玉骨遥(ぎょっこつよう)2023年 全43話 原題:玉骨遙
第37話の見どころ
時影の記憶が戻り、朱顔が自分のために命を削っていたことを知る衝撃の展開へ。朱顔は最後の時間を師匠と過ごし、酒を酌み交わしながら舞を披露します。一方、皇帝はついに時影と白嫣の冤罪を認め、時影の皇子としての身分を回復。すべてを知った時影が神袍を脱ぎ、朱顔と生きる決意をするまでの切ない一話です。
第37話のあらすじ
時影が眠りについた後も、朱顔はその顔をじっと見つめながら、休むことなく世話を続けていた。しかし疲労は限界に達し、朱顔もまた時影のそばで眠り込んでしまう。
夢の中で朱顔は、美しく咲き誇る雪薇の花を見る。穏やかで幸せな夢だった。だが朝になって目を覚ますと、すでに日が高くなっていた。慌てて周囲に尋ねると、時影は重明とともに九疑郡へ向かったという。
自分が眠り込んでしまったことで、大司命との約束に反して時影を一人にしてしまった。朱顔は、時影が重明から真実を聞いてしまうのではないかと恐れ、急いで後を追う。
その時、空から激しい雨が降り始める。それでも朱顔は足を止めない。やがて時影の姿を見つけると、雨に濡れるのも構わず駆け寄っていく。時影はそんな朱顔の姿を見て、自分のせいで彼女を無理させてしまったと気遣う。
時影から果物を渡された朱顔は素直に礼を言い、夜になったら酒を飲もうと誘う。今日が最後の日だと分かっている朱顔の願いを、重明も察していた。こうして二人が最後の夜を過ごせるよう、重明はあえて邪魔をせず、思う存分酒を酌み交わさせる。
時影と二人きりになった朱顔は、大司命から与えられた使命を思い出し、悲しいことを考えないよう酒を飲み続ける。そして最後にもう一度だけわがままを許してほしいとばかりに、時影の前で舞を披露する。
美しい舞を目にした時影は言葉を失う。舞い終えた朱顔を見つめるうち、胸の奥に、二人がかつて愛し合っていたような感覚がよみがえってくる。時影は朱顔に、このまま一生ともに暮らすことはできないのかと問いかける。
しかし朱顔は答えを返さない。すべてを話すのは、時影が目を覚ましてからにすると決めていたからだ。
やがて酔った時影は、朱顔の肩に寄りかかるようにして眠ってしまう。朱顔は彼を重明へ預け、自分は静かに去ることを決める。そして重明に、これからも時影をしっかりと守ってほしいと託す。
朱顔が去った後、その身体は急速に弱っていく。歩くことさえままならず、何度も倒れそうになる。それでも朱顔は必死に立ち上がる。時影には、自分がこんな弱った姿を見せたくなかった。
一方、皇宮では大司命が皇帝の命をつなぎながら、時影と白嫣のために真実を明らかにするよう迫っていた。皇帝はついに、かつて自分が時影と皇后を誤解していたことを悟る。そして二人に濡れ衣を着せたことへの後悔を口にし、時影の身分を回復させることを決意する。
皇帝は息子に謝罪し、皇子としての地位を取り戻してほしいと願う。しかし大司命は、時影が再び俗世へ戻り、かつて自分を陥れた者を父として受け入れることには反対する。それでも皇帝は自ら命令を下し、時影を皇子として復位させ、青王を厳しく処罰するのだった。
その頃、朱顔はついに力尽き、道端に倒れてしまう。幸いにも青罡と白雪鷺に発見され、二人に救われる。しかし朱顔の傷は普通の医術では治療できるものではなかった。
白雪鷺は古籍を読み漁り、朱顔の命をつなぐ方法を探す。そして青族と白族に伝わる法宝を組み合わせれば、彼女を救える可能性があることを知る。
その一方、白鳳麟のもとには冰族の者たちが姿を現す。彼らは白鳳麟に協力を持ちかけ、彼と主上を嘉蘭白塔へ連れていく代わりに、塔に眠る上古の聖物を盗み出すよう要求する。白鳳麟を利用した新たな計画が、静かに動き始めていた。
そしてついに、時影は目を覚ます。失われていた記憶がすべて戻った時影は、朱顔が自分のそばにいたこと、侍女として尽くし、母との再会まで用意してくれたことを知る。
さらに重明から、朱顔が自分を愛していることを聞かされた時影は、深い自責の念に襲われる。自分を守るために、朱顔は五感を失いながら最後まで寄り添ってくれた。その事実を知った時影は、もはや運命に逆らうことを恐れてはいられなかった。
時影は大司命のもとへ向かう。そして、神官としての戦袍を脱ぎ、朱顔とともに残りの人生を生きることを決意するのだった。
第38話の見どころ
朱顔を救った白雪鷺は、これまでの行いを謝罪し、二人は過去のわだかまりを乗り越えていきます。一方、時影は神袍を脱ぐため最後の試練に挑み、幻境の中で母・白嫣と朱顔に向き合うことに。しかし、そこへ冰族十巫が襲来し、大司命が時影を守るため命を懸けます。師匠との別れが時影に大きな転機をもたらします。
第38話のあらすじ
目を覚ました朱顔は、自分が白雪鷺と青罡によって救われたことを知る。二人がともにいる姿を見た朱顔は、これまでの出来事を思いながらも、二人に心から祝福を送る。
白雪鷺もまた、過去に自分がしてきたことを朱顔へ謝罪する。しかし朱顔はそれを責めることなく、すべて過去のこととして忘れようとする。青罡が時影と朱顔の間に何があったのか尋ねようとすると、白雪鷺は朱顔が話したくないことを察し、それ以上聞かないよう彼を制する。
その後、朱顔は二人がどのように心を通わせるようになったのかを尋ねる。白雪鷺は母の位牌をいまだに家へ迎えられていないことを悔やみ、思わず涙をこぼしそうになる。それでも朱顔は彼女の気持ちを静かに受け止める。
身体が回復してくると、朱顔は青罡に、かつて自分が海国軍に変装した理由を説明する。普通の鲛人たちまで戦いに巻き込まれ、命を落とすことだけは避けたかったのだと話す。青罡も彼女の行動の意味を理解するが、それでも朝廷に対して事情を説明しなければならないと告げる。
そんな中、白雪鷺が朱顔を訪ね、時影が神袍を脱ぐための決意を固めたことを伝える。その言葉を聞いた朱顔は、身体の具合が悪いとだけ告げ、その場を離れてしまう。
一方、青罡には皇帝から新たな聖旨が届く。彼は青王の後を継ぎ、新たな青王となることを命じられる。そして冰族の者たちが九嶷山へ向かったとの知らせを受けると、時影が危険にさらされていることを察し、白雪鷺とともに山へ向かう。
その頃、時影は大司命の前に跪き、神袍を脱ぐことを後悔していないと強く言い切っていた。だが、神官として俗世を離れることを決めた者には、最後の試練が待っている。
時影は弟子たちが見守る中、試練へと進んでいく。そして幻境の中で、愛する母・白嫣と朱顔の姿を見る。
幻境の朱顔は時影に近づこうとせず、冷たい言葉を投げかける。時影が止渊を殺したのだと責め、彼を許そうとはしない。その言葉を聞いた時影は深く傷つき、自分には償うべき罪があると考える。
やがて時影は剣を手に取り、自ら命を絶とうとする。朱顔は必死に彼を止めようとするが、幻境の中では時影のもとへ近づくことさえできない。朱顔はただ外から、時影が自分自身に罰を与える姿を見つめるしかなかった。
それこそが、神官が神袍を脱ぐための最後の関門だった。すべての苦痛と罪を受け入れた時影は、ようやく試練を乗り越え、朱顔の腕の中へ倒れ込む。
しかし、その直後、冰族十巫が九嶷山へ侵入する。彼らは陣を組み、時影たちを一気に攻撃しようとする。
大司命は時影を守るため、襲い来る攻撃を一人で受け止める。次々と押し寄せる攻撃に耐えながら、決して時影のもとから離れようとはしない。
やがて大司命が倒れると、朱顔もまた立ち上がり、周囲の仲間を守ろうとする。ところが冰族の攻撃は止まらない。力を失った時影へ向けて攻撃が放たれると、大司命は再び身を挺して彼を守る。
激しい攻撃を受けた大司命は吐血し、その場に崩れ落ちる。時影はすぐに大司命を抱き起こし、必死に霊力を送り込む。しかし、どれほど力を注いでも傷は癒えない。
ついに時影は、恩師が自分の目の前で息を引き取る瞬間を見届けることになる。
その後、時影と朱顔は大司命を弔う。時影は祭壇の前で、大司命が最期に自分へ託した言葉を思い返す。自分の選んだ道を歩み、これから何を守るべきなのか。その言葉は、時影の心に深く刻まれていた。
青罡と白雪鷺も二人のもとを訪れ、必要なことがあればいつでも力を貸すと約束する。
夜になると、時雨は白雪莺を連れて密かに府へ戻り、母・青妃を弔う。そして父である皇帝の前に跪き、自らの過ちを謝罪する。
翌日、青罡は白鳳麟が関わった数々の行いを時影へ告げなかった。多くの犠牲を背負い、心身ともに疲弊している時影に、これ以上の負担を負わせたくなかったからだ。
大司命を失った今、時影は悲しみを抱えながらも、自らが選んだ道を歩み始める。そしてその先には、朱顔とともに向き合わなければならない最後の運命が待っていた。
第39話の見どころ
時影と朱顔がついに互いの想いを確かめ合い、師弟という関係を越えて結ばれる重要な回です。一方、白鳳麟の罪によって白雪鷺が新たな白王となり、朱顔も西荒へ戻って父王に時影との結婚を告げます。しかし冰族の陰謀は止まらず、止渊を操る虚遥によって朱顔が再び危機に陥ることに。二人の愛が最後の試練を迎えます。
第39話のあらすじ
朱顔が時影のもとを訪れると、これまでどおり「師傅」と呼びかける。しかし時影は、もうその呼び方をしないでほしいと告げる。朱顔は自分がもうすぐここを離れるつもりだと伝え、時影もならば自分も一緒に行くと言うが、朱顔はそれを拒む。
時影は、朱顔が止渊を殺した自分を今も恨んでいるのだと思う。しかし朱顔は、それはすべて止渊を救うための嘘だったと明かす。そして今の自分は、時影が自分を想ってくれていることに気づいている、自分もまた師匠を愛しているのだと、ついに本心を伝える。
時影は、朱顔がいまだに「命劫」を恐れていることを悟る。自分に近づけば、また自分を傷つけるのではないか。朱顔はその恐怖を捨てきれず、以前自分が傷つけた胸元にそっと触れ、まだ痛むのかと尋ねる。
時影は朱顔の手をそっと押さえ、自分の胸へ導く。そして、暗闇の中にいた自分を光のもとへ連れ出してくれたのは朱顔だったと感謝する。
それでも朱顔が言葉を続けようとした瞬間、時影は彼女の唇をふさぐように口づける。二人は固く抱きしめ合い、長い間すれ違っていた想いをようやく確かめ合うのだった。
その後、時影は十巫の首領について語る。彼はすでに死んだと思っていたが、それは自分の判断の甘さだったのかもしれない。さらに、すべての背後にいると考えていた智者もまだ生きている可能性があると推測する。
冰族が再び空桑へ攻め込んでくる危険を確信した時影は、朱顔とともに清修殿へ向かう。そこは朱顔が初めて時影の門下へ入り、師弟としての時間を始めた場所だった。
かつての記憶を思い出した二人は、互いを抱きしめる。ところが、そこへ重明が偶然現れる。二人の姿を目撃した重明は驚きを隠せない。
朱顔は、以前重明から「自分は皆と一緒に山を下りない」と聞いていたことを思い出す。重明は明るく振る舞おうとするが、時影はそんな友の気持ちを察し、強く抱きしめて別れを告げる。
旅の途中、時影と朱顔は馬車に乗り、時影は朱顔の失われた「三感」を取り戻す方法を探すと約束する。二人がともに歩む未来を選んだ証でもあった。
一方、白鳳麟は通敵売国の罪によって皇帝から処罰される。青罡は、白雪鷺も白家の一員として罪に巻き込まれるのではないかと考え、自らすべての責任を背負おうとする。
しかし白雪鷺は、兄の罪をかばうことなく真実を明らかにする道を選ぶ。その結果、彼女は新たな白王となる。一方、追い詰められた白鳳麟は、赤王の重大な罪まで暴露し、自分だけではなく赤王も道連れにしようとする。
朱顔は時影を連れて西荒へ戻り、父王のもとへ向かう。そして二人は皆の前で互いの想いを明らかにし、結婚する意思を伝える。
しかし朱顔の家族には、鲛人を匿っていた罪が残されていた。赤王一族は捕らえられ、牢へ入れられてしまう。時影は朱顔のために父王のもとへ赴き、彼女の家族を助けるよう願い出る。
その後、時影と朱顔はともに苍梧之渊へ向かい、龍神に会う。
そこで二人は、驚くべき事実を知る。死んだと思われていた止渊は、まだ生きていたのだ。
ところが、止渊は虚遥によって操られていた。朱顔は時影を救うため、曜儀の要求を受け入れざるを得なくなる。
朱顔は止渊とともに行動しながら、彼の心の奥に残る曾祖母への想いを感じ取る。そして結婚の話を持ち出されると、何とか時間を稼ごうとして逃げる機会をうかがう。しかし止渊にはすぐに見破られてしまう。
それでも止渊は朱顔を傷つけることができず、彼女への情を見せ始める。朱顔はそこにつけ込み、曜儀と過ごした過去の話を聞かせてほしいと頼む。
二人が話している間、外では激しい雨が降り始める。朱顔は時影の身を案じ、隙を見て逃げ出そうとする。
その時、止渊の意識が一瞬だけ戻る。彼は自分自身に、必ず朱顔を守らなければならないと言い聞かせる。しかし身体はなおも虚遥に支配されていた。
虚遥は朱顔を完全に曜儀へ変えてしまおうとする。朱顔は隙を見て外へ逃げるものの、出口には強固な結界が張られていた。
そこで朱顔は紙鶴を術で飛ばし、外へ助けを求めようとする。しかし止渊がそれを見つけ、紙鶴を破壊する。
それでも朱顔は最後の瞬間、密かにもう一羽の紙鶴を送り出すことに成功していた。
戻ってきた朱顔を、止渊は曜儀のように装わせ、二人で交杯酒を飲ませる。朱顔が拒むと、止渊は無理に酒を飲ませる。さらに虚遥は術を使い、朱顔の記憶から自分自身の存在を消し、完全な曜儀へ変えようとする。
必死に抵抗する朱顔だったが、力では抗えない。
その瞬間、時影が現れる。
朱顔が密かに送り出した紙鶴を受け取ったことで、時影は彼女の危機を知り、力を取り戻していた。時影と止渊は激しく戦うものの、互いに大きな傷を負い、ついには双方が倒れる。
虚遥の支配が強まる中、それでも止渊は一瞬だけ自我を取り戻し、朱顔と時影に逃げるよう告げる。
二人はその場を脱出し、虚遥に戒指を奪われないための対策を考える。しかし、最後の戦いはまだ始まったばかりだった。
第40話の見どころ
虚遥の支配によって追い詰められる朱顔と止渊、そして彼女を救うため自ら犠牲となる時影。朱顔は両親を失いながらも、皇天と後土を取り戻すため最後の作戦に挑みます。激しい戦いの末、時影は朱顔の手で自らを終わらせるという究極の選択を迫ることに。そして一年後、雪薇の花の中から現れる奇跡の再会が感動を呼びます。
第40話のあらすじ
虚遥は止渊に、曜儀はすでに亡くなっているという事実を改めて突きつける。そして、曜儀を取り戻したいなら自分と手を組むしかないと迫る。止渊は一度は拒絶するものの、愛する女性への想いを利用され、ついに虚遥と協力することを受け入れてしまう。
一方、朱顔は旅の途中で、両親が自ら命を絶ったという知らせを受ける。慌てて戻った彼女を待っていたのは、両親の冷たい位牌だった。現実を受け入れられない朱顔は、両親のもとへ駆け寄り、深い悲しみに暮れる。
虚遥は朱顔に選択を迫るため、赤族全員の命を人質に取っていた。朱顔が従わなければ、一族すべてを犠牲にするというのだ。
最愛の父と母を失った朱顔は、復讐を誓う。しかし時影はそんな彼女を抱きしめ、どれほど苦しくても生きてほしいと願う。
時影は皇帝のもとへ戻り、朱顔とともに皇天後土を取り戻すため力を貸してほしいと申し出る。そして帰ってきた二人は、簡素ながらも婚礼を挙げる。ようやく互いの想いを認め合った二人だった。
しかし、その翌朝、朱顔は時影に何も告げず姿を消してしまう。
時影が朱顔を探しに出ようとしたその時、皇帝が危篤だという知らせが届く。時影は急いで皇宮へ戻る。
皇帝は最期の力を振り絞り、息子へ自らの思いを語る。時影にすべてを託した皇帝は、そのまま静かに息を引き取る。
深い悲しみを抱えながらも、時影は気持ちを切り替え、仲間たちとともに城を守るための策を話し合う。
その頃、朱顔は高祖母・曜儀の姿に変装し、止渊のもとへ向かっていた。自分が曜儀であると思わせ、虚遥から皇天を奪うためだった。しかし止渊はすぐに偽物だと見抜く。
一方、時影は皇天の力を呼び出そうとする。しかし虚遥の力はそれを上回り、皇天は奪われてしまう。
ところが、虚遥が皇天の力を奪ったことによって、冰族の大軍は逆に凡人の身体へと変えられてしまう。時影はこの機会を利用し、戦況を変えようとする。
朱顔は再び止渊のもとへ戻り、皇天を取り戻すための方法を探る。そこへ時影も駆けつける。朱顔はとっさに時影を袖の中へ隠し、止渊の前で芝居を続ける。
朱顔は皇天の呪文を手に入れるため、完全に曜儀へ変わる覚悟を決める。時影はその危険な方法を聞いて必死に止めようとする。しかし朱顔には後土の力が加わり、法力が一気に強まっていく。
朱顔は止渊に自分を曜儀へ変えてほしいと頼み、その間に密かに呪文を唱え始める。袖の中に隠れていた時影も、その言葉を聞くことで皇天の術の本質を悟る。
そして最後の瞬間、時影は皇天の力を奪い返すことに成功する。
しかし、すべてが虚遥を欺くための芝居だったと知った止渊は、激しい怒りを見せる。朱顔と時影だけでなく、雲荒全体を敵に回す覚悟を決める。
時影は危険を察すると、止渊の前に立ちはだかる。朱顔も時影とともに戦い、二人は力を合わせて止渊と対峙する。
その一瞬、止渊の目に朱顔ではなく曜儀の姿が映る。彼の心は揺らぎ、その身体はついに崩れ落ちる。
それでも止渊は朱顔を近づけようとせず、虚遥とともに自分も消えるつもりだった。
ところが、朱顔が止渊の様子を確かめようとした瞬間、虚遥が彼女へ乗り移る。
虚遥は朱顔の心にある両親への悲しみを利用する。そして、かつて朱顔が時影を傷つけたことまで持ち出し、彼女を自責の念で追い詰めていく。
時影は、すべては朱顔のせいではないと必死に語りかける。しかし虚遥に操られた朱顔は、時影へ攻撃を加えてしまう。
それでも時影は朱顔を責めない。彼女を強く抱きしめ、自分が守れなかったことを謝る。そして朱顔に口づけすることで、虚遥を自分の身体へ移そうとする。
作戦は成功し、虚遥は時影の身体へ移る。
時影は自分の力で虚遥を封印しようとする。そして朱顔の手を取り、自分と虚遥を一緒に終わらせるよう頼む。
朱顔は泣きながらも、時影の願いを受け入れる。手にした玉骨で時影の胸を貫き、目の前で愛する人が消えていく姿を見届けることになる。
その瞬間、雪薇の花びらが静かに舞い落ちる。朱顔は地面へ落ちた花びらをそっと手に取り、時影がかつて自分へ語った言葉を思い出す。
そして一年の月日が流れる。
時雨は新たな皇帝となり、国を治め、天下を安定させていた。
朱顔は赤い衣をまとい、雪薇の木々が一面に広がる場所へ一人で立っていた。時影と交わした約束を胸に刻み、静かに言葉を紡ぐ。
そして朱顔が振り返った、その瞬間。
満開の雪薇の花の中から、一人の白衣の青年が姿を現す。
それは、朱顔がずっと待ち続けていた時影だった。
二人は言葉を交わすことなく、ただ互いを見つめる。そして、長い運命と幾度もの別れを乗り越えた二人は、静かに笑い合いながら再び向き合うのだった。

















この記事へのコメントはありません。