女医明妃伝

女医明妃伝~雪の日の誓い~

女医明妃伝~雪の日の誓い~ 1話・2話・3話・4話・5話 あらすじ

女医明妃伝~雪の日の誓い~ 2016年 全50話 原題:女医・明妃傳

第1話「禁じられた医の志」

明の時代、厳格な礼教が社会を支配していた。女性は家の外で目立つことを許されず、病に苦しんでも男性医師の診察を受けられないことが珍しくなかった。ましてや女性が医術を学ぶことなど世間の非難の的であり、医師を志す女性にとっては過酷な時代だった。そんな中、将軍・杭綱の娘として育った允賢(いんけん)は、人知れず医学への情熱を抱いていた。

ある日、徐侍郎家で開かれた老夫人の誕生日祝いに父の代理として出席した允賢は、庭に生えていた貴重な薬草・鉄皮石斛に目を留める。薬草を採ろうとしていたところ、侍女の紫蘇が謎の男に人質に取られている場面に遭遇する。その男は毒に侵され命の危機に瀕していた。恐怖を感じながらも見捨てることができなかった允賢は、薬草を与えて応急処置を施し、その命を救う。実はこの男こそ、皇帝の弟である郕王・朱祁鈺(しゅきょく)だった。

その頃、宮廷では後継者問題を巡る陰謀が渦巻いていた。若き皇帝・朱祁鎮が宦官の曹吉祥を重用していることに不満を抱く孫太后は、朱祁鈺を新たな皇帝に擁立しようと画策していた。一方、権勢を誇る曹吉祥は自らの地位を守るため、密かに朱祁鈺の命を狙っていたのである。追っ手が徐家に踏み込んだことで宴席は大混乱に陥る。

その最中、徐家の老夫人が突然倒れ、脳卒中のような症状を起こしてしまう。医師もおらず、周囲がなすすべもなく慌てふためく中、允賢だけは冷静だった。幼い頃から祖母に教わった医術を頼りに針を打ち、瀉血を施して応急処置を行う。見事な処置によって老夫人は一命を取り留め、居合わせた人々は允賢の知識と度胸に驚嘆するのだった。

しかし、人命を救った喜びも束の間だった。帰宅した允賢を待っていたのは父・杭綱の厳しい叱責である。実は杭家はかつて名門医師一族・譚家の血を引いていた。祖父は宮廷の陰謀によって罪を着せられ、一族は壊滅。祖父は家族を守るため自害し、兄も逃亡の途中で命を落としていた。譚家は生き延びるために姓を変え、医術を捨てることを家訓としていたのである。

それでも允賢は医の道への憧れを捨てられなかった。祖母もまた、代々受け継がれてきた譚家の医学を絶やしたくないという思いから、密かに允賢へ医術を教え続けていたのだ。人を救う喜びと家族の悲しい過去。その狭間で揺れる允賢の運命は、この日を境に大きく動き始めるのだった。


第2話「運命の出会い」

徐家の老夫人を救った後、允賢は自らの処方に不備がなかったかを気にかけていた。祖母に薬方を確認されたところ、わずかな誤りが見つかり、急いで修正することになる。幸い大事には至らなかったものの、老夫人の回復が思うように進まないことに允賢は責任を感じていた。人の命を預かる医術の重みを改めて痛感したのである。

そんな中、允賢は永慶庵へ参拝に訪れる。そこで彼女は病に苦しむ人々を助け、医師としての才能を発揮する。住職の静慈師太はその慈悲深さに感心し、允賢を高く評価する。折しも、流産によって危険な状態に陥った于夫人を救ってほしいという願いが舞い込む。于大人は人格者として知られていたが、男女の別という慣習に縛られ、男性医師を呼ぶことをためらっていたのだった。

人命を救いたい気持ちと父の教えとの間で葛藤する允賢。そんな彼女の前に現れたのが、自らを元宝と名乗る陽気な青年だった。軽薄で遊び人にしか見えない元宝だったが、人助けには驚くほど積極的で、允賢を説得して于家へ向かわせる。道中では互いに反発し合いながらも、二人は協力して危篤状態の于夫人を救うことに成功する。

治療後、允賢は薬を処方するが、その中に含まれる高価な阿膠を買う余裕が于家にはなかった。すると元宝は迷うことなく金元宝を差し出し、費用を負担しようとする。しかし清廉潔白な于大人は施しを拒否。允賢と元宝は懸命に説得し、ようやく于大人は二人の善意を受け入れるのだった。

帰り道、元宝は太后に重用される宦官たちによって于大人が不当に苦しめられていることに憤りを見せる。允賢は彼を何らかの失敗で太后の怒りを買った青年だと思い込み、汪国公に取りなしてもらえばよいと助言する。しかしその言葉に元宝は激しく反発する。允賢はまだ知らない。この自由奔放な青年こそ、世間から放蕩皇帝と噂される大明皇帝・朱祁鎮その人であることを。そして彼の胸に太后への複雑な感情が渦巻いていることを――。


第3話「芽生える想い」

于夫人を救った帰り道、允賢は元宝こと朱祁鎮と口論になってしまう。怒った彼が立ち去った後、一人で馬車を操ることになった允賢だったが、突然馬が暴走し危険な状況に陥る。その時、颯爽と現れたのが郕王・朱祁鈺だった。彼は巧みに馬を落ち着かせ、允賢を危機から救い出す。

命の恩人に礼を述べようとした允賢は、彼こそ徐家で助けたあの青年であることに気づく。朱祁鈺もまた、鉄皮石斛を譲ってくれた心優しい女性が允賢であると知り、二人の距離は急速に縮まっていく。同じ目的地である永慶庵へ向かう道中、穏やかな会話を重ねる二人。傷口を気遣った允賢が自分のハンカチを差し出す場面には、互いへの好意が自然とにじみ出ていた。

その後、朱祁鈺は偶然拾った允賢の壊れた簪を修理するため、都で評判の店へ持ち込む。彼女のことをもっと知りたいという思いが日に日に強くなっていた。一方、于大人夫妻は杭家を訪れ、允賢への感謝を伝える。父に再び医術のことが知られるのではと怯える允賢だったが、于大人は事情を察して秘密を守り、さらに彼女を義娘に迎えたいと申し出る。こうして両家の絆はより深いものとなった。

于夫人の紹介で社交の場に出た允賢は、女性が医術を学ぶことへの偏見にさらされる。しかし彼女は機転を利かせ、美容に効果のある七白膏を紹介することで場の空気を和ませる。その聡明さに多くの夫人たちは感心し、允賢への見方を改めていく。

一方で宮廷では緊張が高まっていた。孫太后は再び朱祁鈺に皇位継承を迫るが、彼は兄である皇帝への忠誠を貫き、断固として拒否する。その態度に激怒した太后は、朱祁鈺へ厳しい罰を与えるのだった。恋心が芽生え始めた二人の前に、宮廷の陰謀という大きな壁が立ちはだかろうとしていた。

第4話「忍び寄る陰謀」

孫太后の意向に従わず、兄である皇帝への忠誠を貫いた郕王・朱祁鈺。その頑なな態度はついに太后の怒りを買い、彼は宮中に幽閉されてしまう。郕王を慕う汪美麟は何とか助けようと奔走するが、父である汪国公に制止される。汪国公にとって何より重要なのは娘を皇后にすることであり、そのためには郕王が一時的に失脚することも利用価値のある出来事だった。宮廷ではそれぞれの思惑が複雑に絡み合い、皇位を巡る争いはますます激しさを増していく。

その裏で暗躍するのは、権勢を誇る宦官・王振だった。永慶庵で郕王を捕らえ損ねた王振はなおも執念深く追跡を続け、朝廷内の対立をさらに煽ろうとしていた。一方、宮廷の陰謀とは無縁に見えた允賢にも新たな災難が降りかかる。徐侍郎が息子の嫁として允賢を迎えたいと申し入れてきたのだ。しかし医術への夢を抱く允賢は迷うことなく縁談を断る。その結果、面目を潰された徐侍郎は激怒し、父・杭綱もまた世間体を損ねたことに怒りをあらわにする。理解されない苦しみに耐えながら、允賢は改めて自らの生き方を考え始める。

数日後、義母の家で徐夫人と再会した允賢は、思いがけず温かい言葉をかけられる。徐夫人は縁談を断ったことを責めるどころか、むしろ彼女を気遣ってくれたのだった。さらに咳の症状に悩む徐夫人を見かねた允賢は、祖母の忠告を忘れて薬を処方してしまう。人を助けたいという純粋な思いからの行動だったが、それが後に大きな悲劇を招くことになる。

半月後の深夜、杭家に怒号が響き渡る。徐侍郎が家人を引き連れて押しかけ、允賢の処方した薬が原因で妻が亡くなったと告発したのだ。突然の知らせに家中が騒然となる中、杭綱は激しい怒りに駆られ、娘を責め立てる。長年胸の内に抱えていた一族への恨みや苦しみが噴き出し、彼はついに允賢へ「お前が生まれてから不幸ばかりだ」と言わんばかりの言葉を浴びせる。父の冷酷な本心を知った允賢は深く傷つきながらも、自らの潔白を訴え続ける。

やがて裁きの場が設けられ、允賢は被告として法廷に立たされる。徐夫人の死因を巡り証拠が並べられる中、かつて徐老夫人を治療した件まで蒸し返され、彼女はますます不利な立場へ追い込まれていく。そして判決が下るまでの間、允賢は牢へ送られることになる。誰もが絶望的な状況だと思う中、この事件を担当する太医院の役人が、かつて譚家を陥れた一族と関係する人物であることが明らかになる。知らぬ間に、允賢は祖父の代から続く因縁の渦へと足を踏み入れていたのだった。


第5話「牢獄に咲く医の心」

無実を訴えながらも牢へ収監された允賢。しかし彼女は自らの境遇を嘆くより先に、病に苦しむ囚人たちの姿に目を向ける。劣悪な環境の中で十分な治療も受けられず、多くの女性たちが病を抱えていた。允賢は自身も囚人でありながら、一人ひとりの脈を診て症状を確かめ、何とか助けようと力を尽くす。その姿は周囲の囚人たちの心を少しずつ動かしていった。

一方、軟禁状態に置かれていた郕王・朱祁鈺は、允賢の投獄を知って衝撃を受ける。彼は彼女が人を害するような人物ではないと信じ、自らの玉佩を託して旧知の役人に調査を依頼する。何としても真相を突き止め、允賢の名誉を回復したいという思いが彼を突き動かしていた。その頃、皇帝・朱祁鎮もまた郕王の行方を案じ、王振の暗躍を疑い始めていた。

牢内で病人のために薬を求めた允賢だったが、役人たちはまともに取り合わない。そんな中、彼女は食事を運ぶ羅大娘という女性と出会う。羅大娘は民間療法に精通した“薬婆”であり、身近な材料を利用した独自の治療法を知っていた。最初は驚く允賢だったが、爪やミミズなど一見薬には見えない材料が実際に効果を発揮する様子を目の当たりにし、医学の奥深さを改めて学ぶ。羅大娘もまた、女性医師を志す允賢の志に心を打たれ、多くの知識を惜しみなく授けるのだった。

その頃、宮中では王振の専横がますます目立つようになっていた。皇后でさえ彼を咎めることができず、朝廷の腐敗は深刻さを増していく。そんな中、郕王は允賢を救うため、これまで拒み続けてきた太后の提案に耳を傾ける姿勢を見せる。彼女を助けるためならば、自らの信念さえ犠牲にする覚悟を固めつつあった。

やがて再び公の審理が開かれる。允賢は徐夫人の侍女への尋問を求め、亡くなる前から徐夫人が別の医師・万寧の薬を服用していた事実を突き止める。允賢の処方は体を潤す薬、万寧の薬は体を温める薬であり、両方を同時に服用したことが死因につながった可能性が浮上するのだった。

しかし真実が見え始めたにもかかわらず、事件は新たな壁に突き当たる。万寧を推薦したのは太医院の重鎮・陳院判であり、彼の責任問題に発展しかねなかった。自らの名誉を守りたい陳院判は、真実を知りながらも万寧をかばう決意を固める。そして甥の程村霞にも、法廷で允賢を擁護する発言を禁じるのだった。ようやく見えかけた無罪への道は、権力者たちの思惑によって再び閉ざされようとしていた。

 

女医明妃伝~雪の日の誓い~ 6話・7話・8話・9話・10話 あらすじ

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