荊棘(いばら)の花~奪われた私~

荊棘(いばら)の花~奪われた私~

荊棘(いばら)の花~奪われた私~ 18話・19話・20話・21話・22話(最終回) あらすじ

荊棘(いばら)の花~奪われた私~ 2024年 全22話 原題:披荆斩棘的大小姐

第18話の見どころ

徐程風と沈丹青は、宝の地図の鍵を握る欧陽先生を訪ねる旅へ。しかし二人きりの旅路は互いの距離を縮める一方、丹青は「自分が彼を不幸にするかもしれない」という不安から、あえて距離を置こうとします。一方、羅雪児は杜影児に近づき、新たな嘘で羅愛蓮の名誉を傷つけ始めます。物語の終盤では、沈丹青が幻の名酒「月下逢」を見事に再現し、欧陽先生の心を動かすことに成功。そして杜影兒が沈丹青の部屋で羅季達と彬児の位牌を目にし、新たな波乱の幕が上がります。

第18話「沈丹青、幻の酒『月下逢』を醸す」

徐程風は欧陽先生のもとへ向かう旅のため、沈丹青に道中で食べられる菓子を用意して待っていた。

ようやく二人きりで出掛けられると思っていた矢先、沈自山も同行すると知り、思わず肩を落とす。

その様子に沈丹青は苦笑するばかりだった。

一方その頃、杜影兒は遠縁の従兄・杜若山の死について調べていた。

彼女は若山に淡い恋心を抱いており、その死には今も納得できずにいた。

さらに調べるうち、事件には羅家の娘が関わっていたことを知る。

羅家の娘は一人が死亡、一人は行方不明、もう一人は酒楼で働いているという。

杜影兒は以前助けた酒楼の娘が羅雪児だったことを思い出す。

その矢先、街で財布を盗まれそうになった杜影兒を、偶然通り掛かった羅雪児が助けた。

財布を取り返してもらった杜影兒は礼を述べ、自分が杜若山の親族であり、彼を慕っていたことを打ち明ける。

「若山は本当はどうして亡くなったの?」

そう尋ねられた羅雪児は、再び巧みに嘘を重ねた。

「若山様は霜霜を想っていました。」

「それを妬んだ羅愛蓮が夜中に呼び出し、口論になったのです。」

「その最中に若山様は持病で亡くなりました。」

さらに彼女は続ける。

「父・羅季達は責任を取るため私を冥婚へ嫁がせようとしました。」

「しかし羅愛蓮は父を殺し、その後の火事で自らも命を落としたのです。」

「証人も証拠も、すべて炎の中で消えました。」

杜影兒はその話を信じ込み、

「愛蓮も自業自得だったのね。」

とため息をつく。

しかし羅雪児を責めることはなく、彼女と友人になりたいと申し出た。

その後、沈丹青は仕立て上がった衣服を杜影兒へ届ける。

そこで影兒は、新しく知り合った酒楼の娘・羅雪児の話を楽しそうに語った。

「今はとても苦労しているの。」

「もし機会があれば助けてあげて。」

沈丹青は笑顔でうなずきながらも、心中では警戒を強めていた。

「雪児は影兒と私の関係を知っている。」

「近づいたのは偶然ではない。」

純粋な影兒が利用されることを恐れた沈丹青は、彼女を守ろうと決意する。

沈自山もまた、影兒が聊城へ来た目的が玉の販売だと知り、人知れずその玉をすべて買い取らせるよう手配した。

早く聊城を離れれば危険に巻き込まれずに済むと考えたのである。

その夜、徐程風は沈自山を酒へ誘う。

二人は互いに沈丹青を愛していることを隠さず語り合い、それでも正々堂々と競い合うことを約束する。

やがて沈自山が酔い潰れると、徐程風は天昊と共に彼を将軍府へ運び込み、そのまま縛って眠らせた。

「夜明けまで返すな。」

と天昊へ命じ、自分だけが沈丹青と欧陽先生のもとへ向かう時間を確保する。

翌朝、目を覚ました沈自山は縄で縛られている自分に気付き、

「徐程風、この策士め!」

と怒鳴るのだった。

その頃、徐程風と沈丹青は無事に合流し、欧陽先生の住む村を目指していた。

途中、一軒の宿へ泊まることになるが、空いていた客室は一部屋だけ。

二人は同じ部屋で一夜を過ごすことになった。

夜更け、二人は静かに語り合う。

徐程風は幼い頃から軍営で育ち、十七歳で父を戦場で亡くしたことを明かす。

若くして将軍となった彼は言う。

「兵士の多くは生活のために戦っている。」

「俺が戦う理由は、ただ人々が平和に暮らせる世を守るためだ。」

その言葉を聞いた沈丹青は穏やかに微笑んだ。

「あなたのような将軍がいるから、民は安心して暮らせるのですね。」

しかし街角で、一人の官吏が女性罪人に関わったため命を落としたという告示を目にする。

沈丹青は胸を締め付けられた。

「もし程風が私と関われば……。」

「彼まで不幸にしてしまう。」

そう考えた彼女は、再び徐程風と距離を置こうと決める。

やがて徐程風は誰かに尾行されていることへ気付く。

「怡親王の手先だ。」

目的は顕影水の手掛かりを探ることだった。

欧陽先生の居場所を知られぬよう、二人は巧みに追跡を振り切る。

一方、沈自山は屋敷へ戻ると、改めて影兒の玉をすべて買い取るよう命じる。

本人には決して気付かれないよう念を押した。

やがて二人は欧陽先生の小さな住まいへ到着する。

羅季達の訃報を聞いた欧陽先生は深く肩を落とした。

徐程風は顕影水について尋ねるが、

「そんなものは知らん。」

と冷たく追い返されてしまう。

沈丹青は庭に干された果実を見て、欧陽先生が酒を仕込んでいることを見抜く。

夜、徐程風と共に酒蔵へ忍び込むと、そこでは幻の名酒「月下逢」が醸されていた。

沈丹青は一口味わい、静かに首を振る。

「惜しい……。」

「本物にはまだ半分ほどしか届いていません。」

そこへ欧陽先生が現れ、二人を見つける。

沈丹青は真っすぐに告げた。

「私なら、本当の『月下逢』を造れます。」

もちろん欧陽先生は信じない。

そこで二人は約束を交わす。

「もし本物の月下逢を再現できたなら、顕影水について教えよう。」

勝負が始まった。

徐程風は欧陽先生の相手をしながら碁を打ち、その間に沈丹青は一人で酒造りに没頭する。

羅愛蓮として積み重ねてきた技術を思い出しながら、細かな配合を調整していく。

やがて完成した酒を口にした欧陽先生は驚きの表情を浮かべた。

「これだ……。」

「まさしく本物の『月下逢』だ。」

長年追い求めてきた味が、そこに蘇っていた。

徐程風は感心する一方、不思議に思う。

「なぜ君は、愛蓮しか知らない酒を造れる?」

「どうしてそこまで彼女を知っているんだ?」

沈丹青は答えられず、ただ微笑んでごまかすしかなかった。

その頃、杜影兒は持参した玉がすべて売れ、大喜びで世話になった人々への贈り物を買い集めていた。

沈自山はそれとなく帰郷を勧めようとするが、危うく自分の思惑を見抜かれそうになり、慌てて話題を変える。

杜影兒は最後に、沈丹青が好きだった花を抱えて彼女の部屋を訪ねる。

部屋へ入った彼女は祭壇に目を留めた。

そこには、羅季達彬児の位牌が静かに祀られていた。

杜影兒は驚きの表情で、その位牌を見つめるのだった。

 

第19話の見どころ

ついに徐程風が沈丹青の正体が羅愛蓮であることを確信し、彼女の過去もすべて受け入れて愛を誓います。一方、沈自山は妹を想う気持ちを胸に秘めながらも、二人の幸せを後押しする苦しい決断を下します。しかし、怡親王は三人の信頼関係を壊すため新たな陰謀を開始。さらに杜影児も沈丹青の正体に疑念を抱き始め、物語は恋愛だけでなく正体暴露の危機へと大きく動き始めます。

第19話「徐程風、羅愛蓮の正体に気づく」

沈丹青は、羅家秘伝の酒「月下逢」の本来の醸造法を欧陽先生へ惜しみなく伝える。

その技に感服した欧陽先生は、長年大切に保管してきた名工・周游の絵を二人へ託した。

「この絵には、顕影水の手掛かりが隠されているかもしれない。」

彼は沈丹青の人柄を信じ、宝ともいえる品を預けるのだった。

一方その頃、杜影児は沈家で見た羅季達と彬児の位牌のことが頭から離れなかった。

さらに沈自山が何度も自分を聊城から帰そうとしていたことも気になっていた。

疑念を抱いた杜影児は、その出来事を羅雪児へ打ち明ける。

話を聞いた雪児は鋭く推理する。

「祠堂で焼け死んだのは、本当に羅愛蓮だったの?」

「もしかすると死んだのは彬児で、愛蓮は生きているのでは?」

さらに彼女は杜影兒へ尋ねた。

「沈丹青の体に火傷の跡はなかった?」

杜影児は思い出す。

以前、沈丹青の首の後ろに大きな火傷跡を見たことがあった。

雪児は確信を深める。

「本物の沈丹青は病で亡くなり、今の沈丹青こそ羅愛蓮よ。」

そして杜影児へ忠告した。

「これからは沈家の言葉を信じないで。」

「自分の目で確かめなさい。」

その頃、欧陽先生のもとを後にした徐程風と沈丹青は帰路についていた。

徐程風は以前から抱いていた疑問を、もう一度口にする。

「どうして君は『月下逢』を造れるんだ?」

沈丹青は答えに詰まる。

すると徐程風は、一つの玉佩を取り出した。

それは羅愛蓮が持っていた玉佩だった。

「これは本来の持ち主へ返す。」

その一言に沈丹青は息をのむ。

さらに徐程風は彼女の首筋に残る火傷跡を静かに見つめる。

これまでの違和感が、すべて一つにつながった。

沈丹青は、羅愛蓮――。

もはや隠し通すことはできなかった。

沈丹青は静かにうなずく。

徐程風は責めるどころか、優しく語りかけた。

「君がどれほど苦しい思いをしてきたか分かる。」

「もう私の前で無理に沈丹青を演じなくていい。」

彼は続ける。

「君が沈丹青でも羅愛蓮でも、私の気持ちは変わらない。」

「これからは私が君を守る。」

そして真っすぐ彼女を見つめながら告げた。

「私はずっと君を愛している。」

その言葉に、沈丹青は思わず涙ぐむ。

ようやく自分を受け止めてくれる人が現れたのだった。

二人が沈家へ戻ると、沈自山が迎える。

徐程風は周游の絵を広げ、欧陽先生から聞いた話を説明した。

「この絵に顕影水の秘密がある。」

三人は、周游がかつて訪れた土地を調べれば、宝の在りかへ近づけるかもしれないと考える。

話が終わり、沈丹青が部屋へ戻ると、沈自山は徐程風を外へ呼び出した。

そして突然、その頬へ拳を叩き込む。

「お前だけが彼女の心を手に入れるなんて納得できない。」

長い間、沈丹青を支え続けたのは自分だった。

それでも彼女が愛したのは徐程風だった。

胸に積もった想いが拳となってあふれ出す。

徐程風は反撃しなかった。

「恋に理由はない。」

「彼女が私を選んだことにも理由なんてない。」

「殴って気が済むなら、いくらでも受ける。」

その誠実な態度を見た沈自山は、それ以上手を出さなかった。

その夜、沈丹青は兄へ徐程風との出来事を打ち明ける。

「私の正体を知ったうえで、すべて終わったら妻にしたいと言ってくれたの。」

「兄さんはどう思う?」

沈自山は苦しさを胸に押し込みながら微笑んだ。

「お前が幸せなら、それでいい。」

「私は兄として、お前を応援する。」

妹の幸せを願う兄としての決断だった。

一方、京へ戻っていた怡親王は再び聊城へ現れる。

宗偉から徐程風と沈丹青が二人きりで顕影水を探していたことを聞き、捜索をさらに急がせる。

さらに沈丹青が沈家の養女であるという噂にも興味を示し、沈自山との関係を詳しく調べるよう命じた。

やがて怡親王は酒に酔った沈自山から印鑑を巧みに入手する。

その印で徐程風を告発する偽の上奏文を作り、皇帝へ送ったのだった。

ほどなく徐程風のもとへ勅命が届く。

宝の地図を失った責任を問われ、十日以内に事件を進展させるよう命じられる。

しかも告発したのは身近な人物だという。

徐程風は裏切り者がいるのではないかと考える。

その後、怡親王は沈自山本人の前へ姿を現した。

「君の印で徐程風を告発しておいた。」

「もう彼らは君を信用しない。」

「私と手を組めば、沈家を再び栄えさせてやろう。」

しかし沈自山は毅然と言い返す。

「卑劣なやり方に従うくらいなら沈家は滅びた方がましだ。」

きっぱりと誘いを拒絶する。

帰宅した沈自山は、自ら偽の上奏文の件を二人へ打ち明けた。

「私が騙されて印を使われた。」

だが徐程風は少しも疑わなかった。

「君が裏切る人間ではないことくらい分かっている。」

沈丹青も大きくうなずく。

三人の絆は、怡親王の策では揺るがなかった。

その頃、沈丹青は杜影兒へ糖葫蘆を買っていく。

杜影兒は疑いを胸に秘めたまま、以前と変わらぬ笑顔で受け取る。

そして「帰る前に酒造りを見学したい」と頼み、一緒に丹青酒庄へ向かった。

沈丹青が酒を味見する何気ない仕草――。

その所作は、羅雪児から聞かされていた羅愛蓮の癖とまったく同じだった。

杜影兒は沈丹青を見つめながら静かに思う。

「やっぱり……雪児の言う通りなの?」

親友への疑念は、静かに確信へと変わり始めていた。

 

第20話の見どころ

怡親王との頭脳戦がついに佳境を迎えます。沈自山は敵に寝返ったように見せかけながらも、徐程風と手を組んで大胆な逆転作戦を実行。忠義を貫いた宗偉は、主君に見捨てられた末に壮絶な最期を迎えます。一方、沈丹青と徐程風はついに互いへの想いを隠さず伝え合い、月明かりの下で結ばれる感動のラストも見どころ。陰謀と恋が大きく動く、シリーズ屈指の重要回です。

第20話「宗偉、怡親王を守り命を散らす」

沈丹青は最近、杜影児の態度がどこかよそよそしくなったことを気に掛けていた。

「雪児が何か吹き込んだのかもしれない……。」

親友との間に溝が生まれ始めていることに、不安を隠せない。

その頃、沈丹青、沈自山、徐程風の三人は、周游の絵と詩を改めて読み解いていた。

詩に登場する女性こそ、顕影水の秘密を知る人物ではないかと考えた沈丹青は、資料を探すため蔵書閣へ向かうことを提案する。

しかし蔵書閣へ到着すると、入口では宗偉が兵を率いて立ちはだかっていた。

怡親王の命令により、何人たりとも中へ入ることは許されないという。

情報が漏れたことに沈自山は驚く。

「今回は誰にも話していない。」

徐程風も彼を疑わなかった。

調べの結果、情報を漏らしたのは沈家の鏢師だった。

家族を人質に取られ、やむなく怡親王へ情報を流していたのである。

徐程風は沈丹青へ静かに告げる。

「自山を疑っているわけじゃない。」

「だが彼は敵に狙われている。本人が気付かぬうちに情報を探られる危険がある。」

今後の作戦は沈自山にも知らせず進めるべきだと提案する。

その会話を偶然耳にした沈自山は、胸を痛める。

信頼されていると分かっていても、仲間外れにされたような寂しさを感じ、酒で気持ちを紛らわせた。

そこへ現れたのが怡親王だった。

「徐程風に沈丹青を奪われても構わないのか?」

「本当に愛しているなら、自分で奪い取れ。」

巧みに嫉妬心をあおり、さらに誘惑する。

「私に協力すれば、皇家の看板も沈丹青も、お前のものにしてやる。」

「徐程風さえ消えれば、すべては思い通りだ。」

沈自山はしばらく沈黙したあと答える。

「徐程風の命だけは助けてくれ。」

「それなら協力する。」

怡親王は、ついに沈自山が味方になったと信じ込む。

その後、沈自山はわざと警備に隙を作る。

予想通り、徐程風と沈丹青は蔵書閣への潜入に成功した。

実はこれもすべて作戦だった。

二人は館内で、周游が従妹を深く愛していたことを知る。

しかし二人は親に引き裂かれ、その女性は優れた酒造りの名人だった。

さらに文献を調べた沈丹青は、その女性こそ梅酒造りで名高い方氏ではないかと推理する。

幼い頃に聞いた昔話も思い出した。

彼女は千年梅の古木へ酒を隠していたという。

徐程風も以前の調査から、鯉城近郊に「千年梅」と呼ばれる老木があることを知っていた。

そこで二人は現地を訪れ、ついに顕影水の正体が「梅子醸」であることを突き止める。

沈自山へ報告した三人は、新たな作戦を立てる。

本物の梅子醸は沈自山が京へ運び、閣老へ届ける。

一方、徐程風と天昊は偽物を運ぶふりをして怡親王の目を引きつける囮となる。

沈自山は途中で梅子醸を駱鏢師へ託す。

しかし駱鏢師は、その酒をそのまま怡親王へ差し出した。

駱鏢師もまた、弟を人質に取られていたのである。

怡親王は勝ち誇る。

「これで徐程風は終わりだ。」

「約束どおり沈丹青はお前にくれてやる。」

しかし、それこそが徐程風たちの狙いだった。

宗偉が宝の地図を取りに現れた瞬間、徐程風と沈自山が待ち伏せしていた。

宗偉はようやく気付く。

沈自山は最初から裏切っていなかった。

徐程風は真相を明かす。

駱鏢師が脅されていることも見抜いており、あえて沈自山を怡親王へ近づけたのだ。

すべては宝の地図を持ち出させるためだった。

宗偉はなおも地図を渡そうとせず、破り捨てようとまでする。

徐程風は説得を試みる。

さらに怡親王本人をその場へ連れて来させた。

「これでもまだ、この男に忠誠を誓うのか。」

徐程風は怡親王へ問い詰める。

「百事通を殺し、解毒薬で我々を脅し、宝の地図を奪わせた黒幕はあなただ。」

しかし怡親王は平然と否定した。

「私は宝の地図など見たこともない。」

「宗偉が何をしたかなど知らぬ。」

宗偉との関係まで切り捨ててしまう。

それでも宗偉は主人を守る道を選んだ。

宝の地図を差し出し、すべて自分一人の犯行だと証言する。

「病気の義父を救う金が欲しかった。」

「だから盗みを働いた。」

すべての罪を背負ったのである。

宗偉は護送される直前、懐に隠していた毒薬を飲み干した。

「王爺……どうかご無事で。」

そう言い残し、忠臣は息絶える。

徐程風はあまりの結末に言葉を失う。

だが怡親王は宗偉の亡骸を一瞥しただけで、何の感情も見せず背を向けて去っていった。

忠義を尽くした部下の死さえ顧みない、その冷酷さだけが残った。

徐程風は宝の地図と梅子醸を近衛隊長へ託し、京の閣老へ届けるよう命じる。

「顕影水として使えるのは開封から半月だけだ。」

慎重に扱うよう念を押した。

すべてが一段落した夜――。

徐程風と沈丹青は静かな月夜を並んで歩く。

徐程風は優しく語りかける。

「雪児との決着がついたら、一緒に旅へ出よう。」

「山も海も、星空も、君と見たい。」

沈丹青は穏やかに微笑む。

「あなたがいてくれたから、私は人を信じることができた。」

「私の人生を照らしてくれた光だった。」

徐程風はそっと彼女の手を握る。

「沈丹青でも羅愛蓮でも関係ない。」

「君は私が生涯守りたい人だ。」

互いの想いを確かめ合った二人は、月明かりの下で静かに抱き寄せ合い、深い口づけを交わす。

長い苦難を乗り越えてきた二人は、ようやく本当の恋人として新たな一歩を踏み出すのだった。

 

第21話の見どころ

羅雪児との因縁に決着がつく一方で、徐程風と沈丹青の愛も新たな段階へ進みます。杜影児は真実を知って改心し、長年の誤解はついに解けることに。しかし、追い詰められた羅雪児は最後まで野望を捨てず、怡親王に利用された末、悲劇的な最期を迎えます。そしてラストでは、徐程風が羅愛蓮への変わらぬ想いを胸に沈丹青へ正式に求婚。苦難を乗り越えた二人が未来を誓い合う、感動に満ちたエピソードです。

第21話「徐程風、沈丹青に求婚」

羅雪児は追い詰められながらも、なお羅霜霜の行方を探させていた。

霜霜は危うく見つかりそうになるが、間一髪のところで沈丹青の部下に救い出される。

突然助けられた霜霜は警戒心を隠せない。

「私を殺すつもりでしょう?」

沈丹青は静かに首を振った。

「あなたを助けると周姨娘に約束したの。」

「だから迎えに来たのよ。」

それでも霜霜は理解できない。

なぜ母が、自分たちの敵だった沈丹青へ命を託したのか――。

一方、杜影児は羅雪児へ報告していた。

「沈丹青がお酒を味見する仕草は、あなたが話していた羅愛蓮そのものだった。」

雪児は満足そうに微笑む。

そして新たな策を授けた。

「彼女を芝居小屋へ誘いなさい。」

「最後の確認をする。」

翌日、杜影兒は沈丹青と沈自山を芝居小屋へ招待する。

舞台では火を使った見世物が始まる。

その炎を見た瞬間、沈丹青の表情が凍りついた。

脳裏によみがえるのは、祠堂が炎に包まれたあの日の記憶。

「彬児……!」

叫び声を上げたまま、その場へ倒れてしまう。

沈自山は慌てて彼女を抱きかかえ、その場を離れた。

舞台裏へ身を潜めていた羅雪児は、その叫びを聞き逃さなかった。

「やっぱり……。」

「沈丹青こそ羅愛蓮。」

ついに確信を得る。

沈丹青が倒れたと聞いた徐程風は、すぐに沈家へ駆け付ける。

沈自山は彼へ看病を任せた。

「丹青を頼む。」

二人の絆を信じているからこその言葉だった。

その頃、杜影兒は真実を知りながらも混乱していた。

「本物の沈丹青は殺されたのでは?」

「羅愛蓮がすべて奪ったの?」

彼女は役所へ訴え出ようとする。

しかし羅雪児はそれを止めた。

「証拠がない。」

「今はまだ動く時じゃない。」

さらに杜影兒へ薬包を渡す。

「この薬を沈丹青の薬へ混ぜて。」

「命までは奪わない。」

そう説明するが、それは真っ赤な嘘だった。

杜若山の仇を討ちたい杜影兒は苦しみながらも受け取ってしまう。

一方、秦鏢師はついに蕭家の元使用人を探し出していた。

老人の証言と帳簿から、真実が明らかになる。

蕭家は当主の賭博と阿片によって没落した。

羅季達は酒蔵を高値で買い取り、一家を救おうとしていた。

つまり羅季達は恩人だったのである。

沈丹青は決意する。

「雪児には罪を認めてもらう。」

「そして羅愛蓮の名誉を取り戻す。」

その頃、羅雪児は杜影兒から計画が順調だと聞き、沈丹青が病に苦しんでいると信じ込む。

さらに杜影兒から夜に酒蔵へ来るよう誘われる。

疑うことなく酒蔵へ向かった雪児を待っていたのは、元気な沈丹青だった。

すべては罠だったのである。

沈丹青は静かに切り出す。

「最初から分かっていた。」

「あなたは杜影兒を利用するつもりだった。」

さらに薬包を見せる。

「あれは毒よ。」

「あなたは影兒の手で私を殺させようとしていた。」

雪児は少しも動じない。

杜影兒など最初から駒にすぎなかった。

その言葉を聞いた杜影兒は姿を現す。

「私はあなたを信じていたのに!」

涙を流しながら羅雪児の頬を打つ。

初めて自分が利用されていただけだと知ったのだった。

沈丹青は蕭家の帳簿と元使用人を雪児の前へ連れて来る。

羅季達が恩人だった証拠は揃っていた。

それでも雪児は認めない。

「全部嘘よ!」

「私は信じない!」

沈丹青は静かに言い渡す。

「明日、役所へ連れて行く。」

「自分の罪を償いなさい。」

長年続いた姉妹の因縁にも、終止符が打たれようとしていた。

杜影兒は沈丹青へ深く頭を下げる。

「ごめんなさい。」

「私はあなたを疑ってしまった。」

親友はようやく真実を知り、涙ながらに謝罪する。

しかし、その夜――。

蕭家の元使用人が密かに羅雪児を逃がしてしまう。

追い詰められた雪児は最後の望みをかけ、怡親王の屋敷を訪れた。

「沈丹青は羅愛蓮です。」

「徐程風も真実を知っています。」

「この秘密を利用すれば勝てます。」

だが怡親王は冷たく笑う。

「私を利用するつもりか。」

その場で家臣へ命じた。

「湖へ沈めろ。」

悲鳴も虚しく、羅雪児は湖へ沈められていく。

こうして復讐だけを支えに生きてきた彼女は、誰にも知られることなく命を落とした。

後日、駱鏢師からその知らせを受けた沈丹青は複雑な表情を浮かべる。

「昔は本当の妹のように思っていた。」

「でも、あの子自身が私たちの絆を壊してしまった。」

復讐は終わった。

しかし心に残るのは勝利ではなく、深い喪失感だった。

徐程風は優しく語りかける。

「君の名誉は必ず取り戻す。」

だが沈丹青は首を振る。

「もう運命なのかもしれない。」

「私はそれでも構わない。」

すると徐程風は彼女をある場所へ連れて行く。

そこには以前、自分が掛けた願い札が残っていた。

羅愛蓮が亡くなったと思っていた頃に書いた願いである。

そこには――

「願わくば羅愛蓮が来世では潔白のまま、平穏で幸せに暮らせますように。」

と記されていた。

沈丹青は思わず涙を浮かべる。

徐程風は彼女の手を優しく握った。

「来世じゃない。」

「この先の人生を、私が君と一緒に歩く。」

「沈丹青でも、羅愛蓮でも変わらない。」

「君は私が生涯愛する、たった一人の人だ。」

そう言って懐から指輪を取り出し、静かにひざまずく。

「私と結婚してくれ。」

沈丹青は涙を流しながら微笑んだ。

「はい。」

二人は未来の暮らしを語り合い、苦しみばかりだった過去ではなく、これから訪れる幸せな日々へ思いを馳せる。

「あなたと出会えて、本当によかった。」

そう告げた沈丹青を、徐程風は優しく抱き寄せる。

数々の試練を乗り越えた二人は、ようやく永遠の幸せを誓い合うのだった。

 

第22話の見どころ

幸せな結婚を目前にしていた沈丹青と徐程風に、怡親王が最大の罠を仕掛けます。互いを思いやる二人の婚礼準備は微笑ましく進みますが、本物の宝の地図を巡る陰謀が再び動き出し、羅愛蓮の正体も公の場で暴かれることに。さらに死んだはずの羅雪児が姿を現し、すべての罪を沈丹青へ押し付けます。決定的な証拠まで用意されたことで、徐程風たちは絶体絶命の危機に追い込まれ、物語は最終決戦へ向けて大きく動き始めます。

第22話「怡親王、徐程風を陥れる」

沈丹青は沈自山に、自分が徐程風と結婚する決意を固めたことを伝える。

沈自山は少し寂しさをにじませながらも、優しく微笑んだ。

「お前が決めたことなら、私は応援する。」

「沈家はこれからもお前の実家だ。」

「胸を張って嫁げるよう、立派な嫁入り道具を用意しよう。」

「何があっても、お前の後ろには私がいる。」

その温かな言葉に、沈丹青は深く頭を下げる。

「兄上、ありがとうございます。」

一方、杜影児は誰にも告げず聊城を去ろうとしていた。

沈丹青は見送りに駆け付ける。

「これからも私を丹青だと思って。」

「昔と変わらない親友でいてほしい。」

杜影児は涙を浮かべながら抱き締め返す。

「もちろんよ。」

二人はすべての誤解を乗り越え、再び親友として別れを告げた。

その頃、徐程風は婚礼の準備に追われていた。

自ら礼書を書き上げ、さらに林閣老へ手紙を送り、証人を務めてほしいと頼む。

沈丹青も黙って見ているだけではなかった。

彼のために手作りの棋子酥を焼き、労をねぎらう。

さらに一針一針心を込めて刺繍した帯を贈った。

徐程風も負けじと、自分の屋敷や土地、財産すべてを沈丹青へ譲渡する。

「私の持つものは、すべて君のものだ。」

互いに惜しみなく愛情を注ぎ合い、未来への希望を胸に膨らませる。

やがて徐程風は正式な結納品を携え沈家を訪れる。

沈自山は厳しい表情で言った。

「もし妹を泣かせるようなことがあれば、沈家全員がお前を許さない。」

徐程風は真っ直ぐに答える。

「私は生涯、丹青だけを愛します。」

「すべての財産も彼女へ譲りました。」

「婚礼では皆の前で永遠の愛を誓います。」

その誠実な言葉に、沈自山も静かにうなずいた。

まもなく林閣老が聊城へ到着する。

婚礼の立会人として訪れた彼には、もう一つ重要な使命があった。

宝の地図に使うはずだった梅酒を顕影液として試したものの、地図は何も浮かび上がらなかったのである。

残された時間はわずか半月。

顕影液の効果が切れる前に真相を突き止めなければならない。

沈丹青は迷わず言う。

「婚礼は延期しましょう。」

「今は宝の地図を解くことが先です。」

彼女自身が梅酒を調べるが、保存状態にも品質にも問題はなかった。

そこへ怡親王が将軍府を訪れる。

皇帝からの祝いとして琴と瑟を届けるためだった。

「今日は祝いの品を届けに来ただけだ。」

「婚礼の日には、もっと大きな祝いを贈ろう。」

その意味深な笑みに、徐程風たちは嫌な予感を覚える。

沈丹青は贈り物を入念に調べるが、不審な点は見つからない。

さらに天昊へ命じ、婚礼当日に演奏する楽師の手配も進めさせた。

一方、宝の地図の調査では新たな疑問が浮かぶ。

顕影液には問題がない。

沈自山は「地図が偽物なのでは」と推測し、徐程風は「本物はまだ怡親王が隠している」と考える。

やがて林閣老は徐程風、沈丹青、沈自山、そして怡親王を集め、公の場で調査結果を発表した。

「宗偉から押収した地図は偽物だった。」

すると怡親王は待っていたかのように口を開く。

「本物は何年も前に羅家がすり替えた。」

さらに宗偉の日記を証拠として示し、羅季達が宗偉を助けた際に地図を交換したと主張する。

そして矛先は羅愛蓮へ向けられた。

「羅愛蓮は宝の地図を奪うため父を殺した。」

徐程風は即座に否定する。

「羅愛蓮はすでに亡くなっている。」

しかし怡親王は冷笑した。

「いや、生きている。」

「沈丹青こそ羅愛蓮だ。」

その瞬間、誰もが驚く人物が法廷へ姿を現した。

死んだはずの羅雪児だった。

実は湖へ沈められたという話は、怡親王が仕組んだ偽装だったのである。

羅雪児は沈丹青を指差しながら証言する。

「この女が羅愛蓮です。」

「父を殺し、沈自山と結託して別人になりました。」

さらに火の付いた松明を持ち出し、沈丹青の恐怖をあおる。

炎を見た沈丹青は火災の日を思い出し、身体が震え始める。

しかし彼女は自ら手を傷つけ、痛みで恐怖を押さえ込んだ。

作戦が失敗した羅雪児は次の手に出る。

「背中の火傷を調べれば正体は分かります。」

ところが調べても、そこに火傷も蓮の刺青も残っていなかった。

実は以前、繆神医が傷跡と刺青を消していたのである。

証拠を失った羅雪児は焦る。

だが怡親王は最後の切り札を取り出した。

羅愛蓮本人が押印した酒蔵の運搬伝票だった。

その筆跡と指印は本物。

もはや逃れられないと悟った沈丹青は静かに口を開く。

「はい。」

「私は羅愛蓮です。」

しかし続けて毅然と言い放つ。

「父は宗偉とは無関係です。」

「宝の地図を盗んだこともありません。」

沈自山も前へ進み出る。

「顔を変えたのは私です。」

「彼女に罪はありません。」

徐程風も力強く証言した。

「羅愛蓮は決して盗人ではない。」

だが怡親王は冷たく笑う。

「婚約者の証言など信用できるはずがない。」

さらに彼は「残る半分の宝の地図は沈家か将軍府にある」と主張する。

林閣老は直ちに捜索を命じた。

すると将軍府の離れから、半分の宝の地図が見つかる。

それは怡親王があらかじめ楽師を買収し、密かに隠させていたものだった。

もちろん徐程風は潔白を訴える。

「これは怡親王の罠です!」

しかし現場から本物の地図が見つかった以上、疑いは消えない。

林閣老は苦渋の表情で命じた。

「徐程風、沈丹青、沈自山。」

「三人を牢へ入れ、厳しく取り調べよ。」

その時、徐程風は前へ進み出る。

「宝の地図を盗んだのは私です。」

「残る半分の在りかも知っています。」

「どうか沈家兄妹だけは助けてください。」

彼はすべての罪を自分一人で背負おうとしたのである。

そして怡親王へ視線を向け、静かに言い放つ。

「顕影液の効力は半月しか持たない。」

「時間はあなたにも残されていない。」

こうして三人は牢へ送られ、婚礼は無期限の延期となる。

幸せな未来まであと一歩だった二人は、怡親王が仕掛けた最大の陰謀によって再び絶望の淵へ突き落とされるのだった。

 

第23話の見どころ

徐程風が愛する沈丹青を守るため、自ら命を差し出す衝撃の展開が描かれます。怡親王の罠にはまり絶望的な状況に追い込まれた二人は、最後の面会で互いへの変わらぬ愛を確かめ合います。そして徐程風は沈丹青と沈家兄妹を救うため、すべての罪を背負って毒をあおるという悲壮な決断を下します。一方、父・羅季達が羅雪児の未来まで案じていた事実も明らかとなり、彼女は初めて自らの過ちと父の深い愛を知ることになります。涙なくして見られないシリーズ屈指の名場面が続く一話です。

第23話「徐程風、命を賭して丹青を守る」

怡親王は徐程風たちを陥れたことで優位に立ったものの、心の底から喜ぶことはできなかった。

宝の地図を手にしても、顕影液の効力はまもなく失われる。

このままでは宝の秘密を解き明かせないのである。

そんな中、羅雪児が進み出る。

「羅家は代々酒造りの名家です。」

「甘露堂の杜氏たちなら、梅酒を再現する方法を知っているかもしれません。」

その発想を気に入った怡親王は満足そうに頷く。

さらに宗偉を失った今、彼は羅雪児へ告げた。

「これからは、お前が私の最も信頼する者になれ。」

その言葉とともに、羅雪児は怡親王の側室として迎えられることになった。

さっそく甘露堂の杜氏たちは梅酒の再現に挑む。

しかし、何度試しても同じ味にはならない。

老杜氏は首を横に振った。

「もし羅愛蓮様が一度でもこの酒を口にしておられれば、九割方再現できるでしょう。」

その言葉を聞いた羅雪児は、すぐ牢へ向かう。

牢の中で沈丹青を見下ろしながら冷笑した。

「私は今や怡親王の側室よ。」

「あなたとは立場が違う。」

そして続ける。

「梅酒を造れば罪を許してもらえる。」

「生きて出られる唯一の道よ。」

しかし沈丹青は静かに首を振った。

「残り半分の宝の地図は怡親王の手にある。」

「私は絶対に力を貸さない。」

「死んでも酒は造りません。」

羅雪児は舌打ちしながら牢を後にした。

一人残された沈丹青は、法廷で徐程風がわざと顕影液の話を持ち出していたことを思い返す。

「あれは……。」

「私への合図だったのかもしれない。」

梅酒こそが、自分たちを生かす最後の切り札なのではないか。

そう考え始める。

一方、天昊は林閣老へ助けを求めていた。

「どうか将軍をお救いください!」

しかし林閣老も苦悩する。

「私も徐程風を信じている。」

「だが今は怡親王の罠を覆す証拠か、もう半分の宝の地図を見つけるしかない。」

状況はあまりにも厳しかった。

その頃、羅雪児は怡親王へ新たな情報を伝える。

「羅愛蓮は天才です。」

「一度飲んだ酒なら配合まで覚えています。」

「必ず梅酒を再現できます。」

「問題は本人が応じないことです。」

すると怡親王は余裕の笑みを浮かべた。

「その心配はいらない。」

「人は守りたいものがあれば、必ず従う。」

その言葉どおり、彼は徐程風の牢を訪ねる。

徐程風は自分が生きて出られないことを悟っていた。

それでも沈丹青だけは守りたかった。

「彼女だけは生かしてください。」

「梅酒を造れるのは丹青しかいません。」

怡親王は条件を突きつける。

「沈丹青に酒を造らせろ。」

「そうすれば沈家兄妹の命だけは助けてやる。」

徐程風はしばらく黙った後、静かにうなずく。

「……分かりました。」

「すべての罪は私が背負います。」

怡親王は彼の才能を惜しみ、最後の誘いをかける。

「私に仕えろ。」

「命だけは助けてやる。」

だが徐程風は即座に答えた。

「忠義を捨てて生きるくらいなら、死を選ぶ。」

その覚悟に、怡親王も苦笑するしかなかった。

そして情けを装い、最後の面会を許す。

牢で再会した沈丹青は涙を流す。

「私のせいで……。」

「あなたまで巻き込んでしまった。」

徐程風は優しく首を振る。

「君と出会ったことを、一度も後悔したことはない。」

二人は互いの手を握り合う。

徐程風は静かに告げた。

「顕影液を造れることが、君の命綱だ。」

「その力を絶対に手放すな。」

沈丹青は彼の真意に気付かない。

徐程風は最後に深く口づけを交わす。

それは永遠の別れだった。

面会を終えると、怡親王は宗偉が自害した時と同じ毒薬を差し出す。

徐程風は確認する。

「約束どおり、沈家兄妹は助けるのですね。」

「もちろんだ。」

その返事を聞くと、徐程風は迷いなく毒を飲み干した。

毒は瞬く間に全身へ回る。

苦しみながらも彼は最後まで沈丹青の名を胸に刻み、そのまま静かに息を引き取った。

怡親王はその姿を見届けると、高らかに笑い声を上げる。

宿敵をようやく始末した喜びだった。

やがて林閣老にも報告が届く。

徐程風が罪を認め、自害したという知らせだった。

残された自白書には、自分が宝の地図を盗み、残り半分も失われたと記されていた。

林閣老は深くため息をつく。

「これでは都へ戻るしかない……。」

出発前、彼はせめてもの情けとして怡親王へ願い出る。

「天昊に遺体を引き取らせ、手厚く葬らせてやってほしい。」

その願いだけは聞き届けられた。

その後、怡親王は沈丹青を牢から連れ出そうとする。

その時になって初めて、彼女は徐程風が自害したことを知らされる。

「嘘……。」

「程風が……死んだ?」

徐程風が自分を守るため命を捨てたことを悟り、沈丹青はその場に崩れ落ちた。

それでも気丈に頼む。

「お願いです。」

「最後にお墓参りだけさせてください。」

「その後なら梅酒を造ります。」

翌日、墓前へ連れて行かれた沈丹青は、墓石の前で立ち尽くす。

結婚式を迎えるはずだった相手は、もうこの世にいない。

天昊は徐程風が大切にしていた帯を差し出す。

「将軍からです。」

「これだけは沈姑娘に、と。」

帯を胸に抱いた沈丹青は涙を流した。

「夫婦にはなれなかった。」

「でも私の心では、あなたはもう夫です。」

そして墓前で静かに誓う。

「必ずあなたの仇を討ちます。」

その後、怡親王は沈自山や沈家鏢局の仲間たちの命を盾に取り、沈丹青へ迫る。

「梅酒を造れ。」

「さもなくば全員処刑だ。」

沈丹青は苦しみながらも答える。

「兄を助けてください。」

「その代わり、私が造ります。」

愛する人の命を失いながらも、残された人々を守るため彼女は酒造りに挑む。

そして遂に、本物の顕影液となる梅酒を完成させた。

すべてを見届けた後、沈丹青は父・羅季達の部屋で見つけた一通の書類を羅雪児へ差し出す。

そこには驚くべき事実が記されていた。

羅季達は羅雪児を冥婚へ送るつもりなど最初からなかったのである。

彼は体格の似た死刑囚を身代わりに立て、羅雪児だけを密かに別荘へ逃がし、新しい身分で生きられるよう準備していた。

父は最後まで、実の娘でなくとも彼女を守ろうとしていたのだった。

その真実を知った羅雪児は、初めて自らの復讐が思い込みと憎しみに支配されていたことを悟り、言葉を失うのだった。

 

第24話の見どころ

死を偽装していた徐程風がついに帰還し、物語は最終決戦へ。怡親王は宝の地図を完成させるものの、最後は徐程風との激闘の末に討たれます。一方、羅雪児は欲望に翻弄された末、自らの過ちと父・羅季達、そして沈丹青の深い愛情に気づき、悲劇的な最期を迎えます。すべての因縁に決着がつき、沈丹青は「羅愛蓮」ではなく「沈丹青」として新たな人生を歩むことを決意。数々の苦難を乗り越えた徐程風と沈丹青は、ようやく夫婦となり、感動の大団円を迎える最終話です。

第24話「徐程風と沈丹青、ついに結ばれる」

怡親王は宗偉の墓参りを口実に、隠されていた残り半分の宝の地図を回収しようとしていた。

顕影液が完成した今こそ、宝の秘密を解き明かす最大の好機だった。

一方の沈丹青も、酒蔵の帳簿や秘伝の酒の配合を書き残し、酒蔵の経営を秦鏢師たちへ託す。

「私は怡親王を追います。」

「程風の仇を討ち、必ず宝の地図を取り戻します。」

沈自山も力強くうなずいた。

「俺も一緒だ。」

「命を懸けても必ず奴を止めよう。」

その頃、怡親王は宗偉の墓を訪れ、墓石の下から隠されていたもう半分の宝の地図を取り出す。

二枚を合わせ、顕影液を使うと、ついに本物の地図が姿を現した。

「ようやく手に入れた。」

怡親王は勝利を確信する。

しかし帰路、突如として一隊の兵が行く手を阻んだ。

その先頭に立っていたのは――。

「徐程風!」

死んだはずの徐程風が姿を現したのである。

驚く怡親王へ徐程風は静かに告げた。

「お前が用意した刺客は、すべて始末した。」

「もう逃げ場はない。」

親衛隊長も降伏を勧める。

しかし怡親王は最後まで諦めず、兵に突撃を命じた。

激しい戦いが始まる。

そこへ天昊に導かれた沈丹青と沈自山も駆けつける。

実は徐程風は牢で本当に死んだわけではなかった。

林閣老と共に死を偽装し、怡親王を油断させるための策だったのである。

宗偉の毒は強力だったが、あらかじめ纓神医の秘薬を服用していたため、一命を取り留めていた。

戦いの最中、落ちた宝の地図を羅雪児が拾い上げる。

彼女は地図を抱え、怡親王とともに逃げようとする。

しかし沈自山が立ちはだかった。

その瞬間、怡親王は沈丹青を人質に取る。

「地図と交換だ!」

羅雪児は迷わず地図を差し出した。

「王爺、私も一緒に連れて行ってください!」

だが怡親王は地図を受け取ると、冷酷に剣を突き立てた。

「利用価値のなくなった者はいらぬ。」

胸を貫かれた羅雪児は、その場に崩れ落ちる。

ようやく彼女は沈丹青の言葉が真実だったと悟る。

欲望のために信じる相手を間違え、自らすべてを失ったのだ。

沈丹青は涙ながらに妹へ語りかける。

「父は最後まで私たちを家族だと思っていた。」

「あなたは私の妹よ。」

羅雪児は震える声で答えた。

「お姉さん……。」

「私が……父を……。」

「もし生まれ変われるなら……また姉妹になりたい。」

その言葉を残し、羅雪児は自ら崖へ身を投げ、波間へと消えていった。

悲しい運命に幕が下りる。

その後、徐程風は馬で怡親王を追撃する。

激しい一騎討ちの末、ついに剣が怡親王を貫いた。

長きにわたり人々を苦しめた黒幕は、ここに討ち果たされた。

すべてが終わり、徐程風は沈丹青を抱きしめる。

「心配をかけてすまなかった。」

彼は牢での真実を語る。

林閣老と相談し、偽りの死を演出して怡親王を油断させたこと。

百里峡で密かに兵を集め、決戦の準備を進めていたこと。

そして奇跡的に命を取り留めたことを。

沈丹青は涙を流しながら微笑む。

「生きていてくれて、本当にありがとう。」

その後、羅霜霜は酒造りを学ぶため酒蔵へやって来る。

沈丹青は静かに打ち明けた。

「私は羅愛蓮なの。」

だが羅霜霜は驚きながらも受け入れた。

過去を悔い改めた彼女を、沈丹青もまた許していた。

父・羅季達が遺した手紙と嫁入り道具を妹へ託し、二人は力を合わせて羅家の酒造りを守ることを誓う。

沈丹青は父の墓前にも報告へ向かう。

そこで沈自山が尋ねた。

「これからは羅愛蓮として生きるのか?」

沈丹青は静かに首を振る。

「私はもう沈丹青。」

「この名前で未来を生きていく。」

沈自山は優しく微笑んだ。

「どんな名前でも、お前は俺の大切な妹だ。」

事件解決により、沈家鏢局には再び皇家御用達の看板が戻る。

沈自山の長年の夢も叶った。

さらに丹青酒庄は甘露堂と統合され、この地で最大の酒蔵へと発展する。

一方、徐程風は怡親王を護送して都へ戻り、皇帝へ復命を果たす。

恩賞として願ったのは、ただ一つ。

沈丹青との結婚だった。

願いは聞き届けられ、晴れて二人は正式に夫婦となる。

吉日、多くの仲間たちに祝福されながら婚礼が執り行われる。

幾多の苦難を乗り越えた二人は、ようやく永遠の契りを交わした。

新婚の夜。

かつて羅愛蓮の運命を占った老人から、一通の手紙が届けられる。

そこにはこう記されていた。

「運命の人と結ばれても、人生はなお試練と幸せが隣り合わせ。」

「どうかこれからも荊棘の道を恐れず歩みなさい。」

二人は顔を見合わせて微笑む。

未来にどんな困難が待っていようとも、今はもう一人ではない。

固く手を取り合った徐程風と沈丹青は、新たな人生へ力強く歩み出すのだった。

 

荊棘(いばら)の花~奪われた私~ 各話あらすじ キャスト・相関図

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