定風波~神捕、冥(くら)き真実を暴く~

定風波~神捕、冥(くら)き真実を暴く~

定風波~神捕、冥(くら)き真実を暴く~ 31話・32話・33話・34話・35話・36話(最終回)あらすじ

定風波~神捕、冥(くら)き真実を暴く~ 2025年 全36話 原題:定風波(定风波)

第27話 天牢最深部「酆獄」への潜入

海崖の真相を追うため、鍾雪漫と蕭北冥はこれまでに得た情報を諸葛孔雲と共有する。その中で浮かび上がったのが、かつて参風甲を率いていた皇叔・武烈の存在だった。記録上では、武烈は病に倒れ、何年も前に亡くなったとされている。しかし、皇叔ほどの身分にある人物が亡くなったのであれば、盛大な葬儀が行われるはず。それにもかかわらず、その記録が曖昧なことに一同は疑念を抱き、さらに調べることにする。

蕭北冥と諸葛孔雲は、海崖について知る呉錐を再び訪ねる。しかし、すでに呉錐の姿はなく、残されていたのは一枚の紙だけだった。そこには、**「大亓で最も暗き場所に身を置き、大亓が最も越え難き災いを渡る」**という謎めいた言葉が記されていた。

二人はこの言葉が武烈を指していると推測し、「大亓で最も暗き場所」とは天牢ではないかと考える。しかも武烈がいるとすれば、天牢の中でも最凶の罪人を収容する最深部、十八層の酆獄である可能性が浮上する。諸葛孔雲も、そこへ入ることがどれほど困難かを理解する。

蕭北冥は神捕営へ戻り、方首座に酆獄へ向かう決意を伝える。しかし方首座は、そこへ入れば生きて戻れない可能性が高いと考え、必死に思いとどまらせようとする。それでも蕭北冥は「誰かが何かをしなければならない」と譲らない。ついに方首座は決断を受け入れ、もし蕭北冥が戻らなければ「牢獄が火事になり、囚人は全員死亡した」として処理すると約束する。蕭北冥は、その方法なら自分の行方を隠せると冗談を交わし、神捕営を後にする。

ところが門を出たところで、待ち構えていた鍾雪漫と鉢合わせする。彼女は、自分に何も告げず危険な場所へ向かおうとする蕭北冥に怒りをぶつける。蕭北冥は呉錐が残した手掛かりを見せ、武烈が天牢十八層の酆獄にいる可能性を説明する。危険を知る蕭北冥は雪漫を連れていくつもりはなかったが、雪漫は冷静に問い返す。

「そもそも、どうやって天牢に入るつもりなの?」

天牢へ入るには、皇帝自らの手諭が必要なのだ。最大の難関は、まさにそこにあった。

 

第28話 海崖の生存者と「怪物」の正体

海崖の生存者たちが身を寄せるキャンプでは、食料不足が深刻な問題となっていた。耳が聞こえず話すこともできない少年・阿星は、羅樹の机に残されたわずかな食事をじっと見つめる。彼の様子を見た羅樹は、自分たちの食料を分け与える。怪物の出現が頻発し、食料も底をつきかけていることから、羅樹は自ら外へ出て食料を探すことを決意する。

しかし阿星は密かに羅樹の後を追い、途中で体調を崩してしまう。ちょうどその頃、風清濁たちも野外へ果物を採りに出ており、倒れている阿星を発見する。小分隊は彼をキャンプへ連れ帰り、懸命に治療する。その行動をきっかけに、警戒していた海崖の生存者たちも少しずつ彼らを信頼するようになる。

霍黛蓉は羅樹と別の女性に自ら声をかけるが、最初は海崖の人々から強く警戒される。しかし、霍黛蓉が**「自分も海崖の人間だ」**と明かすと、二人の態度が一変する。羅樹は、当時自分たちは海崖の小さな村で暮らしていたため虐殺を免れたものの、その後海崖には次々と怪物が現れるようになり、逃げ続けるしかなかったと語る。ただし、虐殺そのものの真相については何も知らないという。

ところがその夜、キャンプにいた女性が突然何者かに襲われ、首には巨大な噛み傷が残される。風清濁はまだ助かる可能性があると判断し、すぐに治療を開始する。一方、蕭北冥と童双は現場に残された血痕を追跡する。そして木の上から現れたのは、口元を血で真っ赤に染め、まるで理性を失ったかのように暴れる人間だった。男は二人を見つけると、そのまま逃走してしまう。

事件を重く見た小分隊は、その夜、羅樹に詳しい事情を問いただす。最初は口を閉ざしていた羅樹だったが、ついに彼らをある場所へ案内する。そこは強烈な死臭が漂う地下洞窟だった。

恐る恐る中へ入った一行が目にしたのは、閉じ込められた大勢の人々の遺体。彼らは皆、食べるものを与えられないまま、飢えによって命を落としていた。海崖で起きている怪物の謎と、過去の虐殺事件の真相は、想像を絶する惨劇へとつながっていた。

 

第29話 北海の地下庫と毒絶谷の禁術

北海居を調べていた童双は、敷地内にひっそりと立つ文字の刻まれていない石碑を発見し、蕭北冥を呼び寄せる。周囲には雑草が生い茂っているにもかかわらず、石碑のある庭だけは不自然なほど草一本生えていない。蕭北冥はこの異常に気づき、仲間たちは隠された地下道を発見する。地下道を進んだ先にあったのは、想像を絶する巨大な地下貯蔵庫だった。

そこには見たこともない大量の虫が蠢いていた。しかも、その虫たちは金属や鉄まで食い荒らす恐ろしい性質を持っている。風清濁が虫よけの薬を撒いてもまったく効果がなく、虫の群れはまるで潮のように押し寄せてくる。混乱の中で霍黛蓉が転倒すると、風清濁は身を挺して彼女を救う。しかし今度は自分が虫の群れに取り囲まれてしまう。絶体絶命の瞬間、蕭北冥が虫たちが塩を嫌うことを発見し、全員で塩を撒くことで危機を脱する。

さらに地下深くへ進むと、巨大で醜悪な木製の人形が現れる。童双が誤って仕掛けを作動させると、二体の木人から大量の刃が飛び出し、一行は逃げるように下層へ飛び降りる。彼らは、ここに何重もの仕掛けが設けられていることから、誰かが意図的に自分たちをこの場所へ誘導しているのではないかと考える。

次に一行がたどり着いたのは、凍えるような極寒の空間だった。出口も見つからず行き詰まる中、風清浊が床に刻まれた奇妙な印を発見する。それは彼がよく知る毒絶谷の紋章だった。さらに、以前北海の部屋で見つけた毒絶谷の金針とも一致し、北海が毒絶谷の門人だった可能性が濃厚になる。

風清浊は床の印が示しているのは、毒絶谷に伝わる恐ろしい病――**「別離散」**だと見抜く。しかもこの地下庫の構造は人体の「上焦・中焦・下焦」に対応しており、北海自身もかつて別離散に侵されていたことを示していた。上半身には虫に噛まれるような激痛、中腹部には刃物で切り裂かれるような苦痛、下半身には凍りつくような寒さが襲う――その苦しみを再現するように地下庫そのものが造られていたのだ。

そして一行は、地下空間の奥で仕掛けの施された一枚の壁を発見する。隠された真実へ通じる最後の扉なのか、蕭北冥たちは慎重にその仕掛けへ手を伸ばす。

 

第30話 海崖の惨劇、その始まり

風清浊の指示に従い、一行は地下室の床に刻まれた印と対応する位置に立つ。すると予想どおり仕掛けが作動し、脱出用の扉が開く。しかし扉にはもう一つ鍵となるものが必要だった。そこで鍾雪漫が持っていた扳指を試すと、見事に扉が開く。それは、かつて父・鍾雲赤が彼女の婚礼を前に託した大切な品だった。

扉の先を進むと、壁一面に大量の文字や記録が残されていた。そこに記されていたのは、これまで誰も知らなかった海崖事件の真相だった。

風清浊は、ここまでの手掛かりから北海が毒絶谷の「小師叔」だったのではないかと推測する。小師叔は毒絶谷でも類まれな才能を持つ人物だったが、旅先で敵対する一族の女性と恋に落ち、彼女を谷へ連れ帰った。しかし師匠は二人の関係を認めず、女性に猛毒「別離散」を飲ませてしまう。

愛する女性を救うため、小師叔は師匠の前に跪き、一昼夜にわたって助命を願う。それでも許されず、ついには自ら別離散を飲み、身をもって毒の性質を確かめながら解毒薬の研究を始める。そして女性を連れて毒絶谷を去ったのだった。

その後、大亓は周辺諸国との戦争が激化し、国境では戦乱が続いていた。民衆が苦しむ中、北海は当時の皇帝に接触し、**「疾風丹」**という秘薬を持っていると告げる。それを飲めば一人で十人を相手にできるほどの力を得られるという。

皇帝はその言葉を信じ、武烈を含む二百人余りの兵士に疾風丹を服用させる。戦場では次々と勝利を収め、北海は「天下無双の才」として皇帝から高く評価される。彼は昼夜を問わず丹薬の製造を続け、戦況も次々と好転していった。

しかし、勝利の裏側で兵士たちの身体には異変が起き始めていた。次第に正気を失い、まるで獣のように人を襲い、噛みつくようになっていく。北海は解毒薬を作ることができず、苦しむ兵士たちにさらに疾風丹を与えるしかなかった。その結果、症状はさらに悪化していく。

やがて皇帝と四人の重臣たちは協議し、彼らにはもう救う手段がないと判断する。そして下された決断は――すべてを抹殺することだった。

海崖で起きた惨劇は、ここから始まったのである。

 

第31話 童双との別れ、海崖に残された呪い

地下宮殿が突然崩壊し、一行は必死に脱出を試みる。しかし最後尾を走っていた童双は逃げ切ることができず、仲間たちを先に外へ押し出した直後、巨大な岩に押し潰されてしまう。蕭北冥は童双を助けようと駆け戻るが、小分隊の仲間たちに止められ、救出することができない。最も大切な仲間を失った一行は、深い悲しみに沈む。風清浊は涙を流し、霍黛蓉はそんな彼を背後から抱きしめて慰める。

蕭北冥もまた、童双を失った現実を受け入れられず、寝床から起き上がろうともしなくなる。鍾雪漫が食事を勧めても、蕭北冥は童双を迎えに行くと言い張る。しかし鍾雪漫は彼を厳しく叱りつけ、仲間の死を無駄にしないためにも生き続けなければならないと諭す。その言葉でようやく蕭北冥は立ち上がり、二人で外へ出る。

そこで待っていたのは、海崖の生存者たちだった。羅樹は童双が身につけていた品を蕭北冥に渡し、彼らも必死に捜索したものの、見つかったのは草で作られた輪だけだったと告げる。童双本人を救い出せなかったことを謝りながら、羅樹は「どうか生きて」と蕭北冥を励ます。二人は海崖の人々を見送った後、静かに抱き合う。

翌日、小分隊は童双のために墓を建てる。蕭北冥は墓前で、次にここへ戻ってくる時には鳳凰集の菓子を持ってくると約束し、必ず夜煞を捕らえ、再び童双に会いに来ると誓う。

さらに蕭北冥は羅樹に、彼女の兄・羅森がなぜ狂暴化したのか、その原因を説明する。彼らは小孤城の水に触れていた。かつて小孤城には大量の死体があったにもかかわらず、遺骨がほとんど残っていなかった。蕭北冥は、参風甲が死体を焼却した後、その灰や遺体を川へ流したのではないかと推測する。死体に残っていた丹毒が水へ溶け込み、その水を飲んだ人々が感染したのだ。

蕭北冥は海崖の人々に、決して小孤城の水に触れてはならないと警告する。互いの無事を願いながら別れを告げ、小分隊は再び夜煞の真相を追う旅へと出発する。童双との別れを胸に刻みながら、彼らは新たな決意を胸に前へ進むのだった。

 

第32話 親友の決裂に隠されていた真実

神捕営の義荘では、諸葛通が必死に犯人の似顔絵を描いていた。そこへ諸葛孔雲と蕭北冥が訪れ、かつての鍾雲赤との関係について語り始める。諸葛通は昔、鍾雲赤と共に数々の難事件を解決した優秀な捕快だった。二人は事件を通じて深い友情を築き、互いを最高の相棒だと認め合っていた。

しかし、ある事件で諸葛通は犯人に右手を切断され、さらに右目まで失明する重傷を負う。似顔絵を描くという最大の能力を失った彼は、周囲から「役立たず」と見なされるようになる。一方、事件を解決した鍾雲赤は「神捕王」として名声を得ていった。さらに鍾雲赤が皇帝に進言し、諸葛通を神捕営から追い出したことで、諸葛通は親友に見捨てられたと思い込み、二人は決裂してしまう。

諸葛孔雲は父の描いた新たな似顔絵を蕭北冥に見せるが、やはり決め手に欠ける。そこで蕭北冥は、諸葛通本人に父・諸葛通の力を借りるよう頼む。諸葛孔雲は改めて父のもとを訪れ、別の可能性を示す。

そして彼が取り出したのは、天字号に保管されていた一冊の議事録だった。その中には、かつて鍾雲赤が皇帝に宛てて書いた密書が残されていた。そこには、諸葛通を暗侦営の首領として推薦するという驚くべき内容が記されていた。

真実を知った諸葛通は愕然とする。鍾雲赤は彼を見捨てたのではなかった。重傷を負った親友を政争や危険から遠ざけ、静かに暮らせるようにするため、あえて神捕営から離すよう皇帝に願い出ていたのだ。そして傷が癒え、心が落ち着いた後には、再び能力を発揮できる場所を用意しようとしていた。

長年抱えていた誤解が崩れ、諸葛通は感情を抑えきれず涙を流す。そこへ蕭北冥が現れ、鍾雲赤が諸葛通をどれほど大切に思っていたかを伝える。鍾雲赤が酒に酔った時でさえ、口から出てくるのはいつも親友・諸葛通の名前だったという。

諸葛孔雲も父に真実を受け入れるよう説得し、長年にわたる二人の友情と決裂の裏側に隠されていた、鍾雲赤の深い友情と不器用な優しさが明らかになる。

 

第33話 海崖の真実、皇帝への糾弾

諸葛父子は皇帝の前に立ち、これまで夜煞の正体と疑われてきた蕭北冥は、決して夜煞ではないと断言する。そして蕭北冥自身も皇帝の前に進み出て、これまで追い続けてきた海崖の惨劇の真相を語り始める。

蕭北冥は実際に海崖を訪れ、そこで生き残った人々と接していた。そして、当時の惨劇を引き起こした原因が「丹毒」にあったことを突き止めていた。さらに夜煞は、かつて使用された疾風丹の処方をすでに手に入れている可能性があり、再び丹薬を作り出して大亓へ復讐すれば、国中が再び惨劇に巻き込まれる恐れがあると警告する。

皇帝は危機を知って動揺し、蕭北冥に夜煞を阻止するよう命じる。しかし蕭北冥は、今日はそのために来たのではないと告げる。そして、これまで誰も正面から語ろうとしなかった海崖の問題を、皇帝に真正面から突きつける。

海崖の悲劇を生んだのは、結局のところ**「恐れ」だった**。参風甲は恐れ、朝廷の臣下たちも恐れ、先帝も恐れ、そして今の皇帝もまた恐れていた。その恐れから真実を隠し、海崖の人々を犠牲にしたのだと蕭北冥は厳しく訴える。

皇帝は「お前は恐ろしくないのか」と問い返し、ならば海崖の一件をどう裁くべきなのかと迫る。蕭北冥は、功罪を曖昧にせず真実を語る。

北海にも罪があり、鍾雲赤にも罪があり、そして皇帝にも罪がある。

一方、功があるのは、何も知らされないまま犠牲となり、それでも今なお逃亡生活を続け、食べるものにも困りながら生きている海崖の生存者たちだと告げる。

蕭北冥が願うのは、すべての海崖の人々がいつか真実を知り、彼らのために命を落とした亡き者たちが、ようやく安らかに眠れる日を迎えることだった。

皇帝との対話を終えた蕭北冥を、外では小分隊の仲間たちと神捕営の捕快たちが待っていた。彼らは蕭北冥の帰還を喜び、互いに新たな決意を胸に歩き出す。

その後、神捕営と暗侦営は正式に協力することとなり、童双の行方を追うための捜索も始まる。諸葛孔雲と蕭北冥が事件について話し合う一方、諸葛通と方首座は二人に休むよう促す。

蕭北冥は仲間たちに「三年経った。もう一度、捕快としてどう生きるのか学び直したい」と告げる。そして街へ出た彼が向かった先には、鍾雪漫がいた。

再会した二人は強く抱き合い、過去の苦しみを乗り越えながら、今度は二人で童双を探し出すことを決意する。

 

第34話 夜煞の正体、明かされる真実

ついに童双が、自らの正体を明かす。彼こそが夜煞であり、その本当の名は北琨。かつて疾風丹を生み出した北海の息子であり、海崖の惨劇を生き延びた孤児でもあった。そして何より、蕭北冥とは血を分けた実の兄弟だった。

幼い頃、北琨は童家に引き取られたものの、そこで待っていたのは過酷な生活だった。夫人から執拗に虐げられ、人間として扱われることすらなく、ある日、唯一の心の支えだった飼い犬まで使用人たちに食べられてしまう。すべてに絶望した北琨が逃亡を決意した時、彼の前に現れたのが苗杰だった。苗杰は北琨に復讐の機会を与えると約束し、童家に火を放つ計画を立てる。こうして北琨は過去を捨て、**「童双」**として生きることになった。

やがて苗杰が死ぬと、童双は彼の「夜煞」の名を受け継ぎ、第二代夜煞となる。そして海崖で犠牲になった人々のために復讐を続けながら、同時に蕭北冥へ海崖の真実を知らせようとしていた。

しかし蕭北冥は、童双の復讐を正義とは認めない。どれほど悲惨な過去があったとしても、無関係な人々まで殺し、多くの命を奪ったことは許されないと断じる。

童双は激しい嫉妬と憤りをぶつける。蕭北冥には家族も仲間も、神捕としての居場所もある。それに対して自分には何もなかった。もし童家に引き取られたのが蕭北冥で、自分が神捕営に入っていたなら、果たして蕭北冥は今と同じように「正義」を語れたのか――。

童双は天牢第十七層へ収監される。しかし連行される直前、意味深な言葉を残す。

「明日、刑が執行される時、俺がどこにいようと、起こるべきことは起こる」

その言葉に蕭北冥は強い違和感を覚える。

その後、鍾雪漫が童双に会いに行くが、童双は彼女を挑発し続ける。怒った鍾雪漫だったが、その時、地下十八層から聞こえてきた鳥の鳴き声に気づく。彼女は異変を確かめるため、さらに深い天牢へ降りていく。

しかし、そこには不気味な霧が立ち込めていた。

蕭北冥と諸葛孔雲が駆けつけた時、鍾雪漫はすでに倒れていた。そして、最深部に幽閉されていたはずの武烈までもが死亡していた。

童双の言葉どおり、事件は新たな段階へと突入する。

 

第35話 謎の死虫と婆娑花の毒

武烈の死に続く新たな謎を追うため、蕭北冥、鍾雪漫、風清浊は虫師・豊八毛のもとを訪ね、事件現場で見つかった大量の蟻について調べてもらうことにする。豊八毛はなぜか一匹の蚕を探すことに夢中になっており、鍾雪漫が頭の上に虫がいることを見つけ、ようやく本題の捜査が始まる。

蕭北冥が持参した蟻を見た豊八毛は、生前の蟻が異常なほど興奮した状態に陥り、その影響で脱皮した後に死んだ可能性を指摘する。何らかの薬物にさらされたのではないかと考えた蕭北冥たちは、どんな薬が使われたのかを調べてほしいと依頼する。しかし、豊八毛もすぐには判断できず、自分が集めてきた資料や標本を調べる必要があるという。

そこで風清浊も一緒に調査することになるが、虫が苦手な彼は当然ながら拒否。仲間たちは「医者の道とは、まさにこういう時に人を救うことだ」と巧みに説得し、風清浊を調査室へ連れ込む。

調査の結果、豊八毛は今回の異常死を示す虫を雲機宮で見たことがあると思い出す。雲機宮には雲機道士という人物が住んでおり、変化の術を得意としていた。都の高官たちも祝い事のたびに彼を招いており、かつて皇帝の前で「千里江山図」を披露したこともあるという。

一行が雲機宮へ向かうと、そこには不穏な痕跡が残されていた。雲機道士はすでに夜煞によって連れ去られた可能性が高く、さらに宮中では、今回と同じような状態で死んだ虫が発見される。

風清浊は周囲を調べる中で、婆娑花の種を発見する。婆娑花の花粉には人の意識を鈍らせる作用があり、虫が吸い込めば即座に死んでしまうほどの毒性を持っていた。

新たな手掛かりを得た一行は、捜査を二手に分けることにする。諸葛孔云は西域から来た囚人を尋問して情報を探り、鍾雪漫と霍黛蓉は鬼市へ向かって裏社会の情報を集める。一方、蕭北冥と風清浊は雲機宮に残り、夜煞が残した痕跡をさらに詳しく調べ始める。

武烈の死から続く一連の事件は、やがて夜煞が仕掛けた新たな計画へとつながっていく。

 

第36話(最終回) 兄弟の決別、夜煞が迎える最期

童双はついに計画の全貌を明かし、「大亓はまもなく生まれ変わる」と言い放つ。実は一行は夜煞の罠に完全にはめられていた。童双の狙いは、地下水庫に毒を仕込み、やがて皇帝が民衆に「甘露」を振る舞う日に、都中の人々へ一斉に毒を飲ませることだった。

計画を阻止するため、一行は急いで地下水庫へ向かう。しかし密室に閉じ込められ、扉を開ける方法が見つからない。そこで鍾雪漫は自らの命を懸け、疾風丹の毒を飲んで力を得るという危険な賭けに出る。なんとか扉を開けることには成功するものの、毒が身体を蝕み、鍾雪漫は次第に意識を失っていく。

仲間たちは夜煞を追って水庫へ向かい、蕭北冥だけが鍾雪漫のそばに残る。しかし水庫では神捕営の仲間たちが次々と倒され、ついに童双は毒を甘露へと混入させてしまう。都の民衆は何も知らず、我先にと甘露を口にする。夜煞は計画が成功したと確信する。

一方、毒の影響で意識を失った鍾雪漫は、目の前にいる蕭北冥さえ認識できなくなり、彼に襲いかかる。蕭北冥は彼女を傷つけることができず、ただ必死に耐え続ける。

ところが三日が過ぎても、民衆には何の異変も起こらなかった。

蕭北冥は童双の前に現れ、ついに真相を明かす。**童双が毒だと思っていたものこそ、実は解毒薬「凝血丹」だったのだ。**かつて無双老人は疾風丹の解毒薬を完成させていたものの、その効能を伝える前に命を落とした。そのため凝血丹は毒薬だと誤解され、童双は知らぬまま民衆に飲ませてしまったのである。

蕭北冥は兄に、もし自分たちの立場が逆だったとしても、自分は同じ道を選ばなかったと語りかける。童双は涙を流しながらも、「もう戻れない」と悟る。そして最後に蕭北冥を**「弟」**と呼び、「来世があるなら、二度と出会わないほうがいい」と告げる。

童双は自ら命を絶つ。

その脳裏に浮かんだのは、かつて五人で旅をし、食卓を囲み、笑い合った日々だった。復讐だけを追い続けた彼だったが、振り返れば、求めていた「家族」や「仲間」は、ほんの短い間だけでも確かに手に入れていた。

しかし、それに気づいた時には、すべてが遅すぎた。

 

定風波~神捕、冥(くら)き真実を暴く~ 各話あらすじとキャスト・相関図

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