見し、自分にも尚可封にも危険が及ぶ。必死に賀礼を守ろうとするも、二人の激しい争奪の最中に箱が開き、中の毒粉がこぼれ落ちてしまう。薛十三はその猛毒を浴び、急激に体調を崩しながら必死で自室へと駆け戻るのだった。
復讐を誓う彼女の前に、命をも脅かす新たな危機が迫る――。
第4集 「揺らぐ復讐と黒き火薬」
宰相暗殺の余波が宮廷に重くのしかかる中、皇太子は薛十三こそが事件の黒幕ではないかと疑念を深め、彼女を捕らえて拷問にかけようと動き出す。容赦なく迫る禁軍に囲まれ、もはや逃げ場を失ったその瞬間、現れたのは徐寒之だった。彼は強引に彼女を連れ出し、その身を守るために自らの側近侍女として仕えさせることを宣言する。表向きは恩情と庇護でありながら、それは同時に彼女を身近に置き、監視するという意味も含まれていた。こうして薛十三は、復讐の標的である徐寒之のすぐ傍で仕えるという、危うくも複雑な立場に置かれることになる。
側近侍女となった彼女は、守られているという皮肉な安心感の裏で、再び彼を討つ機会を狙う決意を固めていた。そんな折、望台で催された花火見物の最中、思わぬ悲劇が起こる。何者かが放った火縄銃の銃弾が薛十三を狙い、その身をかばうようにして徐寒之が撃たれ、重傷を負ってしまうのだ。彼女の目の前で血に倒れる徐寒之の姿は、復讐だけを糧に生きてきた薛十三の心を大きく揺さぶる。守るべき存在として自分を庇った男への戸惑いと、憎むべき仇への複雑な感情が、彼女の胸の内で激しく交錯する。
徐寒之の負傷を知った登瀛楼の女将は、楼に災いが及ぶことを恐れ、すべての責任を薛十三に押し付け、重い罰を下そうとする。しかしその場に、護衛を率いた韓琦が駆けつけ、彼女を救出する。辛くも命を取り留めた薛十三は、暗殺に使われた武器が火縄銃であり、その内部に詰められていた黒色火薬が、かつて玄甲軍が使用していたものと同一であることに気づく。これは、すでに全滅したはずの玄甲軍に生存者がいることを示す決定的な手がかりだった。
「誰かが、あの日の真相を知っている」――その確信を胸に、薛十三は徐寒之が本格的に動き出す前に、必ず生き残りを見つけ出そうと決意する。そして尚可封の協力を得て辿り着いたのは、かつて玄甲軍の仲間であった何頭目の存在だった。彼はあの粛清の夜、絞殺を免れて密かに生き延び、復讐の機会を虎視眈々と狙っていたのだ。
失われたはずの絆が再び動き出す時、薛十三の運命と復讐の行方は、さらに深い闇へと踏み込んでいく。
第5集 「交錯する策謀、見抜かれた仮面」
街角で情報を集める韓琦と徐寒之は、泥棒から「登瀛楼の外に片目の男が出没している」という不穏な噂を聞き出す。その男は、玄甲軍と関係がある可能性を示す存在であり、徐寒之は宰相暗殺や火縄銃事件の背後に、まだ見ぬ勢力が潜んでいることを強く意識するようになる。一方、浴場では何校尉が、戦場で孤児となった玄甲軍の子どもたちが復讐と戦いを渇望している現状を語る。薛十三はそれを聞き、戦う理由は憎しみの連鎖を生むためではなく、「民を守り、争いを終わらせるため」であると静かに諭す。彼女は、幼い命たちがこれ以上戦乱に飲み込まれることなく、生き延びる道を願ってやまなかった。
そこへ突然、徐寒之が現れ、冗談めかして薛十三と共に入浴しようとする。彼女は一瞬、暗殺の好機と見て刃を向けようとするが、徐寒之がすでに潜伏していた刺客を捕らえていたことを知り、計画を断念せざるを得なくなる。登瀛楼の客間に戻ると、尚可封が二人の浴場での振る舞いを問い詰める。薛十三は「場に応じて演じただけ」と淡々と答えつつ、内心では新たな策を巡らせ、大皇子と徐寒之を互いに争わせ、共倒れにさせるという大胆な計画を提案する。
登瀛楼の大広間では、人々が大皇子と薛十三の関係を面白おかしく噂して騒ぎ立てるが、徐寒之は強く制止し、彼女を公の場から守るような態度を見せる。侍女の部屋では、阿四が薛十三の身を案じ、徐寒之への応対を手助けする。薛十三は尚可封に対し、大皇子と「顔を交換させる」という奇策まで持ち出し、さらに陰謀の輪を広げていく。
やがて徐寒之が景王府へ向かうと、薛十三は何校尉に命じて火縄銃を取り戻させ、潜む勢力を一網打尽にする準備を進める。景王府の庭では韓琦が皇太子を問い詰めるが、彼は一切の関与を否定する。そして楼閣でついに、薛十三が張り巡らせた策略は徐寒之に見抜かれてしまう。復讐と策謀の狭間で揺れる彼女の仮面は、徐々に剥がれ落ち始め、二人の関係は新たな緊張と疑念に包まれていくのだった。
第6集 「明かされる真実、血盟の再起」
一晩中縛られていたにもかかわらず、安らかな寝息を立てる薛十三を、徐寒之は複雑な思いで見つめていた。復讐の刃を向けながらも、どこか放っておけない彼女の存在は、すでに徐寒之の心に深い影を落としている。登瀛楼最上階の個室では、何校尉が彼を強く責め立てるが、徐寒之はかつて彼を捕らえながらも殺さなかった理由を語る。それは単なる情けではなく、玄甲軍と周初に対する負い目、そしてこの国の闇を断ち切るための布石でもあった。
一方、薛十三は行方の知れない何頭目の身を案じ、いても立ってもいられず様子を探りに向かう。しかし彼女が目にしたのは、徐寒之の腕の中で静かに息を引き取る何頭目の姿だった。怒りと悲しみが一気に噴き上がり、薛十三は刀を抜いて徐寒之に突きつけ、ついに自らが玄甲軍を率いた雲麾将軍・周初であることを明かす。胸を刺され、血が止まらない状態に陥りながらも、徐寒之は彼女を抱き寄せ、「周初が無事ならそれでいい」とだけ言い残して意識を失う。その言葉は、彼の真意と悔恨、そして秘めた想いを象徴するかのように、薛十三の胸に深く突き刺さった。
翌日、目を覚ました徐寒之は、玄甲軍がなぜ壊滅に追い込まれたのか、その裏に潜む門閥世家の思惑と、権力闘争の冷酷な現実を語る。薛十三は、玄甲軍が本来、門閥勢力を一掃するための“犠牲”として利用された存在であったと断じ、もはや私怨を超えた大義のもとで戦う決意を固める。徐寒之もまた、彼女の覚悟に応え、共に闇を暴く協力者となる意思を示す。
その頃、景王府の寝室では、長皇子が寧郡王から「玄甲軍の生き残りが登瀛楼にいる」という衝撃の報告を受け、宮廷内の緊張は一気に高まる。やがて登瀛楼の大広間で、薛十三は何校尉の後始末を整え、徐寒之と共に棺桶の中へと身を潜める。彼らが狙うのは、長皇子と寧郡王という宮廷の中枢に巣食う黒幕たち。復讐と正義、そして血盟の誓いを胸に、二人は命を賭した暗殺計画へと踏み出していくのだった。
第7集 「嫉妬と裏切り、引き金となる真実」
尚可封は新たな一手として、徐寒之の幼なじみであり、寧郡王の娘である寧徳郡主に密かに接触する。彼は「徐寒之の側には、すでに美しい女が寄り添っている」と吹き込み、寧徳の心に疑念と動揺を植え付けた。噂を聞いた寧徳は我慢ならず、怒りと不安を胸に登瀛楼へと駆け込み、徐寒之に会わせろと大騒ぎする。
徐寒之は事態を穏便に収めるため、薛十三に自分の身代わりとして対応させる。男装した薛十三は堂々と姿を現し、鋭い言葉と態度で寧徳を圧倒。二人はやむなく街へ出て時間を潰すことになるが、その道中で薛十三は、徐寒之と寧徳が幼少期から深い絆で結ばれていたこと、互いに特別な存在であったことを知る。復讐心を胸に秘めつつも、彼女は知らず知らずのうちに胸に広がる嫉妬に戸惑い、徐寒之への想いを自覚し始める。
遊び疲れた後、薛十三は寧徳に休息を取るよう部屋を手配するが、寧徳は登瀛楼に泊まり、しかも薛十三と同室にすると言い出す。拒むこともできず、薛十三は酒を先に飲み、宴席で二人は向かい合う。やがて酔いが回った寧徳は、思わず「父・寧郡王こそが周初を射殺した」と衝撃の事実を口走ってしまう。その瞬間、薛十三の胸に燃え上がったのは、もはや抑えきれない復讐の炎だった。
彼女は寧郡王を討つ決意を固め、寧徳に意図的に近づき始める。その危うい動きを察した徐寒之は止めに入ろうとするが、混乱の中、酔った寧徳が誤って信号弾を放ってしまう。事態が急変する中、薛十三は恐れも見せず、自ら信号弾に火をつけてさらに大きな騒動を引き起こし、寧郡王の注意を引くことに成功する。そして軍隊を動かさせ、寧徳を“救出”させる形で、復讐への第一歩を踏み出すのだった。
嫉妬、裏切り、そして真実が絡み合い、薛十三の運命は、いよいよ引き返せない領域へと踏み込んでいく。
第8集 「仇敵との対峙、交錯する想い」
前夜の騒動の余波が冷めやらぬまま、寧郡王は自ら兵を率いて登瀛楼へ乗り込み、酔いつぶれた娘・寧徳を半ば強引に連れ戻す。王府へ戻った彼は、これまで積み重ねてきた疑念と恐怖から、もはや徐寒之を生かしておくことはできないと判断し、ついに排除へと動き出す決意を固めた。
翌朝早く、寧郡王は寧徳に「徐寒之を呼び出し、婚姻の話を切り出せ」と命じる。しかし約束の場に姿を現したのは、皇太子ではなく薛十三だった。異変を悟った寧郡王は寧徳を追い払い、弓を引き絞りながら、目の前の女の正体を問いただす。薛十三は静かに、しかし鋭い声で「私は、お前の弓の下で死んだ魂だ」と告げる。その言葉は、かつて周初を射抜いたあの日の罪を突きつけるかのようだった。
一方、登瀛楼に戻った徐寒之は、薛十三の姿が見えないことに気づき、彼女が寧郡王府へ向かったと直感する。嫌な予感を胸に、護衛の韓琦を連れて急ぎ王府へと向かうが、すでにその頃、薛十三は命の危険に晒されていた。周初が生きていると知った寧郡王は愕然とし、即座に弓を引いて射殺しようとする。しかしその瞬間、寧徳が間に割って入り、父の凶行を必死に止める。彼女は自ら薛十三を王府の外へと護送し、別れ際に「あなたが皇太子であろうとなかろうと、私はあなたが好き」と、まっすぐな想いを告げる。
薛十三はその言葉を胸に刻みつつも、復讐を果たす覚悟を改めて固め、寧徳に「登瀛楼で待っていて」と言い残し、再び寧郡王の後を追う。そしてついに、徐寒之と寧郡王が同時に周初を発見する決定的な瞬間が訪れる。緊張が張り詰める中、薛十三は迷いなく刀を振るい、徐寒之の眼前で、かつて自分を討った仇・寧郡王を斬り殺すのだった。
長年の怨念は血によって清算され、薛十三は復讐の一歩を果たす。しかしその代償として、彼女の心と運命は、さらに複雑で深い渦の中へと巻き込まれていく――。
第9集 「奪われた玉座とすれ違う想い」
寧郡王暗殺の罪をめぐり、徐寒之は自らが下手人であると名乗り出る。これは薛十三を守るための決断だったが、その告白は父王の逆鱗に触れ、徐寒之は太子の位を剥奪され、詔獄へと投獄されてしまう。かつて国の希望とまで称えられた皇太子は、一転して罪人へと転落した。
その混乱の裏で暗躍していたのが尚可封であった。彼は徐景之に成り代わり、その顔と身分を利用して権力の中枢へと侵入する。尚可封は傲慢な態度で趙烈を操り、偽の勅命を作らせて北昭王を政治の表舞台から排除。さらに徐寒之を流刑に処し、自らを新たな太子として即位させるという、前代未聞のクーデターを成功させてしまう。
一方、薛十三は密かに詔獄から徐寒之を救い出すことに成功するが、事態はすでに彼女の想像を超える段階へと進んでいた。偽の大皇子となった尚可封は登瀛楼を掌握し、薛十三を半ば強引に東宮へ迎え入れ、妻とすることで彼女を自らの側に縛り付けようとする。徐寒之は王宮へ向かう途中、花嫁衣裳をまとい東宮へ向かう薛十三とすれ違う。二人は互いに視線を交わすが、状況を説明する時間もなく、ただ胸を締めつけられる想いだけが交錯する。
徐寒之は王宮に潜入し、幽閉されていた北昭王を救出すると同時に、尚可封に操られていた趙烈を自らの手で討ち取る。一方、嫁衣を着せられた薛十三は、尚可封から衝撃的な言葉を告げられる。「お前の復讐リストの最後の標的は、北昭王だ」。彼は彼女の心の傷と憎しみを利用し、さらなる血を呼び込もうとしていた。
その頃、徐寒之は東宮へ乱入し、薛十三を連れ出す。彼は趙烈が偽の勅命を下した事実を暴露し、偽の大皇子に東宮から退去するよう命じる。しかし追い詰められた大皇子は、ついに尚可封の正体を公の場で暴き、「ゲームはまだ始まったばかりだ」と嘲笑う。尚可封は北昭に留まり、徐景之に代わって国全体を掌握するという野望を堂々と宣言するのだった。
玉座は奪われ、真実は歪められ、二人の前には絶体絶命の危機が立ちはだかる。徐寒之と薛十三は、この巨大な陰謀の渦から果たして抜け出すことができるのか――物語は新たな局面へと突き進んでいく。
第10集 「幻境を破る一手」
北昭王の命により、東郊の校場で囲碁の対局が催される。名目上は徐寒之と皇太子が盤上で勝負し、帝位継承にふさわしい人物を見極めるための儀式であったが、その裏では尚可封の勢力が仕組んだ罠が張り巡らされていた。対局の場に臨んだ徐寒之は、知らぬ間に不気味な“幻境”へと引き込まれ、現実と幻の境目を失い、深い意識の迷路に閉じ込められてしまう。
徐寒之の様子がどこかおかしいことに気づいた薛十三は、彼が幻境に囚われていると悟る。もしこのまま対局が進めば、徐寒之は敗者としてすべてを失うだけでなく、命の危険すらある。彼を救うため、薛十三は自ら盤上に立つ決意を固め、北昭王の前で対局への参加を申し出る。その姿は、かつて戦場で仲間を守るため剣を振るった将軍・周初の面影を色濃く帯びていた。
盤上では皇太子と、幻境を操る見えざる相手との攻防が続き、局面は一気に緊迫する。誰もが皇太子の必殺の一手で勝負が決まると息をのむ中、薛十三は盤面のわずかな歪みと仕掛けの存在に気づく。彼女は迷うことなく一手を打ち込み、その一手は単なる防御ではなく、幻境そのものを揺るがす引き金となった。盤面が崩れ、周囲の空気が歪み、張り詰めていた幻境は音を立てて瓦解し始める。
やがて徐寒之は幻から目覚め、目の前で自分を守るために必死に盤と向き合う薛十三の姿を目にする。その勇気と覚悟に胸を打たれた彼は、再び彼女と肩を並べ、最後の局面に臨む。二人は息を合わせて攻めに転じ、ついに皇太子を盤上で打ち破ることに成功する。
対局の結果を受け、北昭王は薛十三の機転と胆力を高く評価し、盛大な褒賞を与える。幻境という闇の罠を破ったことで、徐寒之と薛十三の絆はさらに深まり、二人は再び同じ未来を見据えるようになる。だが、尚可封の野望はまだ終わっていない。盤上の一手が運命を動かしたこの日、北昭の権力争いは新たな局面へと踏み込んでいくのだった。
第11集 「金色の仮面が暴く真実」
登瀛楼の最上階個室で、薛十三と徐寒之は激しく衝突する。徐寒之は彼女の身を案じ、危険な復讐の道から引き戻そうとするが、薛十三は玄甲軍を失った悲しみと怒りを胸に、仇討ちの決意を揺るがすことができない。言葉をぶつけ合ううちに、互いの本心と傷をさらけ出し、二人は次第にわだかまりを解いていく。そこには対立だけでなく、相手を失いたくないという切実な想いがあり、やがて静かな信頼と深い情が芽生えていった。
そこへ韓琦が現れ、薛十三に禁軍の統率者として宮中へ赴き、正式な職務報告を行うよう告げる。自らの覚悟を胸に、薛十三は禁軍の制服に身を包み、凛とした姿で出立する。その背を見送る徐寒之と韓琦の視線には、誇りと不安、そして言葉にできない想いが交錯していた。
宮中では、薛十三が禁軍を訓練し、兵を率いる姿が人々の注目を集める。徐寒之は遠くから彼女を見つめ、二人は無言のまま互いに想いを交わすように視線を交差させる。その静かなやり取りは、戦場を共に生き抜いた者同士にしかわからない強い絆を物語っていた。
しかし王宮の通路で、大皇子の一行と薛十三・徐寒之率いる禁軍が鉢合わせすると、空気は一瞬で張り詰める。大皇子の護衛兵と禁軍が睨み合い、一触即発の緊迫した状況に陥るが、薛十三は冷静かつ毅然と命じ、禁軍に大皇子の護衛兵を両脇へ退かせ、徐寒之を王宮へ通す道を切り開く。その姿は、かつて雲鳶将軍と称えられた武人の威厳そのものだった。
やがて御書斎にて、北昭王は寧徳郡主に雲鳶将軍の金色の仮面を持参させる。その仮面は、薛十三がかつて周初として戦場を駆けた証であり、ついに彼女の正体が白日の下にさらされる瞬間となった。徐寒之は深く跪き、彼女への情状酌量を必死に願い出るが、北昭王は聞き入れない。薛十三もまた、他の者を巻き込まないよう懇願するが、その声は冷たく退けられ、彼女は天牢へと投獄されてしまう。
信頼と想いが確かに結ばれたその矢先、薛十三は再び孤独な闇の中へと追いやられる。果たして徐寒之は、愛する人を救い出すことができるのか。北昭の宮廷に渦巻く陰謀と権力争いは、ついに彼女をのみ込み、運命の歯車を大きく回し始めていた。
第12集 「斬首の夜、王都に走る血の誓い」
詔獄に囚われた薛十三の前に、大皇子が姿を現す。彼は、薛十三が徐寒之の側に付いたことを「裏切り」だと糾弾し、自分に従うならば過去の罪も仇もすべて水に流すと取引を持ちかける。しかし薛十三は一切の迷いを見せず、「死を選んでも屈しない」と毅然と言い放ち、大皇子の申し出を拒絶する。その凛とした態度は、雲鳶将軍として戦場に立っていた頃と何一つ変わらぬ誇りを宿していた。
一方、登瀛楼の最上階では、徐寒之と韓琦が密かに薛十三救出の策を練っていた。彼女を失うことだけは避けたい一心で、真夜中の詔獄への潜入を決行する準備を進める。夜の帳が下りる頃、二人はついに動き出すが、その時すでに薛十三は広殿へと連行され、北昭王との直接対峙の場に立たされていた。
北昭王は、かつて玄甲軍を粛清した真意を語り出す。徐寒之を牽制し、王権を守るためにはやむを得なかった――それが王としての決断だったという。だが薛十三は、その言葉を静かに受け止めながらも、玄甲軍の名誉回復と、犠牲となった将士の遺族を救うことを強く願い出る。彼女の訴えは、復讐ではなく、失われた者たちの尊厳を取り戻すための祈りに近いものだった。北昭王はしばし沈黙の末、その願いを受け入れる。
しかし直後、薛十三は屋内に縛られ、斬首の時を待つ身となる。冷たい床に膝をつき、静かに目を閉じる彼女のもとへ、ついに衛兵が刀を振り下ろす。処刑の報せは瞬く間に詔獄中へと広がり、囚われの身であった尚可封の耳にも届く。薛十三の死を知った尚可封は激昂し、「北昭王を殺し、彼女に捧げる」と狂気じみた誓いを立てる。
その頃、御書斎では、北昭王が金色の仮面を手に、過去の出来事に思いを巡らせていた。そこへ皇太子・徐景之が乱入し、王権と未来を巡って激しい口論となる。緊迫した空気の中、ついに尚可封が刃を振るい、北昭王を刺殺。彼は「北昭の天下も、愛する女も、すべて手に入れる」と宣言し、王都は一夜にして血と野望に染め上げられる。
薛十三の“死”をきっかけに、王宮の均衡は完全に崩れ去った。復讐と野望、そして守りたい想いが激しく衝突する中、物語はついに新たな局面へと突入していく。
第13集 「生還の代償、蠱に縛られた運命」
処刑されたはずの薛十三は、目を覚ますと薄暗い草屋の中に横たわっていた。自分がまだ生きていることを悟り、安堵と同時に胸を締めつけられるような不安を覚える彼女に、徐寒之は残酷な真実を告げる。詔獄で薛十三の身代わりとなり、代わりに斬られたのは、長年ともに戦い、彼女を守り続けてきた韓琦だったのだ。禁軍の仲間たちも、薛十三を逃がすために命を賭けて動き、その結果、かけがえのない命が失われていた。
実は韓琦は、徐寒之が王宮の陰謀に深く巻き込まれることを恐れ、誰よりも早く詔獄へ向かい、旧部下に薛十三を密かに草屋へと運び出すよう手配していた。薛十三は、自分が生き延びた裏で、どれほど多くの犠牲が払われたかを知り、深い自責の念に囚われる。
さらに彼女は、かつて尚可封に救われた際、体内に“心蠱”と呼ばれる蠱虫を仕込まれ、知らぬ間に命と意志を縛られていた事実を徐寒之に打ち明ける。何校尉の不可解な死もまた、この蠱虫によるものではないかと徐寒之は疑念を深め、尚可封の支配の影が、すでに多くの命を奪っていたことが明らかになっていく。
翌日、心蠱はついに暴走する。激しい発作に襲われた薛十三は、制御を失い、誤って毒粉をまき散らしてしまう。それは最も避けたかった形で徐寒之を傷つけ、彼の両目を奪うという、取り返しのつかない結果を生む。自らの手で愛する人を傷つけてしまった現実に、薛十三の心は粉々に砕ける。
やがて彼女は、新たに北昭を掌握した尚可封のもとへ呼び出され、王宮の大広間で対面する。尚可封は、すでに薛十三が生きていることを把握しており、徐寒之の命を盾にして彼女を公然と脅迫する。剣を抜き、今度こそ決着をつけようとする薛十三だったが、心蠱に縛られた身体は彼女の意思に従わず、刃を握る手すら動かない。
尚可封は、残酷な“賭け”を持ちかける。「王宮の門を抜けて逃げ切れたら、徐寒之の捕縛を取り消してやろう」。薛十三はその言葉を信じ、最後の力を振り絞って城門へと走る。しかし城壁にたどり着いた瞬間、身体は完全に言うことを聞かなくなり、膝から崩れ落ちる。彼女はついに力尽き、尚可封に襟首を掴まれて宮殿へ引きずり戻されていく。
生き残ったはずの薛十三は、自由を得るどころか、さらに深い闇の中へと引き戻されてしまった。命を賭して守ろうとした人々の想いと、蠱に縛られた自らの運命。その狭間で、彼女は新たな地獄へと足を踏み入れていく。
第14集 「逆光の再会、毒を宿した誓い」
荒れた風が吹き抜ける山間の茅葺き小屋。そこには、かつて北昭の未来を担うと期待された男、徐寒之の姿があった。彼の両目はすでに光を失い、深い闇の中で静かに息をしている。寄り添うように腰を下ろす韓琦は、自らが斬首されたはずのあの夜の真実を語り始める。実際には刃は急所を外れ、阿四に救われて密かに生き延びていたのだという。
徐寒之が最初に問いかけたのは、天下でも、父帝の行方でもなかった。ただ一つ――「薛十三は無事なのか」。その問いに、韓琦は重く口を開く。老北昭王はすでに“病死”したことにされ、尚可封が成り代わった偽の大皇子・徐景之が新たな皇帝として即位したのだと告げる。あまりにも突然の政変。だが徐寒之は、父の死の裏にある陰謀を察しつつも、今はすべてを飲み込み、「必ずこの江山と、彼女を取り戻す」と静かに誓う。
盲目の身でありながら、徐寒之は王宮へと赴き、新帝・徐景之への謁見を果たす。彼は父帝の死因を調査する許しを求めるが、大皇子は「生老病死は万物の摂理。世はただ輪廻を繰り返すのみ」と、意味深な言葉でこれをかわす。そして、その場に呼び出されたのは――薛十三だった。
逆光の中から現れた彼女は、かつての逃亡者でも、処刑台に立たされた囚人でもない。今や北昭軍を率いる“第一将軍”として、高みに立つ存在となっていた。三人は互いの胸の内を隠したまま、遠回しで冷ややかな言葉を交わす。そこには、愛も憎しみも、疑念も、すべてが絡み合う修羅場の空気が漂っていた。
その夜、薛十三は一人、ある決断を下す。心蠱に縛られながらも、彼女は尚可封を毒殺し、徐寒之に天下を返すという、命懸けの計画を胸に秘める。その第一歩として、薛十三は尚可封からの求婚を受け入れ、彼を油断させる道を選ぶ。
「徐寒之はすでに盲目で、もはや何の脅威にもならない」
そう語る薛十三の言葉に、傲慢な尚可封は満足げに頷き、彼女の申し出を受け入れる。だが、その穏やかな微笑みの裏には、尚可封を葬り、北昭の運命を覆そうとする、鋭い刃のような覚悟が潜んでいた。
愛する人を守るために、再び敵の懐へ身を投じる薛十三。
逆光の再会は、新たな裏切りと、より深い闇の幕開けを告げていた――。
第15集「秋霜の誓い、闇を越える視線」
人目を忍ぶ山間の草庵。そこでは阿四と薛十三の密かな取り決めにより、表向きは阿四が徐寒之の身の回りの世話をしているように見せかけながら、実際には薛十三自身が夜ごと忍び込んで彼を介護していた。尚可封の目を欺くための危険な二重生活の中、薛十三の胸を占めていたのは、ただ一つ――徐寒之の失われた視力を取り戻すことだった。
失明の原因は、あの夜、心蠱に操られた自分の手で放った毒粉。薛十三にとって、それは一生背負う贖罪でもあった。彼女はあらゆる医書を読み漁り、各地の伝承を探るうち、伝説の名医・塗山先生の存在に辿り着く。もしかすれば彼だけが、徐寒之を救えるかもしれない――。
薛十三は韓琦と共に塗山先生の草庵を訪ね、必死の思いで助けを請う。だが先生はすぐには首を縦に振らず、一局の棋局を差し出す。「この局を解けるなら、治療の道を示そう」と。
張り詰めた沈黙の中、薛十三は盤上の罠を見抜き、幾重にも張られた布石を読み切り、見事に詰みへと導く。その瞬間、塗山先生は微かに頷き、千仞山に自生するという幻の聖薬「秋霜草」を探すよう告げた。
断崖絶壁が連なる千仞山は、数多の命を奪ってきた“死の山”。それでも薛十三は一切の迷いなく踏み入る。冷たい霧に包まれ、岩場をよじ登り、幾度も転びそうになりながら、ついに彼女は秋霜草を見つけ出す。その薬効が真実かどうか確かめるため、薛十三は自ら毒性を試し、身をもって安全を確認するという無謀な行為に出る。
帰路、徐寒之は薬草を背負い、疲弊した薛十三を支えながら歩く。山道に差し込む夕陽の中で、彼は静かに問いかける。
「……私のことが、好きか?」
不意の言葉に、薛十三は答えを飲み込み、ただ歩みを止めなかった。だがその沈黙こそが、彼女の覚悟を物語っていた。
草庵へ戻ると、塗山先生はすぐに治療を開始し、「明日には視力が戻るだろう」と告げる。その言葉に、薛十三は胸をなで下ろす。しかし同時に、先生はもう一つの現実を突きつける。
――心蠱を解く方法は、南越王族に伝わる秘術にあるかもしれない。だが、その成功率は限りなく低い、と。
徐寒之の“目”は取り戻せても、薛十三自身の“自由”はまだ遠い。
秋霜草の白い霧の向こうで、二人の運命は、なおも試練の道を歩み続ける――。
第16集 「紅蓋の下の身代わり、散りゆく灯火」
尚可封が“皇太子”として君臨する王都では、薛十三との婚礼が強引に執り行われようとしていた。天下と女、すべてを手に入れるために整えられた紅の婚房。だが、尚可封が花嫁の赤い蓋を剥がした瞬間、そこに座っていたのは薛十三ではなく、登瀛楼の侍女・阿四だった。
阿四は自ら身代わりとなり、徐寒之と薛十三の脱出の時間を稼ぐため、命を賭して婚礼の場に座っていたのだ。
その夜、阿四は密かに毒を忍ばせ、尚可封暗殺を試みる。しかし冷酷な皇太子はすでに異変を察知しており、阿四の企みは未然に暴かれてしまう。
一方、城外へ逃れた徐寒之と薛十三は、夜明けの街道を馬車で離れようとしていた。だが城門を通る際、二人の目に飛び込んできたのは、晒し台に縛り付けられた阿四の姿だった。
――皇太子暗殺未遂の罪で、三日三晩の晒し刑。
衝撃に息を呑む薛十三は、今すぐ引き返して阿四を救おうとするが、徐寒之は必死に彼女を制止する。戻れば二人とも捕らえられる。それでも薛十三の胸は、阿四を見捨てたという罪悪感に引き裂かれていく。
その夜、薛十三は夢の中で阿四と再会する。穏やかな微笑を浮かべた阿四は、「私はもう、家族を探しに行く」と静かに告げる。その言葉と共に目を覚ました薛十三は、枕元に残された一通の手紙を見つける。
そこには、阿四の出生の秘密が記されていた。
彼女は南越の囚人の娘であり、幼い頃から尚可封に利用され、登瀛楼へ潜入するよう命じられていたこと。父を救うためなら何でもする覚悟で生きてきたが、薛十三と出会い、初めて“誰かのために自分の意志で尽くす”温もりを知ったこと。そして、薛十三のために命を捧げることを、少しも後悔していないという想いが綴られていた。
回想の中でよみがえるのは、登瀛楼で共に笑い、語らい、何気ない日常を分かち合った日々。
阿四の真心を知った薛十三の胸に、尚可封への憎しみはこれまでになく深く刻まれる。彼女は、阿四の命と引き換えに築かれたこの偽りの王座を、必ず崩すと固く誓うのだった。
その傍らで、徐寒之は言葉もなく薛十三を見つめる。ふと彼は、彼女の髪に混じる一本の白髪に気づく。
復讐と喪失が刻みつけた時間の重みが、二人の運命をさらに過酷な道へと導いていく――。
第17集 「仇と赦しの狭間で」
阿四を失った喪失は、薛十三の心を深く蝕んでいた。笑顔の裏に隠しきれない虚ろな瞳、剣を握る指先の震え。彼女は復讐の炎に身を委ねて走り出しそうになるが、徐寒之は静かに、しかし強く彼女を引き留める。軽率な行動は、これまで彼らのために命を賭して散っていった仲間たちの犠牲を無駄にするだけだ――。復讐には時機があり、今は耐え、待つべきだと諭す徐寒之の言葉は、薛十三の胸に重くのしかかる。
やがて彼女は決断する。
ただ嘆くのではなく、尚可封の根を断つため、まず南越に潜み、彼の配下勢力を一つずつ摘み取っていくこと。阿四の仇を討つため、そしてこれ以上誰も犠牲にしないための、長く険しい戦いの始まりだった。
一方、王都の御史府倉庫では、尚可封が苛立ちを露わにし、配下に薛十三と徐寒之の行方を厳しく追及していた。逃げ延びた二人の存在は、彼の王座を脅かす最大の不安要素となっていたのである。
市場の一角、静かな茶屋で、薛十三と徐寒之は南越潜入のための綿密な計画を練っていた。人目を忍ぶその席に、突然、二人の大男が現れ、懸賞金目当てで二人を引き渡そうと迫る。緊迫した空気が張りつめる中、割って入ったのは、意外にも寧徳だった。
彼女は大男たちを一喝して追い払い、薛十三の前に立つと、抑えきれない怒りと悲しみを込めて問い詰める――「父を殺したのは、あなたなのか」と。
薛十三は一切の言い訳をせず、静かにそれを認めた。
その瞬間、寧徳の中で積み重なっていた悲憤が爆発し、彼女は剣を抜いて薛十三に斬りかかる。だが薛十三は避けることも、防ぐこともせず、ただ真っ直ぐに彼女を見つめた。自分は寧徳から“命を借りている”身だと、そう感じていたからだ。
寸前で二人の間に割って入った徐寒之は、これまでの真相を寧徳に語り、憎しみに囚われ続けることの虚しさを訴える。復讐の連鎖は、誰も救わない――彼女の父も、阿四も、そして今ここに立つ三人も。苦しい真実を突きつけられた寧徳は、涙を流しながら剣を下ろす。
それぞれが背負う仇と罪、赦しと後悔。
薛十三と徐寒之は、再び前に進む覚悟を新たにする。二人の選択は、もはや私怨の域を超え、北昭の未来そのものと深く結びついていた。南越潜入という新たな戦場へ――運命の歯車は、静かに、しかし確実に回り始める。
第18集「白髪に宿る宿命」
耀州城の奥深く、密室に籠る尚可封は、もはや薛十三と徐寒之は自分の脅威ではないと高をくくっていた。阿四の死こそが、二人の心を折る決定打だったと信じて疑わない彼は、さらに残酷な策を命じる。配下に「全市の井戸へ毒を盛れ」と指示を出し、耀州城は一夜にして地獄と化す。水を口にした民は次々と倒れ、意識は朦朧、街には不安と恐怖の叫びが満ちていく。尚可封の冷酷な野望は、民の命すら駒として使う段階へと踏み込んでいた。
一方、南越を目指す薛十三と徐寒之の旅路は、すでに試練に満ちていた。薛十三の体内で、尚可封に植え付けられた心蠱は静かに、しかし確実に心臓を蝕み始めていた。胸を締め付ける痛みを堪えながらも、彼女は決して弱音を吐かない。徐寒之はその異変に気づきながらも、今は彼女を支えることしかできず、胸の奥に言いようのない不安を抱え続ける。
北境の草原では、韓琦が遠く離れた二人を想い、彼らが不在の間に北昭が再び混乱へと傾いていることを嘆いていた。かつて共に戦場を駆けた仲間の影を思い出しながら、彼は必ずや再会し、再び共に立つ日を誓う。
やがて二人は南越国の城内市場へと足を踏み入れる。異国特有の奇妙な風習、耳慣れぬ言葉、見たこともない衣装や香の匂い。すべてが新鮮でありながら、どこか不穏な空気を孕んでいた。
同じ頃、南越王子の離宮では、王子・鄭臨淵が女官の戒律違反を理由に、新たな梳髪女官の選抜を行おうとしていた。王宮に入るための千載一遇の機会――その情報を掴んだ薛十三は、自身の“白髪”が南越で特別視されることを知り、思い切って応募する決意を固める。
運命の皮肉か、彼女は白髪という異様な容姿を理由に、あっさりと宮中入りの候補に選ばれる。南越王宮の側殿で、薛十三と徐寒之は蠱毒を解く手がかりを探すため、ここからは二手に分かれて行動することを決める。互いの身を案じながらも、今はそれぞれの役目を果たすしかない――短い別れの視線に、深い信頼と切なさが滲む。
王宮前殿で始まった選抜試験。薛十三は、他の女官たちとは一線を画す白髪と落ち着いた振る舞い、そして機知に富んだ受け答えで第一関を難なく突破する。しかし第二関では、宮中で権勢を誇る夏貴人の前に敗れ、表向きはここで脱落となってしまう。
だが、薛十三は密かに重大な“真実”を掴んでいた。
内廷総管として振る舞う一人の男――その正体こそが、南越王・鄭臨淵本人であることを見抜いたのだ。静かな宮廷の裏で蠢く権力の影、そして蠱毒を解く鍵が、この男に繋がっていることを悟った薛十三は、さらなる危険の中へと足を踏み入れていく。
白髪に宿るのは、ただの異端ではない。
それは、宿命に抗い、陰謀の核心へ迫るための“目印”でもあった――。
第19集 「麒麟の血、交わる宿命」
南越王宮の前殿。
薛十三はついに自らの正体を明かし、堂々と鄭臨淵の前に立つ。すると鄭臨淵は驚くこともなく、二人が南越の地に足を踏み入れた瞬間からすでに察知していたと静かに告げる。すべてを見通したかのようなその態度に、薛十三は一層の警戒を強めつつ、真っ向から徐寒之の解放を要求する。
鄭臨淵は“誠意の証”として、毒入りと無毒、二杯の酒を差し出し、どちらかを選んで飲めと命じる。薛十三が躊躇する間もなく、徐寒之は迷いなく自分が飲むと言い張り、身を挺して彼女を守ろうとする。その必死な姿に、薛十三は胸を打たれ、彼への想いを改めて深く自覚する。二人の間に流れる沈黙と覚悟の空気に、鄭臨淵もまた静かに目を細めた。
やがて鄭臨淵は、即位以来、戦争には興味がなく、ただ民が安らかに暮らせる国を築きたいだけだと語る。尚可封が北昭で起こした一連の惨劇についても、ある程度は把握していると明かし、北昭と無意味な敵対関係に陥ることは本意ではないとも語る。しかし同時に、「解毒薬をそのまま渡すつもりもない」と断言する。その矛盾した姿勢に、薛十三は“助けたいのに、なぜ助けないのか”という大きな疑問を抱く。
南越王宮の庭園で、徐寒之は鄭臨淵から心蠱の解毒法の核心を聞かされる。
解毒に必要なのは、伝説の“麒麟の血”。しかも、その血を完全に融合させるためには、男女の交わりという、あまりにも私的で重大な条件が伴うのだと知らされる。その言葉は、二人の関係を試すかのように、重く胸にのしかかる。
その後、街路を歩く薛十三と徐寒之は、互いに軽口を叩き合い、かつて登瀛楼で過ごした日々や、共に死線を越えた記憶を懐かしむ。束の間の穏やかな時間の中で、二人は確かに“普通の恋人”のような笑顔を取り戻す。
南越王宮の別殿では、ようやく人目を避け、静かで甘いひとときを過ごす二人。未来の話、帰るべき場所、取り戻したい日常――希望の言葉が交わされる中、薛十三の表情にふと異変が走る。
突然、彼女の鼻から血が流れ落ち、空気は一瞬で凍りつく。
心蠱は、確実に彼女の命を削っている。
ささやかな幸福の裏で、迫りくる“時間切れ”の気配が、二人の未来に不安という影を落とすのだった。
第20集 「王女の血、運命の証明」
薛十三の体内で心蠱が心臓を蝕み始めていると知った徐寒之は、南越王・鄭臨淵のもとへ急ぎ、彼女の命を救ってほしいと深く頭を下げる。鄭臨淵もまた事態の深刻さを理解し、懸命に解毒法を探すが、現時点で確実とされているのは“男女の交わりによって麒麟の血を融合させる”という方法のみだった。彼はほかの道を必ず見つけると約束し、なおも調査を続けることを誓う。
王宮の別殿。
薛十三は静かに身支度を整えながら、これまでの戦いの日々や、共に命を懸けて歩んできた道のりに思いを馳せる。そして徐寒之と連れ立って市へ出かける。色とりどりの灯籠が揺れる夜市で、二人は屋台の美食を分け合い、まるで普通の恋人のように笑い合う。薛十三は心の奥で、“もしも残りの人生があるなら、どうかこの人が平穏で幸せでありますように”と密かに祈っていた。
しかしその裏で、彼女は密かに酒へ薬を混ぜ、徐寒之に自分の存在を忘れさせようとする。だがその企みはすぐに見破られる。薛十三は涙をこらえながら、「男女の交わりだけが解毒法なら、私は死を選ぶ」と告げる。自分の命よりも、北昭の民と彼の未来を守ることを選びたい――それが彼女の覚悟だった。徐寒之はその言葉を受け止めながら、決して一人で背負わせはしないと誓い、二人は“生きるも死ぬも共に”という強い約束を交わす。
そんな中、鄭臨淵が新たな解毒法を携えて戻ってくる。それは、万匹もの蠱虫を体内に入れて“試身”するという、あまりにも過酷で危険な方法だった。成功する保証はなく、失敗すれば即死もあり得る禁断の術。だが薛十三は一切の迷いなく、その試練を受けることを選ぶ。
蠱倉で始まる試身。
無数の蠱虫が体内を駆け巡り、まるで万本の矢が心臓を貫くかのような激痛が薛十三を襲う。徐寒之は息を呑み、ただ彼女の名を呼び続けるしかなかった。だが、苦しみの時が過ぎ去った後――薛十三の身体には、驚くべきことに一つの傷も残っていなかった。
鄭臨淵は愕然とする。
万の蠱に侵されても無傷でいられる理由。それは、薛十三の血に“麒麟の血”が流れているからだと判明する。つまり彼女は、南越王族の血を引く“王女”だったのだ。
この衝撃的な真実は、薛十三の出自だけでなく、彼女と徐寒之の未来、さらには南越と北昭の運命そのものを大きく揺るがすことになる。
麒麟の血に選ばれた王女――。
その宿命は、二人をさらなる試練と陰謀の渦へと引きずり込んでいくのだった。
第21集 「血の記憶、和平への誓い」
南越王・鄭臨淵は、十五年前の忌まわしい記憶に心を引き戻される。
両親と妹が北昭への貢ぎ物を携え、和平の証として耀州城を訪れたその日、彼らは何者かの手によって無惨に殺された。歓待の名の下に開かれた宴は一転して血の惨劇へと変わり、幼い鄭臨淵は一夜にして家族と未来を失ったのだった。
この話を聞いた徐寒之は、胸に重い疑念を抱く。
その事件の黒幕が、自分の父帝である可能性に気づいたからだ。国の安定のために選ばれた決断が、他国の王族を犠牲にしたのだとすれば、自分はその血の上に築かれた王権の継承者ということになる。薛十三もまた、自分がこれまで戦場で振るってきた剣に、同じ血筋の者の命が含まれていたかもしれないという事実に、深い苦悩を覚える。
それでも二人は、過去の怨恨に縛られるのではなく、未来を守ることを選ぶ。
今、両国を再び戦火へと導こうとしているのは尚可封だ。彼を止めなければ、耀州城の悲劇は再び繰り返される。薛十三は南越王・鄭臨淵に、尚可封との一切の連絡を断ち、軍内部に残る彼の旧勢力を解体するよう命じる。そして徐寒之と共に北昭へ戻り、“一芝居打って尚可封を罠にかける”という危険な策を練り上げる。
一方、寧王府では寧徳郡主が長く続いた確執と悲しみを乗り越え、薛十三と徐寒之と手を組む決意を固める。父を失った恨みを胸に抱えながらも、国を守るためには尚可封を止めるしかないと悟ったのだ。
薛十三は皆を分散して動かすよう手配し、自らは囮となって尚可封のもとへ近づく。
王宮の御書斎で彼女は帰還の理由を説明し、尚可封の警戒と憎しみを真正面から受け止める。尚可封はなお彼女を信用しきれず、半ば監視するように「ここで待て」と命じる。
その部屋で、薛十三は亡き阿四が残した密かな手がかりを発見する。
そこには、真の皇太子・徐景之が今もなお、王宮のどこかに軟禁されていることを示す証拠が隠されていた。尚可封の支配が完全なものではないと知り、薛十三は静かに拳を握りしめる。
しかし、尚可封もまた不穏な動きを見せていた。
西羌の狼兵が進軍を開始し、さらに南越からの返答が途絶えていると報告を受けた彼は、ついに苛立ちと猜疑心を爆発させる。自分に背いた者を見せしめにするため、寧王府を“血の海に沈める”という凶行を決意するのだった。
血の記憶に縛られた過去と、守るべき未来。
薛十三と徐寒之は、和平への誓いを胸に、尚可封という最大の障壁に立ち向かう――決戦の火種は、すでに燃え始めていた。
第22集 「偽りの勝利、反撃の号砲」
尚可封の専横に揺れる北昭の都。その裏で、ついに反撃の歯車が静かに回り始める。
寧徳郡主らは寧王府の密蔵文書の中から、意味深な暗号文「王城は孤北南に西を向き、真王は迷跡の局中局」を見つけ出す。それは、かつて北昭王が設けた“密室”の位置を示す暗号であり、真の皇太子が今なお王城の奥深くに隠されていることを意味していた。彼らは急ぎ伝書鳩を飛ばし、薛十三と合流することを決める。寧徳自身も同行を願い出るが、命の危険を案じた徐寒之は彼女を残す決断を下す。
やがて徐寒之らは暗号の示す場所へと辿り着き、北昭王の密室でついに“真の皇太子”を発見する。
そこで彼らは、すでに北昭王が亡くなっているという残酷な真実を告げると同時に、即位式で偽の皇太子を打倒し、正統な王権を取り戻すという危険な計画を練り上げる。失われた王統を取り戻すための、命を懸けた賭けがここから始まろうとしていた。
一方、尚可封はなおも薛十三を縛り続けていた。
彼は彼女に解毒剤を渡すどころか、徐寒之との正面衝突を強要する。薛十三は従うふりをしてその命令を受け入れ、やがて西羌の狼兵が襲撃してくると、自ら部隊を率いて戦場に現れる。しかし、その剣の運びにはどこか“本気ではない”隙があり、徐寒之たちはすぐに彼女が意図的に手加減していることを見抜く。彼らはこの芝居を利用し、尚可封を欺くための対応策を巧妙に整えていく。
戦いの後、薛十三は尚可封のもとへ戻り、徐寒之はすでに戦死したと偽って報告する。
宿敵の死を信じ込んだ尚可封は、長年胸に溜め込んできた憎悪から解放されたかのように有頂天になり、完全に警戒心を失っていく。その隙を突き、すべては最終局面へと動き出す。
茅葺きの小屋では、韓琦が薛十三の「行動開始」を告げ、反撃の合図が仲間たちへと伝えられる。
王宮では、薛十三が冷静沈着に作戦を指揮。寧徳郡主と真の皇太子は、それぞれ府兵と西羌狼衛を率いて内廷へと突進する。混乱に包まれる朝廷で、彼らは一気に要所を制圧し、臣下たちを掌握。偽りの王権にすがっていた逆賊たちは、次々と誅殺されていく。
偽りの勝利に酔う尚可封の背後で、真の反撃はすでに始まっていた。
北昭の命運を賭けた大逆転の序章は、静かに、しかし確実に幕を開けたのである。
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※配信は記事作成時のものです。(2026/1)配信期間が終了している可能性がありますので、該当サイトにてご確認ください。
※2026年1月1日時点での配信はありません。
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