長安謀略~復讐の二十四計 2025年 全28話 原題:长安二十四计
第21話の見どころ
親友・顧玉の最期を目の当たりにした謝淮安は、深い悲しみを胸に秘めながら、その遺志を受け継ぐ。芝英に託された重要な情報、長安を守るための決断、そして蕭文敬をめぐる新たな危機。さらに、烛之龍の正体を知った葉峥と小青にも過酷な現実が突きつけられる。
第21話のあらすじ
五娟は残された白吻虎の兵を率い、曲がりくねった山道を懸命に駆けていた。前夜、鉄秣軍に包囲された顧玉は、何としても残存兵を本拠へ送り、自分の命令を伝えるよう五娟に命じていた。五娟は顧玉を一人残していくことをためらうが、顧玉は「生きても死んでも、この土地に恥じることはない。これが軍人として最もよい帰結なのかもしれない」と静かに語り、彼女を送り出していた。
その頃、顧玉と謝淮安は視線だけで互いに意図を伝え合っていた。鉄秣王が謝淮安に捕らえられた鉄秣人を助けようと背を向けた瞬間、顧玉が飛びかかる。しかし鉄秣王は反射的に剣を振るい、顧玉の喉を一突きにする。目の前で親友を殺された謝淮安は怒りに目を燃やし、捕らえていた鉄秣人を斬り捨てると、その場を後にする。
鉄秣王は顧玉について、「劉子温と同じく敬意を払うに値する名将だ」と語り、手厚く葬るよう部下に命じる。
一方、鉄秣王のもとでは烛之龍が跪いていた。謝淮安を逃がしてしまったことを詫びる烛之龍に、鉄秣王はすでに謝淮安と会ったと告げる。謝淮安の目を見れば、決して凡庸な人物ではないことが分かるため、逃したことを責めるつもりはないという。
鉄秣王は、自分が滞在している屋敷にも満足していた。そこはかつて楊儲豪が使っていた書斎で、読みたい本が数多く揃っている。烛之龍がいくつもの場所を探した末、ここが最も適していると判断して用意したのだという。
鉄秣王はさらに、正体が露見した烛之龍が二人の弟子をどうするつもりなのか尋ねる。烛之龍はすでに監視をつけており、大局を乱すようなら殺すと答える。鉄秣王は満足そうにうなずく。
謝淮安は人目のない場所へ移動すると、袋にもたれかかり、顧玉を失った悲しみに耐えていた。二人は親しい友だったが、劉家の惨劇によって自分の存在が顧玉を巻き込むことを恐れ、助けを求めることもできなかった。ようやく再会できたときには、すでに生死を分かつ結果となっていた。
翌日、老人が顧玉の遺体を運び、山腹へ埋葬しようとしていた。鉄秣王から丁重に葬るよう命じられていたにもかかわらず、老人の二人の息子は白吻虎に殺されていたため、怒りに任せて顧玉の首を切り落とそうとする。そこへ謝淮安が現れ、老人を倒して顧玉を連れていく。
謝淮安は日当たりのよい場所を見つけ、自ら墓穴を掘って顧玉を葬ろうとする。しかしそこへ芝英が虎賁の兵を連れて現れ、言鳳山の仇を討つため謝淮安の首に刃を突きつける。
謝淮安は動じず、「まだその時ではない」と告げる。そして突然、小刀を顧玉の遺体へ突き立て、腹部を切り開く。芝英たちは驚愕するが、謝淮安はその腹の中から白吻虎の令牌を取り出す。それこそが、死の直前に顧玉が視線で謝淮安へ伝えた情報だった。
謝淮安は、かつて虎賁衛も白吻虎も鉄秣人と戦い、長安の民から敬意を集めていたことを芝英たちに語る。そして顧玉は国のために命を犠牲にして情報を残したのだと説明し、自分を殺したければ今すぐ殺せばいい、ただし鉄秣人を追い出し、失った土地を取り戻した後にしてほしいと告げる。
芝英はその言葉に心を動かされ、謝淮安の髪を数本切り落とすだけで刃を収め、部下を連れて去っていく。
その頃、重傷を負った葉峥は何者かに救われ、小青の医館へ運び込まれていた。小青と蕭文敬の懸命な看護によって、葉峥はようやく意識を取り戻す。蕭文敬から、眠っている間に起きた出来事を聞かされた葉峥は、謝淮安も師匠も消息を絶ち、さらに顧玉まで死んだことに危機感を抱く。
小青は蘇長林を探し出して殺すため、菓子店の主人に彼の行方を尋ねる。一方、葉峥は謝淮安から以前受けた指示に従い、蕭文敬を長安から脱出させることを決める。
別れ際、蕭文敬は「かつて長安はすべて自分のものだったのに、今は何一つ持っていけない」と寂しそうに語る。葉峥は、「友の心配や思いは持っていける」と励ます。しかし蕭文敬を送り出した葉峥は、周囲に見慣れない顔が多いことに気づき、密かに後を追う。
一方、小青は蘇長林を待ち伏せするが、逆に刺されてしまう。さらに蕭文敬の馬車も鉄秣人に止められ、主君のもとへ連れていかれようとする。葉峥が助けに入ろうとしたその瞬間、烛之龍が現れ、彼を退かせる。
第22話の見どころ
烛之龍が鉄秣人として長安へ潜伏してきた理由と、鉄秣王との深い関係が明らかになる。一方、鉄秣王の正体を知った蕭文敬は、かつての恩師との再会に衝撃を受ける。謝淮安は顧玉が命を懸けて残した情報を芝英へ託し、ついに自ら鉄秣王の懐へ飛び込むことを決意する。
第22話のあらすじ
葉峥の前に立ちはだかった烛之龍は、自分が鉄秣人であることを隠そうとはしなかった。鉄秣は極寒の地にあり、烛之龍の子どもも厳しい環境の中で幼くして命を落としていた。それこそが、彼が何十年もの間、長安へ潜伏し、この土地を手に入れるための準備を続けてきた理由だった。
なぜそこまでして長安を奪おうとするのかと問う葉峥に、烛之龍は冷酷に答える。鉄秣の大業のためなら、養子として育てた二人の孤児を犠牲にすることなど問題ではないというのだ。さらに、謝淮安はいずれ葉峥と小青のもとへ連絡を取るはずだから、それまで医館から出ずに待っていろと告げる。
そこへ蘇長林が、傷ついた小青を馬に乗せて戻ってくる。彼は葉峥に小青を医館へ連れて帰り、手当てしなければ命が危ないと告げる。葉峥は仕方なく馬を引いて戻ることにする。
小青は、師兄である葉峥なら自分の傷を治してくれると分かっていた。しかし二人の心に刻まれた傷は、どうすれば癒えるのか。長年慕ってきた師匠が鉄秣人だったという事実は、二人に大きな衝撃を与えていた。
その頃、蘇長林は鉄秣王のもとへ戻り、任務を果たしたことを報告する。鉄秣王は、長年自分を我が子同然に扱ってくれた楊儲豪まで殺したことについて、恨みはないのかと尋ねる。しかし蘇長林は表情一つ変えず、「すべて鉄秣の大業のため。ほかの者の死など取るに足りない」と答える。
鉄秣王は蘇長林を連れて、老沙の小吃店へ向かう。そこで馄飩を注文すると、老沙は久しぶりに訪れた鉄秣王をすぐに見抜き、昔と変わらない好みまで覚えていた。
食事の途中、鉄秣王は岑偉宗について尋ねる。老沙は長いこと会っていないと答えるが、鉄秣王が立ち去った後、蘇長林は岑偉宗が誰なのか尋ねる。老沙は、かつて鉄秣王が太学府の教師だった頃、劉子温や国師・岑偉宗とともにこの店で語り合っていたことを明かす。当時の言鳳山など、彼らの前ではまだ若造にすぎなかったという。
蘇長林は自分を皮肉っているのかと怒るが、老沙は「お前は人間ですらない」と吐き捨てる。自分を大切にしてくれた楊儲豪を自ら殺した蘇長林に対する怒りだった。
一方、謝淮安は意識を取り戻す。そこは物置部屋で、外から芝英の声が聞こえていた。芝英の部下が、顧玉の墓前で倒れている謝淮安を発見し、ここまで運んできたのだという。
謝淮安は長安の状況を尋ねる。芝英は、蕭武陽の行方はいまだ分からず、謝淮安の仲間たちは生きていることさえ苦しい状態だと告げる。謝淮安は「生きているということは、まだ死んでいないということだ」と苦笑する。
謝淮安は、自分が長い時間をかけて仕掛けた計略によって蕭文敬を見つけ出し、顔を変えて身を隠させたにもかかわらず、まさか烛之龍が鉄秣人だったとは思わなかったと語る。そして顧玉の死は間もなく白吻虎の本拠へ伝わり、軍の士気を大きく揺るがすだろう。蕭武陽まで消息不明なら、長安を守るのは難しい。
芝英は扉を開けて謝淮安を解放し、「鉄秣人と戦うことになったら、自分も力を貸す」と告げる。謝淮安は街へ出れば何か見つかるかもしれないと答える。
一方、蕭文敬は鉄秣王の前へ連れてこられる。蕭文敬は目の前の人物に見覚えがあるように感じていた。鉄秣王は蕭文敬が太学で学んでいた頃の話まで持ち出し、彼のことを「自分が知る中でもっとも臆病な人間だった」と語る。ただし、臆病であることも生き残るための知恵なのだという。顧玉のように先頭に立って戦った者も、結局は命を落としたのだからと皮肉を交える。
そこで蕭文敬は、目の前の男がかつての教師・呉仲衡であることを思い出す。
呉仲衡こと鉄秣王は、自分が鉄秣の大業のために何十年も長安へ潜伏してきたことを誇らしげに語る。長安の有力者たちと親交を結び、この土地と政治を動かす者たちを知り尽くした。鉄秣軍は間もなく長安を陥落させ、自分はついに大功を成し遂げるのだという。
その頃、謝淮安は芝英とともに長安の街を歩いていた。顧玉が殺された場所へ来た瞬間、謝淮安の前に軍装姿の顧玉が現れる。顧玉は「長安は滅びない。滅ぼしてはならない」と語りかける。謝淮安は深くうなずき、顧玉は一礼すると姿を消す。
謝淮安は顧玉が命を懸けて残した情報を取り出し、芝英に託す。自分にはもう頼める人間がいない、この情報は非常に重要だから、芝英に届けてほしいと頼む。鉄秣側へ渡しても構わないと告げるが、芝英は「必ず届くべき場所へ届ける」と答える。
その後、謝淮安は鉄秣王が自分を探している理由を考える。狙いは蕭武陽を誘い出して殺し、後顧の憂いをなくすことだ。ならば、自分が囮になるしかない。
芝英と別れた謝淮安は、かつて暮らした屋敷へ戻る。荒れ果てた庭を見つめ、古びた茶壺を見つけると、そこで茶を沸かす。すると向かいに父・劉子温が座っているような錯覚に陥り、父子だけが理解できる言葉で、長安の情勢について語り合っているような感覚に包まれる。
やがて謝淮安は決意を固め、一人で鉄秣王のもとへ向かう。
第23話の見どころ
鉄秣王の長年にわたる謀略と、劉子温をめぐる因縁が明らかになる。謝淮安は仲間を人質に取られながらも、あえて鉄秣王の要求を受け入れるふりをする。一方、身を潜めていた蕭武陽も反撃の準備を整えていた。二人の策が交錯し、ついに決戦の舞台が整う。
第23話のあらすじ
鉄秣王は、長年にわたって自分が敵を研究し尽くしてきたと自信を見せる。そして謝淮安に、自分についてどれほど知っているのかと問いかける。
謝淮安は直接答える代わりに、一つの昔話を語り始める。
かつて、一人の長安の女性が鉄秣人に捕らえられた。鉄秣人たちは、彼女を高い場所に吊るせば仲間の長安人が救出に来ると考え、七日七夜にわたって彼女を囮にした。しかし誰一人として助けに来ず、鉄秣人たちも次第に諦めていった。
ただ一人、諦めなかった鉄秣人がいた。彼は女性が最も弱ったところで助けるふりをし、その見返りとして秘密を聞き出す。そして情報を得ると、女性を殺した。
その頃、彼女を救うために長安の虎賁が陳家谷までやって来ていた。しかし、すでに情報を得ていたその鉄秣人は罠を張っており、百人の虎賁を捕らえて倉庫へ閉じ込める。やがて彼は大きな功績を立て、鉄秣王の座に就いた。
話を聞いた鉄秣王は立ち上がる。彼は自分なら捕らえた虎賁を閉じ込め、互いに殺し合わせて全滅させるつもりだったと認める。しかし言鳳山だけがそこから逃げ延び、長い年月を経て反乱を成功させたため、自分の計画は十五年も遅れたのだという。
さらに鉄秣王は、劉子温と親しかったはずなのに、謝淮安の母親について聞いたことがないと尋ねる。謝淮安は指を強く握りしめ、怒りを押し殺す。そして母は遠くへ行っており、用事が済めば戻ってくると答える。
謝淮安は、鉄秣王が友人たちを人質にして自分を呼び出した目的を問いただす。鉄秣王は単刀直入に、蕭武陽を殺せと命じる。言鳳山を策で倒した謝淮安なら、殺人王と恐れられる蕭武陽も殺せるはずだというのだ。
謝淮安が蕭武陽を殺せば、鉄秣王は後顧の憂いをなくせる。その代わり、謝淮安の仲間には危害を加えないと約束する。謝淮安は表向き要求を受け入れる。
一方、蕭武陽は依然として蔵水川に潜伏していた。数日前には何者かが襲撃してきたものの、逆に全員を返り討ちにしている。それ以来、さらに警戒を強め、複数の場所に武器を隠していた。
蕭武陽は張父の塩店に身を寄せ、蔵水川で借金の取り立てをしている若者・陸小丙を雇う。自分の靴と謝淮安の似顔絵を渡し、似顔絵の男を見かけたら知らせるよう命じ、報酬として四両の金を与える。
張父から外の情勢を聞いた蕭武陽は、謝淮安が長期間消息を絶っていることから、何か重大な事態が起きていると推測する。張父は謝淮安を心配するが、蕭武陽はまったく動じない。言鳳山を策で殺せる男なら、そう簡単に死ぬはずがないと信じていた。
やがて謝淮安は蘇長林らに連れられ、蕭武陽のもとへ向かうことになる。出発前、蘇長林は謝淮安の全身を念入りに調べ、腕の傷跡まで確認する。
道中、謝淮安は蘇長林に「自分がどんな結末を迎えると思う」と尋ねる。蘇長林は当然、鉄秣人とともに山頂へ行くのだと答える。自分自身が鉄秣人なのだから、最後まで勝ち残るという自信だった。
謝淮安は蘇長林を見つめ、「今日はお前が死ぬ日になる」と静かに言い放つ。
やがて一行は蔵水川へ入る。謝淮安は道端を歩く人物の荷物から赤い傘を抜き取り、自分で差す。そして街角で陸小丙の靴を確認すると、赤い傘を道端の桶へ差し込む。
陸小丙はすぐに似顔絵を確認し、謝淮安本人であることを理解する。そして赤い傘を持って蕭武陽のもとへ向かう。
蕭武陽は陸小丙を帰らせた後、赤い傘を念入りに調べる。すると中から小さな書状が見つかった。それは謝淮安が自らの傷口に忍ばせていたものだった。
そこには「鉄秣人が来た。計画通りに動け」と記されている。
蕭武陽はすぐに立ち上がり、隠していた長剣を手にする。襲いかかってきた鉄秣人を次々と斬り伏せ、蘇長林も必死に応戦するが、蕭武陽にはまったく歯が立たない。
やがて蘇長林も蕭武陽の剣に倒れる。
しかし、その直後、巨大な大刀を手にした鉄秣王が姿を現す。ついに二人の強者が、正面から相まみえる。
第24話の見どころ
蕭武陽と鉄秣王による激闘が始まり、長安の命運を左右する一戦へと発展する。しかし、戦場の裏側では蕭文敬が鉄秣王の策略に巻き込まれ、兄・蕭武陽へ刃を向けることに。さらに烛之龍は謝淮安を追い詰め、最後に「師匠」と呼びかける人物が現れる。
第24話のあらすじ
葉峥は医館の庭で大きな木箱を作っていた。その音で休んでいた小青が目を覚ます。葉峥は小青に、ここを離れるつもりだと告げる。このままでは二人とも鉄秣人に捕らえられ、謝淮安や蕭文敬を脅迫するための人質にされてしまう。
小青もその考えに同意する。どこへ行くかは分からないが、葉峥の腕があれば、二人で生き延びる道を探すことはできるはずだった。
しかし、周囲を監視していた鉄秣人たちは葉峥が外へ出た瞬間、一斉に襲いかかる。葉峥は片手で小青の入った木箱を引きながら、もう片方の手で刀を振るう。瞬く間に敵をなぎ倒していく。
その頃、蔵水川に鉄秣王が現れたことを見た謝淮安は、静かに笑う。自分の読み通り、蘇長林は本当の敵ではなく、最も警戒すべき相手は鉄秣王だったのだ。
蕭武陽と鉄秣王は激しくぶつかり合う。二人の剣と刀が交錯するたび、周囲の木造家屋が次々と破壊され、激しい戦闘は何十合にも及ぶ。やがて鉄秣王は全身に傷を負い、命を守るため刀を捨てて逃走する。
謝淮安は駆けつけた陸小丙に蕭武陽を任せ、自ら刀を手にして鉄秣王を追う。今度こそ自分の手で決着をつけるつもりだった。
陸小丙は蕭武陽に、四両の金を受け取った以上、もう少し役に立ちたいと申し出る。しかし蕭武陽は自分のことは心配するなと告げ、張父を守るよう命じる。張父さえ無事なら、自分には心残りがないという。
一方、謝淮安はついに鉄秣王へ追いつき、刀を振り下ろそうとする。しかしその瞬間、烛之龍が現れ、身を挺して鉄秣王を守る。絶好の機会を逃した謝淮安は、やむなくその場を離れる。
その後、房更輝は煙を使って蕭武陽の視界を奪う。蕭武陽は敵を追って走るが、そこで思いがけない人物と遭遇する。
弟・蕭文敬だった。
蕭武陽は反射的に剣を収める。病床で自分を献身的に世話してくれた弟だけは、敵ではないと信じていたからだ。
しかし、蕭文敬は手にした短刀を兄の身体へ突き刺す。
蕭武陽は信じられない表情で弟を見つめ、「なぜだ」と問いかける。蕭文敬は答えることができない。
実は蕭文敬は軟禁されている間、鉄秣王から戦況を見せられていた。鉄秣軍が各地を制圧し、民を殺しながら長安へ進軍していることを知り、蕭文敬は心を痛めていた。
そこで鉄秣王は一つの条件を提示した。蕭文敬が傀儡の皇帝となるなら、長安の半分を譲り、これ以上民を殺させないというのだ。
蕭文敬は、鉄秣王と取引すれば長安の民を救えると信じてしまう。しかし、それこそが鉄秣王の策略だった。誰にも警戒を解かなかった蕭武陽が、唯一心を許していた弟だけは警戒していなかったからだ。
蕭武陽の傷口から血が流れ、蕭文敬は崩れ落ちそうになる。「自分は長安のためにやった」と叫ぶ弟に、蕭武陽は静かに語りかける。
「長安のために、それだけは忘れるな」
そして、自分のものはすべて弟に返すから安心しろと告げる。
その隙に鉄秣王は蕭武陽の目を刺し、兵士たちに彼を連れ去るよう命じる。蕭文敬は耐えきれず、「少し歩きたい」と願う。鉄秣王は彼が逃げられないと分かっているため、好きにさせる。
蕭文敬が向かったのは張父の塩店だった。しかし張父は彼を激しく叱責する。「どうして兄に刃を向けた」と涙ながらに問い、もう自分には蕭文敬が分からないから出ていけと言い放つ。
蕭文敬は何度も頭を下げ、店を後にする。
一方、烛之龍は謝淮安を探し続けていた。姿を隠す謝淮安は見つからず、ただ声だけが周囲から響く。
謝淮安は、「自分の二人の弟子のことを考えろ」と烛之龍に問いかける。しかし烛之龍は、主君を守るために行動している以上、自分には何の悔いもないと答える。
どれだけ探しても謝淮安を見つけられない烛之龍は、ついに張父の塩店へ向かう。謝淮安は張父に恩義があるため、決して見捨てることはないと考えたのだ。
烛之龍が店内で謝淮安を待っていると、やがて一人の笠をかぶった人物が姿を現す。
そして、その人物は烛之龍に向かって静かに声をかける。
「師匠――」
烛之龍が振り返ると、そこには思いもよらぬ人物が立っていた。
















この記事へのコメントはありません。