承歓記(しょうかんき)~人生最高の出会い~ 2024年 全37話 原題:承欢记
9話 あらすじ
第9集「壊れた信頼、暴かれた真実」
秘書として姚志明のもとで働き始めた麦承歓は、誰よりも早く出勤し、夜遅くまで残業する毎日を送っていた。完璧を求めるように真面目に働く姿に、同僚の何東は「無理をするな」と忠告するが、彼女は決して手を止めない。その健気な姿を姚志明は黙って見守りつつ、他人の干渉を許さなかった。
一方、辛家亮は変わらぬ恋心を見せ、仕事終わりに麦承歓を迎えに来る。だが、麦承歓はすでに彼との関係に迷いを抱き、心を閉ざしていた。辛家亮は両親が準備した新居を見せ、結婚の話を進めようとするが、麦承歓は「家も人生も他人に決められたくない」と拒む。彼女は辛志珊が入札会を有利に進めるための“餌”としてこの家を与えたことを見抜いていた。
その直後、麦承早が法律事務所で偶然「辛家亮の婚前契約書」を目にする。姉に知らせると、麦承歓は激怒。愛ではなく計算で縛られようとしていたことに深く傷つき、辛家亮に別れを告げる。夜、黄浦江のほとりでひとり佇む彼女の胸には、姚志明の「辛家では君の居場所は台所と庭だけだ」という言葉が刺さっていた。そこへ駆けつけた麦承早が優しく寄り添い、彼女はようやく涙をこぼす。「もう誰にも運命を決めさせない」と、静かに決意を固めるのだった。
その頃、劉婉玉は三合里の立ち退き決定を聞き、大喜びで家族を呼び集める。補償金で郊外の青浦に家を買うと張り切るが、麦承歓は両親を都会に住まわせたいと反対する。だが両親の意志は固く、彼女は「いつか必ず自分の力で都心に家を買う」と誓う。
一方、辛志珊は姚志明を訪ね、ホテルの入札で徳珊家居にチャンスをくれと懇願。姚志明は表面上、穏やかに承諾し、麦承歓に辛志珊の送迎を任せた。辛志珊は麦承歓に謝罪を口にしながらも、「徳珊家居を推薦してほしい」と迫るが、麦承歓は毅然として「実力で勝負すべきです」と言い放つ。その会話を何東が密かに盗み聞きし、姚志明に報告したことで、事態は思わぬ方向に転がっていく。
入札会当日、緊張の中で審査が進む。徳珊家居の辛家亮が壇上で発表を終えると、姚志明は突如、彼らがホテルに賄賂を渡していた証拠を提示。会場は騒然となり、辛志珊は逆上して「麦承歓がこの関係を利用し、息子に金を要求した」と公開の場で糾弾する。麦承歓は必死に否定するが、朱宝翹が立ち上がり、「彼女が天河家居に入札価格を漏らした」と告発。
激しい非難の渦の中、姚志明は沈黙の末、「確かにその証拠を見た」と告げる。麦承歓は打ちのめされ、ようやく悟る。彼が自分を信頼していたのではなく、辛家に対抗する“駒”として利用していたのだと。全てを失った彼女の胸に残ったのは、深い失望と裏切りの痛みだけだった。
——かつて信じた愛と誠意が崩れ落ち、麦承歓の心に芽生えたのは、初めての“覚醒”だった。
10話 あらすじ
第10集「罪と赦し、そして再出発」
入札会の騒動が収束した後、何東は麦承歓に代わって姚志明の意図を説明する。実は彼は、入札会が終わり次第、麦承歓を本社に異動させるつもりだった。しかし、すでに心を閉ざした麦承歓にはその言葉は届かず、怒りを抑えきれずに部屋を飛び出す。姚志明は、彼女のメールが誰かに盗用された可能性を疑い、警備部に監視映像の確認を命じた。
彼は必死に麦承歓を探すが見つからず、老人ホームで陳淑珍を訪ねる。陳淑珍は彼の顔を見ただけで事情を察し、「承歓を傷つけたのね」と静かに責める。姚志明は麦承歓が立ち直れないのではと心配するが、陳淑珍は「彼女は強い子よ」と言い切った。その言葉に救われつつも、姚志明は彼女を引き留められないと悟り、何東に彼女のための新しい職を探すよう指示する。
一方、張培生は宿敵デニスを失脚させ、勝利に酔って姚志明を祝うが、彼はどこか空虚だった。心の中はただ、麦承歓のことばかりで満たされていた。
その頃、麦承歓は辛家亮に電話をかけ、入札漏洩事件の真相を説明しようとするが、何度かけても繋がらない。落ち込む彼女を毛毛と麦承早が励ますが、彼女の瞳にはもう笑顔はなかった。辞職を考えるものの、「濡れ衣を着たまま逃げるわけにはいかない」と踏みとどまり、真相を自ら暴く決意をする。
彼女は同僚の雪莉に頼んでメールを開こうとするが、パソコンは押収され、ホテルの監視映像も封鎖されていた。朱宝翹の陰謀を感じ取った麦承歓は、直接彼女を問い詰めるが、朱宝翹は逆に「協力しないあなたが悪い」と開き直る。そこへ何東から電話が入り、「監視カメラで、あなたのPCを覆ってメールを送信した人物を見つけた」と告げられる。麦承歓は即座に呉優の仕業だと察し、彼女を追及。そのやり取りをすべて録音した。
証拠を姚志明に提出すると、呉優は朱宝翹に買収されたことを白状し、涙ながらに「情けをかけてほしい」と懇願する。朱正が彼女を弁護するも、麦承歓は毅然と「これは犯罪です。警察に通報します」と告げた。呉優は上海で成功したいという夢を語り、涙を流す。麦承歓は「私も同じ。けれど努力の代わりに誰かを裏切っては、本当の成功にはならない」と諭した。姚志明は最終的に呉優の警察処理を承認し、麦承歓の異動申請を受け入れる。
彼女はホテルアパートの管理部門に配属され、新しい職場で一からやり直すことになった。帰宅すると、母・劉婉玉が彼女の好物を作って待っていた。父・麦来添は娘の疲れを察するが、麦承歓は「大丈夫」と微笑んで話題をそらす。入札会のことを尋ねる母に、彼女は何も語らず、ただ静かに箸を動かした。
翌日、管理部に出勤した麦承歓は、張マネージャーから16世帯の担当を任される。その中でも512号室の陳女士は特に厄介で、滞納金を支払わず、次々と不満を訴える。さらには「1時間以内にミルクティーを買ってきて」と命じる始末。それでも麦承歓は笑顔を崩さず、走って店へ向かった。時間通りに戻ると、陳女士はさらなる雑用を押し付ける。彼女は黙々とこなすが、心身は限界に近づいていた。
そんな彼女を見つめる影——姚志明。彼は偶然を装い、同じ階へ引っ越してきていた。彼女に優しく声をかけるが、麦承歓は一切感謝せず、距離を保とうとする。葉小妹は「顧客の“いちばん必要なこと”に集中しなさい」と助言。麦承歓は陳女士の好みを調べ、ワイン試飲会の招待を手配して関係を修復する。
一方、麦承早は法律事務所で奮闘していた。工場の現場まで自ら足を運び、証拠を集めたが、報告会に遅れて劉弁護士に悪口を言われる。だが提出した資料の精度が高く、上司から称賛され、劉弁護士は逆に叱責される。
その頃、朱宝翹は辛志珊に解雇を通告される。「全部あなたのせいじゃない」と訴えるも、辛志珊は冷たく言い放つ。「徳珊家居には、あなたのような人材はもう必要ない」。
傷ついた者たちがそれぞれの場所で再出発を余儀なくされる中、
姚志明と麦承歓の“距離”は、再び静かに近づき始めていた。
11話 あらすじ
第11集「別離の雨 ― 絆を断ち切る夜」
麦承早は仕事で着実に成果を上げ、上司の羅銘礼から公の場で称賛を受けた。しかし、それが劉弁護士の逆鱗に触れる。彼は羅銘礼が麦承早の義兄にあたると知りながらも嫉妬に駆られ、権力をかさに彼を叱責した。
その頃、麦承欢は管理部門で奮闘していた。どんな理不尽な要求にも笑顔で応え、顧客・陳女士の信頼を得るために尽力。ワイン試飲会に招待して心を通わせ、陳女士は感動のあまり滞納金を全額支払い、過去の不満をすべて水に流した。その姿を見た姚志明は、ようやく彼女が新しい場所で輝きを取り戻しつつあることに安堵する。
一方、家では母・劉婉玉が娘の帰りが遅いことを心配していた。麦承早に辛家亮との関係を尋ねるが、彼はうまくはぐらかす。麦来添も「若い者に任せよう」と取りなしたが、母の胸騒ぎは止まらない。翌朝、彼女は真相を確かめるため、自ら辛家を訪ねる。
劉婉玉は手土産に燻製魚を持って陳徳晶を訪れるが、彼は冷たく言い放つ。「あなたの娘は辛家を裏切った。姚志明と結託して、入札価格を外に漏らしたんだ」。さらに「姚志明が辛家亮からのリベートを告発した」とまで言い切る。劉婉玉は耳を疑いながらも、娘を信じたい気持ちを抑えきれない。そこへ辛家麗が現れ、罵声を浴びせる。劉婉玉は争いを避けて立ち去ろうとするが、突然の雨に足を止めた。
麦来添は妻が辛家に向かったことを知り、姚志明を伴って迎えに向かう。その道中、辛家麗が「婚前契約書にサインさせた」と口を滑らせると、劉婉玉は怒りを爆発させた。「娘をそんな屈辱に晒すなんて!」と声を震わせる。そこへ駆けつけた麦承歓が母を庇い、「もういい」とその手を引いた。だが辛家麗の侮辱が止まらず、辛家亮がようやく制止に入る。
麦承歓は涙をこらえ、毅然と声を上げた。
「私は入札価格なんて漏らしていない。リベートのことも知らない。私は辛家亮を本気で愛している。でも両親に恥をかかせるような愛なら、もう続けられない。——私たちは、ここで終わりにしましょう」。
その一言で、場の空気が凍りついた。麦承歓は母の手を取って雨の中を走り去り、辛家亮は呆然と立ち尽くした。
追いかけた辛家亮は、玄関先で劉婉玉に止められ、傘の下で麦承歓と最後の言葉を交わす。
「僕は何度も母と争った。それでも君を守りたかった」
「私はもう疲れたの。誰も傷つけたくない」
冷たい雨の中、二人の関係は静かに終わりを迎えた。
その光景を、到着した麦来添と姚志明が遠くから見つめていた。姚志明は胸を締めつけられる思いで、「お二人を先に送ってください。私は歩いて帰ります」とだけ告げた。
家に戻った麦承歓は無言のまま部屋に閉じこもり、食事も取らずに一晩を過ごした。麦承早が帰宅して事情を知ると、姉の孤独を痛感し、「自分が辞めれば全て楽になる」と考えるが、麦承歓は「私のことで自分の夢を壊さないで」と静かに諭した。
翌朝、劉婉玉は豪華な朝食を用意するが、麦承歓は箸をつけずに出勤する。母は涙をこらえながらその背中を見送った。マンションのロビーに入ると、彼女は足元の注意看板に気づかず転倒。偶然その場にいた姚志明は助けようと手を伸ばすが、結局、言葉を飲み込む。
張マネージャーは麦承欢の誠実な働きぶりを称え、同僚たちに「彼女のように努力しろ」と励ます。その頃、毛毛が彼女の別れを知り、心配して駆けつけた。麦承歓は涙をこらえきれず、初めて胸の内を吐露する。
「愛していたけど、もう終わったの。私、前を向かなきゃ」
激しい雨が洗い流したのは、裏切りと誤解、そして愛の残滓。
麦承歓は静かに新しい朝を迎え、再び一人で立ち上がろうとしていた。
12話 あらすじ
第12集「山の静けさ、心のざわめき」
心に深い傷を負った麦承歓(マイ・チョンファン)は、弟・麦承早(マイ・チョンザオ)や友人・毛毛(マオマオ)に慰められてもなお、悲しみから抜け出せずにいた。母・劉婉玉(リウ・ワンユー)は焦りと後悔に苛まれ、あの日、辛家で辛家亮(シン・ジャリャン)に投げつけた言葉を思い出しては胸を痛める。彼女は再び辛家を訪れ、娘のために関係を修復しようとするが、父・麦来添(マイ・ライティエン)は「今は動くべきではない」と制止する。
娘と妻の沈んだ様子に心を痛めた麦来添は、祖母・陳淑珍(チェン・シューチェン)のもとを訪ね、助けを求めた。麦承歓の苦境、辛家での屈辱、そして破局の経緯を聞いた陳淑珍は、孫娘を支える決意をする。彼女は麦承歓を老人ホームに呼び出し、温かく包み込むように励ます。麦承歓はついに感情を抑えきれず、陳淑珍に抱きついて涙を流した。陳淑珍はその涙の重みを理解し、「どんな決断もあなたの力で乗り越えなさい」と優しく背中を押す。
その頃、辛志珊(シン・ジーシャン)と朱宝翘(ジュ・バオチャオ)の密かな関係が深まり、職場を去った朱宝翘は辛志珊への執着を募らせていた。彼女の存在は、辛家に新たな波紋を呼びつつあった。
一方、姚志明(ヤオ・ジーミン)は陳淑珍を訪ね、麦承歓を巻き込んだ件で叱責を受ける。しかし彼の胸には、すでに新たな計画があった。陳淑珍が経営する「興安里ホテル」を支援し、麦承歓を巻き込む形で再起を図ろうとしていたのだ。
週末、姚志明は二人を連れて山奥のリゾートホテルへ。だが、再会早々に麦承歓と口論となり、険悪な空気に包まれる。彼の不用意な言葉に麦承歓は激怒し、陳淑珍が慌てて仲裁に入った。険しい山を登る途中、麦承歓はホテルの運営問題を次々と指摘し、姚志明の経営方針に真っ向から反発する。
その夜、姚志明は過労で倒れ、急遽診療所に運ばれる。必死に看病する麦承歓の姿に、彼の心は静かに解けていく。目を覚ました姚志明が見たのは、疲れ果てて眠る麦承歓の姿だった。電話で指示を出そうとする彼を制し、麦承歓は「少しは自分の体を大切にして」と穏やかに諭す。
山の静寂の中で、二人の距離が少しずつ近づいていく。過去の痛みと誤解を超え、麦承歓の心には、再び希望の灯がともり始めていた。
承歓記(しょうかんき)13話・14話・15話・16話 あらすじ
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