大生意人~大商人への道~ 2025年 全40話 原題:大生意人
第21話 生還と再会
外国商人から大量の銃を買い付けた古平原と徐管帯は、北京への帰路につく。ようやく危険な任務を終えられると思った矢先、徐管帯は突然二人の馬を撃ち殺してしまう。予想外の行動に古平原は愕然とするが、そこで初めて徐管帯の真意を知ることになる。
徐管帯はすでに不治の病に侵され、蘇紫軒から手に入れた阿片で命をつないでいた。彼は復讐だけを支えに生きており、自分を失脚へ追い込んだ古平原を道連れにすることを決めていたのだ。助かったと思わせた後で絶望を味わわせる――それが彼の最後の望みだった。
馬の死骸から漂う血の匂いは、やがて荒野の狼たちを呼び寄せる。徐管帯はそのまま命を落とし、古平原だけが極寒の大地で狼の群れに囲まれてしまう。銃を握りしめながら必死に生き延びようとする古平原。絶体絶命の状況の中、彼は知恵と勇気を振り絞って狼たちと対峙する。
その頃、常玉児は李欽から古平原の行方を聞き出していた。父・常四爺とともに遠路はるばる北方へ向かい、ついに危機一髪のところで古平原を救い出す。疲労困憊になりながらも自分を助けようとした常玉児の姿に、古平原は胸を打たれる。そして長く胸の奥にしまっていた想いを打ち明け、ついに彼女への愛を告白するのだった。
二人は再会の喜びを分かち合うが、古平原にはまだ果たすべき使命が残っていた。彼は銃を北京へ届けなければならない。別れ際、李欽からの伝言として「生きて帰れたなら二度と京へ近づくな」と忠告を受ける。しかし古平原は、すべてを終えたら必ず常玉児のもとへ向かうと約束する。
北京へ戻った古平原は大量の銃を持ち帰った功績によって一躍注目の存在となる。恭親王や安徽巡撫・喬松までもが彼を歓迎し、その手腕を高く評価する。そして慈禧の推薦と恭親王の後押しによって、「安撫使」という名誉ある称号を授けられる。さらに天下一の茶として認められた蘭雪茶の影響もあり、徽州茶商たちの期待はますます高まっていくのだった。
第22話 合肥城の決断
古平原は茶商たちの前で胡老太爺と固い握手を交わし、過去の対立に終止符を打つ。そして驚くべきことに、蘭雪茶の製法や秘訣を独占することなく公表してしまう。商人たちは利益を独り占めしないその姿勢に大きな衝撃を受ける。
その夜、古平原は久しぶりに蘇紫軒と再会する。二人の話題は、激しい攻防が続く合肥城へと及ぶ。義軍を率いる李成と清軍の戦いは膠着状態に陥り、最も苦しんでいるのは城内の民衆だった。古平原はこれ以上無意味な犠牲を出したくないと考え、李成に降伏を勧める決意を固める。
喬松や保慶は危険すぎるとして反対するが、古平原の意思は揺るがない。彼は安撫使として自ら合肥城へ入り、李成との直接交渉に臨む。
再会した李成に対し、古平原は率直に語りかける。勝敗はすでに見えており、このまま戦い続ければ市民も兵士も無駄に命を落とすだけだと説得する。李成もまた城内の厳しい状況を理解していた。そして最終的に、市民や部下たちには自由に去就を選ばせるという決断を下す。
しかし李成自身は最後まで戦う覚悟を変えなかった。彼にとって戦いを放棄することは、共に戦ってきた仲間たちへの裏切りだったのである。白依梅もまた夫を見捨てることはせず、最後まで運命を共にすると誓う。
やがて義軍兵の一部は投降を選び、清軍陣営は勝利を目前にした祝賀ムードに包まれる。だが古平原は、その華やかな光景の裏側に漂う不穏な気配を感じ取っていた。戦争が終わろうとしているにもかかわらず、彼の胸には拭えない不安が残るのだった。
第23話 信念の代償
投降兵の受け入れが進み、清軍陣営では盛大な祝宴が開かれる。しかし古平原は席上で喬松や保慶に対し、自分は安撫使として出世したいわけでもなければ、彼らと同じ価値観を共有するつもりもないと断言する。そして宴席を後にし、その場を去ってしまう。
帰宅途中、彼は戦俘収容所の方向から激しい炎が上がっていることに気付く。胸騒ぎを覚えた古平原は馬を飛ばして現場へ向かうが、そこで目にしたのは想像を絶する光景だった。収容所には無数の遺体が横たわり、投降した義軍兵たちが虐殺されていたのである。
古平原は怒りに震えながら喬松へ詰め寄る。しかし虐殺は現場の独断ではなく、慈禧の命令によるものだったと知る。理不尽な現実を前に、古平原は深い無力感を味わうことになる。
その後、清軍は合肥城への総攻撃を開始する。激しい戦闘の末に城は陥落し、李成と白依梅も捕虜となってしまう。二人は反乱軍の首領として北京へ送られ、処刑される運命にあった。
古平原は再び二人を救おうと動き出す。しかし虐殺事件によって清朝側への不信感を強めていた李成夫妻は、古平原の言葉を素直に信じることができない。それでも古平原は諦めず、あらゆる人脈を駆使して救出策を模索する。
そこで彼は蘇紫軒の協力を得て、江寧将軍・九帥を動かすことに成功する。九帥は捕虜の引き渡しを名目に李成夫妻を引き取り、義軍兵たちには帰郷の道を与える。一方で李成には、その才能を惜しみ軍の参謀として働いてほしいと提案する。
部下たちの未来を考えた李成は苦悩の末にその申し出を受け入れる。古平原の尽力によって命は救われたものの、戦乱が残した傷はあまりにも深かった。新たな時代を迎えようとする中、それぞれが重い運命を背負いながら前へ進もうとしていた。
第24話 海を越える商い
九帥の計らいによって命を救われた李成だったが、彼の心には消えることのない葛藤があった。戦は終わりを迎えつつあるものの、多くの仲間たちが命を落とし、自らだけが生き残ることに耐えられなかったのである。
李成は部下たちを前に立ち、戦いは終わったこと、そしてこれからはそれぞれが故郷へ帰り、新たな人生を歩んでほしいと語る。しかしその直後、自分だけが清軍に仕える立場になることはできないと決意を示し、静かに刀を抜く。そして仲間たちへの責任と誇りを胸に、自ら命を絶ってしまうのだった。
突然の出来事に九帥も言葉を失う。白依梅は愛する夫の死を目の当たりにし、悲しみのあまり意識を失ってしまう。
古平原は白依梅を故郷へ連れ帰り、家族とともに懸命に看病を続ける。しかし彼女は深い悲しみから目覚めることができない。昏睡状態の中で白依梅は亡き父と再会する夢を見る。父は娘を責めることなく、これまでの苦しみを受け入れ、温かく励ましてくれる。その夢によって白依梅の心は少しずつ癒やされていく。
そんな折、胡老太爺が慌てた様子で古平原を訪ねてくる。重大な問題が発生していた。かつて万茶大会で面目を潰された李万堂が報復に動き、外国商人たちへ圧力をかけて安徽茶の買い付けを禁じていたのである。その結果、安徽茶は海外への販路を完全に失い、多くの茶商たちが窮地に立たされていた。
古平原は事態を打開するため李欽を訪ねる。李欽は表立って協力はしないものの、海関総税務司の赫徳が鍵を握っているとそれとなく教える。古平原はその助言を頼りに上海へ向かう。
上海で赫徳と面会した古平原は、安徽茶の輸出再開について直談判する。しかし赫徳は首を横に振る。すでに朝廷は李万堂へ茶葉輸出の権利を与えており、さらに李万堂は祥和洋行の理査徳と独占契約を結んでいた。背後には英国商社も存在し、簡単に覆せる話ではない。
巨大な権力と資本の壁を前にしても、古平原は決して諦めなかった。彼は新たな突破口を探し始める。安徽茶を救うための挑戦は、ついに中国国内から世界市場へと舞台を広げていくのだった。
第25話 世界への第一歩
李万堂は安徽茶商たちが完全に屈服するまで手を緩めるつもりはなかった。自ら徽州へ乗り込み、胡老太爺に圧力をかけると同時に、塩田の買収計画まで進め始める。商売のためなら徹底的に相手を追い詰める父のやり方に、李欽は強い違和感を抱いていた。
一方、上海に滞在していた古平原は思わぬ情報を得る。船長のトッドから、その船がインド航路に就いていることを聞かされたのである。さらに軍艦や外国船が各国を結びながら大量の物資を運んでいる現実を目の当たりにした古平原は、大きな発想の転換を得る。
「外国商人に売ってもらうのではなく、自分たちで海外へ売りに行けばいい」
このひらめきが、状況を一変させることになる。
古平原は急いで弟の古老二を徽州へ帰し、胡老太爺へ伝言を託す。どれほど苦しくても李万堂に茶葉を安売りしてはならない、必ず自分が活路を見つける、と。
その頃、李万堂は勝利を確信していた。胡老太爺を心理的に追い詰めるため、わざと約束した会談を取り消し、相手を翻弄する。しかし古老二が昼夜を問わず急ぎ戻り、古平原の伝言を届けたことで状況は変わる。胡老太爺は古平原を信じ、最後まで持ちこたえる決意を固める。そして李万堂からの誘いも断ってしまう。
さらに古平原はその足で山西へ向かう。目指したのはかつて苦楽を共にした山西商人たち、老八家だった。彼は彼らに対し、安徽茶を直接海外へ運び、中国商人自らの手で販売するという壮大な構想を語る。
その話を聞いた老八家の面々は大いに沸き立つ。外国商人に利益を独占されるのではなく、自分たちが世界市場へ乗り出すという発想は、誰も考えたことがなかったからだ。
古平原は李仲登に英国まで同行してほしいと依頼する。危険も多く、前例もない挑戦だったが、李仲登は快く引き受ける。さらに現地で協力してくれる知人の存在も明かし、計画は一気に現実味を帯び始める。
国内の商売で頭角を現してきた古平原は、ついに世界を相手にした新たな勝負へ踏み出そうとしていた。中国茶を海の向こうへ届ける壮大な挑戦が、いよいよ始まるのである。
大生意人~大商人への道~ 26話・27話・28話・29話・30話 あらすじ
















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