繁花 (はんか) Blossoms Shanghai 2023年 全30話 原題:繁花 / 原作は金宇澄の同名小説『繁花』(浦元里花訳、早川書房)
第16話 あらすじ
第16集は、阿宝と玲子の「始まり」が丁寧に描かれる一方で、阿宝が過去の縁と現在の現実、そして未来の野心の狭間に立たされる重要な回となる。
阿宝は日本へ渡り、かつて板蓝根をきっかけに知り合った山本に助けを求める。久々の再会に山本は心から喜ぶが、仕事の都合ですぐには時間が取れず、阿宝を銀座のクラブで待たせることになる。言葉も通じず勝手も分からない阿宝は門前払い同然の扱いを受けるが、そこで偶然出会ったのが玲子だった。彼女の助けで阿宝は銀座クラブの中に入ることができる。玲子はそこで働くサービス係で、阿宝にとっては目を疑うほど豪奢な世界だった。
時間が過ぎるにつれ、阿宝は高額な料金を恐れて落ち着かなくなり、店内に留まることを断って外で待つ道を選ぶ。玲子はそんな彼の不器用さを見抜き、料金はかからないと教えるが、それでも阿宝は自分の分をわきまえようとする。その日、何も口にしていないと知った玲子は、半ば強引に彼を連れ出し、近くの店で麺を食べさせる。そこで働いていたのが菱红で、同郷と知ると小皿料理をいくつも追加してくれる。
食後、二人は山本を待ちながら言葉を交わす。玲子は将来、自分の店を持ちたいという夢を語るが、阿宝の意識は終始「山本に会えるかどうか」に向いている。そんな彼に、玲子は神社で求めたという“運気のお守り”を手渡し、「必ず会える」と背中を押す。その後、菱红は冗談交じりに「そのお守りがなければ、成功するのは玲子のほうだった」と語る。
やがて阿宝は山本と再会し、繍花機(刺繍機)の件で協力を取り付けることに成功する。緊張が解け、酒に酔った阿宝を玲子は最後まで世話し、通訳としても支え続ける。阿宝は感謝の気持ちから運気符を返そうとするが、玲子は受け取らず、「上海でまた会いましょう」と微笑む。
それから半年後、山本は阿宝からの手紙を玲子に届ける。封を開いた瞬間、玲子は声を上げて喜ぶ。そこには、阿宝が上海で、彼女の名義を使って一軒のレストランを開いたという知らせが書かれていた。かつて語った夢が、思いもよらぬ形で現実になった瞬間だった。
一方上海では、三羊ブランドの成功を祝う祝賀会が企画されるが、阿宝は出席を断る。金科长は爷叔に理由を尋ねるが、爷叔は「汪小姐の顔を立てていただけだ。今はもう関係ない」とそっけなく答える。李李は阿宝が来ない理由を察し、彼の視線がすでに香港という“もっと大きな魚”に向いていることを見抜く。
阿宝は香港へ渡り、商談のためホテルに滞在する。そこで偶然再会したのが、かつての恋人・雪芝だった。彼女は離婚後、実際にはホテルの従業員として働いており、かつて語っていた「女老板」という姿は虚像だった。雪芝は阿宝の成功と評判を知っており、彼が順調に生きていることを心から喜ぶ。阿宝は彼女を助けたいと申し出るが、雪芝は故郷に戻って笑われることを恐れ、香港に留まることを選ぶ。
阿宝は妥協案として、彼女に香港代表として働いてほしいと持ちかけるが、雪芝はそれも断る。別れ際、雪芝は阿宝に「今、誰かいるの?」と尋ねる。阿宝は正直に「一人だ」と答えるが、雪芝は「自分にはもう家庭がある」と告げ、二人の過去が完全に終わったことを突きつける。
その頃、上海では汪小姐が屋上でアイスを食べながら、必死に気丈を装いながらも涙を流していた。
二か月後、阿宝は香港から上海へ戻る。梅萍は贈り物を持って爷叔を訪ね、27号での立ち回りが順調であることを褒められる。爷叔はわざと、阿宝が二十万元の注文を金科に渡したと話し、梅萍の胸中に野心を芽生えさせる。一方、三羊の高仿商品は爆発的には売れなかったが、阿宝は約束通り服装店での販売を実現する。
沪联との提携は実らず、証券業への転身を目指す阿宝に、爷叔は「一足飛びすぎる」と警鐘を鳴らす。その夜、阿宝は紅鹭を訪れ、窓越しに李李と挨拶を交わす。二時間後、李李は自ら彼のもとへ歩み寄り、南京路によく現れる理由を尋ねる。阿宝は「市場は大魚が小魚を食う場所だ」と淡々と答える。
夜东京では、菱红と陶陶たちが力を合わせ、店は大繁盛していたが、皆が玲子の不在を案じていた。阿宝は「友が散らなければ、夜东京も散らない」と語る。数日後、玲子の誕生日、彼女は姿を見せず、店には譲渡の張り紙が出される。しかしその直後、玲子は静かに家へ戻ってくる――物語は、再会の予感を残して幕を閉じる。
第17話 あらすじ
玲子は誕生日当日、ひとり静かに自宅へ戻り、屋上で風に吹かれながら、かつての誕生日の記憶を思い返していた。かつて夜東京で賑やかに祝われたあの日と違い、今年の誕生日は孤独と向き合う時間となる。しかし彼女が姿を見せなくても、夜東京では仲間たちが彼女の誕生日を祝っており、その後、店の譲渡を知らせる貼り紙が出される。そこへ偶然、店を借りたいという客が現れるが、まさにその瞬間、玲子本人が姿を現し、自分が夜東京の「老板娘」であることを明かす。突然の登場に客は引き下がり、場は一気に緊張感を帯びる。
葛老師は最近の店の状況を説明するが、玲子はかつての恨みを引きずる様子もなく、むしろ皆を食事に誘う。その態度に陶陶は「これは鴻門の会ではないか」と警戒し、菱紅もまた玲子と顔を合わせることを恐れる。三人はおそるおそる夜東京を訪れるが、そこで玲子が明かしたのは、実はこの数日間、日本へ行っていたという事実だった。表向きは旅行と称しながら、実際には全ての貯金を使い果たし、夜東京を立て直す覚悟を決めていたのである。彼女が戻ってきた目的は、店を整理し、再び自分の力でやり直すことだった。
一方、史老師は誰かを待ち続けているが、その人物はついに現れない。近所の誰もが彼が誰を待っているのか知っていながら、その人は姿を見せず、史老師の孤独だけが際立つ。その姿を偶然見かけた玲子は、何も言わずその背中を見送る。葛老師は陳老師の描いた絵の中の女性が玲子であることに気づき、彼をからかうが、陳老師は家賃の催促だと誤解し、玲子の絵を盾にして金を渡し、距離を置こうとする。想いはすれ違い、誰もが自分の本心を隠したままだ。
玲子はついに決断し、夜東京の帳簿を阿宝に手渡す。それは以前、叔父の指示で行っていたことだと打ち明ける。阿宝は誠意として改装費用を差し出すが、玲子はそれを拒み、彼に出資から退くよう求める。彼女は誰にも頼らず、ひとりで店を切り盛りしてみたいと考えていた。阿宝はその覚悟を理解し、退く意思を示して去ろうとするが、玲子は彼に三年前にもらった「運気符」を返すよう求める。阿宝は財布からそれを取り出して返し、「自分たちは生死を共にした仲だ。切れる縁じゃない」と語り、将来成功したら必ず力になると約束する。その言葉に、二人の関係の深さが静かに浮かび上がる。
時代は大きく動き、株式市場では高騰の後に急落が起き、個人投資家が急増する。制度も変わり、法人による証券口座開設が認められ、上海は国際化への道を加速させていく。阿宝はその流れの中に新たな機会を見出し、証券取引所で蔡司令に服飾会社の上場について相談する。かつて彼に引き上げられて今の地位を得た阿宝は、今度は自分が助ける番だと考え、上場顧問を引き受ける決意を固める。
その頃、汪小姐は工場で男たちと綱引きをしながらも、雑草のような粘り強さで仕事をこなしていた。工場長に頼まれ、金美林での宴席を手配するが、金美林は彼女の背後に宝総の存在を感じ取り、至真園に勝つ好機だと快諾する。しかし当日、宝総が現れなかったことで事態は一変し、汪小姐の面目は潰れてしまう。さらに工場長の両親が包間を巡って騒動を起こし、金老板が怪我をする事態に発展する。
その場に現れた宝総は、汪小姐を守るため自ら平手打ちを受ける。あまりの出来事に汪小姐は感情を抑えきれず、彼への申し訳なさと悔しさから涙を流す。そして「いつか必ず、この黄河路であなたのために公道を取り戻す」と心に誓う。後日、疑いが晴れても彼女は元の職場へ戻らず、自分自身の力で立つ道を選び、誰にも依存しない「自分の码头」を築くことを決意する。第17集は、玲子と汪小姐、それぞれの自立への覚悟が静かに、しかし確かに描かれる回となっている。
第18話 あらすじ
葛老师は一枚の古い写真を見つめながら、かつての夜東京にあった「味」と「空気」を懐かしむ。店がただの飲食店ではなく、記憶に残る場所であるべきだと語り、夜東京には夜東京ならではの特色が必要だと提案する。その言葉に背中を押されるように、玲子は本格的な改革を決意し、菱紅のもとで器や調度品を探し回る。彼女は夜東京を中途半端に直すのではなく、根本から生まれ変わらせる覚悟だった。
一方、阿宝は小邮票に至真园を徹底的に張り込ませ、「鲶鱼(大物投資家)」を捕まえる準備を進める。株式市場は大きく揺れ、深圳では下落が深刻化する一方、上海市場は相対的に好調を維持していた。阿宝は、この流れこそが李李が自分に“鲶鱼”を示唆した理由だと直感し、深圳の資金を持つ客が至真园に現れていることを見抜く。
そんな中、玲子はあえて至真园を訪れ、繁盛店のやり方を学ぼうとする。その姿は金美林や李李の目にも留まり、李李は彼女に声をかけ、包间を用意しようとする。しかし玲子は特別扱いを断り、五百元を差し出して「この店の特色料理が食べたい」と率直に告げる。潘助理が次々と料理を運び、豪華な食卓が整う中、李李は彼女の真の目的が食事ではないことを察し、玲子も夜東京の改装計画を包み隠さず打ち明ける。夜東京は黄河路から遠く、立地で勝負はできない。だからこそ「中身」で勝つ――その覚悟を聞いた李李は、静かに彼女を見送り、同じ商売人としての敬意を示す。
その話を聞いた蔡司令は、鲶鱼を待っていたはずが、玲子が至真园に行ったと知り、彼女が本当に阿宝から離れようとしているのだと感じ取る。夜東京に戻った玲子は二階にこもりきりになり、陶陶たちは不安になって様子を見に行く。すると床一面に描かれていたのは、座席配置や動線を考え抜いた改装の設計図だった。彼女は座席数を増やし、回転率を上げる計画を着々と進めていた。
さらに玲子は葛老师の古董や、菱紅が大切にしていた最高級の茶盤を借り、料理人の装いで皆の前に立つ。何日も研究を重ねて完成させた料理を振る舞うと、葛老师たちは一口食べた瞬間、言葉を失う。それは今まで食べたことのないほど美味しく、同時に懐かしい「昔の味」でもあった。玲子は今後、時間帯や客層によって料金を分け、外賓や観光客にも対応すると宣言する。「本気でやれば、黄河路の連中にも負けない」――その言葉には、揺るぎない自信が宿っていた。
場面は汪小姐の周囲へ移る。梅萍は汪小姐の復帰を警戒していたが、彼女が辞職したと知り、内心ほくそ笑みながら昇進を狙う。しかし金科长は、梅萍の焦りを見抜き、「今の心境では無理だ」と一蹴する。落ち込んだ梅萍が爷叔に愚痴ると、彼は『鋼鉄はいかに鍛えられたか』を読むよう勧め、「急ぐことほど、ゆっくりやれ」と諭す。
その頃、汪小姐は自ら外贸を立ち上げる決意を固め、金科长に老顧客を招商会へ招きたいと伝える。しかし「27号」という後ろ盾を失った今、誰も来ない可能性を指摘されても、彼女は楽観的だった。招商会の会場に至真园を選んだのは、あの場所に自分の居場所を作りたいという強い意志の表れだった。
阿宝は商人たちが汪小姐を口先だけで励ましていることを見抜くが、自分が表に出られない以上、精神的に支えるしかない。しかし爷叔は、阿宝がこっそり会場へ行かないよう、わざと一緒に食事をして引き留める。案の定、招商会当日、汪小姐の元には誰一人として現れない。それでも李李は包间を撤収せず、静かに彼女を支える。
そこへ魏总が現れ、大厅で招商を呼びかけるが、客たちは皆断っていく。それでも魏总と范总は包间に入り、わざと話題を逸らしながら汪小姐を笑わせる。范总は資金面での支援を申し出るが、汪小姐は外贸公司に戻る道だけは拒み、自分の力でやり抜くと決意する。帰り道、彼女は魏总に「一緒にゼロから始めよう」と持ちかけ、魏总は街中で喜びを爆発させる。その噂は瞬く間に広まり、爷叔の耳にも入り、「新たな競争相手が現れた」と阿宝に警告する。
物語の終盤、蔡司令から連絡を受けた阿宝は急いで向かい、ついに強慕杰が上海に到着したことを知る。株価暴落の中、南国投は形だけの看板と揶揄される状況に追い込まれていたが、強总は社員に戦略転換を命じ、これまでにない“題材”での逆転を狙う。密かに交わされる数字の暗号――それは、彼らが再び這い上がるための鍵となる兆しだった。
第18集は、玲子の再生、汪小姐の孤独な挑戦、そして阿宝を取り巻く金融の荒波が交錯し、それぞれが「自分の戦場」を選び取っていく重要な回となっている。
第19話 あらすじ
阿宝は、ついに強慕杰が本格的に動き出すその日を「勝負の時」と定め、相手が全力を注ぐ瞬間こそ隙が生まれると読んで、静かに機会を待っていた。表では動かず、水面下で着実に準備を進めるその姿は、かつて黄河路でのし上がってきた頃と変わらない。
その頃、玲子は夜東京の帳簿を阿宝に手渡す。普段は飄々として掴みどころがないように見える玲子だが、帳簿には毎晩欠かさず記された細かな記録が残っており、店をどれほど大切に思ってきたかが一目で分かるものだった。いよいよ夜東京の改装が始まろうとする中、陶陶は仲間たちを集め、取り壊される前の店と写真を撮ろうとする。かつて皆で汗を流して作り上げた場所が消えていくことに、言葉にできない寂しさを抱えていた。
葛老师は、次々と外に運び出される物の中に、かつての思い出が詰まった古い調度品が混ざっていることに気づき、玲子がそれらを「不要なもの」として捨てていることにショックを受ける。玲子自身も、かつて日本から帰国した後、阿宝から夜東京を託された日のことを思い出していた。当時はただの一度きりの縁だと思っていた相手が、人生を大きく変える存在になるとは想像もしていなかった。
葛老师は、阿宝が部屋を散らかしたことには文句を言うものの、玲子の姿を見るや態度を一変させる。阿宝は自ら作業着に着替え、夜東京の改装工事に加わりながら、「この店は小さいが、必要なものはすべて揃っている。君なら必ず切り盛りできる」と玲子に語る。玲子は、見ず知らずに近い自分がこれほど大きなものを受け取るわけにはいかないと、一度は従業員として働くことを申し出るが、阿宝は対等な立場で共同経営者になることを提案する。
一方、通りの向かい側でその様子を見つめる陶陶は、捨てられていく家具の中に宝总専用の椅子を見つけても、何も言えずに立ち尽くす。夜東京は、彼と阿宝、菱红たちの青春そのものだった。その記憶が瓦礫のように壊されていく光景は、あまりにも切なかった。
場面は汪小姐と魏总へ移る。二人は新会社の名前を巡って話し合うが、「明珠」だけでは魏总の存在が薄れると悩み、かといって「魏珠」も冗談にしかならない。試行錯誤の末、まずは開業祝いの宴を盛大に開くことを決め、七、八十卓規模の宴席を計画する。魏总は紅鹭に依頼するがあっさり断られ、小江西が助け舟を出すものの、卢美琳は「後ろ盾もない素人の商売に誰が賭けるのか」と冷ややかだった。
しかし潘助理の取り計らいで至真园に話が通り、李李は「かつて魏总に助けられた恩」を理由に、八十八卓を用意すると即断する。費用は後回しでいいというその姿勢に、魏总は深く感動し、全額前払いで予約したという噂を流して彼女の顔を立てる。これを聞いた卢美琳は、遅すぎた後悔に苛まれる。
陶陶は最高級の海鮮を汪小姐のために至真园へ届けようとするが、阿宝は爷叔から「出張中」と告げられる。汪小姐は景秀にも招待状を送り、友人として助言を受けるうちに、開業式がいつの間にか「結婚披露宴」のような雰囲気になっていることに戸惑いを覚える。李李はその派手さに口を挟めず、魏总は赤いスーツを身にまとい、新郎さながらの振る舞いを見せる。会場では「早く子どもを」と囃し立てる声まで上がり、汪小姐は耐えきれず外へ逃げ出す。
そこへ金科が現れ、汪明珠を静かに励ます。周囲が思う通りに動かなくても、支えてくれる人の存在を大切にしろと語り、彼女に一冊の切手帳を手渡す。それは師匠から受け継いだ、非常に価値のあるものだった。汪明珠は涙を流しながらも、その想いを裏切らないと心に誓う。
彼女は至真园に戻ると、真っ先にその切手を李李に差し出し、宴席代の担保にすると申し出る。李李はこれ以上の負担は魏总に任せるべきだと諭す。宴の最中、范总と魏总は阿宝の話題で言い争いになりかけるが、汪明珠がケーキを切ることで場は収まり、開業式は無事に終わる。
魏总は阿宝のために一席を空けていたが、最後まで彼の姿は現れない。范总は見切りをつけて帰ろうとするが、李李は「まだ来る」と読んで潘助理に客を見送らせない。魏总が阿宝を欠席の口実に不満を口にしたその瞬間、阿宝は静かに現れる。
外に出た汪明珠の前に止まっていたのは、一台のキャデラック。かつて彼女が諸暨へ阿宝を助けに行った際、二手車を壊してしまったことを思い出す。阿宝は「あの時、修らなければ新しい車を贈ると言った」と語り、この車を二人の絆の証として差し出す。しかし汪明珠にとって、それは感謝ではなく、過去の感情を勝手に象徴化されたように感じられ、深く傷つく出来事となるのだった。
第19集は、「善意」と「重さ」、「支え合い」と「踏み込みすぎ」の境界線が浮き彫りになり、登場人物たちの関係が静かに、しかし確実に揺れ動く回となっている。
第20話 あらすじ
強慕杰は、側近のマネージャーと次の一手を相談する最中、直前まで部屋にいた女性社員の様子に違和感を覚える。調査の結果、彼女に問題があると判断し、即座に解雇する。強慕杰は、表に出さずとも常に周囲を観察し、危険の芽を早めに摘み取る冷酷さを持つ男であることが改めて示される。一方その裏で、阿宝の指示を受けた「邮票李」は至真园に張り込み、南国投資公司の動きを細かく監視していた。
汪明珠は、独立した事業の拠点となる小さな部屋を見つけ、そこを新たなオフィスにしようと動き出す。彼女が完全に外贸公司を離れた今、爷叔は金科に直接話をつける必要に迫られ、久しぶりに27号の外贸公司を訪れる。ここは彼にとっても長い年月を隔てた場所であり、かつての仲間・老姜がすでに亡くなっていることを知り、時の流れを痛感する。三階で何時間も待たされた末、金科と話せたのはわずか五分。しかも対応は終始事務的で、私情を一切挟まない態度だった。爷叔はその冷たさに違和感を覚えつつも、外贸公司の空気が完全に変わってしまったことを悟る。
建物を出た爷叔は、思いがけず汪明珠と鉢合わせする。彼女もまた、牛仔裤(ジーンズ)市場を見据えて動いている可能性があり、その取引の一部は依然として外贸公司の流れと繋がっている。爷叔は、汪明珠の強みは「上流」にあると見抜き、阿宝には「下流」から攻めるべきだと助言する。すでに小宁波は仕入れ先と交渉し、価格を限界まで下げており、汪明珠もこれ以上は下げられないはずだと踏んでいた。
その頃、魏总は至真园で商談中、家族に呼び出され別室へ移される。一族は彼に上海を諦め、海宁に戻って皮革業を継ぐよう迫るが、魏总は拒否する。海宁にはすでに多くの叔父たちがいるが、上海には自分の居場所があり、牛仔裤という新たな分野で勝負したいという強い意志を示す。そこへ汪明珠が迎えに来る途中、店先で阿宝と鉢合わせる。互いに距離を保ちながら視線を交わす三人。立ち去ろうとした阿宝は思い直し、魏总を送ろうと申し出る。汪明珠は、自分が牛仔裤で勝負するつもりだと告げ、価格競争でも阿宝には負けないと宣言する。阿宝もそれを真正面から受け止め、「ならば勝負だ」と応じる。
一方、邮票李は至真园で香港人と偶然再会する。その人物は、阿宝の住む建物の81号室に滞在している客で、彼が関わる弁護士チームが大量の書類を粉砕処理していることに気づく。清掃員に頼んでそのゴミを回収し、阿宝と二人で夜通し貼り合わせた結果、重要な情報が浮かび上がる。しかし阿宝は、これが強慕杰による罠の可能性を疑う。自分たちが同じホテルにいることを承知の上で、あえて情報を漏らしているのではないかと警戒する。
阿宝は李李に会いに行き、彼女の口からバフェットの言葉を借りた示唆を受ける。「株を買うとは、会社を買うことだ」。その真意を悟った阿宝は、強慕杰の狙いが「株」ではなく「会社そのもの」にあることに気づく。三无板块は買収しやすく、特にコード「6」と「5」を含む銘柄は要注意だという分析が、破棄された書類の内容とも一致する。603や601が次の標的になる可能性が高いと読み、これまで誰も考えなかった手法に強慕杰が踏み込もうとしていることを理解する。
蔡司令も、三无板块の取引量が不自然に増えていることをデータで示し、阿宝の読みを裏付ける。一方で、阿宝が送り込んでいた内通者・小艾は強慕杰に正体を見破られ、即座に切り捨てられる。しかも逆に、阿宝の周囲に人間を送り込まれるという一手上を行く対応を取られてしまう。
強慕杰は至真园に乗り込み、李李に直接釘を刺す。上海に来た目的を忘れるな、至真园はただの「場」に過ぎない、と冷酷に言い放ち、過去の彼女の事情をすべて把握していることを匂わせる。感情に流されて裏切るなという無言の脅しだった。李李は距離を取るため、彼の食事代をすべて清算し、今後は来ないよう告げる。去り際、強慕杰は名刺を残し、その裏には「601」とだけ書かれていた。
李李は30万元を阿宝に返し、合作の話を持ちかけられるが、その場では答えを出さず、翌日に持ち越す。ところが翌日、彼女は約束の場所に現れない。実はその少し前、李李は強慕杰の警告を思い返し、決断を迷いながらガラスに「A」の字を残していた。遅れて現地に向かったものの、阿宝はすでに立ち去っていた。
それでも李李は密かに指示を出し、毎日五万株を特定の口座に入れるよう動かす。そして電話で阿宝に、あの数字――「601」を伝える。阿宝は毎日五百万元を動かす賭けに出るかどうか、究極の選択を迫られる。そして彼は、李李の真意を信じるかのように、あえて「603」を選ぶのだった。
第20集は、情報戦と心理戦が本格化し、友情・信頼・裏切りが交錯する転換点として、物語を一気に緊迫させる重要な回となっている。
















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