荊棘(いばら)の花~奪われた私~

荊棘(いばら)の花~奪われた私~

荊棘(いばら)の花~奪われた私~ 5話・6話・7話・8話 あらすじ

荊棘(いばら)の花~奪われた私~ 2024年 全22話 原題:披荆斩棘的大小姐

第5話の見どころ

復讐計画を進める羅愛蓮に、新たな衝撃が襲います。これまで唯一の味方だと信じてきた妹・羅雪児の隠された本性が明らかになり、事件の黒幕が思いもよらぬ人物であったことが判明します。一方、徐程風は沈丹青への疑念をますます深め、包囲網を狭めていきます。信じる者に裏切られた愛蓮の悲しみと、それでも復讐への歩みを止めない決意が胸を打つ、物語の大きな転換点となる一話です。

第5話「暴かれた妹の野望」

沈氏鏢局に踏み込んだ徐程風は、女盗賊の正体を見極めようと、沈丹青へさまざまな形で探りを入れていた。

その場を切り抜けようとした沈丹青――羅愛蓮は、徐程風から茶の用意を命じられると、わざと手を滑らせて茶杯を床へ落として割ってしまう。

驚く周囲を前に、彼女は毅然とした態度で徐程風を見つめ、「初対面の女性に命令ばかりするとは、将軍ともあろう方がずいぶん無礼ではありませんか」と皮肉を込めて言い放つ。

さらに、「噂どおりの英雄かと思えば、女性への礼儀も知らない軽薄な方なのですね」と畳みかけると、徐程風はさすがに非を認め、その場で素直に謝罪する。

沈丹青の堂々とした受け答えは徐程風に強い印象を残した。彼は沈自山という人物の誠実さは信じていたものの、目の前にいる沈丹青だけは、どうしても普通の令嬢とは思えなかった。

沈家を後にした徐程風は、部下の天昊へ密かに命じる。

「沈丹青を監視しろ。彼女の行動は一つ残らず報告してくれ。」

こうして愛蓮は、自分でも気付かぬうちに徐程風の厳しい監視対象となる。

一方、沈自山も徐程風が簡単に疑いを捨てる相手ではないことを理解していた。

そこで愛蓮は一計を案じる。

町中へ「徐程風は女性の体から漂う香り、とりわけ西域産の花粉の香りを好むらしい」という噂を意図的に流したのである。

その噂は瞬く間に広まり、美しい着飾った女性たちが将軍府へ押しかける騒ぎとなった。

その話を耳にした羅霜霜もまた、以前沈丹青から半ば強引に奪い取った西域の香粉を身につけ、徐程風の気を引こうと将軍府を訪れる。

本来なら天昊が女性たちを追い返す手はずだった。

しかし霜霜が近づいた瞬間、徐程風はある香りに反応する。

それは、商隊襲撃の際に女盗賊から漂っていた花粉の香りとまったく同じものだった。

徐程風は何食わぬ顔で霜霜を屋敷へ招き入れ、香粉について尋ねる。

恋心を抱いていると勘違いした霜霜は上機嫌になり、「この香粉は私だけが調合した特別なものです」と得意げに答えてしまう。

その一言で徐程風は決断する。

「商隊襲撃事件への関与が疑われる。」

そう告げると、その場で霜霜を拘束し、牢へ送ってしまう。

知らせを受けた沈自山は、愛蓮へ問い掛ける。

「疑いを霜霜へ向けたのか。」

愛蓮は静かに頷く。

もちろん霜霜が本物の女盗賊ではないことは承知している。しかし徐程風が真実へ近づくまでの時間を稼ぎ、自分への疑いを逸らすためには必要な策だった。

「いずれ彼女の潔白は証明されます。その前に私は別の方法で自分の疑いを晴らします。」

そう語る愛蓮は、すでに次の一手を考えていた。

その頃、町を歩いていた愛蓮は偶然、羅家の馬車を見かける。

不審に思って後を追うと、馬車は質屋の前で止まった。

そこで荷を持ち込んでいた人物を見た愛蓮は愕然とする。

質に入れられていたのは、火災の日に犯人が身につけていた雪片紗の衣だった。

しかも、それを持ち込んだのは妹・羅雪児だったのである。

愛蓮は信じられない思いで雪児の後ろ姿を見送る。

「どうして雪児が……。」

疑念を抱いた愛蓮は、真実を確かめるため牢へ忍び込む。

顔を隠したまま霜霜を脅し、「あの日着ていた雪片紗はどこへやった」と問い詰める。

恐怖に震える霜霜は、「もう捨てたわ。あの服は全部雪児にあげたのよ」と口走ってしまう。

その瞬間、愛蓮の心は凍り付く。

火災の日、自分を最後に襲った人物。

その正体は霜霜ではなく、雪児だった可能性が浮かび上がったのである。

幼い頃から実の妹のように慈しみ、命を懸けて守ろうとしてきた雪児。

唯一最後まで信じていた存在こそが、自分を殺そうとしていたかもしれない。

愛蓮は信じたくない現実に打ちのめされ、雨の降る町を一人さまよう。

そんな彼女を探し続けていた沈自山は、ようやく愛蓮を見つける。

涙を流す愛蓮は、「私は人を見る目がありませんでした。信じるべき人を信じられず、信じてはいけない人を信じていた……」と自分を責める。

沈自山は何も言わず傘を差し出し、静かに語りかける。

「これからは一人で背負わなくていい。沈家は君の家だ。私は君の兄として、いつでも頼ってほしい。」

その温かな言葉は、家族をすべて失ったと思っていた愛蓮の心を少しだけ救うのだった。

一方その頃、羅雪児は人知れず羅愛蓮の墓を訪れていた。

そこで語られた独白によって、事件の裏に隠されていた衝撃の真実が明らかになる。

実は雪児も羅季達の実の娘ではなかった。

周姨娘が前夫との間に身ごもった子を連れて羅家へ嫁いできたため、雪児だけは羅家と血のつながりがなかったのである。

そのため杜若山との冥婚の相手に選ばれたのは雪児だった。

愛蓮でも霜霜でもなく、自分だけが犠牲になる。

その理不尽な現実に雪児は深い憎しみを抱いた。

さらに羅季達が沈香による発作で倒れた時も、助けを呼ぶどころか、そのまま息絶えるまで見殺しにしていたのである。

雪児は墓前で静かに微笑みながら語る。

「お姉様は優しすぎた。」

「私は違う。幸せになるためなら、どんなことでもする。」

彼女は周姨娘の組み紐を証拠として残し、徐程風に周姨娘たちを追わせようと考えていた。

しかし、その計画は周姨娘に見破られ失敗してしまった。

さらに火災の夜、愛蓮へ最後の一撃を加えたのも雪児自身だった。

すべては羅家の実権を握るため。

そして最後に立ちはだかる最大のライバルは、誰よりも優秀だった羅愛蓮だけだと考えていたのである。

「いつかお姉様が見ている前で、私が羅家の主人になる。」

その野望を静かに口にする雪児の姿は、かつての純真な少女とはまるで別人だった。

一方、周姨娘と羅季舟は、霜霜が牢へ入れられたことで気が気ではなかった。

徐程風の権限は強く、二人には助け出すすべがない。

さらに侍女から「牢で霜霜が蜂に刺されて重傷を負った」と聞かされた周姨娘は、その場で気を失ってしまう。

しかし徐程風には別の狙いがあった。

彼は霜霜が女盗賊ではないことを最初から理解していた。

本当の目的は、霜霜を囮にして真犯人を誘き出すことだったのである。

その頃、部下たちは現場で見つかった女盗賊の足跡を調べていた。

その調査の途中で、沈丹青が事件当日に使われたものと同じ型の靴を購入していた事実が判明する。

徐程風は報告を受けると静かに目を細める。

「やはり沈丹青には、まだ何か隠している秘密がある。」

彼の疑念は、再び沈家へ向けられていく。

その一方で、沈自山は新たな護送任務へ出発する日を迎える。

出発前、彼は愛蓮へ「決して焦るな。徐程風はまだ君を追っている」と言い残し、慎重に行動するよう何度も言い聞かせる。

愛蓮は、悪夢にうなされる自分を毎晩看病してくれた沈自山への感謝を込め、手作りの香袋を贈る。

それを受け取った沈自山は穏やかな笑みを浮かべ、二人の間には少しずつ本当の兄妹のような信頼が芽生え始めるのだった。

しかし、愛蓮の前にはなお大きな試練が待ち受けていた。

最も信じていた妹が最大の敵であるという残酷な真実を胸に、彼女はさらに孤独な復讐の道を歩み始める。

 

第6話の見どころ

徐程風が沈丹青への疑いを晴らそうと執拗に追及する一方、羅愛蓮は命懸けの芝居で正体を守り抜きます。そして本物の女盗賊との激闘を経て、ついに山賊襲撃事件の容疑を晴らすことに成功。一方で、羅家では羅雪児が着実に権力を手にし始め、新たな野望をのぞかせます。復讐を支える沈自山との絆、徐程風との微妙な信頼関係、そして皇帝の宝物を巡る陰謀も動き出し、物語がさらに深みを増す重要な一話です。

第6話「疑惑の先にある真実」

沈氏鏢局の若き当主・沈自山は、大切な荷を護送する任務の途中で、徐程風の副将・天昊が密かに後をつけていることに気付く。

徐程風本人の姿が見えないことから、沈自山は彼が再び妹・沈丹青を調べに向かったのだと察する。

胸騒ぎを覚えた沈自山は、護送中の荷を秦鏢師へ託すと、自らは急いで沈家へ引き返すことを決める。

その頃、沈丹青――羅愛蓮は、湖畔で静かに絵筆を走らせていた。

鳥を描くことを好んだ本物の沈丹青になりきるため、日々絵の修練を続ける彼女の前へ、徐程風が姿を現す。

徐程風は単刀直入に、事件現場で見つかったものと同じ靴を持っているかを尋ねる。

愛蓮は落ち着いた様子で「同じ靴は持っています」と認めるものの、「昨夜は屋敷から一歩も出ていません」ときっぱり否定する。

しかし徐程風は疑念を捨て切れない。

商隊を襲った女盗賊と沈丹青の行動があまりにも重なって見えていたからだ。

そこで彼は、もう一つ確かめたいことがあった。

女盗賊は水路を使って逃走した。

もし沈丹青が泳げるなら、疑いはさらに深まる。

愛蓮は徐程風の意図を瞬時に見抜く。

そして何気ない仕草で足を滑らせたように見せかけ、そのまま湖へ転落する。

湖面に浮かぶことなく、彼女は沈み続けた。

徐程風は慌てて飛び込もうとはせず、ぎりぎりまで様子を見つめる。

本当に泳げないのか、それとも演技なのか。

彼は最後まで見極めようとしていた。

そこへ駆け付けたのが沈自山だった。

妹が湖へ落ちたと聞いた沈自山は迷わず湖へ飛び込み、徐程風と共に愛蓮を救い上げる。

意識を取り戻した愛蓮の姿を見た沈自山は安堵する一方、徐程風へ怒りをぶつける。

「妹を疑うのは勝手だ。しかし命を危険にさらすような真似は二度とするな。」

もし再び沈丹青に危害を加えれば決して許さない――。

その厳しい警告に、徐程風も言葉を返せなかった。

その後、沈自山は愛蓮へ率直な思いを打ち明ける。

「復讐を続ければ、いつか本当に命を落とす。」

しかし愛蓮は静かに首を横へ振る。

「復讐がなければ、私はとっくに生きる意味を失っていました。」

沈自山は、今の彼女には沈家という新しい家族がいるのだから、過去に縛られる必要はないと諭す。

けれど愛蓮は苦しげな表情で答える。

「もしあの人たちが父を殺さなければ、私は今も本当の家族と一緒に暮らしていました。」

「この胸を焼き続ける痛みだけは、一生消えません。」

さらに彼女は、自分の命は沈自山に救われたものだと認めながらも、「復讐を許さないというのなら、この命を返します」とまで言い切る。

その覚悟に触れた沈自山は、ようやく彼女の決意を理解する。

自分もまた妹を失った苦しみを知るからこそ、愛蓮の復讐心を否定することはできなかった。

「分かった。私は君を信じる。」

そう告げた沈自山は、これからも陰から彼女を支えることを決意する。

一方、羅家では羅雪児が徐程風のもとを訪れていた。

彼女は、羅霜霜が幼い頃の火傷のため後頭部に傷を負い、高い髷を結えないことを証明する証言を集めていた。

事件当日、女盗賊は高く結い上げた髷姿だった。

つまり霜霜が犯人ではないという証拠になる。

雪児はその資料を徐程風へ差し出し、「真実を明らかにしてください」と頭を下げる。

徐程風は証拠を確認するうち、逆に別の人物へ疑いを強める。

高い髷を結ぶことができる女性。

そして現場と同じ靴を持つ人物。

その条件に、沈丹青が再び当てはまってしまうのである。

徐程風は天昊を通じて沈丹青を東北の郊外へ呼び出し、事件現場での調査への協力を依頼する。

潔白を証明するためにも、愛蓮は断ることができなかった。

東北郊外へ到着した徐程風は、女盗賊が残した痕跡を調べ始める。

ところが、それは本物の盗賊たちが仕掛けた巧妙な罠だった。

危うく機械仕掛けの罠にかかりそうになるが、徐程風は卓越した身のこなしで難を逃れる。

その直後、本物の「緑林三梟」が姿を現す。

徐程風は一人で三人を相手に激しい戦いを繰り広げる。

そこへ駆け付けた愛蓮と天昊も戦闘へ加わり、三人は息を合わせて盗賊たちへ立ち向かう。

戦いの最中、愛蓮は女盗賊に捕らえられ、人質にされてしまう。

女盗賊は徐程風へ武器を捨てるよう要求する。

しかし愛蓮は徐程風へ冷たい視線を向け、「私はこの人とは何の関係もありません」と突き放す。

二人が他人同士だと思い込んだ女盗賊は一瞬だけ油断する。

その隙を逃さず徐程風が飛び込み、一撃で女盗賊を討ち取ることに成功する。

戦いの後、徐程風は盗賊の隠れ家から、かつて沈家が護送中に奪われた皇命の荷箱を発見する。

だが、肝心の宝の地図だけが箱の中から消えていた。

事件はまだ終わっていなかったのである。

今回の戦いによって、沈丹青が女盗賊ではないことも明らかになった。

徐程風は自ら彼女を沈家まで送り届け、その途中、傷の手当てを気遣うなど以前より柔らかな態度を見せる。

沈家では、妹の帰りを待ち続けていた沈自山が、負傷した愛蓮を見て怒りを隠せなかった。

しかし愛蓮は今日の出来事を説明し、「結果的に本物の女盗賊を見つけることができました」と笑みを見せる。

さらに、亡き沈丹青も以前この女盗賊に毒を盛られていたことを知った沈自山は、妹の死にも別の真相があるのではないかと考え、自ら調査を始める決意を固める。

一方、愛蓮は次なる復讐計画を胸に秘めていた。

羅霜霜は釈放されて羅家へ戻った。

しかし愛蓮は、今すぐ羅家を滅ぼすつもりはない。

まずは家族同士を疑わせ、互いに争わせる。

その末に、一人ずつすべてを失わせる。

そして最後には、父が築いた甘露堂を必ず取り戻す。

それが彼女の新たな復讐の形だった。

その頃の羅家では、羅雪児が霜霜の釈放に尽力したことで、周姨娘の信頼を勝ち取っていた。

さらに羅季舟からも甘露堂の日常業務を任されるようになり、羅家での存在感を急速に高めていく。

当然、それを面白く思わない羅霜霜は雪児を見下し、ことあるごとに嫌味を浴びせる。

しかし雪児は以前の従順な妹ではなかった。

美容のための高価な化粧品を買うため、侍女が病気の弟を治療するために貯めていた金まで奪い取る。

さらに邪魔になった侍女を屋敷から追い出そうとまでし、その冷酷さに侍女は深い恨みを抱くようになる。

また雪児は、霜霜が陥れられた事件や酒麹の腐敗騒動を振り返るうち、一連の出来事は偶然ではなく、「沈丹青」が意図的に羅家を狙っているのではないかと疑い始める。

一方、徐程風は生け捕りにした緑林三梟の一人を厳しく尋問していた。

盗まれた宝箱について問い詰めると、盗賊は「箱を奪った時には鍵も壊れておらず、中身もあると思っていた」と証言する。

徐程風は回収した宝箱を詳しく調べ、壊された錠前の痕跡を見つめながら、一つの結論へたどり着く。

「盗賊も沈家も、誰かに利用されたにすぎない。」

皇帝の宝の地図を巡る陰謀は、想像以上に大きな黒幕が背後で糸を引いている――。

徐程風はそう確信し、新たな事件の真相を追う決意を新たにするのだった。

 

第7話の見どころ

羅愛蓮は復讐の次なる一手として、羅家に潜む「血縁の秘密」に狙いを定めます。新たな味方・水仙を迎え入れる一方で、徐程風との関係は疑念と信頼の間で揺れ動きます。そして愛蓮が仕掛けた巧妙な策略により、羅季舟は最愛の娘・羅霜霜の出生を疑い始めることに――。家族の絆が崩れ始める様子と、復讐の歯車が大きく動き出す痛快な心理戦が見どころです。

第7話「揺らぐ血の絆」

羅家では、羅霜霜の侍女・水仙が人目もはばからず薬屋の前で頭を下げていた。

重い病に苦しむ弟を救うため、これまで何度も薬代を借り続けてきた水仙だったが、すでに数十両もの借金を抱えており、薬屋の主人もこれ以上は信用できないと支払いを断ってしまう。

弟の命を救いたい一心で涙ながらに懇願する水仙だったが、誰も手を差し伸べようとはしない。

そこへ偶然通りかかった沈丹青――羅愛蓮は、そのやり取りを目にする。

かつて自分も使用人たちと苦楽を共にしてきた愛蓮は、水仙の必死な姿に昔の自分を重ね合わせる。

彼女は迷うことなく薬代を肩代わりし、水仙の弟が治療を受けられるよう手を差し伸べた。

思いもよらない恩情を受けた水仙は深く感謝し、「どうか私をお側に置いてください。命に代えてもお仕えします」と忠誠を誓う。

しかし、その様子を見ていた沈自山は簡単には信用しなかった。

「今日、羅家を裏切った者が、明日には沈家を裏切らない保証はどこにもない。」

沈家を守る責任を背負う彼は、水仙の覚悟を試すため、毒薬を差し出す。

「忠誠を誓うなら、これを飲め。毎月解毒薬を渡す。」

それは裏切れば命を落とすという、絶対服従の証だった。

水仙は一瞬もためらわず毒を飲もうとする。

その姿を見た愛蓮は慌てて制止した。

「忠誠は恐怖で縛るものではありません。」

「人には自分で道を選ぶ権利があります。」

彼女は水仙を信じ、自ら保証人となることを申し出る。

沈自山はしばらく考えた末、愛蓮の判断を尊重し、水仙へ一度だけ機会を与えることにした。

こうして水仙は正式に沈丹青の侍女となる。

その頃、徐程風は沈丹青の足の傷が気になっていた。

彼は皇帝から下賜された貴重な金創薬を自ら持参し、沈家を訪ねる。

愛蓮は、これで徐程風もようやく自分への疑いを捨てたのだと思った。

しかし、それは誤解だった。

徐程風は率直に切り出す。

「生き残った緑林三梟を取り調べた結果、羅家の米を襲ったのは彼らではなかった。」

つまり、沈丹青が関わった事件には依然として説明できない点が残っているというのである。

彼はさらに、女盗賊の特徴を説明しながら、その姿を絵に描いてほしいと頼む。

本物の沈丹青として磨き上げた画力を持つ愛蓮は、淡々と筆を動かし、記憶どおりの女盗賊の姿を描き上げる。

完成した絵を見つめた徐程風は、静かに問い掛ける。

「……この女性、あなたによく似ていますね。」

その一言に愛蓮の表情が曇る。

徐程風は薬を届けながらも、結局は自分を疑い続けていた。

失望した愛蓮は、それ以上話そうとせず、水仙へ命じて徐程風を見送らせる。

さらに、せっかく持参した金創薬も受け取らず、そのまま返してしまうのだった。

徐程風が帰った後、愛蓮は水仙へ周姨娘や羅家について尋ね始める。

長年周姨娘のそばで働いてきた水仙は、屋敷の下働きたちの間で密かに囁かれていた噂を思い出す。

「羅霜霜様は、本当は羅季舟様の娘ではないのではないか。」

その理由は、周姨娘自身が以前「霜霜は七か月の早産だった」と話していたからだった。

ところが、その時期には羅季舟は長く屋敷を離れており、計算が合わないのである。

その話を聞いた愛蓮はすぐに気付く。

周姨娘は祠堂で羅季舟を味方につけるため、「霜霜はあなたの娘だ」と嘘をついただけではないか。

つまり、霜霜の本当の父親は別にいる可能性が高い。

これは羅家を内側から崩す絶好の材料だった。

真相を確かめるため、愛蓮は水仙を連れて霜霜を取り上げた産婆・李婆の行方を追う。

二人は黒市へ足を運ぶが、情報屋を名乗る詐欺師に騙され、危うく人さらいに捕まりそうになる。

その窮地を救ったのは、偶然その場で捜査を行っていた徐程風と天昊だった。

徐程風は鮮やかな剣さばきで悪党たちを追い払い、愛蓮たちを助け出す。

助けられた愛蓮は礼を述べるものの、自分が黒市へ来た本当の目的だけは決して明かさなかった。

徐程風は彼女の足の傷を心配し、以前返された金創薬をもう一度差し出す。

今回は何も言わず薬を受け取る愛蓮だったが、二人の間にはなお微妙な距離が残っていた。

一方、天昊は詐欺師たちを操っていた老婆を捕らえる。

この老婆こそ、徐程風が以前から探していた裏社会一の情報屋「百事通」だった。

しかし愛蓮が探していた李婆については、「少し前に昔の主人が迎えに来て連れて行った」としか分からなかった。

愛蓮はすぐに察する。

羅家が先回りして李婆を隠したのだと。

その推測どおり、李婆は羅雪児によって密かに保護されていた。

周姨娘は羅雪児へ命じる。

「李婆をしっかり見張りなさい。特に羅季舟には絶対会わせてはならない。」

真実が漏れれば、自分たちの立場が危うくなることを恐れていたのである。

やがて羅霜霜の誕生日が近づき、羅家では盛大な祝いの宴が開かれる。

周姨娘は李婆を席へ招き、羅季舟の前で「霜霜は予定日どおりの健康な子として生まれました」と話すよう念入りに言い聞かせる。

羅季舟も何も疑わず、最愛の娘である霜霜を優しく見守っていた。

しかし、その宴へ思わぬ客が姿を現す。

以前、城外の廃寺で羅家三姉妹を占った易者だった。

祝いの席にもかかわらず、易者は突然声を上げる。

「今日、この家の主人には血の災いが訪れる。」

さらに驚くべきことを告げた。

「羅季舟様とこの娘は、生まれながらに相克の運命。」

「しかも、この娘は七か月の早産ではありませんか。」

その言葉を聞いた羅季舟の表情が一変する。

七か月の早産――。

それは水仙が語っていた噂と一致していた。

周姨娘は慌てて易者を追い出そうとするが、その焦った様子がかえって羅季舟の疑念を深めてしまう。

実は、この易者こそ愛蓮が金を払って雇った偽の占い師だった。

狙いはただ一つ。

羅季舟に霜霜の出生を疑わせ、羅家内部に亀裂を生じさせること。

愛蓮の策略は見事に成功したのである。

宴が終わった後も疑念を拭えない羅季舟は、人知れず霜霜の指先を傷つけ、その血を採取する。

そして、自らの血と合わせて「滴血認親」と呼ばれる血縁鑑定を行うことを決意する。

愛する娘は本当に自分の子なのか――。

羅家の平穏は、愛蓮が仕掛けたたった一つの疑惑によって、大きく揺らぎ始めるのだった。

 

 

第8話の見どころ

羅愛蓮の策略によって、ついに羅霜霜の出生の秘密が暴かれようとします。しかし、追い詰められた周姨娘たちはさらなる陰謀を企て、今度は沈丹青に殺人の濡れ衣を着せます。消えた遺体、捏造された証拠、そして権力を利用した不正捜査――。絶体絶命の危機に陥る愛蓮を救うため、沈自山と徐程風もそれぞれ真相究明に動き出します。復讐劇と謎解きが同時に加速する、息もつかせぬ展開の一話です。

第8話「仕組まれた殺人の濡れ衣」

羅季舟が密かに行った「滴血認親」によって、羅霜霜の出生の秘密は暴かれるはずだった。

しかし、その結果は意外なものとなる。

羅季舟の血と羅霜霜の血は同じ器の中で混ざり合い、まるで二人が本当の親子であるかのような結果が示されたのである。

実は、その裏では羅雪児が一足早く異変に気付き、細工を施していた。

羅季舟の様子がおかしいことから血縁を疑い始めたと察した雪児は、使用する水をすり替える準備を整え、周姨娘と協力して滴血認親そのものを偽装していたのだった。

これで一度は危機を逃れたものの、雪児はさらに冷静に状況を分析する。

「李婆が生きている限り、いつか真実は漏れる。」

そう判断した彼女は、周姨娘へ「証人を始末するしかありません」と進言する。

一方その頃、沈丹青――羅愛蓮も羅家の動きを探っていた。

羅家では特に目立った変化は見られなかったものの、李婆の行方だけが依然として分からない。

愛蓮は密かに人を放ち、羅家の使用人たちを尾行させることで、李婆の居場所を突き止めようとする。

その一方で、徐程風も独自に捜査を進めていた。

以前捕らえた黒市の情報屋・百事通を訪ねた徐程風は、彼女が面倒を見ていた孤児たちをすべて保護し、善堂へ預ける手配をしていた。

自分だけでなく子どもたちまで救ってくれた徐程風に感謝した百事通は、本来なら決して口外できない黒市の秘密について、できる範囲で協力する。

皇帝の宝の地図については黒市の掟があるため語れないと断るものの、一つだけ重要な情報を明かした。

「沈丹青が黒市へ来たのは、李婆を探していたからです。」

徐程風はその証言から、沈丹青が羅家の秘密を追っていることを知り、彼女の目的にさらに興味を抱く。

やがて愛蓮の部下たちは羅家の者を尾行した末、ついに李婆が匿われている隠れ家を突き止める。

しかし同じ頃、周姨娘も李婆を口封じするため刺客を送り込んでいた。

命を狙われた李婆は逃げ場を失い、絶体絶命の危機に陥る。

そこへ駆け付けたのは、愛蓮と徐程風だった。

偶然にも同じ場所へたどり着いた二人は、天昊と力を合わせて刺客たちを退け、李婆を無事に救い出す。

その後、愛蓮は羅季舟を密かに酔雲楼へ呼び出す。

そこで李婆は意を決し、長年胸に秘めていた真実を語り始める。

「霜霜様は七か月の早産でした。」

「周姨娘様から、誰にも話してはならないと命じられていたのです。」

突然知らされた事実に羅季舟は激しく動揺する。

しかし彼はなおも反論する。

「私は自分で滴血認親を行った。結果は間違いなく親子だった。」

すると愛蓮は冷静に言い返す。

「周姨娘ほどの人物なら、水を入れ替えることくらい造作もありません。」

「本当に真実を知りたいなら、もう一度ご自身の目で確かめてください。」

その言葉に背中を押された羅季舟は、霜霜を酔雲楼へ呼び出すよう命じる。

その知らせはすぐに周姨娘と羅雪児の耳にも入った。

二人は出生の秘密が暴かれることを恐れ、大急ぎで酔雲楼へ向かう。

部屋へやって来た霜霜は事情も分からぬまま指先を切られ、再び滴血認親が行われる。

今度は細工をする者はいない。

器の中で二人の血は交わらず、はっきりと親子ではないことが証明された。

羅季舟は激しい怒りに震える。

長年、自分の娘だと信じて愛情を注いできた霜霜。

そのすべてが欺瞞だったのである。

怒りに任せて霜霜へ詰め寄る羅季舟だったが、追い詰められた霜霜は恐怖のあまり近くにあった大香炉の台座を手に取り、羅季舟の頭へ振り下ろしてしまう。

鈍い音とともに羅季舟は床へ倒れ、そのまま動かなくなる。

間もなく駆け付けた周姨娘と羅雪児は、その光景を見て凍り付く。

しかし雪児は瞬時に状況を判断する。

「まだ助かるかどうかより、自分たちが生き残ることが先。」

彼女は周姨娘と霜霜へ冷静に言い聞かせる。

「役人が来たら証言は一つに揃えましょう。」

「すべて沈丹青がやったことにすればいい。」

一方、沈家では沈丹青が沈自山と繆神医の様子に違和感を覚えていた。

二人は最近、本物の沈丹青が毒を盛られて命を落とした事件を密かに調べ続けていたのである。

愛蓮は自ら二人へ声を掛ける。

「私はもう沈家の家族です。」

「辛いことも危険なことも、一緒に背負わせてください。」

その言葉に沈自山は胸を打たれ、愛蓮を本当の妹として受け入れる思いをさらに強くする。

しかし、その穏やかな時間は長く続かなかった。

突然、白知府が大勢の役人を率いて沈家へ押しかける。

彼は沈丹青を前に告げる。

「羅家二老爺・羅季舟殺害の容疑で捕らえる。」

愛蓮も沈自山も突然の罪状に驚きを隠せない。

実は周姨娘母娘は事前に多額の賄賂を白知府へ渡し、事件を沈丹青の犯行として処理するよう根回ししていたのである。

愛蓮は羅季舟と会ったことは認めながらも、「その後、周姨娘たちも同じ部屋へ入っています。私だけが犯人ではありません」と冷静に反論する。

そのため白知府は公平を装い、沈丹青だけでなく周姨娘、羅雪児、羅霜霜もまとめて役所へ連行する。

移動の途中、愛蓮は沈自山へ小声で話す。

「霜霜の腕輪に傷がありました。」

「あれは硬い物を強く打った痕です。」

大香炉で羅季舟を殴った証拠かもしれない――。

愛蓮はそう確信していた。

潔白を証明するため、彼女は白知府へ遺体の検視を申し出る。

ところが、一行が遺体安置所へ到着すると、そこにあるはずの羅季舟の遺体は跡形もなく消えていた。

証拠そのものが失われたことで、事件は一気に混迷する。

周姨娘たちはすかさず白知府へ迫る。

「遺体がない以上、これ以上調べても無駄です。」

「早く事件を終わらせれば、あなたの責任も問われません。」

自らの保身しか考えない白知府も、その言葉に心を動かされ始める。

さらに役人たちは沈家の庭から、酔雲楼で使われたものと同じ大香炉の台座を掘り出す。

もちろん、それも周姨娘たちが仕組んだ偽の証拠だった。

白知府はその台座を決定的証拠として沈丹青の身柄を拘束するよう命じる。

沈自山は怒りのあまり今にも剣を抜こうとするが、愛蓮は首を横に振る。

「今は争ってはいけません。」

「羅季舟を見つけることが、私の無実を証明する唯一の方法です。」

その言葉に沈自山は必死に怒りを抑え、別行動で真相を追うことを決意する。

一方、将軍府では別の動きも始まっていた。

皇族である怡親王が徐程風を訪ね、皇帝の命で聊城へやって来たことを告げる。

皇帝の宝の地図がいまだ見つからないことを厳しく責め立てる怡親王に対し、徐程風は毅然とした態度を崩さない。

「私は軍令状を林閣老へ提出しています。」

「功罪を裁くのも林閣老であり、他の者ではありません。」

二人は以前から対立関係にあり、言葉の端々に敵意がにじむ。

それでも勅命には逆らえず、徐程風はこれまで集めた皇帝の宝の地図に関する捜査資料を怡親王へ説明する。

その頃、沈自山は一人で遺体安置所を調べ直していた。

現場に残された血痕や足跡を丹念に確認した彼は、一つの違和感に気付く。

「羅季舟は……死んでいない。」

遺体は運び去られたのではなく、自ら歩いて立ち去った痕跡が残されていたのである。

沈自山はその足跡をたどり、ついに姿を消した羅季舟の行方を追い始める。

愛蓮の運命を左右する真実は、いま再び動き出そうとしていた。

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