相思令

相思令~君綺羅と玄烈~

相思令~君綺羅と玄烈~ 1話・2話・3話・4話・5話 あらすじ

相思令(そうしれい)~君綺羅(くんきら)と玄烈(げんれつ)~2025年 全30話原題:相思令

第1話あらすじ

第1集 運命の邂逅 ― 北泫と焱南の狭間で ―

時は群雄割拠の乱世。天下は未だ統一されず、北泫(ほくげん)、西镶(せいしょう)、焱南(えんなん)の三国がそれぞれの勢力を競い合っていた。北泫は勇猛果敢な戦士を擁し、武をもって覇を唱える国。対する焱南は商業と技術の国として繁栄を極め、百工(ひゃっこう)の技がその繁栄を支えていた。

北泫では五大部族が“狼主”の座を巡って激しく対立していた。その中の一族・玄部(げんぶ)の家長である玄術(げんじゅつ)が謎の死を遂げ、息子の玄烈(げんれつ)はその背後に焱南の百工伝人が関わっていると睨み、独自に真相を追っていた。

一方、焱南の名門・君家(くんけ)は百工の継承者として知られている。その当主・君綺羅(くんきら)は、表向きは男装の天才工匠「君非凡(くんひはん)」として生きていた。彼女は父に“水晶石”の所在を尋ねるが、父もまた探索の手を尽くしても見つからず頭を抱えていた。商隊が翌日、西镶へ向かうと知った君綺羅は、自らの手で水晶石を探すと決意する。

しかし父は猛反対する。西镶へ続く無法地帯には馬賊がはびこり、命を落とす危険がある。さらに父は「女に戻り、祁民(きみん)と結婚せよ」と勧める。祁民は幼少期から君綺羅を想い続けていたが、君綺羅は毅然として答える。「たとえ女に戻っても、私は百工の伝人。焱南のために弩矢を作り続ける」と。彼女にとって、君家の誇りこそが生きる意味だった。

妹の君絳綢(くんこうちゅう)は、姉が祁民との婚姻を承諾したと聞いて驚くが、君綺羅は「時間稼ぎにすぎない」と微笑む。祁民が姉の秘密――“女であること”を唯一知る存在だと察していた君絳綢は、二人が似合いの相手であるとも感じていた。

こうして君綺羅は祁民らと共に西镶への旅路に出る。しかし道中、馬疫が発生し隊の多くの馬が倒れる。予定の道を進めなくなった彼女は、北泫の商隊に接触し、馬を借りる代わりに君家の繍織物を差し出すと提案。商隊は半信半疑だったが、彼女が近道を知っていると聞き承諾する。だがその矢先、馬賊の襲撃を受ける。激しい戦闘の中で、君綺羅は相手の装束が偽物であることに気づく。真の馬賊ではない――その裏に、より大きな陰謀の影がちらついていた。

混乱の中で祁民は彼女を逃がそうとするが、捕らえられてしまう。彼は最後の力を振り絞り、「君家は君を必要としている」と告げ、命を落とした。悲嘆の中で気を失った君綺羅が目を覚ますと、そこには北泫の将・玄烈の姿があった。玄烈は彼女が携えていた繍織物に目を留め、密輸の疑いをかける。

商隊から押収された武器を調べた玄烈は、これが商人を装った密輸組織の仕業だと見抜くが、背後の部族までは掴めない。君綺羅は身の潔白を主張し、機転を利かせて自らを「君非凡の侍女」と名乗り、君家の長男を慕う女だと偽った。玄烈はその言葉を一応信じ、共に“君非凡”を探すことを約束する。

君綺羅は彼に三つの条件を提示した。
――ひとつ、自らの安全を保証すること。
――ふたつ、倒れた仲間を厚葬に付すこと。
――みっつ、貨物を必ず西镶まで届けること。

玄烈はそのすべてを受け入れる。
こうして、運命に導かれるように出会った北泫の将と焱南の女工匠。
互いの素性を隠したまま始まった旅路が、やがて三国の運命を揺るがす“真実”へと繋がっていく――。

第2話あらすじ

第2集 砂漠に芽生える絆 ― 追う者と逃げる者 ―

玄烈の捕縛から間もなく、君綺羅(くんきら)は気を失った。医師の診断によれば命に別状はないが、外傷による衰弱が激しい。軍には女性の医官がいないため、玄烈(げんれつ)が自ら薬を塗るほかなかった。彼が手を伸ばしたその瞬間、君綺羅が目を覚まし、思わず身を引く。状況を誤解した彼女に対し、玄烈は「目が覚めたなら、自分で塗れ」と冷たく言い放つ。その言葉に反発を覚えつつも、君綺羅は自ら傷の手当てを済ませた。

やがて彼女は「川辺で体を洗いたい」と申し出る。兵が周囲にいるため逃げ場はないと踏んだ玄烈は、しぶしぶ許可を出した。だが、君綺羅の目的は脱出だった。川に着くと彼女は上着を脱ぎ、玄烈が思わず目をそらした一瞬の隙を突いて走り出す。異変に気づいた玄烈は即座に追跡するが、君綺羅はすでに遠くへ――。

羅奇(らき)は玄烈が戻らぬことを不審に思い、捜索に向かう。その先には“死の砂漠”と呼ばれる危険地帯が広がっていた。逃亡を続ける君綺羅と彼女を追う玄烈は、やがてその砂漠に迷い込み、足を取られる。砂に沈みかけた玄烈は、逃げようとする君綺羅に鞭を巻きつけ、「俺を引き上げるか、共に死ぬか選べ」と迫る。君綺羅は木の枝を掴み、必死に玄烈を引き上げた。

しかし安堵の間もなく、突如として砂嵐が襲いかかる。二人は必死で逃げるが、荒れ狂う砂に飲み込まれてしまう。気づけば、どこにも出口の見えない砂の牢獄の中。玄烈は君綺羅を縛り、慎重に脱出の道を探すが、彼自身の脚の傷は深く、歩くのも困難だった。君綺羅は「このままでは歩けなくなる」と忠告し、縛りを解くよう願い出る。玄烈は逡巡の末、信じて縄を解いた。

やがて君綺羅は薬草を探しに姿を消す。玄烈は「逃げたか」と苦笑するが、間もなく彼女は包帯と薬を手に戻り、黙って彼の傷を手当てする。その誠実さに、玄烈の中に小さな信頼が芽生えた。

その頃、北泫の王・玄旭(げんきょく)のもとには、玄烈失踪の報が届く。賀機遥(がきよう)は、羅奇の報告を受け、狼王選出の時期が迫る中、この不在が王位継承を揺るがす恐れがあると進言。玄旭は極秘に捜索隊の派遣を命じる。王妹・玄青蔻(げんせいこう)姫も同行を願うが、兄は「姫を危険に晒すわけにはいかぬ」と退けた。それでも青蔻の胸には、不安と玄烈への想いが静かに芽生えていた。

一方、焱南では君家の屋敷に激震が走っていた。長女・君綺羅の消息が途絶え、妹の君絳綢(くんこうちゅう)は捜索を主張するが、次妹の君繡綢(くんしゅうちゅう)は「女子が外に出るのは危険すぎる」と制止する。父は宰相のもとを訪れ、莫大な真珠を差し出してでも娘の捜索を依頼するのだった。

砂漠を抜けた玄烈と君綺羅は、ようやく遠くに城壁を見つける。命からがらたどり着いたその先で、彼らは狼の群れに襲われる。玄烈は応戦しながら重傷を負い、君綺羅は逃げずにその場で即席の弓矢を作り、見事に数匹を撃ち倒した。背後から迫る一匹を玄烈が斬り払った瞬間、君綺羅は力尽きて倒れる。玄烈は彼女を抱きかかえ、城内の宿へと運んだ。

そこへ賀機遥が到着。王の密命を受け、極秘に玄烈の捜索を行っていたのだ。彼は玄烈に「この城には部屋が二つしかない。彼女と同室で休め」と提案するが、玄烈は拒否し、「同じ部屋で寝るなら、君綺羅とで十分だ」と冷静に答える。

目を覚ました君綺羅は、自分の衣が替えられていることに激怒。しかし玄烈は「女官に頼んだ。主人のいない女に手を出すほど落ちぶれてはいない」と静かに言う。その言葉に君綺羅はわずかに表情を緩めた。

そして彼女は一枚の布を差し出し、「若様――君非凡は西镶にはおられません。まもなく商号大会が開かれます。必ず姿を現すはず。そこでお探しください」と告げる。
互いにまだ正体を知らぬまま、君綺羅と玄烈――運命に導かれた二人の物語が、今、静かに動き出す。

第3話あらすじ

第3集 交錯する真実 ― 炎の宿と偽りの令牌 ―

砂漠での死線を共にくぐり抜けた玄烈(げんれつ)と君綺羅(くんきら)は、しばしの安息を得る。互いに素性を隠したままの二人だが、共に過ごす時間が長くなるほど、玄烈は君綺羅の聡明さと大胆さに興味を惹かれていく。軽口を交わす中で、君綺羅が「自分は人妻だ」と打ち明けると、玄烈は「既婚者には手を出さぬ。ただし未亡人なら別だ」と笑う。君綺羅はその冗談に呆れつつも、彼の人間味を垣間見ていた。

宿に滞在する二人。君綺羅は街の人々に近づき、「北泫の玄部の者だが、馬賊に襲われ全てを失った」と身の上を語る。しかし彼らは「文書がなければ出入りは不可能だ」と突き放し、玄部族長の直筆の手紙でもなければ信じぬという。君綺羅は、なんとしても情報を得ようと目を光らせる。その頃、奚(けい)部の若き族長は密かに命を下していた――「玄烈を今夜、闇に葬れ」と。

一方で、羅奇(らき)と賀機遥(がきよう)はまだ城外に留まり、玄烈の行方を探していた。彼らは密偵の死体を発見。命を絶ってまで秘密を守ったその男の遺品から、奚部の陰謀の影を感じ取る。賀機遥からの伝書により、玄烈の生存を知った羅奇は急ぎ隊を率いて城へと向かう。

宿の外では、民に紛れた奚部の刺客たちが潜み、街全体に不穏な気配が漂っていた。賀機遥の警告を受けた玄烈は、「自分なりの策がある」と答える。その頃、君綺羅は密かに市場へ。露店の主人に香石を見せ、玄鉄晶石(げんてつしょうせき)の在処を尋ねるが、「その鉱脈は北泫にしかない。ここでは破片すら手に入らぬ」と告げられる。焦る君綺羅をよそに、玄烈は彼女の姿が消えたことに気づき、必死で探し回る。

再会した二人の間に短い口論が起こるが、君綺羅は取り繕うように薬を塗り直し、玄烈の懐から一枚の令牌を抜き取る――しかしそれは族長の証ではなく、ただの宿札に過ぎなかった。気づいた玄烈が「何をしている」と問うと、君綺羅は「掛けていなかったから、代わりに掛けてあげた」と苦しい言い訳をする。

夜更け、ついに刺客たちが動いた。奚部の男たちが宿を包囲し、剣を抜いて押し入る。玄烈は戦の準備を整え、君綺羅に「外に出て、羅執舟(らしつしゅう)を探してくれ」と頼む。羅執舟はこの季節、密かに母の墓参りのため遥城に姿を見せるのだという。君綺羅は「逃げると思わないの?」と問うが、玄烈は「君を信じる」と答える。その一言に、君綺羅の胸が微かに揺れた。

君綺羅は決意を固め、羅執舟を見つけ出して助けを要請。羅執舟は人手を率いて宿へ急行する。一方、玄烈と賀機遥は宿内で激しく応戦するが、敵の数は多く、やむなく廃屋へと退いた。奚部の者たちは建物を包囲し、火を放つ。炎と煙が立ちこめる中、鐘の音が響く――それは君綺羅の合図だった。彼女の機転で援軍が突入し、奚部は退却を余儀なくされる。火の中で倒れた玄烈と賀機遥を、君綺羅は必死に救い出した。

そのころ、焱南では新たな物語が動き始めていた。君綺羅を慕う邵祁民(しょうきみん)は何者かに捕らわれ、昏睡薬を盛られたうえ、奴隷として売られそうになっていた。意識の中で、幼い日――自分を苛めから救ってくれた少女・君綺羅の姿を思い出す。そこへ現れたのは北泫の姫・玄青蔻(げんせいこう)。彼女は祁民を一目で気に入り、「あなたの瞳が好き。必ず大切にする」と告げ、金で彼を買い取るのだった。

一方、羅執舟の屋敷では、乳母が君綺羅と彼の再会を喜び、「まるで昔の主君ご夫妻のようだ」と微笑む。君綺羅は旅の身支度を整えるため、男装の衣を用意してほしいと頼んだ。

そして彼女は玄烈たちの会話から、北泫の地で玄鉄晶石が再び発見されたことを知る。君綺羅は静かに決意する――「この旅に同行しなければ」。
それが、自らの運命を大きく変える道であることを、まだ知らぬまま――。

 

第4話あらすじ

第4集 信物の約束 ― 揺らぐ家門と梁州の誓い ―

君家の二房では、密やかな野望が燃え上がっていた。二房の息子は父に向かい、「今年、君非凡(きんひはん)が不在なら、必ず大伯が自ら出向く。そうなれば君家は我らの天下だ」とほくそ笑む。しかし父は慎重だった。長兄が家にいる限り、帳簿係を派遣して監査される危険があるというのだ。だが息子は、自ら大伯を動かす策があると自信を見せた。家門の中で渦巻く陰謀の影――その裏で、家族の絆は少しずつ軋み始めていた。

一方、焱南では君綺羅(くんきら)の消息を案じる家族が不安に揺れていた。妹の君絳綢(くんこうちゅう)は姉を探しに行こうとするが、父に見つかって叱られる。「無法地帯は危険だ。宰相にも頼んである。護衛もすでに出立した」と諭されるが、君絳綢は「他人に任せてはいられない。姉が行けるなら私も行ける」と反発した。父は娘の真っ直ぐな瞳を見つめながらも、「綺羅は長年商人として鍛えられている。お前とは違う」と告げ、娘を屋敷に留めた。

そのころ、玄烈(げんれつ)と君綺羅は西鑲(せいしょう)行きの準備を進めていた。君綺羅は香石を買い付けに行きたいと話すが、玄烈は「北泫にもある」と引き止める。君綺羅は静かに首を振った。「西鑲でなら交渉済みの価格で安く手に入る。北泫では主君の代わりに決断できない」と。玄烈はそれを理解し、「ならば私が同額を保証しよう」と申し出る。君綺羅はその誠意に頷いた。

別れの刻、玄烈は君綺羅の首飾りを手に取り、「これを信物にしよう」と言う。君綺羅は考えた末、「では私もあなたの刀を預かる」と返した。それは玄烈の父の形見であり、彼にとって唯一の誇りでもあった。互いの信物を交換する――それは契約を超えた、無言の信頼の証だった。

やがて一行は梁州へと向かう。そこは旱魃に苦しむ地であり、玄烈が訪れた目的は、梁州の名門・孫家の支持を得るためだった。梁州郡主・孫昭敏(そんしょうびん)は武に優れ、女ながら重い長槍を振るう気丈な娘。旱魃で人々が苦しむ中、彼女は領民を守ろうと奮闘していた。その身を奪わんとする刺客が迫った瞬間、君綺羅が身を挺して救い出す。昭敏はその勇気に感嘆し、彼女が女であることを見抜きながらも、黙って友情を示した。

玄烈は孫家の主・孫大人の支持を求めていた。彼の父はかつて「百工伝人」によって命を奪われたが、当時の先王と太后は政の安定を優先し、「事故」として処理したのだ。玄烈が狼主を志す理由――それは、父の死の真実を暴くためだった。現王は彼に約束していた。「狼主となれば、再調査を許そう」と。梁州行はその布石であり、彼にとって命を懸けた賭けでもあった。

一方、君家本邸では、君綺羅の父が王に謁見し、娘の潔白を訴えていた。王は「君非凡は道を誤ったのでは」と疑うが、父は毅然と答える。「あの子は長年商売の道を知り尽くしており、迷うはずがございません」と。その強い言葉には、娘への揺るぎない信頼が込められていた。

しかし、屋敷の片隅では二房の者たちが再び密談を重ねていた。「君綺羅が戻らなければ、君家は我らのものだ」と笑う彼らの背後で、運命の歯車は静かに狂い始めていた。

その夜、邵祁民(しょうきみん)は自らの運命を変える決断を下す。かつて自分と君綺羅を売ろうとした人身売買業者の男たちを、月影の中で斬り捨てたのだ。その姿を、玄青蔻(げんせいこう)は静かに見つめていた――冷たい月光が二人の行く末を照らすように。

そして梁州の風が、新たな宿命の始まりを告げていた。

 

第5話あらすじ

第5集 銀繍坊の誓い ― 商機と陰謀の狭間で ―

闇夜、剣を手にした祁民(しょうきみん)の前に立ちはだかったのは玄青蔻(げんせいこう)だった。血に染まった床に横たわるのは、かつて祁民を売ろうとした人身売買の罪人たち。玄青蔻は静かに言った。「この者たちは殺されるべき悪だ。祁民、あなたは私を殺したりしない」。冷ややかな声の奥に、どこか安堵にも似た響きがあった。彼女は小屋に火を放ち、「ここは無法地帯だが、後始末は必要よ」と言い残す。その炎は、彼女たちが背負う過去の業を焼き尽くすかのように夜空を焦がした。

その頃、梁州では新たな出会いが芽生えていた。羅執舟(らしつしゅう)は孫昭敏(そんしょうびん)に香袋を手渡す。それは張嬷嬷が丁寧に仕立てた焱南(えんなん)の品で、孫昭敏は目を輝かせた。「北泫(ほくげん)では手に入らないものね」と。玄烈(げんれつ)はそんな二人の様子を見つめながら、「涼州を治めるには武だけでは足りない」と諭す。孫昭敏は一晩中考えても良策が浮かばずにいたが、玄烈は一つの提案を口にした。「この香袋を作った君綺羅(くんきら)は焱南の名家・君家の娘で刺繍の技を持つ。彼女に学べば、刺繍を産業として民を潤わせることができる」と。孫昭敏は目を輝かせ、「それは良い考えだ」と賛同した。

翌日、君綺羅は招かれ、孫昭敏の屋敷を訪れる。豪華な食膳が並ぶ中、彼女は「味が濃くて慣れません」と微笑むと、昭敏は優しく乳粥を勧めた。「これは淡い味。あなたの好みに合うはずよ」。穏やかな時間が流れる中、昭敏は一つの頼みを切り出す――涼州で刺繍坊を開いてほしいと。君綺羅は玄烈のもとへ戻り、「あなたの策は見事ね。昭敏に刺繍を教えれば北泫の発展に繋がるし、あなたは支持を得る。でも私は損をするだけ」と笑う。玄烈は即座に返した。「利益を分け合えばいい。共に商路を広げよう」。その言葉に君綺羅は静かに頷いた。彼女の胸に再び、商人としての闘志が灯る。

やがて二人の名の下、「銀繍坊(ぎんしゅうぼう)」が梁州に誕生する。開業の日、街には人々が押し寄せたが、同時に不満の声も上がった。「奚族が食糧を届けている時に、刺繍など何の役に立つ?」と。君綺羅は毅然と立ち、「刺繍は交易の橋となる。北泫と焱南を結べば皆が職を得られる」と訴えた。玄烈も前に出て、「斉羅嬢の言葉は真実だ」と支持を示す。その瞬間、君綺羅は見事な両面刺繍を披露。光の加減で模様が変わるその技巧に、群衆は息を呑んだ。即座に多くの商人が注文を申し込み、銀繍坊は一躍、梁州の話題となった。

だが、その繁栄を快く思わぬ者がいた。奚莫(けいばく)は奚長昆(けいちょうこん)に報告し、「玄烈と君綺羅が勢いを増している」と憤る。奚長昆は冷笑し、「手は打ってある」とだけ答えた。その不穏な予感は、間もなく現実となる。

銀繍坊では突如、刺繍師が次々と病に倒れた。原因は布地に混入した病獣の毛。奚長昆は「君綺羅の管理不足だ」と非難するが、玄烈が一歩前に出て「我々が害をなすわけがない」と断固として庇う。調べの結果、この病を癒すには希少薬草・玄参(げんじん)が必要だと判明。君綺羅は責任を背負い、「必ず見つけ出します。納期も守ります」と商人たちに誓った。彼女の真摯な姿勢に、周囲も信頼を寄せた。

だが運命は過酷だった。薬屋では玄参が十日前にすべて買い占められていたと告げられ、君綺羅と玄烈は山奥へと分け入る。霧の中、ようやく一本の野生玄参を見つけたその瞬間、何者かの手が彼らを突き飛ばした。玄参は奪われ、君綺羅の身体は崖際に投げ出される。

風が悲鳴を上げ、赤い布が宙を舞う――
信頼と裏切りの境界で、二人の運命は再び揺らぎ始めた。

 

 

相思令~君綺羅と玄烈~ 6話・7話・8話・9話・10話 あらすじ

相思令(そうしれい)~君綺羅と玄烈~ 全話あらすじとキャスト・相関図

【放送情報】

以下 放送予定の記事は

中国ドラマ 放送予定順

にてご覧ください。

相思令相思令(そうしれい)~君綺羅と玄烈~ 全話あらすじとキャスト・相関図前のページ

相思令~君綺羅と玄烈~ 6話・7話・8話・9話・10話 あらすじ次のページ相思令

関連記事

  1. 相思令
  2. 相思令

    相思令~君綺羅と玄烈~

    相思令~君綺羅と玄烈~ 6話・7話・8話・9話・10話 あらすじ

    相思令(そうしれい)~君綺羅(くんきら)と玄烈(げんれつ)~2025…

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

カテゴリー
  1. 双花伝~運命を分かつ姉妹~

    双花伝 13話・14話・15話・16話 あらすじと感想
  2. 風起洛陽

    中国ドラマ

    風起洛陽~神都に翔ける蒼き炎~ キャスト・相関図 あらすじ ネタバレ
  3. 半妖の司藤姫 17話・18話・19話・20話 あらすじと感想

    半妖の司籐姫 ~運命に導かれた愛~

    半妖の司藤姫 17話・18話・19話・20話 あらすじと感想
  4. 承歓記

    承歓記~人生最高の出会い~

    承歓記(しょうかんき)25話・26話・27話・28話 あらすじ
  5. 無憂渡~瞳に映った真実の愛~

    無憂渡~瞳に映った真実の愛~

    無憂渡 13話・14話・15話・16話・17話・18話 あらすじ
PAGE TOP