似錦 ~華めく運命~ 2025年 全40話 原題:似锦
第6話あらすじ
次女は母親に、自分は二度と戻らないと告げる。肖氏は胸を痛め、全て自分が用意した縁談のせいだと自責する。「彼を打つことは、自分を打つことと同じで、やはり痛い」と漏らすが、次女は「お母様のせいではありません。私のためを思ってのことだと分かっています」と答え、母娘の間に理解が生まれる。姜似たちも外にいて、五女は「昔は次姉が羨ましかったが、高門の大家に嫁いでも良いことはない」と語り、姜似は妹たちの成長を感じる。姜似は次女に「私にも方法がある」と伝え、彼女に冷静な判断を促す。
次女は侯爵家である曹興昱を倒せなければ自分の命は終わると覚悟していた。姜似は死や暴行を装う方法では解決にならず、他の手段を模索するよう諭す。一方、甄珩は女性の傷口から見つかった珠に気づく。この珠は安子が使うようなものではなく、事件には曹興昱の妻も関与していることが判明。二娘は連行され、母に姜似を探すよう伝える。次女を救えるのは姜似だけとなり、緊迫した状況が続く。
二娘は公堂で曹興昱に誣告されたと主張し、自分も他の女性同様に殴打されていたと訴える。曹興昱は「次女は安子と共謀して犯行を指示した」と主張するが、姜似は「姉は当時眠っていた。主犯のはずがない」と反論する。甄珩は証人として遅姑娘を呼び、彼女は「姜家の姉妹とは面識がなく、曹興昱に騙され監禁・拷問された」と証言。曹興昱は認めず口封じを企てるが、姜似が立ち塞がり、余七が毒矢を受けて姜似を守る。甄珩は曹興昱が公の場で殺人を試みたとして拘束させ、身分を問わず裁きを下す姿勢を示す。医師の迅速な処置で余七は命を取り留め、数日の休養で回復可能と診断される。龍旦は薬の調達を手伝い、姜似に余七の世話を依頼する。
余七が目を覚ますと、姜似はなぜ自分を救ったのかと尋ねる。余七は「あなたも遅姑娘を助けに行ったからだ。矢に毒が塗られているとは思わなかった」と答える。甄珩が現れ、姜似に先に帰るよう指示し、余七の世話を引き受ける。姜似は「では甄珩にお任せします」と述べ、先に立ち去る。姜似は前世の記憶を振り返る。長公主の母娘に追われ、南疆へと追いやられた過去、余七との出会いと愛、そして長公主の娘が余七に恋をしたことでの絶望的状況を思い出す。しかし今なら運命は変えられると感じ、未来への希望を抱く。
第7話あらすじ
盧楚楚が余七を訪ねてやって来る。余七は彼女に会いたくなく身を隠そうとするが、結局見つかってしまう。盧楚楚は「道中を楽しみながら来たら、いつの間にかここに辿り着いた」と飄々と答え、幼い頃からの旧知の空気が漂う。そこへ姜似が現れ、思いがけず盧楚楚と対面して驚く。盧楚楚はかつて余七と幼少期を共に過ごし、彼が赤羽騎を創設した後に別れたのだと語る。姜似はその豪胆さに感心し、余七が決して語らなかった過去を、盧楚楚があっけらかんと話してしまったことに戸惑う。姜似は薬を持参し、弱った余七に飲ませようとするが、盧楚楚が遮り「自分で飲める」と笑う。二人のやり取りには、張り詰めた空気と微妙な感情が流れていた。
一方、都では長公主が娘・郡主に曹興昱の事件を説明していた。郡主は「侯爵を助けることが大周を救うことだ」と信じ、母の立場を利用して釈放を図ろうとするが、長公主は娘の浅はかさを叱り、いずれふさわしい婿を探そうと心に決める。その頃、長興侯が長公主を訪ね、息子・曹興昱の命乞いをするが、長公主は「真実を隠したまま私に頼るのか」と冷ややかに突き放す。
事件の核心には、曹興昱の所持品から見つかった書物『逍遥遊』があった。その中には南烏から密輸された薬材が記されており、疾風衛が「曹興昱は南烏と通じている」と断定し、拘束を要求する。令状を確認した余七は文面の曖昧さを理由に釈放を拒み、事態を静観するが、曹興昱は不敵に笑う。余七は「私がどうしたいかではなく、お前がどう説明するかだ」と静かに告げ、甄珩と共に事態の収拾を模索する。
姜似もまた、秀娘子に事件を伝え、失われた娘たちの無念を知る。二人は「最早、直接陛下に訴えるしかない」と決意する。陛下は微服で巡行中だったが、この一件を聞きつけて都に戻り、親自らの審問を命じた。曹興昱は公の場に引き出され、南烏との通謀、人命軽視、正妻への虐待などの罪が読み上げられる。母は涙ながらに「全ては私のせいです」と告白し、幼い頃から父に虐げられた息子を庇おうと自ら毒を仰ぐ。母の犠牲により、ついに真実が明るみに出る。
皇帝は詔を下し、曹興昱を秋に斬首刑に処すと宣告。長興侯には功績を考慮して爵位の継続を許すが、それは一代限りとした。甄珩は事件の経緯を陛下に報告し、姜似の働きを伝える。皇帝は「彼女も凡人ではない」と感嘆し、再び姜似に注目する。
一方、姜似は静かに思索していた。「過去と違う道を選べば、家族の運命も変えられるはず」。運命に抗う覚悟を胸に、彼女は新たな試練へと歩み出す。過去の因縁と現在の策謀が交錯する中、光と闇の境界に立つ者たちの物語は、さらに深く、激しく動き始める──。
第8話あらすじ
余七が久しぶりに姜似を訪ねてくる。曹興昱の母の最期を見届けた姜似は、「母親は皆、子のために尽くすものだ」とつぶやく。しかし余七は静かに首を振り、「すべての母がそうではない」と告げる。その言葉に、姜似は彼が自らの母を指していると気づく。これまで亡くなったと聞かされていた余七の母は、実は生きていた。幼い頃、占い師から「不吉な星のもとに生まれた子」と言われ、母は寵愛を失うことを恐れて、夫に余七を追放させたのだ。姜似は初めて、彼もまた“忌まれた子”だったことを知る。真実を知りたがる姜似に、余七は「今さら調べても意味はない」と言うが、姜似の胸には「それでも知らなければ前に進めない」という思いが残る。
一方、皇帝は曹興昱の一件が収束したにもかかわらず、重苦しい思いに囚われていた。長興侯の怨恨は消えておらず、宮中の空気も張り詰めている。皇子たちを集めた皇帝は、「朕は厳しすぎたか」と問うが、誰も本心を明かそうとしない。静まり返る殿内で、皇帝の脳裏には若き日の記憶がよみがえる。――余七が生まれた日、「不吉な子」として追放を命じたのは、他ならぬ自分自身だった。あのとき、母子を守るつもりが、結果的に彼の孤独を生んでしまったのだ。
劉公公は「余七殿下は赤羽騎を率い、多くの戦功を立てました。不吉などではございません」と進言するが、皇帝は「まだ時期尚早」と首を振る。だがその裏で、余七自身も真相を探ろうと決意し、龍旦に命じて司天監の古記録を洗わせる。「誰が“呪われた子”と決めたのか」――彼は静かに、過去への扉を開こうとしていた。
その頃、姜似は新しい夢を語っていた。「自分の店を開きたいの。女性たちが安心して働ける場所を作るの」。遅姑娘に助力を頼むと、遅姑娘は「私は故郷に戻って、貧しい娘たちに読み書きを教える」と微笑む。姜似は彼女の決意を尊び、旅路の安全を祈る。別れの後、姜似の家では父が古い書画を干していた。娘の夢を知った父は「これを売って資金にしなさい」と言い、姜湛も自分の本を差し出す。家族の支えに胸を熱くする姜似。
開店当日、甄珩や余七が祝いに駆けつけ、店は華やぎに包まれる。甄珩の母は店を訪れ、「香りが心を落ち着かせる」と笑いつつ、さりげなく姜似を観察し、その品の良さに感心する。盧楚楚はその様子を見て「まるでお嫁さんを見に来たみたい」と冗談めかして言い、余七は言葉を失う。
やがて姜似の祖母の誕生日が近づき、久しく離れていた姉たちも帰郷する。久々の再会に胸を躍らせる姜似。長女はかつて姜似が縁を切った際、寄り添えなかったことを詫び、「恨んでいない?」と尋ねる。姜似は穏やかに笑い、「恨んでなんていない。ただ、あなたが恋しかっただけ」と答える。姉妹は涙を浮かべながら抱き合い、長女の夫も「本当に深い絆だ」と感嘆する。
しかしその夜、姜似の脳裏には、前世の記憶が蘇る――あの時、訪ねた家で見たのは、冷たくなった長女の姿だった。幸福な再会の陰に、過去の痛みが静かに忍び寄っていた。
第9話あらすじ
甄珩(しんこう)の母が姜家を訪ね、祖母に姜似(きょうじ)の婚姻について尋ねる。祖母は「まだ縁談は決まっておらぬ。あの子にふさわしい男など、なかなかおらん」と笑いながらも、甄珩のような人物はいないと惜しんだ。そんな折、五娘の侍女が「二娘の装飾品など縁起が悪くて持ちたくない」と陰口を叩く。離婚して戻ってきた二娘を蔑むその言葉を聞きつけた肖氏(しょうし)は激怒。「たとえ離縁されようと、この家の娘であることに変わりはない。身分を弁えよ」と叱責し、侍女を薪小屋に三日間閉じ込める罰を与えた。
一方、二娘は離婚の痛手から立ち直れず、毎日離縁状を眺めては酒に溺れていた。肖氏は訪れ、「誤った縁談ひとつで自分を失ってはならない」と諭す。姜似は「姉の心を癒やす香を調合したい」と申し出るが、周囲は「彼女たちにあれほど虐げられても、なお心を砕くなんて」と驚く。姜似はただ静かに、「過去ばかり見ていては、永遠に前へ進めない」と答えるのだった。
その頃、肖氏は心の底で姜似を警戒していた。「あの娘は表ではおとなしく見せて、裏で計算している。五娘のような愚か者よりよほど厄介だ」と。しかし祖母の寿宴が近づくと、家中は祝宴の準備に追われる。姜似は心を込めて香を調合し、祖母への贈り物として捧げた。その香りに祖母は大いに喜び、席の雰囲気も和やかに満ちていく――だがその裏で、肖氏は五娘を呼び出し、邪悪な計画を授けていた。「甄珩を姜似から遠ざけるには、あの娘に薬を盛るのが一番だ。酔って醜態を晒せば、誰も彼女を娶ろうとは思うまい」。
やがて姜似は突然の眩暈に襲われ、席を外した瞬間、余七(よしち)が異変を察し、彼女を抱きかかえて会場から連れ出した。人々の視線が集まる中、五娘が「まさか駆け落ちでは?」と呟き、場は騒然。肖氏はすぐに姜似の住まいを封鎖させ、誰一人近づけさせなかった。
人気のない場所で、酔いに倒れた姜似は「夫君…」と余七の名を呼び続け、「一緒になりたい」と泣きながら縋る。だが次第に「私たちは結ばれても長くは続かない」と自嘲し、余七の胸に涙を落とす。余七は動揺しながらも、姜似の指を針で突き、血を流させて正気を取り戻させた。恥ずかしさと恐れで混乱する姜似に、余七はひとつの策を告げる。「この場を収めるには、お前が俺の婚約者だと見せるしかない」。姜似は覚悟を決め、舞を披露してその場を煙に巻く。「席を離れたのは、この舞の準備のため」と巧みに説明した。
真実を探るため、姜似は五娘を呼び出し、問い詰める。追い詰められた五娘はついに口を滑らせ、肖氏の企みを白状する。庶出である自分が正室の娘たちに軽んじられてきた恨みも吐露した。姜似は怒りを抑え、今度は肖氏のもとへ。彼女の茶に、かつて自分に盛られた同じ薬を混ぜる。まもなく肖氏は酔いに倒れ、宴席で醜態を晒した。祖母は怒り、「家政を預かる身でありながら何たる有様か!」と叱責し、肖氏を自宅謹慎に処す。
騒動の後、祖母は冷静に家の行く末を考えた。次女は気力を失い、五女は庶出。残るはただ一人、冷静さと才覚を兼ね備えた姜似――。「これからの姜家を託すにふさわしいのは、あの子しかいない」。そうして祖母は、ついに姜似を家政の責任者に任じるのだった。
第10話あらすじ
姉を訪ねた姜似(きょうじ)は、久しぶりの再会に微笑みながらも、その表情の奥にかすかな翳りを見た。「姉上はお幸せですか?」という問いに、姉は「夫に大切にされているの」と誇らしげに答える。しかし姜似が「それほど守られるのには、何か理由があるのでは?」と穏やかに探ると、姉は「娘しか産めず、義母に疎まれているの」と打ち明けた。姜似がさらに問いかけると、姉は「どうして私が不幸でいることを望むの?」と突っぱねた。姜似は静かに手を握り、「何かあったら、必ず知らせてください」と言い残すのだった。
一方、余七(よしち)は闇市場で『逍遥遊』を密売する謎の人物を追っていた。その男は素性を完全に隠し、定期的に現れては姿を消す。余七は尾行を試みるが、相手に気づかれて逃げられてしまう。事件の背後には、南烏と繋がる新たな闇の気配が漂っていた。
その頃、姜似は肖氏(しょうし)のもとを訪れ、家政を正式に引き継ぐため帳簿を持ち出そうとする。肖氏は「この伯府を長年取り仕切ってきたのは私。あなたごときが触れられるものではない」と反発するが、姜似は冷静に「祖母があなたを禁足処分にした今、伯府の政務はすべて私の管轄です」と言い放った。
一方、二娘は祖母のもとを訪れ、母・肖氏の処分が重すぎると訴える。しかし祖母は「お前はまだ人の心が見えていない。肖氏にとって最も大切なのは伯府ではなく、二房の利益だ」と厳しく諭した。その言葉に、二娘は返す言葉を失う。
屋敷では厨房の古参たちが不満を抱いていた。「姜似が家政を握っても、すぐ潰れるさ」と噂し合い、わざと怠慢に振る舞う者まで現れる。翌朝、二叔父が転倒するほど掃除もされておらず、朝食の粥は腐っていた。激怒した二叔父は「この娘に管理は無理だ!」と祖母の前で糾弾。だが姜似は一歩も引かず、「あと三日だけ時間をください。それで改善されなければ、執事の座を返上いたします」と毅然と答えた。
姜似はすぐさま厨房に赴き、「皆、長年仕えてくれた功労者です。しばらく休みを取ってください。給金は減らしません。その間、新しい料理人を雇います」と伝える。その温情に古参たちは動揺し、「休むどころか、働きたくなってきた」と言い出す者もいた。裏で報告を受けた肖氏は冷笑し、「まもなく地位を失うわ」と呟いた。
一方、肖氏は次女に新たな縁談を勧めるが、相手は再婚者や身体の不自由な者ばかり。「私のような者は、そんな人しか選べないの?」と涙ながらに問う娘に、「お前の立場を考えなさい」と冷たく返す。言い争いの末、次女は「母上がいる限り私は息ができません。兄夫婦に手紙を出しました。明日、陵西へ行きます」と家を出る決意を示した。
一方で姜似は、阮姨娘(げんいじょう)を訪ね、「五娘(ごじょう)に甄恒(しんこう)の同郷の青年を紹介したい」と提案する。阮姨娘はその誠意に心を動かされ、取り次ぎを約束した。彼女は姜似を完全には信じていなかったが、肖氏の駒として五娘を利用されるのは見過ごせなかったのだ。
その頃、伯府では少しずつ空気が変わっていた。質素ながら秩序が戻り、人々の顔にも活気が戻る。恩と威を兼ね備えた手腕で、姜似は着実に家政を掌握していった。かつて蔑まれた庶出の娘が、今や東平伯府を支える柱となりつつあった――
似錦 ~華めく運命~ 11話・12話・13話・14話・15話 あらすじ

















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