長楽曲~白い愛、黒い罪~ 2024年 全40話 原題:长乐曲
第11話 あらすじ
陳火蛾の再来をめぐり、宮中は不穏な気配に包まれていた。
顔幸はその真相を追おうとするが、永安公主は「沈渡をこの件に関わらせるな」と釘を刺し、さらには姉・顔采薇と韓世元の縁談まで持ち出す。張宝環や呉主事までもが顔幸の行動を牽制し、誰もが彼女をこの事件から遠ざけようとしていた。だが顔幸の胸には強い疑念が芽生え始めていた。
沈渡もまた、陳火蛾が同一人物ではない可能性を見抜き、太皇太后の前で調査権を勝ち取る。弘文館は張相に委ねられ、永安公主はその一手に苛立つが、沈渡はしたたかに切り抜けていく。夜、ひそかに抜け出そうとした顔幸は沈渡に見つかり、調査の許可を求めて懸命に尽くす。慣れない料理で心を砕く彼女の健気さに、沈渡も心を動かされ、ついに令牌を手渡すのだった。
翌朝、顔幸は陳邸を訪問。屋敷は荒れ果て、主人の陳守傑は「火事だ」「蛾が飛ぶ」とうわ言を繰り返すばかり。屋上には錦繍坊の品が残されており、過去の逆僭罪事件と陳火蛾の名が重なっていく。かつて汝寧長公主に献上された衣の刺繍をめぐり、駙馬が自害、長公主は太皇太后と決裂、錦繍坊一族は皆殺しとなった――記録の曖昧さが、今なお謎を孕んでいた。
一方、弘文館では家柄を問わぬ初めての試験が始まっていた。潘池は才子として注目されるが、試験を巡る裏には張相の人心掌握の企みが潜んでいた。そんな中、潘池は黒衣の一団に拉致され、従属を迫られる。しかし死を選んでも屈しない彼の前に現れたのは、永安公主の別働隊。そしてさらなる黒衣の集団が襲撃を仕掛け、潘池は命の危機に晒される。
駆けつけた沈渡は部下を率い、矢継ぎ早に放たれる暗器の雨を突破。視覚を封じ、研ぎ澄まされた感覚だけで敵の位置を見抜くと、圧倒的な武力で敵を退けた。だが襲撃の背後に潜む黒幕は未だ姿を現さず、陳火蛾の謎と錦繍坊事件の影が、次なる波乱を予感させていた。
第12話 あらすじ
永安公主は朝議の場で、張相が寒門の学子を故意に殺害したと訴える。来羅織もそれに同調するが、沈渡は昨夜の暗器を証拠として差し出し、事件の黒幕が賢王・蕭重だと見せかけるのは不自然すぎると指摘する。三つの勢力が交錯する中、太皇太后は沈渡に真相の究明を命じ、調査権を改めて委ねた。張相は密かに沈渡へ感謝を伝えるが、沈渡は冷ややかに背を向けた。
一方、潘池は権力闘争の渦に巻き込まれながらも理想を捨てきれずに苦悩していた。沈渡は「権力こそが守るべきものを守る唯一の手段だ」と警告するが、潘池は納得できずに酒に逃げる。顔幸は彼らを宿舎に送り届けるが、潘池が本当は酔っておらず、ただ顔幸を案じていたことを後に知る。彼は沈渡が顔幸を日々傷つけていると誤解し、心配のあまり彼女を探して街に出ていたのだった。
その夜、顔幸が実家へ帰ると、沈渡も姿を現し、家族とともに食卓を囲む。彼は何度も料理を顔幸の器に盛り、静かに寄り添う。父・顔闊は沈渡を自室へ招き、模写した古字帖を見せる。そこには沈渡の亡き父の筆跡を模した字があり、沈渡は深く胸を衝かれる。後に彼は父の遺品の扇子と照らし合わせ、筆跡が一致しないことに気づく。沈渡は顔闊が父の書を模していた可能性に行き着き、心の奥に新たな疑念を抱くのだった。
同じ頃、陸垂垂は仮面の男のために胎記を消す方法を探り当て、自ら試してみせることで、彼の心を温める。さらに来羅織は道中で「雲雀」と名乗る女と遭遇する。彼女は錦繍坊の冤罪を晴らしてほしいと懇願するが、来羅織は刺客と決めつけ連行しようとする。そこへ沈渡が現れ、雲雀は当時の注文書を託す。もし記録が改ざんされていれば、一族を襲った逆僭罪事件の真相が明らかになるかもしれない。
しかし雲雀はその夜、黒衣の者たちに襲われる。間一髪で救ったのは徐帥だった。翌日、徐帥は彼女を伴い沈渡を訪ね、錦繍坊の件の徹底調査を求める。沈渡は彼女の覚悟を問うが、雲雀は恐れず「自らの命を懸けても冤罪を晴らしたい」と訴える。実は彼女は密かに沈渡を慕っていたが、彼がすでに顔幸と夫婦であることを知らなかった――。
陳火蛾の影と錦繍坊の冤罪、そして過去と現在を結ぶ筆跡の謎。
真実へと続く道は、さらに深い闇へと顔幸と沈渡を誘っていく。
第13話 あらすじ
沈渡が雲雀を屋敷へ連れ帰ったことに、顔幸は小さな棘のような不快感を覚えていた。雲雀は到着早々、まるで当主のように振る舞い帳簿の閲覧を求めるが、執事に制される。そこへ現れた顔幸に、雲雀は機転を利かせて茶を差し出し、自らが沈渡の命を受けて全てを処理していると告げる。顔幸は次回の帳簿を雲雀に任せ、自らは刑部での調査に向かった。沈渡の心中を測りかねながらも、顔幸は己の歩む道を選び取っていく。
一方、弘文館の試験が大詰めを迎える中、潘池は最後の力を振り絞り答案を提出。評価は賛否分かれるものの、太皇太后はその独自の視点を高く評価する。彼女は「この試験は試金石に過ぎぬ」と見抜き、事態の行く末を静かに見守るのだった。
沈渡は父の偽造されたノートを改めて調べ、顔闊への疑念を深める。顔幸は潘池の「狂人の言葉も全てが嘘とは限らない」という助言に啓発され、新たな調査の道を思いつく。しかしその夜、調査に出た顔幸は黒衣の刺客に襲われ、救援に駆けつけた沈渡も胸と手首を負傷してしまう。暗器の意匠が過去の寺で見つけたものと酷似していることに気づき、事件はさらに深い闇を帯びていく。
その頃、陸垂垂も黒衣の者に狙われるが、仮面の男が間一髪で救い出す。彼女は彼を「江湖の英雄」と信じ、水灯籠を流して感謝を示す。幼き日の後悔を胸に秘めながら、陸垂垂は涙と共に祈りを託した。
屋敷では、沈渡の傷を手当てする顔幸に、二人の距離が思わず縮まる。痛みに遮られつつも、沈渡の視線にはこれまでにない優しさが宿っていた。やがて顔幸は彼の枕元に寄り添い、夜を共に過ごす。沈渡の心には確かな変化が芽生え始めていた。
やがて黒衣の首領が羅織を訪れ、「陸垂垂に手を出すな」と命じる。彼は嘲笑しながら、「区にはたった一人の陳火蛾がいる」と言い残し去っていく。誰が味方で誰が敵なのか、境界線はますます曖昧に――。
翌朝、顔幸は沈渡の食事を世話しながらも、姉・顔采薇と韓世元の婚礼が近いことを知る。姉の幸せを心から喜ぶその笑顔の裏で、彼女自身の運命はますます深い渦へと引き込まれていくのだった。
第14話 あらすじ
闇に灯る真実、交錯する絆と宿命
沈渡は宴席でわざと韓世元を挑発し、彼の心の奥に潜む過去を探ろうとする。しかし顔幸は韓世元を庇い、二人の間には再び緊張が走る。やがて席を外した沈渡と顔幸は、互いに言葉を交わすうち、夫婦としての仮面を越えた微妙な距離に揺さぶられていく。沈渡が強引に顔幸を抱き上げて部屋へ戻ると、そこに用意されたのは一つの寝台のみ。やむなく同じ床に就く二人は、夜の沈黙の中で互いの存在を意識し、沈渡の秘めたる病――「雀目(夜盲症)」が明らかになる。顔幸はその真実に気づき、沈渡の過去と心に迫ろうとするのだった。
一方で、韓世元はついに胸の内を明かす。彼のもう一人の家族、それは張宝環であった。姉を守れなかった兄への憤怒と深い心の傷を抱えながらも、彼は真実を口にし、顔家を去る決意を固める。残された顔采薇は悲嘆に沈み、家族はさらなる動揺に揺さぶられる。沈渡は宮中で徐婉に報告し、幼き日の記憶に結びつく「少女」の存在を語る。再会したならば決して手放すな――徐婉の言葉は、沈渡の心をさらに揺さぶった。
顔幸は沈渡の病を癒そうと必死に薬を調合するが、その臭気は人を遠ざけるほど強烈だった。沈渡は顔幸の気持ちを知り、耐えながらもそれを口にする。二人の間には、次第に従来の利害や打算を越えた新たな絆が芽生え始めていた。
だが、謎の連続事件はますます広がりを見せる。沈渡は錦繍坊の布地にかつての愛を重ね、犯人が一族皆殺しを狙っていることを察知する。陰謀の影は街全体を覆い、ついに韓世元までもが永安公主の手に落ちてしまう。
満月の夜に明かされる真実、交錯する兄弟の宿命、そして寄り添い始めた二人の心。
静かに灯された蝋燭の炎は、やがて大いなる試練と運命の予兆を照らし出していく――。
第15話 あらすじ
仕組まれた罠、揺らぐ絆と決意
韓世元を救おうと動く張宝環は永安公主のもとへ赴き、彼を連れ出そうとする。しかし永安公主は「客人として招いた」と言い張り、対立が生じる。結局、韓世元は張宝環に託されるが、永安公主は不敵に「顔幸が一時守れても一生は守れぬ」と告げ、暗雲は消えぬまま残された。
一方その頃、錦繍坊では不可解な現象が起きていた。蛾の形をした宝玉が突如大量に現れ、さらには死んだはずの人物が姿を現したという噂に人々は恐れおののく。群衆は霊現を信じ拝跪し、街は混乱に包まれる。沈渡はこの騒動を「凡人の仕業ではない」と見抜き、背後に大きな黒幕の影を察知する。しかし彼は顔幸に「この件から手を引け」と命じる。だが顔幸は「必ず真相を突き止める」と反発し、調査を続行する決意を固めた。
単独で陳家を訪ねた顔幸は、陳守正や老伯の証言の不自然さに気づく。証言が寸分違わず一致しているのは、事前に暗記させられたに違いない――そう直感した瞬間、陳守正の罠が襲いかかる。幻覚の粉を浴びた顔幸は錯乱し、老伯が逃げたと錯覚して追跡。辿り着いた明聖観で、実際に老伯の死体を発見してしまう。そこに現れた汝寧長公主は「顔幸が殺した」と断言し、捕縛を命じた。
絶体絶命の中、沈渡と来羅織が駆けつける。来羅織は「一晩だけの猶予」を与え、真相解明の猶予を沈渡に委ねる。沈渡の鋭い調査により、老伯が自力で移動できたはずがないこと、そして殺害現場が陳家内部であったことが明らかになる。さらに、事件の背後に「賢王」と「汝寧長公主」の接触があった可能性が浮かび上がり、権力と陰謀の影が深く絡んでいることが示唆される。
釈放された顔幸に、沈渡は再び「調査をやめろ」と強く告げる。しかし顔幸は決して退かず、「もし権力者を恐れるなら離縁してほしい、自分一人で追及する」と言い放つ。沈渡は怒りを隠せず、その場を立ち去った。
愛と信頼のはざまで揺れる二人の心。事件の真相に近づけば近づくほど、待ち受けるのはさらなる危険と陰謀の深淵だった。
長楽曲~白い愛、黒い罪~ 16話・17話・18話・19話・20話 あらすじ
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