女医明妃伝~雪の日の誓い~ 2016年 全50話 原題:女医・明妃傳
第16話「再び医の道へ」
允賢が淮陰で王道士の弟子として新たな人生を歩み始めた頃、京では大きな変化が起ころうとしていた。郕王・朱祁鈺は允賢を失った悲しみから立ち直れず、病に伏したまま日々を過ごしていた。太后は英宗を廃して新たな皇帝を立てる構想を抱いていたが、その有力候補である祁鈺がこの状態では計画は進まない。そこで汪国公は、英宗の子を次の皇帝として擁立し、自らが後見人となる策を提案する。
一方、宮中では太后と英宗の対立が激しさを増していた。太后が密かに英宗の食事へ強壮薬を混ぜさせていたことが発覚し、激怒した英宗は太后のもとへ乗り込む。口論の最中、英宗が振り払った腕が偶然太后に当たり、彼女は転倒して頭を打ち昏倒してしまう。英宗は母を失わせた相手として太后を憎み続けてきたが、意識不明となった彼女を前に複雑な感情を抱く。王振はこの機会に太后を排除するよう進言するが、英宗は拒絶し、太后が目覚めたなら過去の怨恨を水に流そうと決意するのだった。
その頃、允賢は王道士の治療法を学ぶ中で、自らの考えの浅さを痛感していた。最初は迷信のように見えた祝由術も、実は人々の心を癒やし、信頼を得るための大切な医術の一部だったのである。王道士は「医者は病だけでなく人の心を治すものだ」と説き、允賢に医者としての本質を教える。
これまで允賢は、医術によって家族や大切な人を失ったという罪悪感から、自らの才能を封じ込めようとしていた。しかし王道士の厳しい問いかけによって、自分が本当に望んでいるのは人を救うことだと気づく。雨の中で膝をつき続けた末、彼女は過去の後悔を乗り越え、再び医の道を歩む決意を固める。
その真摯な姿勢に心を動かされた王道士は、ついに允賢を正式な弟子として認める。そして祝由術の真髄を伝え、「信じてもらうことも治療の一部だ」と教えるのだった。この出会いは、後に允賢が女医として大成するための大きな転機となる。
第17話「太后の心を動かした女医」
太后が昏睡状態に陥ると、王道士の推薦を受けた允賢は宮中へ呼び戻される。女医である允賢は男性医官には難しい近距離での診察が可能であり、太后の体調を細かく観察することができた。
允賢は薬だけに頼らず、身体に優しい薬膳を工夫して太后へ提供する。長く病床に伏していた太后はその味を気に入り、次第に允賢に心を許していく。さらに允賢は太后の症状が重病ではなく、過労や精神的な負担によるものであると診断。無理に薬を増やさず、休養を重視する治療を進める。
皇后もまた允賢の働きを見守っていた。彼女は若い女医に偏見を持たず、その柔軟な発想と患者への思いやりを高く評価する。允賢は太后付きの侍女・玉香とも親しくなり、宮中の事情を少しずつ知るようになる。
やがて允賢は祝由術を応用し、太后に三日間の静養を勧める。宮務から離れ、心身を休ませることで眼病も快方へ向かった。太后はその効果に驚き、允賢への信頼を深めていく。
そして允賢は、治療の過程でさりげなく太后へ語りかける。かつて自分も権力者に抑え込まれた経験があるのだから、英宗の立場も理解できるはずだと。皇后もまた勇気を振り絞って同じ思いを伝える。
その言葉は太后の心に深く響いた。これまで息子のためと思って続けてきた政治介入が、かえって彼を苦しめていたのではないか――。ついに太后は政治の第一線から退く決意を固める。長年続いた母子の対立は終わりを迎え、英宗と太后は和解するのだった。
しかし、太后の信頼を得た允賢の存在を面白く思わない者もいた。太医院の程十三である。権勢を失った彼は允賢への恨みを募らせ、陰謀を巡らせる。そして罠にはまった允賢は杖刑を受けることになってしまう。
危機を知った玉香は必死に助けを求め、偶然その話を耳にした英宗が現場へ駆けつける。こうして允賢は救われるが、その時初めて英宗は「允賢」という名を知り、彼女こそが自分が忘れられなかった少女であることに気づくのだった。
第18話「再会の喜びとすれ違う心」
英宗によって救い出された允賢は、ついに“鄭斉”の正体が皇帝・朱祁鎮だったことを知る。驚きを隠せない允賢だったが、英宗は彼女が生きていたことを心から喜び、すぐに郕王へ知らせを送る。
知らせを受けた祁鈺は病を忘れ、宮中へ駆けつける。死んだと思っていた最愛の人との再会に、二人は涙ながらに抱き合う。その姿を見た英宗も、表向きは祝福しながら複雑な感情を胸の奥に押し込める。
英宗は二人の仲を認め、正式な婚姻を後押ししようと考える。しかし最大の障害となったのが祁鈺の母・呉太妃だった。彼女は允賢が公堂に立った過去や、男性患者を診察した経歴を理由に猛反対する。どれほど優れた女性であっても、世間の評判を重視する呉太妃には受け入れられなかった。
さらに呉太妃は仮病まで使って婚姻を阻止しようとする。允賢は診察でそれを見抜くが、あえて暴こうとはしなかった。その優しさを知る者は少なかったが、允賢は相手の立場を理解しようとしていたのである。
祁鈺は板挟みとなり苦しむ。そして側近の助言を受け、允賢に改名を提案する。過去を隠し、新たな身分で嫁げば問題は解決すると考えたのだ。允賢は愛する人のために受け入れようとするが、その一方で心には大きな傷が残る。
そんな中、允賢は皇帝へ謁見し、自らの願いを口にする。それは結婚のことではなく、かつて一族を滅ぼした冤罪事件の再調査だった。失われた譚家の名誉を取り戻したいという強い願いは、今も彼女の胸に生き続けていた。
その後、祁鈺に連れられて呉太妃を再び訪ねる允賢だったが、待っていたのはさらに厳しい侮辱だった。呉太妃は允賢の人格や過去を否定し、結婚後は医術を捨てるよう命じる。
ついに我慢の限界に達した允賢は、「医術を捨てるくらいなら無理に嫁がない」と言い残して立ち去る。追いかけた祁鈺もまた、結婚後は人前で診療しないでほしいと口にしてしまう。その言葉は、かつて夢を支えると誓った彼自身の約束を否定するものだった。
再会の喜びに包まれたはずの二人の間に、初めて深い亀裂が生まれるのであった。
第19話「夢への挑戦」
呉太妃との一件以来、允賢と祁鈺の関係はぎくしゃくしたままになっていた。祁鈺は結婚を守るために妥協を求めるが、允賢にとって医術は人生そのものだった。互いを思う気持ちは変わらないのに、価値観の違いが二人を苦しめる。
そんな中、允賢は宮中に留まる理由を見失い、出宮を考え始める。しかし英宗は彼女を引き留めたいと考え、ある提案を持ちかける。それは女医として太医院に入ることだった。
女性が正式に太医院へ入る前例はほとんどない。それでも英宗は「君ならできる」と励まし、允賢の才能を信じて後押しする。劉院判も試験に合格できれば弟子として迎えると約束し、允賢は夢への挑戦を決意する。
一方の祁鈺は、その決断を理解できずにいた。結婚への障害が増えるだけだと考え、允賢を説得しようとする。しかし宮女の丁香から「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」と言われ、言葉を失う。彼は初めて、允賢が見ている未来が自分とは違うことを思い知らされる。
筆記試験では允賢は見事な成績を収める。しかし程十三と程村霞は彼女を合格させまいと、意地の悪い難問を次々に出題する。それでも允賢は豊富な知識と冷静な判断力で答え続け、周囲を驚かせる。
そして最後の試験で、程十三は卑劣な策に出る。針灸の試験用銅人を本物の男性にすり替え、腰兪穴への施術を命じたのである。女性としての羞恥心と医師としての責任の間で、允賢は究極の選択を迫られるのだった。
第20話「司薬女官への道」
程十三の悪意に満ちた試験は、允賢を追い詰めるためのものだった。しかしその場で立ち上がったのは劉院判だった。彼は允賢の実力と人格を高く評価し、公然と彼女を弟子として迎えることを宣言する。
師の後ろ盾を得た允賢は正式に太医院入りを果たし、さらに英宗の計らいによって六品官の司薬女官に任命される。女性でありながら宮廷医療の世界で認められた瞬間だった。
しかし宮中では、英宗が允賢を特別扱いしているとの噂が広がる。允賢自身も、英宗の優しさが友情以上の感情を含んでいることに気づいていた。だからこそ彼女は皇后に会い、自分には恋愛感情がないことを誓う。皇后はそんな允賢を信じ、変わらぬ温かさで接するのだった。
一方、程十三は新たな陰謀を企てる。太后を利用し、允賢に渤泥国王妃の治療という難題を押し付けたのである。期限は三日。失敗すれば百叩きの刑が待っていた。
王妃は異国の薬を拒み、治療は困難を極める。さらに必要な「渤泥土」も入手できない。すべては程十三が仕組んだ罠だった。しかし允賢は諦めず、現地の食文化を研究し、酸酪漿を用いた独自の治療法を試みる。
対する程村霞は、自信満々に秘薬を使って国王を治療していた。叔父と甥は勝利を確信し、允賢の失敗を待ち構える。
だが結果は予想外だった。期限を迎える前に王妃は完全に回復し、自らの足で歩いて現れる。程十三と程村霞は言葉を失い、允賢の実力を認めざるを得なくなる。
こうして允賢は数々の妨害を乗り越え、宮廷女医として確かな第一歩を踏み出すのだった。
女医明妃伝~雪の日の誓い~ 21話・22話・23話・24話・25話 あらすじ
















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