九重紫

九重紫

九重紫 25話・26話・27話・28話・29話 あらすじ

九重紫 2024年 全34話 原題:九重紫

第25話の見どころ

宋墨の出生と両親に隠された衝撃の秘密が明らかになり、物語は大きく動き始めます。舒瑶と宋宜春の過去、蒋蕙荪との因縁を知った宋墨は、父を殺そうとするほど激しく追い詰められます。そんな彼を命懸けで止めたのが窦昭でした。さらに宋墨が猛毒「怨憎会」に侵され、余命に関わる重大な事実も判明。絶望の中でも窦昭は彼に寄り添い続けます。二人が夜空の花火を見つめながら交わす言葉が、夫婦の深い愛情を際立たせる感動的な回です。

 

第25話 あらすじ

窦昭は紀咏とともに万佛寺を訪れ、宋宜春と舒瑶、そして蒋蕙荪の間に隠された真相を確かめようとする。しかし、二人がどれほど頭を下げて頼んでも、寺の主持は姿を現さず、小和尚から「紅塵の俗事のためなら、これ以上ここで待つ必要はない」と告げられてしまう。

一方、宋墨は舒瑶の住まいへ駆けつけ、そこで首を吊って亡くなった舒瑶と、遺体を抱きしめて泣き崩れる宋宜春を目にする。部下が室内を調べると、精巧な璎珞が見つかる。それは宋翰が焼いてしまった平安符の璎珞と酷似していた。宋墨に問い詰められた宋翰は、父が舒瑶をここへ連れてきた際、彼女から贈られたものだと認める。自分はそれを受け入れたくなくて焼いてしまったと明かし、父をこれ以上追及しないでほしいと宋墨に懇願する。しかし宋墨は真相を明らかにする決意を変えない。たとえ舒瑶が亡くなっても、母のために最後まで調べると宣言し、宋翰を連れていく。

調査を進める中で、宋墨は宋宜春と舒瑶にはかつて深い愛情があったのではないかと考え始める。舒瑶一家が罪に落とされた際、宋宜春が二度も彼女を訪ねていた記録も残っていた。さらに宋翰が父に対して抱く強い怒りも、その推測を裏付けていた。罪籍となった舒瑶を救うことは容易ではなく、その背後には大きな権力が関わっていると宋墨は確信する。

その頃、紀咏は主持との面会を求め、自ら前に出る。ようやく姿を現した主持に対し、窦昭は二家の名誉を守るため、すべてを話してほしいと訴える。すると主持は、かつて万佛寺に蒋蕙荪と舒瑶が同時に訪れたことを語り始める。舒瑶は生後一か月ほどの男児を抱えていた一方、蒋蕙荪は早産となり、寺で女児を出産したという。しかし宋宜春は、蒋蕙荪が男児を産んだと主張していた。この証言は、宋墨の出生にまつわる大きな秘密を示していた。

宋墨は宋宜春に子供の行方を問いただすが、父は頑として口を閉ざす。ついに宋墨は舒瑶の遺体を持ち出し、その骨を使って宋翰の身元を確かめると迫る。追い詰められた宋宜春は、ようやく舒瑶との過去を告白する。二人は深く愛し合っていたものの、蒋梅荪が兵を率いて舒瑶の家を捜索したことで、彼女は罪籍へ落とされた。その後、皇帝の命によって蒋蕙荪と結婚することになり、宋宜春は愛する女性を救えないまま人生を送ることになった。そして彼は、人生で最も後悔していることは蒋蕙荪との間に宋墨をもうけたことだと語る。

しかし宋墨は、それだけでは説明がつかないと考える。舒瑶を罪籍へ追いやった背後に別の黒幕がいるはずだと迫るが、宋宜春は最後まで口を割らない。激怒した宋墨は父を庭に縛り、柴を積んで焼き殺そうとする。宋翰は父を救うため跪いて懇願するが、宋墨は聞き入れず、宋翰を拘束する。

そこへ突然激しい雨が降り、火は消される。宋宜春は、宋墨が蒋蕙荪への復讐に走ることは許されないと嘲笑する。一方、宋墨は母が薬の相克によって命を奪われたことを指摘し、罪を認めるよう迫る。だが宋宜春は薬理など知らないと否定する。さらに宋墨が以前受けた鞭打ちの際に毒を受けており、その毒が徐々に身体を蝕んでいると明かす。すでに一本の白髪が生えたことも、毒が進行している証だという。

宋墨が父を殺そうとしたその瞬間、窦昭が駆けつける。彼女はためらうことなく刀を素手でつかみ、宋墨を止める。傷ついた手から血を流しながらも、窦昭は「どんなことがあっても、あなたと一緒に歩いていく」と伝える。宋墨は彼女の傷を見て深い自責の念に駆られる。

その後、皇帝から召喚の命令が届く。皇帝は太医に宋墨を診察させ、彼が「怨憎会」という毒に侵されており、現時点では解毒方法がないことを知る。皇帝は激怒すると同時に宋墨を深く案じ、太医たちに一年以内に必ず解毒薬を見つけるよう命じる。さらに宋宜春には鞭打ちの刑を下し、兵馬司の職を解く。宋宜春は宋翰の将来を心配して嘆き悲しむ。

窦昭は紀咏に助けを求める。紀咏は口では宋墨のことなど気にしていないと言いながらも、窦昭の傷のために薬を用意し、きちんと治療するよう言い聞かせる。そんな中、宋墨は橋の上から人々の暮らしを眺め、自分に残された時間が限られていることを悟る。たとえ長く生きられなくても、残された時間を窦昭とともに過ごせるなら、それだけで十分だと思うようになる。

しかし、陳嘉から新たな情報が届く。連れてこられた吕正は、かつて蒋蕙荪の屋敷から女児が運び出され、宋宜春からその子供の世話を頼まれたものの、ほどなく亡くなったと証言する。宋墨は、これまで宋宜春が取ってきた行動の裏には、単なる家族間の怨恨ではなく、謀反につながる巨大な計画があるのではないかと推測する。

牢にいる宋宜春を訪ねた宋墨は、すべてを明かさなければ宋翰も黒幕に利用されると警告する。宋宜春はその言葉に初めて動揺する。宋墨は、父がすでに黒幕にとって捨てられた駒であり、黙ったまま死んでも宋翰が助かる保証はないと迫る。その後、宋墨は牢の外でこちらを監視する謎の女の姿を目撃する。一方、宋宜春は突然発作を起こし、薬を飲むことで症状を抑える。

窦昭は宋墨を訪ね、彼が自分の傷を気にしていることに気づく。宋墨は、今後同じようなことが起きても、二度と自分を止めるために傷つかないでほしいと願う。両親について何も信じられなくなった宋墨に対し、窦昭は、定国軍が彼を尊敬していることも、蒋梅荪が彼を育てたことも、蒋蕙荪が彼を愛していたことも、すべて偽りではないと伝える。そして、これからはどんな苦しみも一人で抱えず、自分にすべて預けてほしいと優しく励ます。

夜、二人は川辺で花火を眺める。宋墨は、美しいものほど一瞬で消えてしまうのだと寂しげにつぶやく。しかし振り返ると、窦昭の姿が消えている。心配していると、窦昭は手に花火棒を持って現れ、その一本を宋墨へ差し出す。「美しい時間は短くても、こうして手の中に残すことはできる」と伝える窦昭。その言葉に宋墨は彼女の想いを理解し、笑顔を取り戻す。二人は肩を寄せ合い、手の中で輝く小さな花火を見つめながら、限られた時間を大切に生きることを誓うのだった。

 

第26話の見どころ

宋墨の余命がわずか一年だと知った窦昭は、残された時間を「一生」として生きたいと真っすぐに想いを伝えます。二人はついに互いの胸の内を明かし、夫婦として幸せを築く決意を固めます。一方、宋翰は父・宋宜春の死の真相を知りながら沈黙を続け、やがて父の遺志を継ぐような不穏な笑みを浮かべます。宋墨が英国公の爵位を継ぐ中、兄弟の対立は新たな局面へと突入します。

第26話あらすじ

庭では、赵璋如が陈嘉から武術を教わっていた。最初は不慣れな様子を見せながらも、赵璋如は真剣に稽古へ取り組み、陈嘉も根気強く彼女を指導する。その様子を見守っていた宋墨は、陈嘉こそ赵璋如に最もふさわしい相手だと考えていた。窦昭はそんな宋墨の自信に満ちた様子を見て、二人の関係がどうなるか賭けてみようと提案する。期限は半年。二人は楽しみながら赵璋如の恋の行方を見守ることになる。

一方、宋翰は街で苗安素と偶然再会する。店の片付けに追われる苗安素の額に汗が浮かんでいるのを見た宋翰は、以前も渡した手巾を差し出す。苗安素は「これで二度目ですね」と笑い、宋翰を自分の苗圃へ案内する。花々に囲まれた穏やかな時間の中で、苗安素は宋翰に一鉢の花を贈る。緊張感の漂う宋家の中で、二人の交流だけがひとときの安らぎとなっていた。

その頃、宋墨は窦昭のために自ら料理を作り、さらに自分の財産までも彼女に預けようとする。窦昭は突然の変化に何か事情があるのではないかと不安になるが、宋墨は結婚した以上、夫婦の財産は一つにすべきだと冗談めかして説明する。窦昭も「これからは穏やかに暮らして、子供も何人か欲しい」と未来を語る。しかし、その夜、窦昭は宋墨の髪に増えた白髪を見つけ、胸の奥に不安を覚える。

翌朝、陆鸣と严朝卿が宋墨の病状を心配して話しているところを窦昭に聞かれてしまう。二人は慌ててごまかすものの、窦昭は宋墨に何か重大な秘密があることを確信する。彼の心を少しでも明るくしたいと考えた窦昭は、二人が初めて一緒に見た芝居『罗衫记』を書き直し、主人公たちが困難を乗り越えて幸せな家庭を築く物語へと変えていた。それは、自分たちも同じように生きたいという窦昭からの愛の告白だった。

しかし宋墨は、そんな窦昭の願いをあえて拒絶する。窦昭は彼を追いかけ、ついに「あなたの命はあと三年なのか」と問い詰める。宋墨は隠しきれず、残された時間は一年しかないと打ち明ける。窦昭は涙をこらえながら、たとえ一年しかなくても、その一年を一生分の時間として二人で生きたいと告げる。彼女の真っすぐな愛に宋墨も心を動かされ、二人はついに互いの想いを確かめ合う。宋墨は、かつて夢の中で灯りを掲げ、自分を導いてくれた女性が窦昭だったと語り、彼女に幸せな家庭を与えたいと誓う。

一方、赵璋如と苗安素が芝居を楽しむ中、纪咏は複雑な表情を浮かべていた。彼の言葉から、二人は紀咏が窦昭に特別な感情を抱いていることに気づく。紀咏は否定するものの、もし宋墨が窦昭を悲しませるなら、自分が彼女を連れていくと意味深な言葉を残す。

その頃、苏琰は黒い斗篷をまとって宋宜春を訪ね、一枚の絵を渡す。そこには宋翰を人質として宋宜春を操る意図が隠されていた。宋宜春は追い詰められ、彼らの要求に従わざるを得なくなる。

さらに、舒瑶が亡くなる前日に宋翰を訪ねていたことが判明する。猫がいなくなったことで異常なほど取り乱す宋翰を見た宋墨は、何かを隠していると疑う。猫を連れてきて問い詰めると、宋翰はついに、父・宋宜春から母へ薬を届けるよう命じられていたこと、その薬が毒だったことを知ったと告白する。自分まで毒殺されるのを恐れた宋翰は、猫を使って薬の安全性を確かめていたのだ。

しかし宋翰は、真実を話せば家族が完全に崩壊すると恐れ、長い間沈黙していた。宋墨が宋翰を帰した直後、突然鼻血を流して倒れてしまう。窦昭は必死に診察するが原因を特定できず、宋墨は医師を呼ぶことさえ拒む。窦昭は蒋蕙荪の死の前に大量の甘草が屋敷へ運び込まれていたことを突き止めるが、事件の真相はなお霧の中だった。

その夜、宋翰は母の死と舒瑶の最後の姿を何度も思い出し、眠れぬ夜を過ごす。自分が「奸生子」ではなく、正当な二公子であると信じたい彼の心には、複雑な感情が渦巻いていた。

やがて皇帝から宋墨に二つの勅命が届く。一つは、宋墨が刀を携えて朝廷に入ることを許すもの。そしてもう一つは、獄中の宋宜春が罪を認め、重病の末に死亡したという知らせだった。宋墨は父の葬儀に立ち会うものの、最後の対面をもって父子の情を断ち切る。そして、自分には亡き母だけが残ったと心に決める。

ところが宋宜春の死の裏には、さらに恐ろしい真実が隠されていた。宋翰は獄中で父と会い、父が最後に口にした薬が自分の渡したものだったことを知っていた。宋宜春の死を前にして、宋翰は冷たい笑みを浮かべる。兄にすべてを奪われたように見える彼だったが、実は父が成し遂げられなかったことを自ら引き継ぐ決意を固めていた。

その後、皇帝は宋墨に英国公の爵位を継がせる。爵位継承の場では、これまで宋墨と窦昭に敵対していた大伯一家まで露骨に取り入ろうとする。しかし宋墨は彼らの態度に惑わされず、大伯母が窦昭のために用意した衣服さえ受け取ろうとしない。

夫婦がその場を去ると、宋翰は兄に代わって皆に謝罪するような姿勢を見せる。だが、丁寧に説明すればするほど、周囲の不満はかえって高まっていく。そんな人々の反応を見つめながら、宋翰の顔には不気味な笑みが浮かんでいた。宋墨が新たな英国公として歩み始める一方、宋翰もまた、静かに次なる一手を動かし始めていた。

 

第27話の見どころ

庆王の野心がついに朝廷の内外を巻き込み、宋墨を巡る皇太子との駆け引きも激しさを増していきます。窦昭は皇后から贈られた「雪元丹」を巡って大胆な決断を下しますが、薬には思わぬ秘密が隠されていました。一方、宋翰は庆王に接近し、自らを宋墨を倒すための「最も予想外の駒」と売り込みます。さらに窦世枢まで科挙を利用しようと動き始め、宮廷の権力争いは新たな局面へ突入します。

第27話あらすじ

辽东に駐屯する庆王は、開市によって莫大な利益を得るだけでなく、朝廷の官僚たちにも積極的に人脈を広げていた。その中には窦世枢の姿もあった。しかし、庆王の動きは皇帝の目を欺くことができない。皇帝は皇太子を呼び寄せ、窦世枢をどう見るべきか尋ねる。皇太子は、庆王と関わっているからといって窦世枢を切り捨てるべきではないと答え、彼には才能があり、何より朝廷の安定を優先すべきだと進言する。皇帝はその答えに満足し、かねてより皇太子のために宋墨という「剣」を用意していたことを明かす。あとは、その剣をどう握り、どう使うかが皇太子に託されていた。

一方、窦昭は宋墨の髪を染めながら、現在の朝廷情勢を分析する。皇太子が宋墨を監視していたのは、皇位を守るための当然の行動だった可能性が高い。しかし庆王は、辽东で自給自足できるほどの基盤を築き、兵馬を動かせる窦世枢まで味方につけている。流寇の騒動に乗じて一部の将兵をすり替えた可能性もあり、最終的には皇帝を拘束して皇位を奪うつもりではないかと二人は推測する。宋墨は皇太子の真意を確かめるため、密かに人を送り監視させる。

そんな中、窦昭は淑德皇后から宮中へ呼ばれ、皇后、公主、太子妃らと馬吊を楽しむことになる。窦昭は慎重に立ち回り、結果的に三者が勝ち、一人だけが負けるという巧妙な結果に導き、皇后を感心させる。帰り際、皇后は窦昭を呼び止め、宮中で使う紙について尋ねる。しかし、その真の目的は「雪元丹」を贈り、窦昭を取り込むことだった。

雪元丹は死者さえ蘇らせると噂される貴重な薬で、宋墨の病を治すためには極めて魅力的なものだった。しかし、これを受け取れば皇后、そして庆王側に従うことを意味する。窦昭は毅然として受け取りを拒否する。ところが帰宅後、窦昭は雪元丹が庆王府へ運ばれる途中で奪い取らせ、宋墨のために手に入れるという大胆な行動に出る。宋墨は彼女の覚悟に感謝し、家族を守るためなら決して愚かな忠義に走らないと誓う。

しかし、窦昭は前世の記憶から、庆王側にいた宋墨が雪元丹を使っても白髪のままだったことを思い出す。この薬は病を治すものではなく、むしろ毒が含まれている可能性があるのではないか。急いで調べると、確かに解毒作用はあるものの、根治には至らないことが判明する。さらに、二人が灯籠見物に出かけた後、薬を試すために残していた液体の色が変化する。窦昭は、雪元丹が宋墨の命を一時的につなぐだけの薬だと悟り、胸を痛める。

一方、淑德は窦世枢の庆王への加担を知り、彼に手を引くよう説得する。窦世枢は、今の自分を作ったのは他ならぬ淑德だと告げる。かつて県丞だった彼は、能力を認められず苦しみ、辞官して再び試験を受けようとした。しかし淑德はそれを許さず、推薦状を書いて県令への道を与えた。その時、淑德から「まず強くなれ。力を持たなければ理想も尊厳も守れない」と教えられたことが、現在の窦世枢を生み出したのだった。彼は出世のためなら手段を選ばない人物へと変貌し、今では庆王に全てを捧げようとしていた。

その頃、窦昭と宋墨は灯籠を見に出かける。窦昭は赵璋如が男と一緒にいるのを見つけ、後を追おうとするが、宋墨は二人の約束を尊重すべきだと止める。やがて赵璋如が足をくじくと、陈嘉が彼女を背負って歩く姿が二人の前に現れる。陈嘉は隠さず事情を説明し、その誠実な態度に窦昭も好感を抱く。二人は邪魔をせず、灯籠見物を続けることにする。

一方、苗安素は宋翰に菓子を贈り、宋翰は暖炉を返して彼女の手を温めようとする。苦しい時にいつも寄り添ってくれる苗安素に、宋翰も少しずつ心を開いていた。しかし夜になると、宋翰は黒い斗篷をまとい、誰にも告げず馬で屋敷を出る。

宋翰が向かった先は庆王のもとだった。彼は自ら庆王の配下になりたいと申し出、自分こそ宋墨を倒すための最も予想外の駒だと語る。庆王は疑いの目を向け、突然矢を放つ。宋翰は矢をつかむものの手を負傷する。その覚悟を認めた庆王は、宋翰が会試を突破すれば重用すると約束する。

さらに庆王は纪咏を訪ね、宋翰が自分のもとへ来ることを予測していたと語る。二人とも庶子という立場にあり、名を上げるためには互いに利用価値があると考えていた。庆王は金銀財宝を贈ろうとするが、纪咏はそれを嫌い、一度は席を立とうとする。庆王は慌てて非礼を詫び、どうにか関係を保つ。

庆王は宋墨を取り込めなかったため、今度は宋翰を利用することにした。宋翰を使えば、仮に問題が起きても「宋家の内輪の争い」として処理でき、庆王にとっては都合のよい駒だった。

そして科挙を前に、窦世枢が試験の主考官に任命される。ところが同じ阁老である沐大人の息子も受験予定だった。文才に乏しい息子を何とか合格させたい沐阁老は窦世枢に便宜を図るよう頼み込む。武科は実力勝負のため露骨な不正は難しいが、文科なら手を加えられる――。窦世枢はその要求を受け入れ、科挙そのものを権力者たちの駆け引きの場へと変えようとしていた。

 

第28話の見どころ

宋翰が科挙と武科の両方で頭角を現し、ついには宋墨との一騎打ちにまで挑む激動の回です。さらに宋翰は公主との縁談を望みますが、皇后の思惑によって苗安素が公主に封じられ、二人は思わぬ形で夫婦となります。一方、窦昭は宋墨の病を案じながら、宋翰の背後に蠢く陰謀を警戒。宋翰と苗安素の関係にも変化が生まれる中、遼東で勢力を拡大する慶王の不穏な動きも明らかになり、宮廷の権力争いがさらに激化していきます。

第28話あらすじ

科挙と武科の試験が行われる中、沐閣老の息子は文科では順調に勝ち進み、武科でも幸運に恵まれて勝利を重ねていきます。すっかり自信をつけた彼でしたが、そこへ宋翰が登場すると状況は一変します。宋翰は圧倒的な実力で相手を打ち破り、ほとんど戦闘不能に追い込むほどの強さを見せつけます。その見事な勝利に朝廷中から称賛が集まり、皇帝も「将門の後継者として非凡な才能を持つ」と宋翰を高く評価します。しかし、その一方で沐閣老は息子を負傷させられたことに激怒し、窦世枢への疑念を募らせます。

勢いに乗った宋翰は、兄である宋墨にも勝負を挑みます。宋墨はためらうことなく申し出を受け入れ、二人は大勢の見守る中で剣を交えることになります。戦いの最中、宋墨は宋翰の背後に窦世枢の存在があることを敏感に察知します。宋翰にとって今回の勝負は、自らの将来を切り開くための重要な機会であり、もしここで敗れれば窦世枢の期待を裏切ることにもなります。

当初は勢いに勝る宋翰でしたが、徐々に宋墨が優勢となります。追い詰められた宋翰は、宋墨の情に訴える心理戦を仕掛けます。「自分から唯一の出世の機会を奪うつもりなのか」と問いかけ、宋墨の心を揺さぶります。宋墨が一瞬ためらった隙を突き、宋翰は反撃。結果は引き分けとなりますが、宋墨は剣先で頬を切られ、傷を負ってしまいます。

試合後、沐閣老は窦世枢を問い詰め、息子をわざと宋翰と戦わせたのではないかと追及します。窦世枢は最初こそ言い訳をしますが、もはや隠し通せないと悟ると、堂々と本性を露わにします。沐閣老を敵に回すことも恐れず、自分の目的のためなら手段を選ばない姿勢を示すのでした。その一方で、皇帝は宋翰の才能を認め、彼に官職を授けます。しかし宋翰はそれだけでは満足せず、さらに景玉公主との縁談を自ら願い出ます。

皇帝はその場では明言を避けながらも、宋翰を公主の夫にすることを考え始めます。ところが景玉公主本人は宋翰との結婚を望んでいません。祝宴の席で屏風に詩を書き、自分の意思を遠回しながらも明確に示します。その結果、宋翰は公主から拒絶された形となり、面目を失ってしまいます。

皇后もまた公主を宋翰に嫁がせることに反対します。そこで皇后が目をつけたのが、窦昭の側近として働いてきた苗安素でした。皇后は苗安素を公主に封じることで、窦昭と苗安素の関係に亀裂を生じさせようと企みます。皇帝はその思惑を知らぬまま、苗安素を公主に封じることを認めます。

突然の冊封に苗安素は喜ぶどころか戸惑い、すぐに宋翰のもとへ向かいます。自分は本物の公主とは違い、皇帝が一時的に体裁を整えるために利用されているだけだと考え、二人で皇帝に撤回を願い出ようとします。しかし宋翰には別の考えがありました。彼は苗安素に「自分なら、あなたを本当の意味で公主にできる」と告げます。そして自ら身に病があると偽り、結婚できないという奏折まで用意していました。

宋翰は自分の弱さを苗安素に見せることで、彼女の心を揺さぶります。もともと宋翰に寄り添ってきた苗安素は、その言葉に心を動かされ、ついに彼との結婚を受け入れます。こうして二人は夫婦となり、苗安素には公主として多くの贈り物が届けられるようになります。

しかし、苗安素の弟・苗安平は財宝を独占しようとし、宋翰が庶子であることを理由に侮辱します。宋翰は怒りを抑えながらも、公主の財産なのだから自分には関係ないと大人しく振る舞います。そこへ皇后の命を受けた蘇琰が現れ、苗安平を厳しく処罰します。

婚礼の日、窦昭と宋墨も二人を祝福するために訪れます。窦昭の姿を見た苗安素は心から喜びます。一方、紀咏は窦昭を呼び止め、宋墨のそばを離れて危険な争いから逃れるよう説得します。しかし窦昭は拒否します。宋墨に残された時間が少ないことを知っているからこそ、どんな運命が待っていても最後まで彼のそばにいると決意していたのです。

婚礼を終えた宋翰は、街中で人々から「庶子」と陰口を叩かれていることに気づきます。帰宅すると、苗安素が酒に何かを混ぜている姿を目撃し、警戒心を強めます。交杯酒の際にも酒を捨て、苗安素が自分を害そうとしているのではないかと疑います。さらに苗安素が背を向けてほしいと言ったことで、宋翰は彼女が殺そうとしていると勘違いし、思わず首を絞めてしまいます。

しかし、苗安素が差し出したのは、宋翰から初めてもらった大切な手巾でした。それを今も大切に保管していると知り、宋翰はようやく自分の誤解に気づき、必死に謝罪します。翌日、二人は宋墨と窦昭を訪ねます。蘇琰が窦昭に苗安素への跪礼を強要しようとしますが、苗安素自身が先に跪いて窦昭に挨拶します。窦昭は彼女を立たせ、これからは姉妹のように仲良くしようと優しく声をかけます。

その後、宋翰は苗安素を後院へ連れていきます。そこで二人は、以前まで苗安素が窦昭を支えるためにしていた仕事についての侍女たちの不満を耳にします。身分が変わったことで、かつてのように窦昭を支える人がいなくなったことを知り、苗安素は複雑な表情を浮かべます。宋翰はそんな彼女の気持ちを察し、そっとその場から連れ出します。

互いに「周囲から理解されにくい立場」にいることを知った二人は、次第に心を通わせていきます。宋翰は苗安素を大切にすると誓い、二人は抱き合います。

一方、宋墨は遼東を監視させ、慶王の動向を探っていました。調査の結果、慶王は毎年の収穫のうち三割を国庫に納める一方、七割を自らの懐に入れていることが判明します。窦昭もこの巨額の資金が単なる私利私欲ではなく、兵力を維持し、将来的な謀反に備えるためのものではないかと推測します。

宋墨も同じ危機感を抱き、慶王が着々と力を蓄えていることを警戒します。宋翰、窦世枢、慶王――それぞれの思惑が複雑に絡み合う中、宋墨と窦昭の前には、さらに大きな宮廷の陰謀が迫りつつありました。

 

第29話の見どころ

宋翰の巧妙な策略によって、苗安素と窦昭の間に初めて大きな亀裂が生じます。しかし、その後窦昭の妊娠が判明し、二人は再び心を通わせることに。一方、窦昭は紀咏から慶王の陰謀を知らされ、ついに彼との決別を決意します。さらに宋翰は苗安素の弟・安平を巧みに罠へ誘い込み、死へと追いやるという恐ろしい行動に出ます。愛情を装いながら着々と周囲を操る宋翰の本性が、いよいよ明らかになっていきます。

第29話あらすじ

宋翰は苗安素の優しさと情の深さを利用し、巧妙な芝居を始めます。自ら何杯ものスープを作ると、「本来なら母が嫁に作るものだが、母はもう亡くなっているから自分が代わりに作る」と語り、さらに亡き宋宜春の位牌まで傍らに置きます。まるで父を心から慕う孝行息子であるかのような振る舞いに、苗安素はすっかり心を動かされます。そして、罪人となった宋宜春の位牌を宋家の祠堂に安置することまで許してしまいます。

しかし、陳曲水や素蘭は、罪臣の位牌を祠堂に置けば宋家全体に災いが及ぶと考え、必死に反対します。ところが宋翰にすっかり感情を操られている苗安素は、素蘭が宋翰に無礼を働いたと受け取り、逆に彼女を責めてしまいます。素蘭は、以前と今では苗安素の立場が違うからこそ、自分自身の本質を忘れてはいけないと忠告します。しかし、その言葉が苗安素の怒りを招き、宋翰や蘇琰の煽動も重なって、苗安素は素蘭を打たせてしまいます。

そこへ窦昭が駆けつけ、素蘭を助けます。さらに蘇琰が窦昭を侮辱するような言葉を口にしたため、窦昭は怒って彼の頬を叩きます。宋翰は苗安素の立場を守るため、自分を責めるように何度も自らの頬を叩きます。それを見た苗安素は、宋翰はただ父を弔いたいだけだと信じ込み、窦昭に反発してしまいます。窦昭は怒りと悲しみのあまり気を失い、宋墨が慌てて彼女を抱えて運びます。

盧院判に診てもらった結果、思いがけない事実が判明します。窦昭は妊娠していたのです。宋墨は大きな喜びを感じる一方、窦昭の身体をこれまで以上に心配します。

苗安素は自分が窦昭を傷つけてしまったことを深く後悔します。そんな彼女に対し、宋翰は優しく外套を掛け、慰めるふりをしながら、さらに「素蘭のほうが窦昭にとって大切なのではないか」と不安を煽ります。苗安素は寺へ赴き、窦昭のために祈りを捧げます。その姿を偶然見た窦昭は、苗安素の本心を理解し、二人はようやく和解します。

窦昭は苗安素に、宋翰の言葉をすべて信じてはいけないと忠告し、これまで自分が知った宋翰の秘密を伝えようとします。しかし、宋翰が現れ、苗安素を連れていってしまいます。

その後、窦昭は宋翰と二人きりで向き合い、彼が善良な夫を演じているだけであることを見抜いていると告げます。そして、苗安素の愛情を裏切らず、これ以上人を利用するような真似をしないよう警告します。しかし宋翰は反省するどころか、窦昭を「すべてを裁ける天道のように振る舞っている」と皮肉り、自分のことに干渉しすぎれば自ら災いを招くと挑発します。

一方、以前から治療を続けていた栖霞がついに意識を取り戻します。紀咏の治療によって回復した栖霞を見た窦昭は安堵し、今後も屋敷で働いてもらうことにします。紀咏はさらに窦昭に「鬼門十三針」を教えることを申し出ます。しかし窦昭は、これが最後の授業になるのではないかと感じ、紀咏に別の目的があるのではないかと問い詰めます。

窦昭はついに慶王の存在を口にします。紀咏はもはや隠し通せないと悟り、窦昭を二人が初めて出会った洞窟へ連れていきます。そこで窦昭は、砕けた鏡を前にして紀咏が自分の理想を語る姿を目にします。紀咏は山河を立て直し、最も信頼する人物を皇帝の座につけたいと考えていたのです。

窦昭は、かつて京城へ流寇を侵入させた事件にも紀咏が関わっていたのではないかと問い詰めます。人命を駒のように扱ったことを責め、自分の命さえも犠牲にするつもりだったのかと問いかけます。紀咏は窦昭を死なせるつもりはなく、彼女を犠牲にすることも決してないと答えます。しかし、窦昭の周囲に誰が慶王側の人間なのかについては口を閉ざします。

その態度に失望した窦昭は、紀咏との友情を断ち切ります。感情が大きく揺さぶられた彼女は、その場で突然倒れてしまいます。紀咏が助けようとした瞬間、宋墨が現れ、窦昭を抱き上げます。さらに宋墨は、紀咏が周囲に自分を狙う者を潜ませていたことにも気づきます。それでも紀咏は部下に攻撃を止めさせ、二人を逃がします。そして宋墨に、自分の死期が近づいたときには窦昭を巻き込まないため、離縁状を用意しておくよう忠告するのでした。

その頃、苗安素は眠っている宋翰に外套を掛けようとします。しかし宋翰は突然目を覚まし、反射的に剣を振るって苗安素の首を傷つけてしまいます。正気を取り戻した宋翰は激しく後悔し、彼女を抱きしめて謝罪します。苗安素は彼を責めず、自分の膝に頭を預けさせ、優しく落ち着かせます。宋翰はその腕の中で「母上」と呟き、苗安素はますます彼を哀れに思うようになります。

翌朝、宋翰は苗安素の傷を見て胸を痛め、彼女の額にそっと口づけます。苗安素もそれに応え、二人はようやく夫婦として心を通わせます。

しかし、苗安素が実家へ戻ると、弟の安平が商売を始めるため資金を集めていることを知ります。安平には商才がないと判断した苗安素は強く反対しますが、両親から逆に責められ、家業は安平のものなのだから自分は代わりに管理していただけだと言われてしまいます。口論の末、苗安素は押されて転倒します。その一部始終を、隠れていた宋翰が見ていました。

宋翰はその後、安平を醉仙楼へ誘い、彼に花魁を紹介します。安平は花魁をめぐる争いに巻き込まれ、董其と激しく衝突。最後には階段から蹴り落とされ、命を落としてしまいます。

その頃、家で刺繍をしていた苗安素は指を針で刺し、滴り落ちる血を見て、なぜか強い不安を覚えます。ほどなくして、安平の遺体が屋敷へ運び込まれます。弟を失った苗安素は悲しみに崩れ落ちます。

雪が降りしきる中、宋翰は傘を差して彼女に寄り添い、犯人はすでに捕らえたと告げます。しかし、すべてが偶然ではなく、宋翰自身が仕組んだ結果であることは誰も知りません。

苗安素は「もう自分には弟しかいなかった」と泣き崩れ、両親も悲しみのあまり倒れてしまいます。宋翰はそんな彼女を強く抱きしめ、「これから先、たとえ最後に残るのが自分一人になったとしても、決して離れない」と誓います。

しかしその言葉の裏側には、苗安素を自分だけに依存させ、周囲から切り離していく宋翰の恐ろしい計算が隠されていました。彼の優しさが本物なのか、それともさらなる陰謀のための仮面なのか――物語はますます緊迫した局面へと突入していきます。

 

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