長楽曲~白い愛、黒い罪~ 2024年 全40話 原題:长乐曲
第26話 あらすじ
裏社会の影と賭場の罠
沈渡と顔幸は、竹細工の子豚をめぐる過去を語り合い、幼き日の誤解とすれ違いをようやく解きほぐす。しかし余韻に浸る間もなく、潘馳が「首なし鬼事件」の決定的証拠を掴んだと報告。被害者・李楷祥の財産が隣人・劉宗遠の元に隠されていたのだ。さらに劉宗遠は失踪中――真犯人への疑念が深まっていく。
沈渡は「財産を手放せぬ以上、遠くへは逃げられぬ」と断じ、莫謙之に城門での捜索令を発令させる。その間、顔幸と潘馳は牢内の李楷祥の弟・李楷瑞を訪ねた。兄を説得するために設けた席が惨劇の発端となったと語る李楷瑞。しかし彼は何かを隠していた。顔幸が「半面鬼」をちらつかせると恐怖に駆られ、ついに口を開く。李楷祥は賭博に溺れた末、巨財を投じて「仙道」を学ぼうとしていたのだ。その背後に劉宗遠の存在が見え隠れする。
潘馳は情報収集のため顔幸を伴い遊郭へ。花魁・秀秀に劉宗遠の消息を探らせ、さらに賑やかな席を設けて顔幸を気遣う。そこへ現れた沈渡は、夜に姿を消した顔幸を案じていたと告げ、「信じてはいるが、一言伝えてほしい」と静かに諭す。やがて劉宗遠の死体が発見される。肝臓は摘出され、体には「火蛾門」の名が青い文字で刻まれていた。
事件の渦中、顔幸たちは謎の男に阻まれる。手にした令牌から、その正体は西南の裏社会を牛耳る首領・孫譚だと判明。彼は劉宗遠を長年追っていたが、火蛾門の影に怯え、真相を伏せていた。
真実を掴むべく、顔幸と沈渡は変装して地下カジノへ潜入。八百長が横行する場で、沈渡が仕込んだサイコロを使い、顔幸は千両を賭けて大勝利を収める。しかし歓喜も束の間――紀大福が立ちはだかる。「ここでこれほどの大金を得た者が、無事に外へ出られると思うな」と。
次々と現れる裏社会の影と、揺さぶられる人間模様。事件の行方は、さらなる闇へと深く沈んでいく。
第27話 あらすじ
地下賭場の奥で、顔幸と沈渡は残酷に打ち据えられ、手足を失った者たちの姿を目撃する。半面鬼の伝説は、こうした無惨な人々を隠すために広まったのではないか――顔幸は背筋を凍らせる。やがて莫謙之の名を聞きつけた紀大福が外へ出ると、沈渡は残党を一掃する。だが直後、莫謙之の部下・司馬比丘が半面鬼に腱を断たれ瀕死の状態で発見された。自らの最期を悟った司馬は沈渡に「痛快な死」を願い、沈渡は静かにそれを叶える。
その後、南山で司馬の家族を弔った莫謙之。顔幸は彼の父が伝書鳩を操っていた事実から、司馬が太后の密偵であった可能性を疑う。莫謙之は疑念を抱き、真相を追及することなく司馬を葬った。重苦しい空気の中、顔幸は沈渡に問いかける。「もし、私があなたの最愛の人と敵対する立場になったら……それでも信じてくれる?」。沈渡は即答する――「私の最愛の人は、いつだって顔幸だ」。
一方、潘馳の知らせで一行は郊外の半面鬼の痕跡を追うが、人影はない。だが突如「半面鬼が民を拉致した」との報せが入り、急ぎ戻ると、五人の女性が人質にされていた。莫謙之が捕縛を命じる中、半面鬼は「三陽の日が近い」と謎めいた言葉を残す。混乱の最中、顔幸は囚われるが、意識を失う前に吹いた笛の音が沈渡を呼び寄せた。
やがて顔幸は半面鬼の正体が紀大福であると見抜く。彼の妻は李楷祥の借金取りに辱められ命を落とした。復讐に駆られた紀大福が一連の事件を仕組んでいたのだ。沈渡が救出に駆けつけるも紀大福は逃亡。結局、莫謙之に捕らえられ、死牢へ送られる。
だが事件は終わらない。紀大福の公開処刑が行われ、沈渡らは「真相はまだ闇にある」と訴えるが、莫謙之は民心を抑えるため強行する。処刑場に喝采が響く中、顔幸の胸には深い違和感が残る。拉致された五人の女性が依然行方不明であり、その顔立ちには莫繍繍の影が色濃く映っていたのだ。
その頃、広春堂で莫謙之は遂に本性を現す。彼は五人の女性を惨殺し、その血で亡き妹・莫繍繍を蘇らせようとしていた。かつて流民を救おうとした繍繍は逆に拉致され、辱めを受けて非業の死を遂げた――その過去が暴かれるとき、沈渡と顔幸を待ち受けるのは、愛と信義を試すさらなる惨劇だった。
第28話 あらすじ
莫謙之の狂気はついに頂点へと達していた。妹・莫繍繍を蘇らせるための禁断の儀式を強行しようとする彼に、沈渡は「これ以上はやめろ」と必死に説得を試みる。潘馳も「そんな形での復活は望んでいない」と告げるが、莫謙之の執念は揺るがない。目覚めた秀秀を「潘馳の生まれ変わり」と錯覚した一瞬の喜びも、彼が「莫兄」と呼んだことで儚く消えた。沈渡が儀式を妨害したと悟った莫謙之は激昂するが、沈渡は彼を捕らえさせる。
秀秀は顔幸に「本当に蘇らせる術はないのか」と問いかける。しかし顔幸は静かに首を振る――「確かに、ない」と。絶望の中、連行される莫謙之だが、民衆から厚く慕われていた彼はすでに根回しを済ませていた。現れた兵の前で、沈渡が火蛾門と通じているという“証拠”を突きつけ、逆に沈渡を告発する。沈渡は初めて、莫謙之が密かにこれほどの策を用意していたことを知る。危機一髪、孫譚が仲間を率いて駆けつけ、沈渡らは辛くも郊外へ脱出するのだった。
だが安堵は束の間。太皇太后からの密詔が早くも届き、鎮遠将軍が一万の援軍を率いて営州城を収めよとの命が下る。あまりに迅速な動きに沈渡は疑念を抱く。顔幸はその裏に司馬比丘の密告があったのではないかと見抜き、彼らが常に監視下にあったことを悟る。さらに、盗み聞きをしていた齊野雲が捕らえられ、状況は緊迫の度を増していく。
やがて沈渡は一計を案じる。潘馳に騒ぎを起こさせ、あたかも援軍が到着したかのように見せかけ、虚勢の旗印を掲げて莫謙之を欺くのだ。莫謙之のもとを訪れた沈渡は「武器は持たない」と告げ、正面から対話を試みる。だが莫謙之は朝廷の糧草が甘南道に流れていることを突きつけ、「お前こそ騙されている」と言い放つ。理を尽くしても平行線のまま、ついに両者は剣を交える運命に。
その最中、援軍到着を信じて城門を開かせた莫謙之だが、それは沈渡の虚構に過ぎなかった。潘馳の仕掛けで城外は喧噪に包まれ、援軍の姿はどこにもない。全てを悟った莫謙之に沈渡は告げる――「この世に復活などありはしない」と。
捕らえられた莫謙之の前に、秀秀が現れる。彼女は「莫謙之に命を救われた。最後に言葉を交わしたい」と懇願するが、沈渡は拒む。秀秀は刃を自らに突きつけ、沈渡はついに許可せざるを得なかった。短い語らいの後、秀秀は感謝の言葉を残し、己の命を絶つ。その姿を見届けた莫謙之もまた、密かに毒を仰いでいた。最期に彼は沈渡へと託す――「秀秀の肖像画の裏に、お前への遺品がある」と。
かくして、一つの執念が幕を閉じる。しかし、血にまみれた争いの果てに残されたものは、果たして「真実」か、それともさらなる「欺瞞」なのか。沈渡と顔幸の闘いはなお続くのだった――。
第29話 あらすじ
街へ戻った沈渡たちを待ち受けていたのは、突如命を落とした数人の民衆だった。顔幸の検分により、その死因は火蛾門の毒に酷似していることが判明する。やがて沈渡は繍繍の肖像画の裏に巧妙な仕掛けを発見し、そこから謎めいた箱を取り出す。だが直後、姿を現した来羅敷との死闘が始まった。彼は陳火蛾を装っていたが、沈渡は「剣は嘘をつかない」と見抜き、その正体を暴く。沈渡が解毒剤を求めると、来羅敷は小瓶を投げ与え「中身は本物だが、瓶に塗った毒で十分だ」と嘲笑う。
毒が身体を蝕み、沈渡は正気を失い顔幸の首を締め上げる。必死に名を呼び続ける顔幸の声が、彼を狂気から引き戻した。民は解毒剤で救われたものの、沈渡の容態は悪化。医師も匙を投げ、顔幸は鍼で経脈を封じて毒の拡散を遅らせるしかなかった。
潘馳は「沈渡を蝕むのは金烏部族の毒に似ている」と告げる。しかし金烏部族は数年前に大蒼との交流を断ち、外部に毒が流出するはずがない。潘馳は自ら西域へ調査に赴くが、出発直後に何者かに襲われ姿を消す。顔幸は沈渡のため薬を煮続け、祈るように彼の眠りを見守った。
やがて潘馳は金烏部族の少女・素光を伴い帰還する。素光は毒の正体を認め、「これは失踪した聖女が持ち出したもの」と告げた。彼女は解毒薬を差し出し、沈渡は一命を取り留める。だが素光はさらに衝撃をもたらす。彼女の部族で近年頻発する“炎の術”――家屋を瞬時に焼き尽くすその技も、失踪した聖女が生み出したものだという。聖女を連れ戻すことこそ、素光の使命だった。
沈渡は広春堂を再調査し、朱砂の痕跡を発見する。朱砂は本来、朝廷が厳重に管理する希少資源。敵勢力が入手している事実は、彼らの影響が深く宮廷に及んでいることを示していた。やがて再び現れた来羅敷は炎を操り、自ら姿を消す。その光景を見た素光は「間違いない、聖女の術だ」と断言する。
一方、潘馳は沈渡を訪ね「顔幸と約束を交わした以上、離縁すべきだ。さもなくば決して許さない」と迫る。沈渡は毅然と答える。「お前も見たはずだ、我らの絆を」と。そして潘馳が素光と共に金烏部族へ戻ろうとしていることを悟りながらも、問い詰めはしなかった。
街を歩けば、感謝の民が自らの手で作った食べ物を差し出す。民の思いに支えられながらも、沈渡と顔幸の前に立ちはだかるのは、聖女失踪の謎と金烏部族を巡る新たな戦い。火蛾門の影は消えず、運命の炎はますます燃え盛ろうとしていた――。
第30話 あらすじ
来羅敷は主である来羅織のもとへ戻り、今回の件を取り逃したことを報告する。火蛾門の残党はすでに始末し、半面鬼の者たちも毒で葬ったと語るが、沈渡から奪った品を確認した来羅織は、それがただの詩集であることに激怒する。沈渡は密かに中身を入れ替えていたのだった。
一方、都へ帰還の途につく沈渡と顔幸は刺客に襲撃されるも、沈渡が果敢に応戦。二人は馬を駆って宮中へと到着する。そこで永安公主と嘉安郡主に出会い、労いを受ける。やがて太皇太后に謁見した沈渡は、功績に対する褒美を辞退し、「顔幸に与えて欲しい」と願い出る。その誠意は受け入れられ、顔幸は従六品に叙任される。
謁見後、沈渡は顔幸を沈家の位牌が並ぶ静かな場所へ導く。母から託された「必ず生き延び、沈家の冤罪を晴らせ」という言葉を語り、ただ一人覚えている己の使命を明かす。顔幸もまた、「沈家の事件を知って女官試験を受け、刑部に入ったのは、その冤罪を正すため」と告白。二人は互いの想いを確かめ合い、深い絆で結ばれていく。
翌日、太皇太后は顔幸に黄金と絹を賜り、さらに沈渡に嘉安郡主との婚姻を命じる。すでに妻を娶っている沈渡はこれを固辞するが、その背後には深い政治的意図があった。張宝環の説明によれば、莫謙之亡き後、沈渡は朝廷内で孤立無援の身。小役人の妻を持つより、嘉安郡主を娶ることで永安公主の庇護を得させようとしたのだという。母の言葉を思い出した顔幸も、沈渡の立場の危うさを痛感する。
沈渡は太皇太后のもとへ赴き、婚約破棄を懇願するが、逆に怒りを買ってしまう。その最中、徐婉が現れ、明堂での不正事件を告発。彼女が差し出した帳簿には、二千万両を超える巨額の横領の証が記されていた。太皇太后は激昂し、信頼していた張宝環を厳しく断罪。責任者として職務怠慢の咎を負わせ、別邸での療養を命じる。
事件解決を託された沈渡は、その重責を引き受ける。顔幸と語り合い、二人は「これほど大きな問題が、こんなにも早く動いたとは」と驚きを隠せない。だが背後に潜む陰謀は、まだその全貌を現してはいなかった――。
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