恋の一手は計画的に~貴公子に囲まれて~ 2025年 全26話 原題:怎敌她千娇百媚
目次
第17話偽りの失明と揺れる恋心
花神祭の最終審査の場で、陸昀は判官として羅令妤の舞を絶賛する。彼は「まるで天女が舞い降りたかのようだ」と評し、その美しさと表現力を高く評価した。しかし、この評価に納得できない陳娘子は、陸昀が自分たち全員の演目を見ていないのに判定するのは不公平だと異議を唱える。
その場の空気が張り詰める中、陸昀は冷静に対処した。自らの評価を押し通すのではなく、観客たちに選択を委ねるという新たな方法を提案したのである。皇帝もこの案に興味を示し、自らも投票に参加することを宣言したことで会場の熱気は一気に高まった。
結果として、羅令妤は圧倒的な支持を集め、見事に花神祭の花魁の座を獲得する。歓声が沸き起こる中、皇帝は褒美として願いを一つ叶えると約束した。
羅令妤は静かに前へ進み出る。そして亡き父が国に尽くして命を落としたこと、残された自分と妹が苦しい境遇に置かれていることを語った。さらに、本来なら没収されるはずだった羅家の財産を取り戻し、自らの力で家を再興したいと願い出る。その真摯な願いに皇帝は深く心を動かされ、彼女の願いを認めた。
しかし、それだけでは終わらなかった。
皇帝はさらに、羅令妤を衡陽王の妃として迎えるよう命じる。突然の赐婚に会場は騒然となるが、誰も皇帝の決定に逆らうことはできない。
その知らせを聞いた陸昀の胸には重い痛みが走った。これまで衡陽王との間で密かに抱いていた淡い希望は、一瞬にして打ち砕かれてしまう。彼は自分の想いを伝えられぬまま、愛する女性が別の男の許へ行こうとしている現実を受け入れなければならなかった。
宴が終わり、羅令妤を送り届けようとした陸昀の前に衡陽王が現れる。未来の夫として自分が送るべきだと主張する衡陽王だったが、羅令妤は迷わず陸昀と共に帰ることを選んだ。
その背中を見送りながら、衡陽王は複雑な思いを抱く。羅令妤の心が自分に向いていないことは理解していた。それでも彼は諦めるつもりはなかった。むしろ彼女を手に入れたいという想いは以前にも増して強くなっていく。
一方、陸府へ戻った陸昀は医師の診察を受ける。毒の影響で視力を失っていたが、回復の時期は誰にも分からないという診断だった。銀川は心配でたまらない様子だったが、陸昀自身は意外にも落ち着いていた。
やがて二人きりになると、陸昀は羅令妤に尋ねる。
「本当に衡陽王を慕っているのか?」
羅令妤は少し困ったように笑いながら答える。
「皇帝陛下の御命令ですもの。私に断る資格などありません」
その答えは陸昀の心をさらに苦しめた。彼女の言葉は現実的だったが、その中に愛情の有無は見えてこなかったのである。
その頃、もう一つの恋模様も静かに動き始めていた。
常宜王は周揚霊を馬車で送り届ける途中、彼女への違和感をますます強めていた。男装しているはずの周揚霊に喉仏がないことに気付いたのである。
さらに馬車がぬかるみに嵌まり、二人で押しているうちに常宜王は泥だらけになってしまう。周揚霊の家で身体を洗うことになったが、熱湯を運んできた彼女が誤って浴槽の中へ湯をぶちまけてしまい、大騒ぎとなった。
慌てて逃げ出した周揚霊の姿を見ながら、常宜王はついに彼女が女性であることを確信する。しかし彼はあえて秘密を暴かず、今は知らないふりを続けることにした。
翌朝、陸昀は目を覚ます。
すると驚くべきことに、失われていた視力が完全に戻っていた。
だが昨夜、羅令妤が優しく寄り添い、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれたことを思い出した陸昀は、ある大胆な考えを思いつく。
「このまま治ったと言うのは惜しいな……」
そう呟いた彼は銀川に布を持って来させ、再び目隠しを巻いた。
失明したままを装うことで、少しでも羅令妤との距離を縮めようと考えたのである。
やがて羅令妤が見舞いに訪れ、彼を優しく支えながら庭へと連れ出した。その様子に満足げな陸昀だったが、そこへ衡陽王が現れる。
何も知らない衡陽王は親しげに陸昀の腕を掴み、そのまま東屋へと案内する。
突然始まった二人の男による静かな恋の駆け引きの中、視力が回復していることを隠し続ける陸昀は、果たして最後まで秘密を守り通せるのだろうか。
次回の見どころ
皇帝による衡陽王との赐婚により、羅令妤を巡る三角関係はさらに複雑さを増していく。視力が戻ったにもかかわらず失明を装う陸昀は、羅令妤との距離を縮めようと画策。一方で衡陽王も正式な婚約者として積極的に動き始める。さらに周揚霊の女装の秘密に気付いた常宜王との関係にも新たな変化が訪れる。恋と権力、そして隠された真実が交錯する波乱の展開から目が離せない。
第18話 明かされる父の死の真相
皇帝による賜婚が下されて以来、陸昀、羅令妤、衡陽王の三人の関係は微妙な均衡の上に成り立っていた。
ある日、衡陽王府を訪れた陸昀に対し、衡陽王はあえて親しげな態度を見せる。だがその裏には、陸昀の本心を試そうとする意図が隠されていた。衡陽王は熱い茶を無理やり飲ませながら、近いうちに羅令妤と婚礼の品を選びに出かける予定だと語る。
その言葉はまるで宣戦布告のようだった。
しかし陸昀も負けてはいない。
「婚礼までまだ一か月以上あります。その間に何が起こるかは誰にも分かりません」
そう静かに答えた彼の言葉には、決して諦めていないという強い意志が込められていた。
一方の羅令妤は、衡陽王からの外出の誘いを体調不良を理由に断る。もちろん本当に具合が悪いわけではない。今の彼女は、衡陽王との婚約に複雑な思いを抱えながらも、自分の気持ちを整理できずにいたのである。
衡陽王が帰った後、彼女は陸昀のもとを訪れる。
失明中の陸昀のために書物を読み聞かせるのが、いつしか二人の日課になっていた。
羅令妤は優しく本を読み上げるが、時折読み間違えたり、文字を飛ばしてしまったりする。そんな小さな失敗を陸昀がすぐに指摘するたびに、彼女の中にはある疑念が芽生えていた。
「本当に見えていないのかしら……?」
だが、はっきり問いただすことはできなかった。
陸昀がこれまで何度も自分を救ってくれたことを思えば、多少の疑問があっても見て見ぬふりをしたかったのである。
そんな中、陳娘子が見舞いの品を持って訪ねてくる。
かつては羅令妤の最大のライバルだった彼女だが、花神祭での一件を経て以前ほど敵意はなくなっていた。むしろ羅令妤の実力や人柄を認め始めていたのである。
帰り際、陳娘子は静かに言った。
「皇帝陛下の賜婚は覆せないわ。苦しんでも結果は変わらないかもしれない」
その言葉に対し、羅令妤は落ち着いて答える。
「たとえそうだとしても、私は誰かに依存して生きるつもりはありません」
陸昀だけが人生の全てではない。
彼女は自らの力で未来を切り開こうとしていた。
その強さに、陳娘子は改めて感心するのだった。
夜になると、陸昀は再び王陽明が残した詩集の解読に没頭する。
王陽明は命を懸けて何かを伝えようとしていた。
その詩集には、北褚と鎮北軍の癒着に関する秘密が隠されていると考えられていたが、解読は難航していた。
翌日、羅令妤が部屋を訪れると、机の上には大量の書物が広げられていた。
失明中のはずの陸昀が読書しているように見えたため、彼女の疑念はさらに深まる。
怒った羅令妤は、そのまま衡陽王との外出に応じてしまう。
彼女が去った後、陸昀は大慌てだった。
「まずい……本当に疑われている」
慌てた陸昀は銀川に命じ、一時的に視力が落ちたように見せる薬を探させる。
恋愛のためにここまで必死になる陸昀の姿は、普段の冷静な彼からは想像できないものだった。
その頃、陸昀の兄・陸遠が弟を見舞いに訪れていた。
兄は今回の負傷が王陽明事件と関係していることを察していたが、陸昀は多くを語らない。
危険な捜査に家族を巻き込みたくないという思いがあったからだ。
一方、衡陽王は羅令妤を連れて戦死した兵士たちの遺族を訪問していた。
傷んだ家屋の修繕費を負担し、生活に困る家族へ援助を行う衡陽王の姿は誠実そのものだった。
遺族たちも彼を心から慕っている。
その光景を見た羅令妤は胸を打たれる。
本来なら、この機会に衡陽王へ自分の本当の気持ちを伝えるつもりだった。
しかし、彼の優しさに触れたことで言葉を飲み込んでしまう。
「もう少しだけ時間をください」
そう心の中で呟くのだった。
その頃、常宜王は密かに陸昀と接触していた。
彼は各地から集めた複数の詩集を持参し、解読作業を手伝う。
さらに羅令妤との恋についても忠告する。
「衡陽王との婚約を覆すのは難しい。諦めるべきだ」
だが陸昀は首を横に振った。
「まだ終わっていない」
彼にはどうしても確かめたい真実があった。
そして数日後――。
ついに長年隠されていた秘密が明らかになる。
王陽明の詩集に隠された暗号を解読した結果、陸昀は父・陸節将軍の死に関する衝撃の事実へ辿り着いたのである。
父は戦場で偶然命を落としたのではなかった。
鎮北軍内部の重大な秘密を知ったために口封じとして利用され、敵軍に情報が流されていたのだ。
側面から奇襲を仕掛けようとした陸節将軍の部隊は、なぜか敵に待ち伏せされていた。
その結果、部隊は壊滅し、父も命を落としたのである。
つまり、軍内部には長年にわたり裏切り者が潜んでいたということだった。
真実を知った陸昀は愕然とする。
父の名誉、家族の運命、そして自分が追い続けてきた事件の全てが一つに繋がった瞬間だった。
ちょうどその時、部屋へ入ってきた羅令妤は、目を赤くした陸昀の姿を見る。
いつも冷静沈着な彼が感情を露わにしている姿に驚き、何があったのか問いかける。
陸昀は震える声で語り始める。
父の死には陰謀があったこと。
その黒幕が鎮北軍に関係していること。
そして自分が今、その真相へ近づいていることを――。
二人の前に現れた巨大な陰謀は、やがて樾州全体を揺るがす大事件へと発展していくのだった。
次回の見どころ
陸昀は父・陸節将軍の死の裏に潜む陰謀へとさらに迫っていく。一方、衡陽王との婚約に揺れる羅令妤は、自らの本心と向き合わなければならなくなる。偽りの失明を続ける陸昀の秘密も限界が近づき、二人の関係は新たな局面へ。さらに軍内部に潜む裏切り者の存在が明らかとなり、恋愛模様だけでなく樾州を揺るがす巨大な陰謀が動き始める。次回、物語は恋と権力、そして復讐が交錯する新章へ突入する。
第19話 葡萄棚の告白と王妃の仮面
陸昀はついに父・陸節将軍の死の真相へと近づき始めていた。
長年「戦死」として語られてきた父の最期。しかし王陽明が残した暗号と数々の証拠によって、その死の裏には軍内部の裏切りと北褚の間者の存在が隠されていることが明らかになりつつあった。
父の無念を晴らすためならば、どれほど危険な道であっても進む。
そんな陸昀の揺るがぬ決意を、羅令妤は静かに見守っていた。
彼女自身もまた、家族の名誉と財産を取り戻すために数々の困難を乗り越えてきた。だからこそ、真実を求めて突き進む陸昀の姿に、自分と重なる部分を感じていたのである。
北褚の間者たちの名が記された重要な名簿を手にした陸昀は、これこそが事件解決の鍵になると確信する。そして同時に、これ以上自分の気持ちを隠しておくことはできないと悟った。
その日、二人は葡萄棚の下で向かい合っていた。
夕暮れの柔らかな光が葉の隙間から差し込み、静かな風が吹き抜ける。
緊張した面持ちの陸昀は、ついに胸の奥に秘め続けてきた想いを口にする。
これまで何度もすれ違い、衝突しながらも気付けば目で追い、守りたいと思うようになっていたこと。
羅令妤だけが、自分の人生に特別な意味を持つ存在になっていたこと。
その全てを率直に伝えた。
すると羅令妤は少しも驚いた様子を見せなかった。
むしろ柔らかな笑みを浮かべながら答える。
「私の心にも、ずっと想っている人がいます」
その言葉に陸昀の胸は高鳴る。
そして次の瞬間、その相手が自分であることを悟った。
二人の距離は自然と縮まり、葡萄棚の下で静かに抱き合う。
これまで幾度も遠回りをしてきた二人だったが、ようやく互いの気持ちを確かめ合うことができたのである。
しかし、その幸せな時間は長くは続かなかった。
羅令妤には、どうしても向き合わなければならない相手がいた。
それは衡陽王だった。
後日、羅令妤は自ら衡陽王との面会を申し出る。
突然の誘いに衡陽王は大喜びする。
これまで何度も距離を置かれてきた彼にとって、彼女から会いたいと言われたことは大きな希望だった。
側近たちは羅令妤の態度の変化に警戒を示したが、衡陽王は信じたかった。
たとえわずかな可能性でも、彼女の心が自分へ向くかもしれないと願っていたのである。
陸府で再会した二人。
衡陽王は初めて出会った日のことを語り始める。
暴走した馬から自分を守ろうと飛び出してきた少女。
恐怖よりも他人を助けることを優先したその姿に心を奪われたこと。
それ以来、彼女だけが特別な存在になったこと。
一つひとつの言葉に偽りはなかった。
だが羅令妤もまた誠実だった。
彼女は真っ直ぐ衡陽王を見つめて言う。
「私は王爺を尊敬しています。ですが、それは恋ではありません」
静かな拒絶だった。
衡陽王は深く傷つきながらも、彼女の本心を理解する。
もしもっと早く出会っていたら。
もし別の場所だったら。
そんな思いが胸をよぎる。
しかし羅令妤は首を横に振った。
「きっと時間の問題ではありません」
その言葉によって、衡陽王もついに現実を受け入れるしかなかった。
二人が別れる瞬間、夜空に花火が打ち上がる。
美しい光が夜空を彩る中、羅令妤は微笑みながら振り返った。
その笑顔は、初めて出会った頃と変わらぬ優しさに満ちていた。
一方その頃、陸昀は皇宮へ向かっていた。
父の無念を晴らすため、本格的に官職へ就く決意を固めたのである。
これまで何度も朝廷からの誘いを断ってきた陸昀だったが、真相を追うためには権限が必要だった。
そして彼は皇帝にもう一つの願いを申し出る。
それは衡陽王と羅令妤の婚約を取り消してほしいというものだった。
皇帝は激怒する。
自ら下した賜婚を覆せと言われたのだから当然だった。
そこで皇帝は羅令妤を宮中へ呼び出し、本人の意思を確かめることにする。
羅令妤も陸昀と同じ考えを口にした。
衡陽王を慕っていないこと。
自分の人生を自分で選びたいこと。
予想外の返答に皇帝は困惑する。
戦功赫々たる衡陽王との婚姻を断る女性など、これまで存在しなかったからだ。
しかし羅令妤は花神祭の話を持ち出す。
花神は他人が決めるものではなく、多くの人々の心が選んだ結果だった。
結婚も同じであり、一方的な命令だけで決めるべきではないと訴えた。
その時、衡陽王もまた皇帝への拝謁を求めて現れる。
そして誰も予想しなかった言葉を口にした。
「婚約を取り消してください」
愛する人のために、自ら身を引く決断だった。
さらには自らの軍功を返上してでも羅令妤の自由を守りたいと願い出る。
その覚悟に皇帝も心を動かされた。
長い沈黙の末、ついに皇帝は賜婚の撤回を認める。
こうして羅令妤は自由の身となった。
だが彼女は意外な提案を口にする。
婚約解消の事実はしばらく秘密にしてほしいというのである。
表向きは未来の衡陽王妃として振る舞い、その立場を利用して軍営内部の調査に協力したいというのだ。
その言葉に陸昀も衡陽王も驚く。
しかし同時に深く感謝した。
これは単なる恋愛問題ではない。
陸節将軍の死の真相、北褚との内通者、軍内部の陰謀――。
全てを暴くための危険な戦いが始まろうとしていた。
そして羅令妤は、自らその渦中へ飛び込む決意を固めたのである。
次回の見どころ
ついに互いの想いを確かめ合った陸昀と羅令妤。しかし二人の前には、軍内部に潜む裏切り者という巨大な敵が立ちはだかる。婚約解消が密かに認められた一方で、羅令妤はあえて未来の王妃という立場を利用し、危険な潜入調査へ協力することを決意。衡陽王もまた二人を支えるために動き始める。恋と友情、そして父の復讐を懸けた戦いが新たな局面へ突入する。
第20話 父たちが遺した密道の秘密
衡陽王との婚約問題が一段落したものの、陸昀たちの前には新たな謎が立ちはだかっていた。北褚との内通者を暴き、陸昀の父の死の真相を解き明かすための戦いは、いよいよ核心へと近づいていく。
ある夜、常宜王は極秘に陸昀を訪ね、一冊の名簿を手渡した。その中には、鎮北大営で陸昀の父と共に戦った孔先生の名が記されていた。孔先生は長年にわたり衡陽王から厚い信頼を寄せられてきた人物であり、軍中でも重要な地位に就いている。だが近頃集まった証拠の数々は、彼が北褚との内通に関わっている可能性を示していた。
さらに同じ頃、北褚では新皇帝が即位したとの報が届く。かつて三皇子として静かに機会をうかがっていた人物が帝位を継ぎ、その側近には南樾の内通者が存在すると噂されていた。この情報は朝廷や軍内部にも大きな衝撃を与え、樾州の空気は一気に緊張感を増していく。
一方、陳相府では陳繍が偶然にも黒衣の人物が密書を運ぶ現場を目撃する。以前から夫の行動に違和感を抱いていた彼女だったが、その瞬間、夫が北褚と繋がっているという疑念が確信へと変わる。国家を揺るがす陰謀は、すでに樾州の中枢にまで入り込んでいたのである。
そんな重苦しい空気の中でも、衡陽王と羅令妤は常宜王と周揚霊の仲を後押ししようとしていた。女装した周揚霊はいつにも増して美しく、常宜王は改めて彼女への想いを募らせる。しかし彼は、かつて周揚霊が別の男性と深い関係にあると思い込み、自ら身を引こうとしていた過去を思い出す。
ようやく心から想う相手が周揚霊だったと気付いた時には、すでに婚約解消の話が進んでいた。常宜王は切ない気持ちを抱えながらも、彼女の幸せを第一に考えようとしていた。
その頃、羅令妤にも待ち望んでいた出来事が訪れる。皇帝の許可を得て、ようやく羅家の遺産を受け取る日がやって来たのだ。長年の苦労が報われると期待しながら、妹の婳児や霊犀と共に役所へ向かった羅令妤。しかし渡された大きな箱の中に入っていたのは財宝ではなく、一幅の掛け軸だけだった。
そこには「一生要強」という力強い四文字が記されているだけだったため、羅令妤は大きな落胆を隠せない。父が残した遺産がこれだけだったのかと失意のまま帰宅する。
だがその夜、思いがけない発見が彼女を待っていた。
落ち込むあまり流した涙が掛け軸に落ちると、紙の下からうっすらと別の模様が浮かび上がったのである。不思議に思った羅令妤は水で濡らしてみる。すると掛け軸は二重構造になっており、その内側から一枚の古い地図が現れた。
宝の地図かもしれない――。
羅令妤と妹たちは大喜びする。しかし地図が示す場所は、現在北褚の支配下にある泾陽付近だったため、すぐに現地へ向かうことはできなかった。
翌日、羅令妤から地図を見せられた陸昀は、その瞬間に表情を変える。
彼は地図の細部を慎重に確認した後、これは宝の在り処を示すものではなく、軍事用の秘密通路を記した「密道図」だと断言したのだ。
さらに地図の隅には、幼い頃に自分が父のために作った特製の印章が押されていた。
つまり、この地図は陸昀の父が生前に作成した可能性が極めて高い。
陸昀はただちに行動を開始する。羅令妤には周揚霊との面会を頼み、自身は衡陽王と常宜王を呼び出して極秘会議を開いた。
客桟に集まった三人を前に、陸昀は父の残した地図について説明する。羅令妤の父は当時郡守として陸父と共に戦っていたため、この密道の存在を知っていた可能性が高い。そのため後世に真実を伝えるべく、家訓の掛け軸の中へ地図を隠したのではないかと推測する。
話を聞いた衡陽王は大きな衝撃を受ける。
なぜなら、その事実は孔先生への疑念をさらに強めるものだったからだ。
孔先生は幼い頃からの友人であり、衡陽王にとって最も信頼する人物の一人だった。しかし陸昀が集めた証拠は、父が命を落とした事件の背後に孔先生と陳昊将軍の存在がある可能性を示していた。
当時、陸父は軍中に潜伏していた二人の北褚細作を追い詰めていた。しかし決定的な証拠を掴む直前に襲撃を受け、命を落としている。
もしその二人が孔先生と陳昊だったとすれば――。
二十年以上封印されていた陰謀の全貌が明らかになる日も近い。
羅令妤が偶然見つけた一枚の地図は、失われた遺産ではなく、国家の命運を左右する重大な証拠だったのである。
陸昀、衡陽王、常宜王、そして羅令妤。
それぞれの想いを胸に秘めた四人は、父たちが命を懸けて守ろうとした真実へと、一歩ずつ近づいていくのだった。
次回の見どころ
陸昀たちは密道図の解読を進め、父の死に隠された陰謀へさらに迫っていく。一方、衡陽王は信頼してきた孔先生への疑念と友情の間で苦悩することに。羅令妤もまた危険な真相へ足を踏み入れ、思わぬ形で事件の渦中へ巻き込まれていく。果たして密道の先に隠された秘密とは何なのか。そして北褚との内通者の正体は――。物語はついに最大の謎へと動き始める。
恋の一手は計画的に~貴公子に囲まれて~ 22話・23話・24話・25話・26話(最終回) あらすじ
















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