長楽曲~白い愛、黒い罪~ 2024年 全40話 原題:长乐曲
第36話 あらすじ
崩壊の序曲、血に散る忠義
悪夢にうなされ目覚めた太皇太后は、先帝の肖像画を前に「大蒼のために尽くしてきた自分ですら、雌鶏が鶏を司ると嘲られるのか」と胸中を揺らす。病を押して政務を執る彼女に、徐婉は休養を進言するが、その耳には届かない。
一方その頃、街では来羅織の専横が広がっていた。従わぬ官僚たちは次々と処刑され、人々は恐怖に震える。沈渡のもとを訪れた来羅織は、罪を確定するよう迫り、拒む沈渡を「職務怠慢」と断じて禁軍を率いて連行する。拷問の末、沈家の一族を滅ぼしたのは太皇太后の仕業だと嘲笑いながら、来羅織は「共に手を組めば天下を掌握できる」と誘う。しかし沈渡はその誘惑を断固拒絶する。
事態を知った顔幸は奔走する。彼女はすでに沈渡の妻であり、従六品女官でもあるため、誰も彼女を軽んじることはできないと宣言。上奏文をしたため、宮中に届ける決意を固める。だが道中、刺客の襲撃を受け、徐想仁と雲雀が命懸けで彼女を守る。「ここは俺たちに任せろ」と言い残し、二人は増え続ける敵と戦い抜く。徐想仁は瀕死の中、雲雀に「必ず盛大な婚礼を挙げさせる」と誓うが、その約束を果たせぬまま彼女の腕の中で絶命。雲雀もまた彼の後を追い、血に散った。来羅織はこれを知り、長らく胸に刺さっていた「異良人」の影が消えたとほくそ笑む。
一方、雪の中で太皇太后への直訴を求め一日中跪いた顔幸。しかし扉は閉ざされ、太皇太后はついに彼女を拒んだ。やがて来羅織は沈渡を宮中に連れ帰り、顔幸の必死の姿を彼に見せつける。「お前はかつて、心臓の血を与えた時に私に尽くすと誓った。その真実が偽りであろうとも、もはや背けぬ」と迫る来羅織。沈渡はついに屈し、従うと答える。
重い足取りで戻った沈渡を、顔幸は涙ながらに迎えた。しかしその口から告げられたのは――離縁の言葉。全てを賭して守ろうとした愛は、無情にも断ち切られようとしていた。
裏切りと忠義、執念と犠牲。
大蒼を覆う暗雲は、ついに最愛の者たちを引き裂く。
第37話 あらすじ
断ち切られた絆、権力の凶宴
沈渡の口から突如告げられた「離縁」の一言は、顔幸の世界を音を立てて崩壊させる。沈渡は静かに理由を述べる。「自分はお前と一生を共にする器ではない。三ヶ月の約束は過ぎた」と。顔幸は怒りと悲しみで反駁するが、沈渡の決意は揺るがない。やむなく、彼女は簪で沈渡の髪を掴み、己の血で離縁状に署名する——二人の縁は、血で断ち切られた。
嘆きと混乱の中、顔幸は徐想仁と雲雀の死を知らされる。自らの行動が二人を死へと追いやったのではないかという自責に苛まれ、墓前で懺悔する顔幸。しかし沈渡は彼女を諭し、全てを一人で背負うなと告げる。陸垂垂の証言により、徐想仁と雲雀が来羅織の策略に巻き込まれたことが明らかになり、事態は一層陰惨さを増す。
その間に、来羅織は権威を一気に掌握。太皇太后の臨終に乗じて大朝会を代行し、永安公主や張相らを軟禁、士族と寒門の対立を煽って民衆を抑圧する。沈渡は来羅織の前で江郎行を屈辱的に晒すよう命じられるが、矢は外れ、辛くも命を救われる。来羅織は冷酷に江郎行を陸垂垂の前に跪かせ、降伏の代償として歌を要求する——屈辱と人質交換の政治劇だ。
離縁という個の悲劇と、来羅織の台頭という公の暴力が同時に奔流する第37集。愛は断ち切られ、友情は代償を払い、権力は新たな顔で牙をむく。顔幸は深い孤独と怒りを胸に、これから何を選び、何を守るのか——運命の分岐点が、今まさに訪れようとしている。
第38話 あらすじ
運命の灯、暴かれる血脈
来羅織にわずか三日の猶予を与えられた陸垂垂は、江郎行を抱きしめて涙に暮れる。その頃、顔幸は沈渡との離縁の衝撃から心身を蝕まれ、食も喉を通らず家に籠もっていた。母が心配する中、潘馳が訪れるが、そこへ楊夫人も押しかけ「離縁した身で男と密会するのは顔家の恥」と激しく非難。母娘の間に言い争いが勃発し、ついには手が出る騒ぎに。居合わせた父でさえ仲裁できぬほどの緊張の中、顔幸は静かに屋敷を後にする。
潘馳と共に路地裏へ向かった顔幸は、謎の人物からマントを受け取る。刺繍には「盏心へ贈る」と記され、かつて邝掌心を救った縁者の支援であることを悟る。質屋で再会した陸垂垂に「もう沈渡とは何の関わりもない」と告げつつ、密かに「周囲に羅織の耳目あり」と書かれた紙片を託す顔幸。陸垂垂と江郎行は身を隠すため顔幸と潘馳に成りすまし、城外へ脱出を試みる。江郎行は「君がそばにいてくれれば他に望まない」と告白し、二人は運命を共に歩む決意を固める。
一方、羅織は二人の失踪を知り怒り狂い、徹底捜索を命じる。門前で顔幸を待つ潘馳の前に沈渡が現れるが、顔幸は冷たく背を向け、潘馳と共に去る。潘馳は初めての出会いの地へ彼女を誘い、「争いを捨て、共に遠くへ行こう」と想いを告げる。二人は天灯を放ち、自由への祈りを託すが、そこへ現れた来羅織が「この犬男女をその場で斬り捨ててやろうか」と嘲笑。沈渡は矢を射るも、狙われたのは二人ではなく天灯だった。揺らめく灯火は、愛と希望の儚さを象徴して散っていく。
宮中では、太皇太后の命が尽きようとする中、来羅織が謁見を果たす。彼は自らが淑妃の息子であり、火事で死んだとされた少年は入れ替えられた別人であったと真実を暴露。母の無念を背負い、「大朝会の日こそ母の命日。その日に大統を継ぐ」と宣言する。だが、師匠から淑妃が南琅の碧落郡主であったと知らされた顔幸は、歴史の闇に潜む秘密を知ることになる。
やがて迎えた大朝会――。そこに現れたのは病に伏すはずの太皇太后。彼女は毅然と立ち、「もはや羅織に摂政を任せる理由はない」と宣言。権力を掌握したかに見えた来羅織の野望に、思わぬ逆風が吹き始める。
第39話 あらすじ
崩れゆく虚構、暴かれる血脈の真実
大朝会に突如姿を現した太皇太后を前にしても、来羅織は一切動じなかった。すでに盤石の布陣を敷き、反発する大臣たちを沈渡に捕らえさせるよう命じる。だが、その忠誠は偽り――沈渡は水面下で賢王と連携しており、真の決戦の刻を待っていたのだ。
時刻係に紛れた来羅敷が太皇太后を襲おうとした瞬間、沈渡が立ち塞がる。激しい刃の応酬の末、来羅敷は沈渡に敗れ、最後は来羅織自らの手で首を折られ絶命。来羅織は「勝利は我らのもの」と高らかに宣言するが、その声に応える兵はすでにいない。鎮遠将軍の奇襲、そして戦援将軍率いる精鋭部隊と梁兄が開発した三連発弩の力により、来羅織の兵力は壊滅していたのだ。
追い詰められた来羅織は、自らが淑妃の子であり先帝の皇子だと明かし、国師の予言を盾に「天命を受けた者」と主張する。しかし、使臣に紛れて現れた顔幸がその虚構を暴く。――国師の予言は反逆の疑念を示すための偽装であり、その証拠となる布は、暗殺前に国師が机の下に隠し、芫娘の手に渡ったものだった。
顔幸はさらに衝撃の真実を告げる。来羅織は皇子ではなく、淑妃と空山将軍の秘められた子であった。二人は深く愛し合っていたが、淑妃の父が和親を強いたため、すでに亡き空山将軍の一族を人質に取られ、淑妃は従うしかなかった。懐妊を隠すため内官を買収し、口封じされた宮女だけが真実を知っていた。すべてを悟った来羅織は絶望のうちに兵士たちに討たれる。
戦いが終わると、沈渡は父・沈秉燭の汚名を雪ぐべく牢に入ろうとする。駆けつけた顔幸は「共に進む」と訴えるが、沈渡は「我らはすでに離縁した。この件はお前と無関係だ」と冷たく言い放つ。顔幸が「一人で行くなら永遠に縁を絶つ」と迫っても、彼は己の道を選び牢へと向かった。
太皇太后は朝廷にてついに沈秉燭の冤罪を提起。証拠として米袋を示すと、そこに本来食糧など存在しなかった事実が明らかになる。問い詰められた張宰相は、門下生による穀物の転売と、それを隠すために沈秉燭の筆跡を偽造したことを白状。すべては自らの独断であり、賢王は一切関与していなかったと認めた。
長きにわたり大蒼を揺るがせた陰謀は、ここに至り崩れ去ろうとしていた――。
第40話(最終回) あらすじ
許されぬ過去、結ばれる未来
張宰相の自白によって沈秉燭の冤罪は晴れた。しかし賢王は、国を揺るがす大事件の行方に頭を悩ませる。張宰相は「これ以上追及すれば大蒼そのものが揺らぐ」と己に罪を背負わせる覚悟を示すが、太皇太后は真実を隠そうとはしなかった。――当時この件に関わったのは張宰相だけではなく、自らの甥・周淼もまた暗躍していたのだ。驚愕する張宰相を前に、太皇太后は「周家に連なる者すべてに徹底した裁きを」と宣言。賢王は律に則り厳正に裁くべきだと答える一方で、張宰相の家族だけは赦してほしいと願い出る。その温情は太皇太后にも認められ、長きにわたる因縁はついに清算される。
沈渡もまた、父の汚名が晴れたことで安堵の涙を浮かべる。顔幸は位牌に手を合わせ、窓外の光を見つめながら、ひとつの時代の終焉を静かに感じ取っていた。
その頃、永安公主は太皇太后の前に進み出て、自らの罪を裁くよう懇願する。しかし太皇太后は「もし罰するならとっくにそうしていた」と一蹴。将士に金銭を与えるだけでは真の民心は得られぬと諭し、幼い皇帝の口からも「民を想う心」の言葉がこぼれると、場は和やかな笑いに包まれる。永安公主は涙ながらに「必ず皇帝を支え続ける」と誓うのだった。
一方、沈渡と顔幸の関係はぎこちなくすれ違いを重ねる。贈り物を届けても顔幸は冷たく突き返し、周囲からは「白無常(死神)」ではなく「白贈り(贈り物ばかりの男)」と囁かれる始末。それでも沈渡は決して諦めなかった。太皇太后は顔幸に「貧しい学子にも受験の機会を与える」と語りつつ、「人もまた同じ。目の前の人を大切にせよ」と示唆を送る。
やがて顔家では思いもよらぬ事態が起きる。母が告げたのは――「かつて身代わり花嫁として嫁ぎ、理不尽な離縁を経たことは月老を欺いたも同じ。今こそ正式な婚礼をせねばならぬ」という運命の宣告だった。家族総出の準備の中、沈渡はついに顔家の門前へ。数々の試練を越え、最後には斉野雲との一戦にまで挑む。
「勝てぬから先に帰る」――一見突き放すようなその言葉に、顔幸は胸を締めつけられ、慌てて外へ飛び出す。そこで待っていたのは、立ち去るどころか揺るぎなく立ち尽くす沈渡の姿だった。
「顔幸を、家に連れ戻しに来た」
長き試練を経て、ふたりの運命は再び交わろうとしていた――。
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