扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~ 2018年 全66話 原題:扶揺
第5話の見どころ
第二関門で扶揺と長孫無極は抜群の連携を見せ、互いへの信頼を少しずつ深めていきます。一方、滝壺へ転落した扶揺は不思議な力に導かれ、五色石に秘められた未知の能力を目覚めさせることに。さらに、幻生殿では帝非天復活の兆しが現れ、五洲全土を揺るがす運命が静かに動き始めます。恋と陰謀だけでなく、扶揺の真の宿命がいよいよ姿を現す重要な一話です。
第5話あらすじ
畋斗賽第二関門の競技場では、参加者たちが細い丸太橋の上で激しい戦いを繰り広げていました。競技は二人一組で協力しなければ勝ち残れないにもかかわらず、扶揺だけは仲間を持たず、たった一人で橋の上へ立たされます。これは燕烈が密かに仕組んだ策略であり、扶揺を孤立させて敗退させるためのものでした。
周囲では他の弟子たちが息の合った連携を見せる中、扶揺だけが不利な状況へ追い込まれます。しかし、その時思いもよらない人物が姿を現します。長孫無極でした。
無極は何事もなかったかのように扶揺の隣へ立ち、「今回は私がお前の相棒だ」と微笑みます。突然のことに扶揺は驚き、「どうして私を助けるの」と問い掛けますが、無極は「恩は忘れるな」と冗談交じりに返すだけでした。
二人はすぐに息の合った戦いを見せます。扶揺の素早い動きと無極の圧倒的な実力が見事に噛み合い、次々と対戦相手を倒していきます。互いに相手の動きを信頼し、言葉を交わさずとも連携できる姿は、初めて組んだとは思えないほど自然でした。
一方、別の橋では燕驚塵と裴瑗が戦っていました。燕驚塵はできる限り相手を傷つけず勝利しようとしますが、裴瑗は違いました。勝利のためなら同門の弟子であっても容赦なく命を狙い、次々と戦闘不能へ追い込んでいきます。
その冷酷さに燕驚塵は眉をひそめますが、裴瑗は「あなたの栄光のためなら、どんな罪も私が背負う」と言い切ります。そして二人は誰よりも早く橋の中央へたどり着き、勝利の証である龍骨傘を手に入れます。二人は第一通過者として大きな喝采を浴びるのでした。
その後を追うように扶揺と無極も龍骨傘へ到達します。扶揺が傘を受け取ろうとした瞬間、無極は先に傘を広げると扶揺の腰を抱き寄せ、そのまま二人で崖下へ飛び降ります。突然の出来事に扶揺は顔を赤らめますが、無極はどこか楽しそうに彼女をからかいます。
しかし次の瞬間、龍骨傘は突然砕け散り、二人は深い谷底へ真っ逆さまに落下してしまいます。
無極は扶揺が泳げることを見抜くと、自らの身を犠牲にして彼女を水面へ向けて突き飛ばします。その反動で自身は岩壁へ激突し、大きな衝撃を受けるのでした。
滝壺へ沈んだ扶揺は、不思議な世界へ迷い込みます。水底には小さな水の精霊のような存在が現れ、剣術の型を舞うように演じ始めます。扶揺の手にも水でできた剣が現れ、身体は自分の意思とは無関係に精霊たちと同じ動きを繰り返します。
一連の剣技を終えると、水の精霊たちは光となって扶揺の身体へ吸い込まれていきました。その瞬間、激しい頭痛が彼女を襲い、耐え切れず意識を失ってしまいます。
一方、競技会場では制限時間を知らせる龍燭香が燃え尽きようとしていました。扶揺は戻らず、燕烈は競技終了を宣言します。本来なら戻れなかった者は失格ですが、龍骨傘の飾り玉が転引盒へ反応したことで、扶揺が課題を達成していたことだけは確認されます。
その頃、遠く離れた穹蒼の幻生殿では異変が起こっていました。黒い霧が神殿を覆い尽くし、封印されていた邪悪な気配が目覚め始めます。そこへ現れたのは幻生殿の殿主・非煙でした。
彼女は帝非天の血を引く末裔であり、この異変を見て歓喜します。長年待ち続けた五色石を宿す少女がついに覚醒した証であり、それは帝非天復活の日が近いことを意味していたのです。
同じ頃、玄元山でも空一面を覆う異様な雲が現れます。龍が天を駆け巡るような壮大な景色を目にした燕烈は、「真龍が現れた兆しだ」と驚きます。
その場に無極の姿が見当たらなかったことから、斉震はこの吉兆は自分が天下を取る前触れだと思い込み、内心ほくそ笑むのでした。
試合後、燕烈は燕驚塵を厳しく叱責します。龍骨傘の飾り玉を裴瑗へ持たせたことは、たとえ婚約者であっても門派の利益を第一に考えていない証拠だと言うのです。燕烈は裴瑗を最後まで「外の人間」と見なし、息子には常に自分の利益を最優先するよう教え込みます。
さらに燕驚塵は扶揺が谷へ落ち、生死不明になったと聞いて救出へ向かおうとします。しかし燕烈は彼を制止し、「奴一人の命など惜しくない。これ以上扶揺へ情をかけるなら、お前も扶揺も許さない」と冷たく言い放つのでした。
その頃、谷底では周叔が扶揺を発見し、急いで玄幽部へ運びます。名医・宗越が診察した結果、外傷は軽いものの、内側に奇妙な力が入り込んでおり、自分にも治療はできないと告げます。
目を覚ました扶揺は無事でしたが、試合中の記憶だけを失っていました。無極と共に戦ったことも、谷底で起きた出来事も思い出せません。それでも燕驚塵は遠くから扶揺の無事を確認し、安心してその場を去ります。
しかし夜になると扶揺は悪夢にうなされます。夢の中では競技場や長孫無極の姿が何度も現れ、誰かに剣術を教え込まれる光景が繰り返されます。目覚めても夢と現実の境界が曖昧なままでした。
翌日、斉震は無極へ昨日どこにいたのか尋ねます。無極は「後山で虫遊びをしていた」とわざと軽薄に答え、遊び好きで何も考えていない世子を演じます。その芝居に斉震は完全には納得しないものの、大きな疑いは抱かなくなります。
そこへ扶揺が無極を訪ねてきます。試合の記憶はないはずなのに、夢の中で何度も無極と共に戦う場面を見るため、本当に試合で助けてくれたのではないかと尋ねるのでした。
無極はあえて何もなかったと否定しながらも、「夢の中で私に会いたいとは、随分と私に惚れているようだな」とからかいます。二人はじゃれ合うような会話を交わし、その様子を外から見張っていた雲痕は、無極が女好きの放蕩者だと完全に信じ込むのでした。
その後、宗越は扶揺の記憶を完全に消す薬を飲ませるべきだと無極へ提案します。しかし無極は首を横に振り、「彼女のことは私に任せろ」と静かに答えます。
一方の扶揺は、目覚めるたびに場所が変わっていたり、夢の中で知らない剣術を繰り返し修練していたりと、不思議な現象に悩まされ続けます。その話を聞いた無極は、彼女の身体に眠る未知の力がいよいよ目覚め始めていることを確信し、これから何が起こるのか強い関心を抱くのでした。
第6話の見どころ
畋斗賽はいよいよ最終局面を迎え、扶揺は燕驚塵との運命の一騎打ちに挑みます。長年抱き続けた想いに自ら決着をつけ、真の強さを手に入れた扶揺の姿は圧巻です。しかし、その力は失われた禁術「破九霄」であることが判明し、燕烈の欲望を刺激することに。宿命の力がついに目覚める一方で、扶揺の出生に隠された秘密も少しずつ明かされ始め、物語は新たな局面へと突入します。
第6話あらすじ
玄幽部では、扶揺が厨房で温かな汁物を飲みながら、ここ数日続いている奇妙な出来事を周叔へ打ち明けていました。眠るたびに夢の中で誰かから剣術を教え込まれ、目覚めると毎回違う場所にいる――そんな不可解な体験に扶揺自身も戸惑いを隠せません。
話を聞いた周叔は表情を曇らせ、「やはり運命は避けられなかったか……」と小さくつぶやきます。さらに扶揺は、周叔から譲り受けた焼火棒が滝壺へ落ちた際、不思議な形へ変化して湖底へ突き刺さったことも話します。その言葉を聞いた周叔は一瞬動揺を見せますが、すぐに「夢でも見たのだろう」と話を逸らします。しかし、その様子からは何か重大な秘密を知っていることがうかがえました。
そこへ燕烈と長老たちが玄幽部へ踏み込みます。第二関門の勝利の証である掛珠が玄幽部の炊事場付近にあると判明し、返還を命じるためでした。
周叔は盗みなどしていないと堂々と答えますが、皆の目の前で扶揺の懐から掛珠が見つかります。当の扶揺も全く身に覚えがなく驚きますが、燕烈はこれを口実に彼女を拘束しようとします。
思わず周叔は地面へひざまずき、「どうか扶揺だけはお許しください」と懇願します。その姿に扶揺は胸を痛め、自ら周叔を立ち上がらせます。そして大会の規則を持ち出し、「掛珠を持つ者には第三関門へ進む資格がある。この珠は私が競技で得たものだから盗みではない」と毅然と言い返しました。
燕烈はその態度に怒りを覚えながらも、大勢の前で規則を覆すことはできず、「そこまで言うなら最後まで戦えばよい」と冷笑を浮かべ、扶揺の第三関門出場を認めます。
燕烈たちが去った後、周叔は怒ったように扶揺を叱ろうとします。しかし結局は手を上げることができず、ただ彼女の身を案じるばかりでした。
一方、長孫無極も飼っている鼠を通じて扶揺が最終関門へ進むことを知ります。彼は彼女の身を心配しながらも、この逆境をどう乗り越えるのか興味を抱いていました。
翌朝、周叔は誰にも会わず部屋へ閉じこもります。扶揺は扉の外から静かに別れを告げ、感謝の気持ちを胸に最後の戦いへ向かいます。
競技場では燕烈が最終試合のルールを発表します。最後の戦いは一対一の決闘ですが、その前に幻境を突破しなければなりません。十二本の龍燭が参加者一人ひとりを表し、灯が消えた者は脱落、最後まで燃え続けた二人だけが決勝へ進めます。
幻境は想像以上に過酷でした。次々と実力者が敗れ、優勝候補だった裴瑗までも脱落してしまいます。そして最後に残った二人は、誰も予想しなかった組み合わせ――玄幽部の扶揺と玄正部の燕驚塵でした。
燕驚塵は目の前に立つ扶揺を見て驚きを隠せません。彼女がここまで勝ち上がるとは思ってもいなかったのです。
試合開始前、燕驚塵は「お前では私に勝てない。今なら棄権しても遅くない」と優しく語り掛けます。しかし扶揺は首を横に振ります。
「ここまで来たのは自由を手に入れるため。今日勝てば私は玄元山を離れ、自分の人生を歩める。」
それは燕驚塵との過去に決着をつけるという宣言でもありました。
その頃、裴瑗は燕烈へ駆け寄り、扶揺は邪道の武術を学んだからここまで勝ち上がれたのだと訴えます。しかし江湖中の名士が見守る中で証拠もなく失格にはできず、燕烈は試合開始を宣言します。
客席では周叔が誰よりも大きな声で扶揺を応援していました。
決勝戦が始まると、黒衣の扶揺と白衣の燕驚塵は激しく剣を交えます。一撃一撃に無駄はなく、互いの技を知り尽くした者同士だからこその緊張感に包まれます。
やがて燕驚塵が押され始めると、扶揺は突然剣を下ろし、自ら敗北を認めます。幼い頃から交わした約束や共に過ごした日々が脳裏をよぎり、どうしても最後の一撃を放つことができなかったのです。
燕烈は燕驚塵の勝利を宣言します。しかし観客たちは納得しません。誰の目にも扶揺の方が優勢だったからです。
そこへ裴瑗が前へ進み出て、扶揺は卑しい身分の侍女であり、妖術で燕驚塵を惑わせたと侮辱します。さらに燕驚塵へ真相を問う声が飛ぶと、彼は自らの名誉を守るため、裴瑗の言葉を否定しませんでした。
その瞬間、扶揺の心は完全に冷め切ります。
静かに振り返った彼女は地面に落ちた剣を拾い、「それなら本当の勝負をしましょう」と燕驚塵へ告げます。
今度の扶揺は一切の迷いを捨てていました。怒りでも悲しみでもなく、自分自身の未来のためだけに剣を振るいます。燕驚塵へ三太刀譲る余裕を見せながらも、最後は圧倒的な実力差で勝利を収めます。
その美しく力強い剣技を見た燕烈は愕然とします。
扶揺が無意識に使っていた技こそ、玄元派が長年追い求めながら失われた禁術「破九霄」だったのです。
燕烈は即座に扶揺を背後から気絶させると、「禁術を使う危険人物を拘束する」と宣言します。観衆には玄元派のためだと説明し、そのまま扶揺を密室へ監禁しました。
乾坤鎖で身体を拘束された扶揺へ、燕烈は破九霄の秘籍を差し出せと迫ります。しかし扶揺は破九霄という名前すら知りません。夢の中で覚えた剣術がそんな秘術だとは思ってもいなかったのです。
燕烈はその言葉を信じず、「秘籍を渡すまで一生ここへ閉じ込める」と脅します。
一方、決闘に敗れた燕驚塵は深い挫折感から部屋へ閉じこもります。燕烈は息子を祖師堂の地下へ連れて行き、玄元派に代々伝わる秘密を明かします。それは破九霄こそ門派最高の奥義であり、自分が長年追い続けてきた究極の力であるという事実でした。
その夜、周叔は密かに牢を訪れ、見張りたちを眠らせると扶揺の傷を治療します。そしてついに長年隠し続けてきた真実を語り始めます。
扶揺が夢の中で学んでいた剣術こそ破九霄であり、それは単なる剣法ではなく、天地をも切り開く洪荒の力を秘めた究極の武学でした。世のあらゆる束縛を断ち切るその力を、扶揺は自らの意思とは関係なく受け継いでしまったのです。
周叔は「どれほど隠し、運命から逃れようとしても、お前は結局この力を継ぐ宿命だった」と静かに語り、扶揺の出生に隠された秘密が、いよいよ明らかになろうとしていました。
第7話の見どころ
周叔がついに扶揺の出生と五色石に秘められた真実を明かし、物語は新たな章へ突入します。命を懸けて扶揺を逃がす周叔との別れは、本作屈指の感動シーンです。一方、燕烈や斉震、幻生殿・非煙らがそれぞれの野望のために動き始め、五洲全土を巡る争いも本格化。絶望の淵へ追い込まれた扶揺を、再び長孫無極が救い出す場面も見逃せません。
第7話あらすじ
密室に閉じ込められた扶揺のもとを密かに訪れた周叔は、ついに長年胸に秘めてきた「破九霄」の真実を語り始めます。
かつて玄元派を創設した始祖は、偶然手に入れた「破九霄」の残された心法によって短期間で武芸を飛躍的に高め、数々の強豪を打ち破って天下に名を轟かせました。その後、その力を礎として玄元派を築き上げましたが、代を重ねるうちに心法の残巻は失われ、破九霄も伝説の武功となってしまったのです。
しかし今、その失われた力を扶揺が無意識のうちに身につけてしまいました。
話の途中、密室の異変に気付いた玄元派の弟子たちが近づいてきます。扶揺は周叔へ逃げるよう促しますが、周叔は彼女を地下通路から脱出させることを決意します。
秘密の石門がゆっくりと閉まり始める中、周叔は自らの身体を巨大な石門の下へ差し込み、その重さを一人で支えます。数千斤もある石門を扶揺が押し返すことは到底できず、必死に助けようとしてもどうすることもできません。
死を覚悟した周叔は、ついに扶揺の出生の秘密を打ち明けます。
扶揺は普通の人間として生まれたのではなく、生まれながらに五つの封印を施された特別な存在でした。その封印が解かれなければ平穏な人生を送れたはずでしたが、破九霄を習得したことで第一の封印が開き、彼女は逃れられない宿命の道へ足を踏み入れてしまったのです。
涙を流しながら謝り続ける扶揺へ、周叔は首から外した五色石を返します。
「この石を持って五洲を巡りなさい。各国には天地の霊気が集まる場所がある。そこで封印を一つずつ解けば、お前は自分の運命を知ることになる。」
そして普段は厳しく接してきた周叔は、穏やかな笑顔で本心を口にします。
「お前は、わしの一番の誇りだ。」
その言葉を最後に、周叔は石門の下で静かに息を引き取りました。
扶揺は声を上げて泣き崩れますが、玄元派の追手がすぐそこまで迫っています。周叔の犠牲を無駄にしないため、涙をこらえて密道を駆け抜けるのでした。
一方その頃、太淵国の王都・昆京では異変が起きていました。
御鱗台の天井に大きな亀裂が入り、御水術によって保たれてきた都が洪水の危機に瀕していたのです。章鶴年は病床の軒轅韌へ報告し、王家の御水術が失われれば都は水没すると訴えます。
軒轅韌は衰弱した身体を起こし、「すべては報いなのだ」と力なくつぶやくのでした。
その知らせは斉震の耳にも届きます。
雲痕は一刻も早く昆京へ戻るよう進言しますが、斉震は動こうとしません。彼の狙いは王家を支えることではなく、自ら太淵国の王となることでした。そのためには幻生殿の非煙から御水術を授かる必要があり、たとえ国全体が滅びようとも、その機会を待つ覚悟を固めています。
長孫無極も現在の情勢を冷静に分析していました。
宗越は本来の使命である太淵の内乱終結を忘れるなと忠告します。実は名医として知られる宗越自身も軒轅王家の血を引く生き残りであり、一族を滅ぼされた復讐を胸に秘めて生きてきた人物でした。
無極は斉震が昆京へ向かわない理由を見抜いています。もし斉震が御水術を手に入れれば、自分という偽世子は不要となり、命を奪われることは避けられません。
だからこそ今は不用意に動かず、慎重に機会を待つしかないのでした。
一方、玄元派では燕烈が新たな策を講じます。
扶揺の剣技はすでに江湖中の注目を集めており、誰よりも早く破九霄を手に入れた者が天下を制すると考えた燕烈は、息子の燕驚塵へ恐ろしい毒薬「裂魂散」を渡します。
この毒を飲んだ者は一時間だけ全てを正直に話しますが、その後は魂を失い、命を落としてしまいます。
燕烈は扶揺を犠牲にしてでも破九霄の秘密を手に入れるつもりだったのです。
再び牢へ戻された扶揺は、胸元の五色石を握り締めながら周叔の最期の言葉を思い返します。
「必ず生き抜き、この使命を果たす。」
そう心に誓うのでした。
しかし、その前に裴瑗が動きます。
彼女は守衛を買収して扶揺を密かに連れ出すと、断崖絶壁へ連れて行き、小七を人質に取ります。
「助けたければ、自分から飛び降りなさい。」
周叔を失ったばかりの扶揺は、これ以上大切な仲間を犠牲にできません。迷うことなく崖から身を投げます。
ところが裴瑗は約束を守らず、小七まで崖下へ突き落としてしまいます。
扶揺は必死に崖の蔦へ手を伸ばしますが、あらかじめ切り落とされており、掴むことができません。
その絶体絶命の瞬間、長孫無極が再び現れます。
彼は一本の蔦をつかんだまま宙へ飛び込み、落下する扶揺をしっかりと抱き止めました。
ようやく助かったと思った矢先、小七の悲鳴が聞こえます。
扶揺は迷わず無極の腕から飛び出し、小七の手を必死につかみ、二人を救おうと力を振り絞るのでした。
その頃、雲痕はついに幻生殿の出現場所を突き止めます。
斉震は祭壇を設け、非煙へ御水術を授けてほしいと願います。
非煙は「望みには必ず代償が伴う」と告げ、自ら若さを保つため歴代王家の寿命を奪ってきたことを明かします。
それでも斉震は迷いません。
非煙は紅い月が昇る夜、摂坤鈴を用い、軒轅一族の血を捧げて天地へ血祭りを行えば御水術を得られると教えます。
「何かを得れば、必ず何かを失う。その約束を忘れるな。」
そう言い残して非煙は姿を消しました。
一方、扶揺が崖から落ちたとの報告を受けた燕烈は、門下の弟子たちへ「生きていても死んでいても必ず見つけ出せ」と命じます。
裴瑗は独断で扶揺を始末しようとしたことを謝罪しますが、燕烈は激怒します。
彼にとって扶揺は破九霄を手に入れる唯一の鍵であり、裴瑗が勝手に手を出すことは計画を台無しにする行為でした。
燕烈は「玄元派のことに二度と口を挟むな」と厳しく言い渡し、扶揺を巡る争いは、もはや一門の内輪揉めではなく、五洲全土の命運を左右する戦いへと発展していくのでした。
第8話の見どころ
扶揺は周叔の遺志を胸に玄元山との決別を決意し、ついに裴瑗との因縁に自ら終止符を打ちます。長孫無極との信頼関係もさらに深まり、二人の息の合った逃避行や思わず胸が高鳴る口移しの救命シーンは大きな見どころです。一方、燕驚塵は裴瑗との婚約に疑問を抱き始め、登場人物たちの関係は大きく変化。新たな旅の始まりを告げる、物語の転機となる一話です。
第8話あらすじ
長孫無極と扶揺が姿を消したことを知った雲痕は、大勢の兵を率いて馬車の行方を追います。しかし、その馬車に乗っていたのは無極ではなく、彼が用意した囮でした。報告を受けた斉震は、自分たちがまんまと陽動作戦に引っ掛かったことを悟ります。
玄元山をくまなく捜索した結果、まだ調べていない場所は宗越の住まいだけでした。斉震は雲痕を伴い、直ちに宗越の屋敷へ向かいます。
その頃、無極と扶揺は宗越の屋敷の庭にある草むらへ身を潜めていました。斉震は宗越へ「世子を匿っているだろう」と詰め寄りますが、宗越は落ち着いた様子で否定し、好きなだけ捜索して構わないと告げます。
兵士たちが屋敷を調べる間、斉震は庭先に植えられていた珍しい薬草へ興味を示します。しかし、それは猛毒を持つ金線蛇草でした。触れた途端に手のひらは黒く変色し、毒が全身へ回り始めます。
宗越は冷静に毒を抜き、応急処置を施しますが、「庭には他にも毒草がある。残るか去るかはご自由に」と淡々と言い放ちます。さらに数人の兵士も毒に倒れたため、斉震はそれ以上の捜索を断念し、撤退を命じるのでした。
危機が去ると、扶揺は草むらから姿を現し、宗越へ命を救われたことを感謝します。しかし宗越は相変わらず無口で、その言葉にもほとんど反応せず部屋へ戻ってしまいます。
屋内では宗越が扶揺の腕の傷を手当てしていました。そこへ無極が近寄り、「宗越が助けてくれたのは私の頼みだから、この恩は私にも返してもらう」と冗談交じりに話します。
扶揺は改めて「なぜ何度も私を助けるの」と尋ねます。
無極は最初、「破九霄が欲しいからだ」と軽くはぐらかしますが、すぐに笑みを浮かべながら本心を明かします。
「破九霄には興味はない。ただ燕烈の思い通りになるのが気に入らないだけだ。」
その率直な言葉に扶揺は安心し、「この恩は必ず返す」と約束します。
続いて扶揺は裴瑗へ復讐したいと打ち明けます。無極はすでに彼女の考えを見抜いており、治療の際に一時的に自分の内力を分け与えていました。ただし、その効力は二時間しか続きません。
翌日には玄元渓が増水し、それに乗れば山を脱出できます。それまでに復讐を終えて戻らなければ、逃げる機会を失ってしまうのでした。
翌日、裴瑗は燕驚塵のために自ら料理を作ります。しかし燕驚塵の心は扶揺の安否でいっぱいでした。
扶揺が崖から落ちて亡くなったと聞き、深い喪失感に襲われます。一方の裴瑗は「死んだ人より私たちの未来を考えて」と迫りますが、燕驚塵は以前のような優しさを見せず、彼女の高慢な態度を皮肉るだけでした。
その頃、扶揺は小七と共に周叔の墓を訪れます。
墓前でこれまでの日々を思い返した扶揺は、「私が大会へ出たせいで周叔も小七も危険な目に遭わせてしまった」と涙ながらに悔やみます。
そして周叔へ深く頭を下げ、「生前一度も『父さん』と呼べなかったことが心残りです。今日からあなたを父と呼びます。来世でも家族でいてください」と語り掛けます。
静かな雨が降る中、扶揺は父として周叔を送り出し、その遺志を胸に玄元山を離れる決意を新たにするのでした。
その夜、燕驚塵の部屋を出た裴瑗は、苛立ちを使用人へぶつけ、侍女を雨の中へ跪かせます。
部屋へ戻った瞬間、待ち伏せしていた扶揺が現れます。
扶揺は小刀で裴瑗の頬を切り裂き、「これは周叔と小七のためだ」と静かに告げます。
激怒した裴瑗は秘術・祭血神功を繰り出します。しかし扶揺には無極から授かった内力が宿っており、その力は裴瑗を大きく上回っていました。
数十合にも及ぶ戦いの末、祭血神功は反動によって裴瑗自身を傷つけ、彼女は倒れ込みます。
扶揺はとどめを刺すことなく、その場を立ち去ります。
すると昏睡した裴瑗のもとへ、普段虐げられていた侍女が近づきます。長年の恨みを爆発させた侍女は刃物を手に取り、主人の美しい顔へ深い傷を刻みました。
その光景を目にした扶揺は、同情するどころか「自ら招いた報いだ」と静かにつぶやきます。
一方、斉震と雲痕は依然として無極の行方を追っていました。
扶揺は約束どおり無極のもとへ戻りますが、二時間が過ぎたことで内力は失われ、傷口も再び開いてしまいます。
それでも二人は玄元渓へ飛び込み、激流へ身を任せて山を脱出します。
途中で扶揺は意識を失います。
無極は彼女を強く抱き寄せ、水中で口移しによる人工呼吸を行い、必死に命をつなぎ止めます。
翌朝、意識を取り戻した裴瑗は鏡に映る傷だらけの顔を見て絶叫します。
知らせを受けた斉震と燕烈、燕驚塵が駆け付けますが、裴瑗は扶揺への憎しみを募らせるばかりでした。
一方の燕驚塵は、扶揺が生きていたことを知って安堵します。しかし傷ついた裴瑗を前に、その喜びを表へ出すことはできず、彼女を慰めるしかありませんでした。
その後、斉震は世子失踪と裴瑗負傷の件を口実に燕烈へ圧力をかけ、自分たちの夜間捜索を隠蔽するよう要求します。
燕烈は玄元派を守るため従うしかなく、燕驚塵と裴瑗の婚約も予定どおり進めると約束するのでした。
ようやく玄元山を脱出した扶揺と長孫無極は、新たな旅路へ踏み出します。
扶揺は気絶していた間の記憶を思い出し、口移しで助けられたことに顔を真っ赤にして無極を問い詰めます。
しかし無極は少しも動じることなく、「命を助けただけだ。それとも別の意味を期待していたのか」とからかいます。
恥ずかしさで言葉を失う扶揺を見て、無極は楽しそうに笑います。
そこへ死んだと思われていた小七が二頭の馬を引いて現れます。
思いがけない再会に扶揺は満面の笑みを浮かべ、小七へ駆け寄ります。
こうして扶揺は玄元山での苦しい過去に別れを告げ、長孫無極、小七と共に、広大な五洲を巡る新たな旅へと歩み始めるのでした。
扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~ 9話・10話・11話・12話 あらすじ
















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