惜花芷~星が照らす道~2024年 全40話原題:惜花芷
目次
6話あらすじ 花芷、街頭で桃符を書いて金銭を得る
元日の街角、花芷は最後の装飾品を質に入れ、赤紙と筆墨を用意し桃符を書いて金銭を得ようとする。冷やかしや嘲笑を浴びても意に介さず筆を走らせる彼女の前に現れたのは沈淇だった。彼は銀を惜しみなく置き、大いに称賛しながら墨宝を持ち去る。その姿に人々も次々と買い求め、花芷の文字は街の注目を集めた。しかし二人の男が桃符を破り捨て侮辱すると、沈淇は怒りに任せ拳を振るう。花芷はただ金を得られれば良いと割り切るが、沈淇は初めて出会った日から彼女と友でありたいと望んでいたと語り、花芷も笑顔で応じた。その様子を、顧晏惜が楼上から見下ろしていた。
顧晏惜は陳情に桃符を買わせ、帰途で花芷に呼び止められる。花家の罪ゆえ他人に尋ねられぬ薬屋の所在を教わりたいというのだ。仮面を脱ぎ彼女を見下ろしながら、顧晏惜は「沈家との縁談が潰れて身を晒すとは自暴自棄か」と挑む。花芷は「一日中仮面を被るお前こそ偽りだ」と切り返し、恨みがあるかと問われると「ただ命令に従うだけの者を恨むも恨まぬもない」と静かに答える。
その日、花芷は薬草や日用品を買い込み、花家の人々は大晦日にようやく腹いっぱい食事にありついた。団欒の食卓は、今や花家にとって贅沢そのもの。花芷は呉玉娘に梅の煎じ薬を渡し、拂冬が煮た紅果に皆が笑顔を取り戻す。しかし夏金娥は花霊(かれい)を連れて現れ、共に護符を売らせようとするも、花霊は大切な絵を守り必死に拒む。花芷は「稼ぐ方法は無数にある、やる気さえあれば」と諭すが、夏金娥は商売を下賤と信じ、長続きしないと見限っていた。
そこへ沈淇が告げる。大理寺の審理が終わり、花家の男子は北方へ流刑となる、と。出立前に十里亭で短い面会が許されるという報せに、林婉は四十三着の綿衣を用意させ、空腹で旅立たぬよう夏金娥は三人の侍女を売って酒肉を買い整えた。花家を守るためなら情けも容赦もない覚悟だった。
一方、凌王府では顧晏惜が芍薬に「もう医者は来ない」と告げる。門外からの泣き声に駆けつけると、不敬を働いた奴婢が処刑され白布に包まれて運ばれていた。庭に立つ彼の脳裏に、母との幸せな日々がよみがえる。その時、駆け抜けた影を追った彼は、血に染まった紙銭を拾い上げた。母の死に潜む真相を探るべく、七宿司を凌王府に潜入させる決意を固める。
夏金娥は唯一残った蜜柑を呉玉娘に渡そうとするが拒まれ、二夫人へと回す。正室と二夫人は僅かな銀を衣に縫い込み、流刑の男たちに託そうとした。その頃、顧晏惜の追及で、王妃の庭で紙銭を燃やし犬血を撒いた下僕が口を割る。あの日、爆竹のような音の後に炎が上がり、王妃の助けを求める叫びを確かに聞いたのだ。
花芷もまた、王妃の葬儀で迷い込み邸に入った過去を思い返す。しかし王妃は常に一人暮らしで侍女を置かなかったはず。矛盾に満ちた証言は顧晏惜の疑念を深めていく。そして花家を思う沈淇は父の怒りを買い、杖で打たれ吐血するほどの罰を受けるのだった。
7話あらすじ 花芷が家族を守るために立ち向かい、背中に棒で殴られる
沈淇は重傷を負いながらも花家の男たちを見送ろうとしたが、沈父に制され、棒で叩きつけられて動けなくなった。十里亭では林婉らが長く待ち続けたが沈淇の姿は見えず、焦る中で花芷が自ら馬車を走らせると申し出る。抱夏は護衛として車上に伏せ、花芷は祖父の手の傷に涙をこぼしつつ「家の変事以来、一度も泣かなかった」と笑ってみせた。その様子を遠くから憲王・顧晏恭が見守り、彼女の才気を面白げに評した。
囚人たちに綿衣が配られると再び足枷が嵌められた。花芷は四叔・花平陽に妊娠した妻のことを告げずに見送り、代わりに「青崖書院裏山の槐の木を世話せよ」と頼まれる。出立の刻、顧晏惜が馬を駆って現れ、花屹正に王府に現れた子供たちのことを問うが、答えは得られなかった。顧晏恭は彼が事を荒立てに来たと警戒するが、顧晏惜は定例検査を口実に囚人の身体検査を命じる。陳情が入念に調べた結果、衣に縫い込まれた銀貨が見つかり、大理寺の面目を潰す形となった。
花芷は慌てて「自分が持ってきた綿衣だ」と名乗り出るが、顧晏恭は収拾のため彼女を拘束し、大理寺で脊杖十刑を科す。背中に棒を受けた花芷は血に染まりながらも必死に堪えた。やがて解放されるが、雨の中を出たところで顧晏惜が素顔で待っていた。花芷は銅細工屋で助けてくれた人物と彼が同一だと気づく。彼は花芷を医者に連れて行き、薬を塗り、帰途に彼女を青崖書院へ導いた。
槐の木の下で花芷は十八甕の娘酒を掘り出す。これは四叔・花平陽が嫁入り道具として用意したものだった。顧晏惜の助力で十七甕を売り、百七十貫を得る。最後の一甕は謝礼として顧晏惜に贈り、さらに銭を返した。護衛の途中、疲労した花芷は彼の肩に寄りかかり、顧晏惜は母を遠ざけた若き日の後悔を語る。名を問われた彼は「姓は晏、名は惜」とだけ答えた。
帰宅後、花芷は母や二夫人に責を問い詰めるが、母は悔恨に沈み、二夫人は開き直り、三夫人は逆に花芷を責め立てる。心が張り裂けそうになった花芷は言葉もなく背を向けて去った。顧晏惜は七宿司に戻ると花家を厳重に監視し、娘酒の販売も禁じさせる。
絶望の中で、呉玉梅だけが花芷を慰めた。「あなたは取るに足らない侍女などではない。皆があなたを探すために力を尽くしたのだ。家は道理を説く場所ではない」。その言葉に花芷は胸の氷を溶かされ、部屋に戻ると布団が用意されていた。家族の温もりに、彼女の心は再び静かに灯を取り戻すのだった。
8話あらすじ 花芷が自ら進んで家事を引き受ける
花芷が深い眠りについた夜、林婉は残っていた養容丸を三粒届けさせ、母・朱盈貞はそっとマントを掛けた。二夫人・斉蕙蘭も日中は威厳を崩さなかったが、密かに息子の残した飴を三粒枕元に置いた。目覚めた花芷は、普段厳しく当たる家族が実は心の奥で彼女を案じていたことを知る。顧晏惜が言ったように、親しい者ほど隔たりは深いが、一枚の紙が破れた時に真心が現れるのだ。
考えを整理した花芷は林婉に会いに行き、「家事を切り盛りしたい」と申し出る。大慶の律に従えば、215万銭あれば北地に流刑された花家の男たちを救えるのだ。呆然とする一同を前に、花芷は信念を語り、懐から交子を取り出して抱夏に渡す。今月の食料や日用品、さらに下僕たちの給金に充てるよう命じ、さらには「夫人や令嬢にも月銭を支給する」と宣言。三ヶ月間で成果を出すと林婉に誓い、失敗すれば帳簿を夏金娥に返すと告げた。
沈家との縁談についても自ら決着を望み、林婉に伴われて沈家へ。沈父は避けたが、沈老夫人が対応する。まさか縁談破棄を告げに来たとは思わず驚き、花芷はさらに受け取った贈り物に借用書を添えて返却した。沈淇は足を引きずりながら門外まで追い、花芷は「縁談は終わったが、あなたは友人」と微笑みかけた。
一方で、陳情はこの件を顧晏惜に報告し、独断で娘酒を七宿司に返還する。花芷はその半分を酒代として呉玉娘に渡し、「私は守りたい人を守るだけ。いつか必ず自由を手に入れる」と語る。その決意の起点は、拂冬が作った紅果だった。花芷は侍女たちに紅果の摘み取りから飴煮までを分担させたが、慣れない作業に不満が続出し、品質もばらばら。結局、花芷自身も作業に加わることになる。
顧晏惜が紅果畑を通りかかり、働く花芷の姿を目にする。彼女は現状を語り、さらに林婆に菓子と銭を渡して労いを忘れない。その姿に顧晏惜は耳を傾けつつも、花家の男僕が皆不在と知って落胆する。侍女たちが三夫人の呼び出しで仕事を中断せざるを得ないと知った花芷は、林婉に直訴し、身契の返還を願い出た。林婉は承諾し、公衆の場で夏金娥から身契が渡されると、花芷はそれを皆に分配。「自由を得るためのものだ」と言い放った。
自由となった覓秋は別れを告げ、迎春は花芷に計画を尋ねる。花芷は「紅果の販売から商いを始め、一歩ずつ事業を広げ、祖父たちを買い戻す」と宣言。束縛が解けた侍女たちは生き生きと働き、紅果の味も一層美味しくなった。夜、夏金娥はその様子を見て密かに策を巡らせ、布団を抱えて林婉の部屋へと向かうのだった。
9話あらすじ 花芷が蜜弾児の商売を始める
林婉の部屋へ「世話」を名目に住み込んだ夏金娥は、紅果を巡る花芷の行動に疑念を抱き、愚痴を繰り返す。だが紅果は拂冬の工夫によって極上の食感を実現し、花芷は「蜜弾児」と名付け、販売を決意する。竹串に刺した紅果を新しい菓子として売り出す準備は整ったが、侍女たちは街頭販売を拒む。そこで花芷は提灯を模した頭巾を作らせ、顔を隠して売る策を講じる。
拂冬と抱夏が学堂前で試し売りをすると、子供たちに大人気となり、一度に百十七文を売り上げた。羨んだ侍女たちも次々と販売に加わるが、抱夏は一時金を盗まれてしまう。幸い陳情が通りかかり、無事取り戻した。顧晏惜は偶然、頭巾姿の花芷を見つけ、わざと頭を叩きからかう。やがて抱夏は堂々と頭巾を脱ぎ、正当に稼ぐ誇りを示す。
一方、慶帝は顧晏惜に「七宿司の管理は苛烈であるべき」と忠告し、顧晏惜の立場を試す。陳情は変装して蜜弾児を買いに来たが、顧晏惜と鉢合わせする。花芷は二人が衝突するのを恐れ、慌てて陳情を脇へ引き寄せた。顧晏惜は花芷の清らかな志に心を打たれ、叔父・顧成焘のために蜜糕を予約する。やがて子鶏や子鴨を買い戻した花芷に、皆が歓声をあげるが、夏金娥はその光景に苛立つ。
給金が支給されると、拂冬は一貫を手に喜び、皆も納得したが、夏金娥は自分の半貫に怒りを覚える。夜、台所で盗みを働こうとして秦姨娘に見つかるが、口止めをして別の策を巡らせる。
顧晏惜が花芷の菓子を顧成焘に食べさせると、大いに気に入られる。そこへ憲王・顧晏恭が現れ、包装紙から花家製と察するが、顧成焘は黙して語らず。顧晏惜は顧晏恭が買った菓子を取り戻し、花芷に研究させる。
折しも大雨が降り、群衆に押される花芷を顧晏惜が守り抜く。顧晏恭が露店の撤去を命じたが、顧晏惜の存在に気づくと全ての商品を買い取るしかなかった。兄弟の対話で、私鋳造事件に絡む斉如海の陰謀が浮上し、顧晏惜は黒幕の存在を暗示する。顧晏恭はその察知に驚くと同時に、憧れの兄が過酷な境遇にあることを知り胸を痛める。
一方、蝉露は大夫人の指示で蜂蜜を盗み出していた。夏金娥はわざと彼女を捕まえ、花芷に管理権を返させようと画策するのだった。
10話あらすじ 芍薬がこっそり屋敷を抜け出し花家に身を寄せる
蝉露は病床の母のために蜂蜜を盗んでいた。林婉は事情を理解し、夏金娥の疑心を宥めるために帳簿を示し、花芷が特別扱いを受けていないことを証明する。蝉露には一年間のお小遣い停止という罰を与え、母の治療費は自らの取り分から出すと決めた。夏金娥の生来の強さと夫婦不和ゆえに「家政を仕切ることで顔を立てたい」という思惑を知った花芷は、自ら帳簿を返上した。
その頃、芍薬の庭の門が閉め忘れられ、通りかかった顧晏惜と董老丈が立ち寄る。覆面の刺客が屋根から見張る中、董老丈は絹糸で絞め殺され、顧晏惜から託された手紙を握ったまま絶命した。門が開き、外へ出た芍薬は初めて街の喧騒に足を踏み入れる。金のない彼女は何も買えず、沈煥茶の真似をして「兄の勘定に」と言い残して花芷の蜜弾を平らげた。
一方、顧晏惜は董老丈の死体を確認し、妹の失踪を知る。日暮れ、住所も言えない芍薬を見かねた花芷は屋敷へ連れ帰る。芍薬は家族と共に食卓を囲む喜びに浸り、林婉の病を見て独自の薬方を示し、医者を感嘆させた。七宿司が街を探しても芍薬は見つからず、翌朝、花芷と蜜弾を売る姿を顧晏惜が発見する。花芷は「芍薬を一人で食事させないで」と訴え、彼女の医術を高く評価した。
顧晏惜は妹を問い詰め、花芷がまだ正体を知らぬと知って安堵する。芍薬は閉じ込められるのを嫌がり、顧晏惜は「顧姓を隠す限り花家に留まって良い」と約束し、三百文を渡して花芷に託す。花芷は受け取り、顧晏惜を森へ連れ出して実の収穫を手伝わせ、さらに夕食へ招いた。
しかし覆面の刺客は二人を追跡。雨の中、顧晏惜と花芷は湖面を眺めながら互いの孤独を語り合う。十年離れた兄妹、そして祖父と離れた花芷――二人の心は不思議に響き合った。だが二夫人は大夫人に監視を命じ、芍薬を呼び出す。芍薬は沈黙を貫き、顧晏惜は草むらに潜む影に気づき、火災との関わりを疑う。
七宿司の待ち伏せで覆面の一人を捕らえるが、もう一人が紫篁居へ潜入。芍薬を狙う刺客に花芷が立ちはだかる。顧晏惜が駆けつけた時、花芷は人質に取られ、弩の矢が放たれる寸前――顧晏惜は言葉の裏に合図を込めた。花芷は瞬時に身をかわし、暗殺者は七宿司の矢に倒れた。
惜花芷~星が照らす道~ 11話・12話・13話・14話・15話 あらすじ
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