九重紫 2024年 全34話 原題:九重紫
第5話の見どころ
皇帝から突然呼び戻された蒋梅荪を救うため、宋墨は窦昭の助言を受けながら朝廷の動きを探り始めます。一方、庄子では窦昭と宋墨がついに正面から対峙し、互いに人質を取る緊迫した駆け引きへ。冷徹な将軍の顔を見せる宋墨と、彼の運命を知る窦昭は、互いに警戒しながらも次第に相手の聡明さを認めていきます。さらに窦昭の助言によって宋墨は大胆な朝廷工作に乗り出し、蒋梅荪を救うための策を進めますが、思わぬ人物が政局をかき乱すことになります。
第5話のあらすじ
皇帝から蒋梅荪のもとへ、突然の召喚状が届く。
一刻も早く都へ戻るよう命じられたのだ。
蒋梅荪は急いで帰京の準備を始める。
宋墨もそばで荷物をまとめながら、叔父の様子を気にかけていた。特に気になったのは、蒋梅荪の肩に残っている傷だった。
ただの召喚ではない。
宋墨はそう感じていた。
そこで陳千戸を問い詰め、今回の召還の本当の目的を尋ねる。しかし、陳千戸は明らかに何かを知っている様子でありながら、口を濁して答えようとしない。
その態度を見た宋墨の不安はさらに強くなる。
しかし蒋梅荪は、そんな宋墨を安心させるように声をかける。
自分が都へ戻っている間、軍中の仕事をしっかりと処理していればいい。
今回の召還は、もしかすると各地で深刻化している災害への救済措置に関するものかもしれない。
蒋梅荪はそう考えていた。
やがて蒋梅荪が大帳を出ると、そこには多くの将兵が跪いて待っていた。
今後の救済策について指示を求めているのだ。
蒋梅荪は迷うことなく命じる。
どれほど困難な状況に陥っても、救済を途中で止めてはならない。
何よりも優先すべきなのは、民衆が生き延びることだ。
朝廷の命令や軍の事情がどうなろうとも、民の生活だけは守らなければならない。
そう言い残し、蒋梅荪は都へ向かう。
一方、その頃。
宋墨たちは窦昭のいる庄子へとやって来ていた。
その姿を見た陳曲水は、同行していた厳朝卿に気づいて顔色を変える。
厳朝卿は定国公の配下でも名の知れた猛将。
そして陳曲水は、かつて張鎧のもとで働いていた人物だった。
もし自分の過去が知られれば、ただでは済まない。
自分だけでなく、窦昭や庄子にまで危険が及ぶ可能性がある。
陳曲水は恐怖に震える。
しかし窦昭は、そんな陳曲水を責めなかった。
むしろ自ら手を差し伸べ、彼を立ち上がらせる。
かつて窦昭が陳曲水を幕僚として招いたとき、彼女は過去を追及しないと約束していた。
今もその約束は変わらない。
窦昭にとって大切なのは、今の陳曲水が何をしているかだった。
だが、陳曲水の不安は簡単には消えない。
自分の正体が露見すれば殺されるかもしれない。
そして、そのせいで庄子にいる全員まで巻き込まれるかもしれない。
さらに、宋墨たちは一人の幼い子供を連れていた。
その子を見た瞬間、窦昭はすべてを悟る。
《昭世録》に記されていた人物。
この子は、定国公家の血筋を受け継ぐ重要な存在だった。
そして、目の前にいる若者こそ――。
前世で京師を震撼させた少年将軍、宋墨だった。
その事実に気づいた陳曲水は、さらに恐怖を募らせる。
自分の命を差し出すことで窦昭たちを守ろうとするが、窦昭はそれを止める。
ところが厳朝卿も、すぐに陳曲水の正体を見抜いていた。
彼は陳曲水を逃亡兵に付き従っていた危険な人物だと判断する。
もし彼が小公子の存在を外部へ漏らせば、取り返しのつかないことになる。
厳朝卿は宋墨に進言する。
この庄子にいる者を全員始末したほうがいい。
宋墨は普段から婦女子まで殺すような人物ではない。
しかし、小公子を守ることを最優先に考えれば、厳朝卿の提案を無視することもできなかった。
宋墨は、やむなくその案を受け入れる。
その頃、危険を察知した窦昭は、密かに庄子から逃げる準備を始めていた。
しかし、出口へ向かったところで宋墨率いる兵に道を塞がれてしまう。
窦昭はとっさに、自分は朝廷の命を受けた官吏だと偽る。
だが、宋墨は細かな点を次々と問いただしてくる。
窦昭は完璧に答えようとするものの、いくつかの質問でわずかなほころびが生じる。
宋墨はすぐに嘘を見破った。
ところが、彼が気になったのは窦昭の嘘だけではなかった。
窦昭が自分を見る目。
まるで、ずっと以前から自分のことを知っているような眼差しだった。
初対面のはずなのに、なぜこの女性は自分を知っているような目をするのか。
宋墨は強い違和感を覚える。
しかし今は、その理由を考えている余裕などなかった。
彼が剣に手をかけた、その瞬間。
素心と素蘭が動く。
二人はいつの間にか、子供と乳母を捕らえていた。
宋墨はようやく気づく。
窦昭は最初から時間を稼いでいた。
自分たちの注意を引きつけ、その隙に子供を確保するためだったのだ。
窦昭は、子供を傷つけるつもりはないと説明する。
ただ交渉の機会が欲しかっただけだ。
宋墨は警戒を解かない。
しかし窦昭と陳曲水は、現在の状況について冷静に分析し始める。
皇帝は本当に蒋梅荪を疑っているのか。
それとも、誰かが陰で讒言を吹き込んでいるのか。
もし蒋梅荪が罠にはめられれば、定国公家にも危険が及ぶ。
ならば、どうすれば蒋梅荪を救いながら皇帝の信頼も得られるのか。
窦昭は次々と意見を述べる。
その考えは非常に論理的で、宋墨も思わず耳を傾ける。
彼女は単なる商家の娘でも、普通の令嬢でもない。
政治の流れを読み、皇帝の心まで推測している。
宋墨は窦昭の知性に驚き、同時に彼女が何者なのかますます分からなくなる。
それでも、宋墨はまだ窦昭を完全には信用していなかった。
再び殺意を抱いた、そのとき。
突然、子供が泣き出す。
乳母が慌てて授乳しようとするが、子供はなかなか飲もうとしない。
そこで窦昭は、子供の体が弱っていることを見抜く。
そして羊乳を用意するよう指示する。
すると、子供は驚くほど素直に羊乳を飲み始めた。
窦昭は、体が弱い子供の場合、一時的に母乳が合わないこともあると説明する。
周囲の者たちは、窦昭が育児についても詳しいことに驚く。
そのとき、今度は厳朝卿の腹が鳴る。
緊迫していた空気が一瞬で緩む。
窦昭は思わず笑い、食事を用意するよう命じる。
すると宋墨の部下たちまで料理を手伝い始める。
先ほどまで殺し合う寸前だった者たちが、同じ場所で料理を作るという奇妙な光景が生まれる。
宋墨自身も、窦昭がなぜそこまで危険を冒して自分たちに関わるのか理解できなかった。
もし缉影衛に知られれば、この庄子そのものが危険にさらされる。
窦昭自身の命も危ない。
それでも窦昭は、静かに答える。
自分が守りたいのは、一人の人間の運命なのだと。
その人物こそ、前世で自分と運命を共にした宋墨だった。
もちろん、その言葉をそのまま本人に伝えることはできない。
そこへ谭庄主が兵を率いて現れる。
彼は窦昭を守るため、彼女に危害を加えさせないと宋墨たちへ告げる。
その存在によって状況はさらに変化する。
宋墨は窦昭が単純な悪人ではないことを悟り、庄子の人々を皆殺しにすることを思いとどまる。
翌朝。
窦昭は庭先で、宋墨が一人の幼い少女と狗尾草について話している姿を目にする。
昨夜、冷たい表情で剣を向けてきた男とは思えないほど穏やかな姿だった。
子供と話す宋墨は、どこか温かく優しい少年の顔をしている。
窦昭は思わず立ち止まる。
宋墨も窦昭に気づく。
二人の視線が重なる。
昨夜の激しい交渉を思い出しながら、互いに複雑な感情を抱く。
その後、宋墨は陳曲水を連れて行くと告げる。
彼を人質にするというのだ。
それに対し、窦昭も条件を出す。
厳朝卿を庄子に残してほしい。
互いに一人ずつ人質を残す。
両者の交渉の末、結局、人質を交換することで合意する。
宋墨は庄子を後にする。
しかし、窦昭への疑念が消えたわけではない。
彼はすぐに部下へ命じ、窦昭の身辺を詳しく調べさせる。
ほどなくして、意外な情報が届く。
窦昭は家族から疎まれ、田庄へ追いやられている令嬢だという。
しかし、その周囲にいる侍女や使用人たちは、なぜか皆ただ者ではない。
普通の令嬢の身の回りにいる人間とは思えないほど、武術に長けている。
宋墨は疑問を抱く。
本当に家族から見捨てられただけの女性なのか。
内宅の争いでは、いくらでも噂や偽りが生まれる。
窦昭の「厭われた令嬢」という評判だけを、そのまま信じるわけにはいかない。
何より、彼女の知性は普通の閨秀とは明らかに違っていた。
宋墨は、窦昭がただの商家の娘ではないと確信する。
一方、宋墨が去った後、窦昭はようやく緊張を解く。
ずっと張り詰めていたせいで、喉が渇いて仕方がない。
彼女は水を何杯も飲む。
そして心の中で思う。
できることなら、もう二度とあの宋墨の目を見たくない。
まるで人の心の奥まで見透かしてしまうような、あの鋭い目。
前世を知っている自分だからこそ、なおさら彼の視線が怖かった。
その頃、安素素と趙璋如が宋墨のもとへやって来る。
二人から聞かされたのは、嬉しい知らせだった。
窦世英が今回の災害救済で功績を立てた母・崔氏のために、皇帝へ恩賞を願い出たというのだ。
それが認められれば、崔氏を再び屋敷へ呼び戻す口実もできる。
母と息子の関係が修復されるかもしれない。
窦昭たちは崔氏のもとへ行き、その話をこっそり聞く。
崔氏は嬉しい気持ちを隠しているものの、窦昭にはその心が分かっていた。
さらに、崔氏が芥菜の餛飩を作り、それを窦世英のもとへ届けたことを知る。
窦昭は、その行動こそが崔氏の態度が変わった証拠だと理解する。
親子の関係が少しずつ修復されていることを、窦昭も心から喜ぶ。
一方、窦世英のもとへ王映雪が手作りの甘味を持ってくる。
しかし窦世英は、すでに母が作った餛飩を食べたから、もう十分だと言う。
王映雪はそこで、窦明が書いた字を見てもらおうとする。
だが窦世英は、ほとんど目を通そうとしない。
娘が書を学ぶのは、あくまで心を磨くため。
それを親がいちいち試験するように評価してしまえば、かえって興を削いでしまう。
そう考えていた。
窦明に促され、ようやく窦世英は甘いスープを一杯だけ口にする。
そして王映雪の料理を褒める。
その流れで、母の恩賞が決まったら、崔氏を屋敷へ迎え戻そうと話す。
王映雪は表面上、家族にとって喜ばしいことだと賛成する。
しかし、心の中では窦世英が自分より窦昭や崔氏を大切にしていると感じ、強い不満を募らせていた。
窦昭は、宋墨が朝廷でどのように動けばいいのかについても助言する。
宋墨はその策を実行するため、朝廷内を奔走する。
あえて臣下たちを二つの派閥に分け、それぞれ異なる理由で蒋梅荪を弾劾させる。
一見すると、蒋梅荪は四方八方から攻撃されているように見える。
しかし、実際には二つの弾劾内容が互いに矛盾している。
つまり、蒋梅荪が党派を作り、私利私欲のために権力を握っているという印象を皇帝に抱かせないための策だった。
皇帝に「もし本当に蒋梅荪が結党していたなら、これほど互いに食い違う告発が出るはずがない」と思わせるのだ。
窦昭の策は巧妙だった。
しかし、思いがけない人物がその計画を壊しかける。
窦家の窦老五――窦世枢だった。
彼は事情を知らないまま朝堂で邬閣老と衝突する。
そして蒋梅荪を、兵を握りすぎている危険人物だと公然と批判してしまう。
下朝後、窦世枢は慌てて謝罪する。
しかし、邬閣老は怒りを収めない。
窦世枢にしばらく休むよう命じ、事実上、朝廷から遠ざけてしまう。
その頃、宋墨も邬閣老を探して朝堂の外へやって来ていた。
そして――。
宋墨と窦世枢が、すれ違う。
一方は蒋梅荪を救うために密かに策を進める宋墨。
もう一方は何も知らずに政局を動かしてしまった窦世枢。
蒋梅荪をめぐる朝廷の危機は、さらに複雑な様相を見せ始める。
そして、窦昭と宋墨の関係もまた、ただの敵味方では割り切れないものへと変わりつつあった。
前世の運命を知る窦昭。
そして、まだ前世の記憶を完全には取り戻していない宋墨。
二人の間には、互いがまだ知らない秘密が存在していた。
第6話の見どころ
窦昭と宋墨の距離が一気に縮まる重要回です。窦家では縁談が持ち上がり、前世で窦昭を苦しめた魏廷瑜との再会が実現します。窦昭はわざと豪快な振る舞いを見せ、魏廷瑜を遠ざけようとしますが、思いがけず邬善から好意を寄せられることに。一方、端午の宴では邬善が毒性の強い凤蝶に襲われ、窦昭は《昭世録》で知っていた彼の死を阻止するため、危険を承知で治療に挑みます。窦昭を信じる宋墨の決断が、二人の関係を大きく変えていきます。
第6話のあらすじ
宋墨のもとへ、云阳伯が訪ねてくる。
二人が話をする中で、云阳伯は宋墨の背後に、非常に優秀な知恵者がいることに気づく。
その人物こそ、宋墨のために朝廷の情勢を分析し、次々と策を授けている「女諸葛」だった。
もちろん、云阳伯もその策を成功させるために力を貸していた。
さらに云阳伯は、宋墨が腰に下げている香囊球にも目を留める。
それを見た彼は、宋墨が心に想う女性から贈られた品ではないかと考える。
宋墨は否定しようとするものの、云阳伯はすっかり恋の証だと思い込み、なんと自分が縁談をまとめるとまで言い出す。
定国公家が今回の危機を無事に乗り越えられるよう、自分も全力で力を貸す。
そう言って宋墨を励ますが、宋墨の心には依然として不安が残っていた。
今回の朝廷の動きは、あまりにも不穏だった。
一方、宋墨は邬閣老のもとを訪れ、朝堂で窦世枢が蒋梅荪を批判していたことを知る。
邬閣老は意味ありげに宋墨へ言う。
機会があれば、窦家の「粽子」を食べてみるといい。
宋墨には、その言葉の意味が分からない。
しかし、窦世枢が蒋梅荪を攻撃していることを知り、窦家に対する警戒心が芽生える。
さらに侍衛の陸争と陸鳴も、窦昭に対して強い疑念を抱く。
なぜ一人の令嬢が、これほどまでに朝廷の情勢を把握しているのか。
もしかすると、窦家の人間はすでに窦昭の手駒になっているのではないか。
さらには、自分たちまで窦昭の掌の上で動かされているのではないか。
宋墨自身も同じ疑念を抱き始める。
しかし、今はまだ窦昭の真意を判断することはできない。
宋墨は慎重に様子を見ることにする。
その頃、朝廷から謹慎を命じられた窦世枢は、不満を募らせていた。
自分を朝廷から遠ざけた邬閣老に対抗するため、朝臣との関係をさらに強化しようと考える。
そこで彼が頼ったのが王映雪だった。
窦世枢は、二つの縁談を進めようとする。
窦明を邬善に嫁がせること。
そして、窦昭を魏廷瑜に嫁がせること。
王映雪は窦世枢の思惑を理解していた。
しかし、娘の将来と自分たちの立場を考えれば、試してみる価値はある。
そう判断し、縁談を進めることにする。
周囲では、窦明が窦昭と比べて見劣りするのではないかという心配も出ていた。
何しろ魏廷瑜の家柄は邬善より上だ。
だが、王映雪はすでに魏家について調べていた。
確かに魏廷瑜は身分こそ高い。
しかし、本人は遊び好きで、仕事もせず、毎日のように花街へ通っている。
家の財産もほとんど使い果たしており、名ばかりの名家にすぎない。
姉の魏廷珍も、たいした後ろ盾を持っていない。
そのため王映雪は、窦昭を魏廷瑜に嫁がせても問題はないと考える。
やがて魏廷珍は、花街で詩や絵を楽しんでいた魏廷瑜を見つける。
そして、窦家の娘との縁談があるから会いに行けと迫る。
魏廷瑜は、以前から窦昭について聞いていた。
「粗野な女」という評判を聞いていたため、乗り気ではない。
しかし魏廷珍から、窦昭は美しく、しかも莫大な財産を持っていると聞かされる。
それならば、と魏廷瑜は渋々会うことを承諾する。
一方、魏廷瑜が自分との縁談のためにやって来ると聞いた窦昭は、前世の記憶を思い出す。
かつて自分が魏廷瑜に嫁いだ後、どれほど苦しめられたことか。
それだけではない。
魏廷瑜は後に、窦昭が宋墨と結託しているという濡れ衣まで着せた。
この男に対する恨みは、まだ消えていない。
窦昭は心の中で決意する。
今度こそ、この男との因縁を清算する。
そして魏廷瑜が窦家へやって来る。
最初に彼の目に入ったのは、庭で蝶を追いかける窦明だった。
可愛らしい姿を見た魏廷瑜は、思わず心を奪われる。
ところが次に目にした窦昭は、まったく違った。
窦昭は弓を手にして、豪快に矢を放っている。
魏廷瑜は驚き、思わず後ずさる。
一方、邬善はそんな窦昭の姿をむしろ気に入っていた。
窦昭は意図的に魏廷瑜の好みとは正反対の女性を演じる。
これなら魏廷瑜のほうから縁談を断るだろう。
そう考えていたのだ。
窦明も姉の姿を見て、自分も弓を射てみたいと思う。
しかし王映雪は、女が弓など持つべきではないと窦明を叱る。
邬善は窦昭の射た矢が何度も外れるのを見ると、自ら弓を手に取る。
そして一矢で的を射抜く。
その見事な腕前に周囲が感嘆する中、窦昭は魏廷瑜にも弓を渡す。
魏廷瑜は窦明の前で格好をつけようとする。
ところが、矢は的ではなく屋根へ飛んでいってしまう。
何度挑戦しても失敗する魏廷瑜。
そこで窦昭は、彼が先ほど自慢していた言葉をそのまま利用する。
そして、見事に一矢で的中させる。
魏廷瑜の顔は青ざめる。
窦昭の目的は明白だった。
「自分と結婚する気などない」と、相手に思わせること。
魏廷瑜は一刻も早く縁談を断りたいと思うが、断る理由が見つからない。
そんな中、窦明は自分が姉のように何もできないことを気にして落ち込む。
自分は姉と違って、弓も射られない。
何をしても姉にかなわない。
自分は役に立たない人間なのではないか。
そんな窦明に、魏廷瑜は優しく声をかける。
木の枝と矢には、それぞれ違った役割がある。
だから、誰かと比べて自分を卑下する必要はない。
さらに魏廷瑜は、窦明の髪についていた葉をそっと取り除く。
突然の優しさに窦明は胸を高鳴らせ、慌ててその場を離れる。
窦明はすでに、魏廷瑜に心を奪われ始めていた。
その後、窦昭と窦明は、それぞれ虎符の刺繍を披露することになる。
窦昭はわざと粗雑な刺繍を施していた。
自分が窦明に負けるように仕向けるためだ。
魏廷瑜は仕方なく窦昭の虎符を受け取る。
しかし、視線は邬善が持っている窦明の虎符に向いている。
ところが、ここでも窦昭の思惑とは違う展開になる。
邬善は、窦明の美しい刺繍ではなく、窦昭が粗雑に作った虎符のほうを気に入る。
窦昭と邬善の距離が、また一歩近づいていく。
その頃、王映雪は若者たちの距離を縮めるため、蝶を追う遊びを企画する。
もちろん、単なる遊びではない。
彼女には、邬善と窦明を近づける意図があった。
しかし庭で、魏廷瑜が持っていた虎符が地面へ落ちる。
邬善がそれを拾い、返そうとするが、魏廷瑜は窦明の作った虎符を欲しがる。
そこへ、王映雪が仕掛けた蝶の群れが飛んでくる。
その直後、思いもよらない事件が起こる。
厨房で料理の準備をしていた窦昭は、侍女によってわざと衣服を汚される。
そして一人の嬷嬷が、着替えるために窦昭を部屋へ連れて行こうとする。
窦明も後を追おうとするが、なぜか中へ入ることを止められる。
この不自然な対応に、窦昭は警戒する。
そして部屋へ踏み込む。
そこには――。
邬善が倒れていた。
窦昭はすぐに駆け寄る。
邬善は意識を失い、呼吸も苦しそうだった。
体には赤い発疹が広がっている。
そして、窦昭が作った虎符を身につけていた。
窦昭は瞬時に状況を理解する。
これは単なる体調不良ではない。
凤蝶による毒性の強い反応だ。
そして彼女の脳裏に、《昭世录》の記憶が蘇る。
邬善は――。
前世では端午の日に、自宅で命を落とすことになっていた。
つまり、この事件を放置すれば、ここで彼の運命が繰り返される。
窦昭は怒りに震える。
彼女は嬷嬷の頬を平手打ちする。
邬善は重要な客人だ。
もし彼に何かあれば、誰が責任を取るというのか。
しかし今は責任を追及している場合ではない。
邬善の呼吸はどんどん苦しくなっている。
窦昭はすぐに人を呼び、邬善を屋外の広い場所へ運ばせる。
その頃、別の部屋では盛天府尹の戴建が窦世枢と話をしていた。
窦世枢は戴建に粽子を贈る。
一見すると、ただの季節の贈り物に見える。
しかし戴建は粽子に触れた瞬間、窦世枢の意図を察する。
ところが、彼らの前に予想外の人物が現れる。
宋墨だった。
宋墨は兵士たちに邬閣老へ届けられた粽子を運ばせて、窦家へ乗り込んできたのだ。
そして、窦世枢が戴建に贈ろうとしていた粽子を調べる。
すると、その中から出てきたのは――金だった。
粽子に賄賂を隠していたのである。
宋墨は窦世枢を厳しく睨みつける。
これ以上、蒋梅荪を陥れるような真似をするなら、この粽子を皇帝に食べてもらう。
そうすれば、窦世枢の罪はすべて明らかになる。
窦世枢は顔色を変える。
しかし、その直後。
「邬善が外へ運ばれた」
という知らせが入る。
邬善は邬閣老の孫だ。
宋墨は、誰かが邬善に危害を加えたのではないかと思い、急いで外へ向かう。
そこには、窦昭がいた。
窦昭は邬善を救うため、すでに治療を始めている。
戴建は激怒する。
今すぐ邬善を医者のもとへ運べと命じる。
しかし窦昭は首を横に振る。
すでに医者は呼びに行かせている。
だが、最も近い医者でもここから十里は離れている。
そこまで運んでいたら、邬善の命が持たない。
窦昭は自分がここで治療するしかないと判断する。
そして宋墨のもとへ歩み寄る。
窦昭は宋墨の衣襟を強くつかみ、その目をまっすぐ見つめる。
彼女は、宋墨には人の顔や目から真意を見抜く力があることを知っていた。
だからこそ、言葉ではなく自分の目で伝える。
自分は邬善を殺そうとしているのではない。
本当に救おうとしている。
そして、自分なら邬善を救える。
宋墨は窦昭の目を見つめる。
そこには迷いも恐怖もなかった。
あるのは、必ず救うという強い意志だけだった。
しばらくして宋墨は決断する。
彼は兵士たちに命じ、屏風をすべて運ばせる。
窦昭と邬善の周囲を屏風で囲み、誰も中を見てはならない。
もし覗いた者がいれば、容赦なく処罰する。
宋墨の威圧感に、誰も逆らえない。
窦昭は屏風の中で、邬善の治療を続ける。
しかし外では、戴建と窦世枢が宋墨を激しく責め立てる。
ここは窦家の屋敷だ。
なぜ宋墨が勝手に指図するのか。
なぜ一人の令嬢に邬善の命を預けるのか。
宋墨は一歩も引かない。
窦昭を信じる。
それだけだった。
やがて、屏風の向こうから大きな物音がする。
次の瞬間――。
邬善が血を吐いた。
血が屏風を赤く染める。
王映雪はすぐさま窦昭を責める。
窦昭が邬善を殺そうとしているのではないか。
窦世枢と戴建も、宋墨が事態を悪化させたのだと非難する。
しかし宋墨は動じない。
彼はただ屏風の向こうを見つめ続ける。
窦昭を信じている。
時間だけが過ぎていく。
誰もが息を潜め、治療の結果を待つ。
そして――。
屏風の向こうから、かすかな咳が聞こえる。
その瞬間、緊張に包まれていた空気が変わる。
邬善が意識を取り戻したのだ。
窦昭は、前世で失われた命を救うことに成功した。
そして宋墨もまた、その光景を見つめながら、窦昭に対する認識を大きく変えていた。
彼女は単なる商家の令嬢ではない。
自分の命すら危険にさらしながら、他人の命を救おうとする強さを持っている。
しかも、誰よりも冷静に状況を判断し、命を救うために迷わず行動できる。
宋墨は初めて、窦昭を心から信頼できるかもしれないと思う。
これまで彼女を疑っていた自分の見方が、間違っていたのではないか。
一方、窦世枢と王映雪は依然として諦めていない。
蒋梅荪をめぐる政争も、窦家内部の争いも、まだ終わってはいない。
だが、この一件を境に、窦昭と宋墨の関係には明らかな変化が生まれる。
互いに警戒しながらも、相手の能力と信念を認め始めた二人。
前世を知る窦昭と、まだ何も知らない宋墨。
二人はそれぞれの目的を胸に抱えながら、これから訪れるさらなる危機へ向かって歩き始める。
第7話の見どころ
窦昭をめぐる縁談と宮廷の陰謀が交錯し、物語が大きく動き出す第7話。邬善は命を救ってくれた窦昭への想いを告白しますが、窦昭は自由を失う結婚を望まず、彼の気持ちを受け入れません。一方、宋墨は窦昭への疑念を深めながらも、彼女の行動を無視できなくなっていきます。そして終盤、蒋梅荪が謎の死を遂げる衝撃の展開へ。宋墨は皇帝に直接真相を問い、定国公をめぐる巨大な陰謀に立ち向かいます。
第7話のあらすじ
邬善の治療を終えた窦昭でしたが、事件はまだ収束していませんでした。盛天府尹の戴建は、宋墨が許可なく窦家へ入り込んだとして、すべての責任を彼に負わせようとします。そこへ崔氏と窦世英が駆けつけ、事態はさらに緊迫します。
崔氏は宋墨に、今ここで感情に任せて動けば、蒋梅荪を救うどころか宋墨自身まで危険にさらされると諭します。宋墨は素直に頭を下げ、謝罪します。正式に訴えれば複雑な問題になるものの、今回の件から多くのことを学んだ宋墨は、慎重に動く必要があると悟ります。崔氏の仲裁もあり、戴建も最終的には矛を収めることになります。
その頃、邬善は再び血を吐きますが、ようやく到着した医師によれば命に別状はありません。窦昭の処置が早かったからこそ助かったのだと知った邬善は、彼女に深く感謝します。
しかし宋墨は、邬善の発病が単なる偶然とは思えませんでした。邬善は救災活動中に肺病を患っており、今回の発作も毒蝶が原因だったと説明しますが、宋墨はなお疑念を抱きます。そして邬善の腰から窦昭が刺繍した虎符を取り外します。
人々が去った後、宋墨は窦昭を問い詰めます。あの虎符には何か意図があったのではないか――。窦昭は言葉を濁しますが、宋墨の鋭い視線を前に嘘を隠し通すことができません。宋墨は「自分に説明する義務がある」と告げ、窦昭への警戒を解きません。
窦昭は虎符を持って王映雪のもとへ向かいます。そして、虎符には合歓香が仕込まれており、自分と魏廷瑜の間に不祥事を起こそうとしたのではないかと問いただします。王映雪は白を切り、逆に窦昭が邬善を奪おうとしているのだと非難します。
しかし窦昭は、自分が魏廷瑜に嫁ぐつもりなどないことを明言します。
一方、魏廷瑜は窦昭への不満を口にしながら帰路につきます。しかし姉の魏廷珍は、窦昭には莫大な財産があり、家に嫁げば家計を立て直せると説得します。気に入らなければ妾を持てばいいと言われ、魏廷瑜は次第に考えを変え、窦昭との縁談を受け入れることにします。
宋墨は邬善のもとを訪れ、窦昭への疑念を語ります。邬善は、窦昭は自分の命を救ってくれたのだから疑うべきではないと反論します。しかし宋墨は、事件に直接関与していなくても、窦昭が何かを隠していることは事実だと考えます。
一方、窦昭は父・窦世英と窦世枢の前に跪き、魏廷瑜との結婚をやめさせてほしいと懇願します。しかし窦世枢は激怒し、窦昭の頬を平手打ちします。窦世英は娘を打ったことに不満を示すものの、結婚を決めるほどの覚悟はありません。
窦昭は父の弱さを責めます。そこへ崔氏が現れ、二人の息子たちが窦昭を追い詰めていることを厳しく非難します。しかし窦世枢は逆に、窦昭をこのような性格にしたのは母親である崔氏だと責め立てます。
さらに王映雪が現れ、嘉賞の知らせを届けます。崔氏はそれさえも窦昭の縁談を受け入れさせるための策略だと誤解し、深く傷つきます。崔氏は窦昭を連れてその場を去り、もう窦家には戻らないと宣言します。
帰る道すがら、窦昭は王映雪の企みを見抜きます。そして、これまでは過去のことを大目に見てきたが、崔氏に手を出すなら決して許さないと警告します。
傷ついた崔氏は、若い頃の苦しい過去を窦昭に語ります。親の命令で窦铎に嫁いだものの、夫は女性関係にだらしなく、身近な侍女にまで手を出しました。妥娘を守るために窦铎を花瓶で殴った崔氏は、逆に夫を傷つけた罪を問われ、田庄へ追いやられました。
実の息子である窦世枢からさえ母親失格と責められたことで、崔氏は窦家を捨てるように生きてきたのです。
窦昭はそんな祖母を抱きしめ、「あの人たちは家族ではない」と慰めます。自分たちと赵璋如、安素素こそが本当の家族なのだと伝え、崔氏の心を少しずつ癒やしていきます。
そんな中、邬善が窦昭を訪ねてきます。命を救ってもらった際に、女性としての名誉を傷つけてしまったことを詫び、責任を取る意味でも窦昭を妻に迎えたいと告白します。
しかし窦昭は申し出を断ります。名門の家に嫁げば、今の自由な暮らしを失ってしまうからです。邬善は、それでも自分なら窦昭を守ると誓いますが、窦昭は彼の将来を思い、仕官の道を歩んでほしいと願います。
二人は互いに想いを抱きながらも、これから先は会えなくなるかもしれないことを悟ります。邬善は最後に、自分で作った小さな贈り物を窦昭に渡します。窦昭は「人を好きになるのは簡単でも、傷つくのはもっと簡単」と静かに語ります。
その後、窦明から窦昭のもとへ手紙が届きます。月夜に会いたいという内容でした。窦昭は、これまで自分が考えていたほど窦明は単純な人物ではないのかもしれないと感じ始めます。窦明もまた、魏廷瑜の言葉を思い出し、紙の原料となる木の皮に興味を持つなど、彼への想いを深めていきます。
一方、窦世枢の奏章は邬閣老に退けられ、彼は自ら邬閣老のもとへ出向きます。しかし奏章は冷たく床へ投げ捨てられ、窦世枢の立場はさらに苦しくなります。
そして物語は、蒋梅荪をめぐる最大の事件へと動き出します。
皇帝の命令で、蒋梅荪は缉影衛によって朝廷へ連れてこられることになり、宋墨はようやく叔父と再会できると安堵します。ところが、宋墨が傷薬を持って迎えに行くと、轎の中には誰もいません。
雲陽伯とともに船まで追った宋墨は、そこでようやく異変に気づきます。雲陽伯がわざと騒ぎを起こして人々の注意を引く間に、宋墨は船内へ潜入します。
そこで目にしたのは、冷たくなった蒋梅荪の遺体でした。
缉影衛は海賊に襲われたのだと説明します。しかし傷を見た宋墨は、これは海賊の仕業ではないと直感します。最愛の叔父を失った宋墨は、深い後悔に襲われます。
「自分が一緒に帰っていれば……」
宋墨は蒋梅荪の腰牌を手に取り、それを自ら身につけます。そして缉影衛の公公を拘束し、皇帝本人に真相を問いただすことを決意します。
そのまま皇帝と皇后が先祖を祀っている場へ乗り込んだ宋墨は、皇帝の前に跪きます。
そして、蒋梅荪をなぜ殺したのか――と真っ向から問いただします。
皇帝は激怒し、自分は蒋梅荪が戻ってくるのを待っていた、誰が彼を殺したのかと反論します。
そこで宋墨は、蒋梅荪から受け継いだ腰牌を皇帝の前に差し出します。
定国公を救うために始まった戦いは、ついに皇帝自身を巻き込む権力闘争へと突入します。宋墨は叔父の死の真相を追いながら、誰がこの事件の裏で糸を引いているのかを突き止めなければならなくなるのでした。
第8話の見どころ
蒋梅荪の死を巡り、宋墨が皇帝に直接真相を問いただす緊迫の展開が描かれます。皇帝は親友との過去を思い出しながら苦悩し、宋墨を投獄するも、窦昭は冷静に皇帝の真意を読み解き、救出を焦る一行を制止。印染工場を情報網として利用し、宋墨を陰ながら支えます。やがて宋墨は釈放され、窦昭への感謝を口にする一方、邬善の恋を巡って新たな波乱が生まれます。さらに、李太医を伴って現れた窦昭の姿が、邬善と邬阁老の関係を大きく動かしていきます。
第8話のあらすじ
皇帝の前に立った宋墨は、蒋梅荪を殺したのは皇帝なのではないかと厳しく問い詰めます。長年、皇帝を支え続けてきた蒋梅荪を信じていた宋墨にとって、突然の死は到底受け入れられるものではありませんでした。皇帝は宋墨の言葉に大きな衝撃を受けながら、ふと若き日の蒋梅荪との思い出を蘇らせます。二人がまだ若かった頃、皇帝は何度も宮中を抜け出しては騒ぎを起こしていました。そのたびに責任を負い、罰を受けていたのは蒋梅荪でした。皇帝は、どれほど年月が経っても蒋梅荪だけは自分を裏切らない親友だと信じていたのです。かつて二人の友情の証として残された断尺を手にした皇帝は涙を流し、蒋梅荪との深い絆を思い返します。
しかし、宋墨の追及を受けた皇帝は激しく動揺し、蒋梅荪を殺した者を必ず探し出すと命じようとした瞬間、突然吐血して倒れてしまいます。皇后はすぐさま宋墨を拘束するよう命令します。一方、宋宜春からこの知らせを聞いた蒋蕙荪は、病に苦しみながらも宋墨の身を案じます。皇帝が目を覚ました後も宋墨をすぐに処罰しなかったことで、蒋蕙荪は皇帝がまだ旧友との情を捨てていないのではないかと考えます。
宋墨の身を案じた陆争と陆鸣は、今回の事件の裏には窦家が関係しているのではないかと疑い、窦家への報復を考え始めます。しかし、そこへ窦昭が現れ、二人を冷静に制止します。皇帝が宋墨を処罰せずにいるのは、まだ事件の真相を見極めようとしているからだと窦昭は分析します。ここで無理に宋墨を救出すれば、かえって反逆の証拠を与えることになり、宋墨を助けるどころか死罪に追い込む可能性があります。窦昭の判断に納得した严朝卿は、彼女に宋墨を救ってほしいと懇願します。
窦昭は自らの印染工場へ一行を連れて行きます。そこは単なる工場ではなく、各地から集まる情報を収集する重要な拠点でもありました。窦昭は皇帝の動向を探り、宋墨を救うための突破口を見つけようとします。一方、牢獄に入れられた宋墨には王格が私刑を加えようとしていました。しかし、そこへ雲陽伯が現れ、自分も処罰を受けて牢に入れられた身だとして、王格が私刑を行わないよう監視すると告げます。実は雲陽伯は、わざと騒ぎを起こして牢に入る口実を作っていたのでした。宋墨はその事情を知り、思わず笑みを浮かべます。
宋墨は牢に入る前に届いた紙片から、これが窦昭の手配であることを悟っていました。さらに、宮中で紙を扱う宦官を買収し、皇帝の行動を探ります。その結果、皇帝はこの数日、邬阁老以外とはほとんど面会せず、古い戒尺を見つめたり、清詞を書いたりして過ごしていることが判明します。窦昭は皇帝が蒋梅荪との過去を思い返し、事件の真相を探っていると判断します。
しかし、三日経っても状況が動かず、严朝卿たちは窦昭に不満をぶつけます。窦昭はもう一日待つよう説得しますが、彼らは納得しません。そこで窦昭は彼らを油断させ、部下に命じて严朝卿たちを捕らえ、柴房へ閉じ込めてしまいます。宋墨を救いたい気持ちは同じでも、感情だけで動けば状況を悪化させると考えていたのです。
やがて皇帝は窦世枢を宮中へ呼び、宋墨の処分について相談します。窦世枢の周囲からは宋墨を死罪にすべきだという奏章が相次ぎますが、窦世枢は逆に宋墨を国家の重要な人材だと擁護します。皇帝は窦世枢の能力を評価し、宋墨の処分を彼に任せます。その結果、宋墨と雲陽伯顾玉は特赦によって釈放されることになります。ただし、蒋家一門は流罪を命じられます。
釈放された宋墨を、窦昭は花火で迎えます。さらに自ら披風を掛け、捕らえていた严朝卿も返すと告げます。そして、陈曲水も約束通り返してほしいと頼みます。宋墨は今回、自分が牢から出られたのは窦昭の尽力があったからだと悟り、素直に「ありがとう」と伝えます。その言葉に窦昭は嬉しそうな表情を浮かべます。
帰宅した宋墨は、家族のもとへ戻ります。しかし、両親の会話から蒋家との関係を断つべきだという話を耳にし、複雑な思いを抱きます。蒋蕙荪は傷ついた宋墨を心配し、身の回りを支えてくれる女性を見つけるよう勧めます。宋墨の脳裏には、あの仮面をつけた少女と耳の後ろに咲く花の姿が浮かびます。蒋蕙荪は、その相手が窦昭ではないかと察しますが、宋墨は明確には認めません。それでも蒋蕙荪は、窦昭が情に厚く義理堅い女性であることを評価します。
一方、邬善は窦昭への想いを貫くため、大雨の中で祖父・邬阁老に婚姻を拒む意思を示します。もともと肺病を抱えていた邬善は高熱を出し、薬も医者も拒み続けます。宋墨たちは李太医が帰京するのを待ちますが、そこへ現れたのは、なんと大きな斗篷をまとった窦昭でした。
窦昭は李太医に成り代わり、邬善を治療するために邬家へ入ります。邬阁老は邬善が自分のために苦しんでいることに気づきながらも、邬家の未来を背負わせるため厳しく接します。邬善の木工作品を壊すほど怒りを露わにする邬阁老でしたが、窦昭の登場によって、邬善の心にも少しずつ変化が生まれようとしていました。
















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