入青雲 2025年 全36話 原題:入青雲
第5話の見どころ
紀伯宰の壮絶な過去と恩師・博語嵐との出会いが明かされ、彼が復讐に生きる理由がより鮮明になります。一方、明意は紀伯宰の信頼を得るため自ら危険へ飛び込み、二人の距離は急速に縮まっていきます。傷ついた明意を優しく介抱する紀伯宰の姿や、葱油餅を通じて描かれる心温まる交流は、本作屈指の名場面です。恋心が芽生える一方で、極星淵では新たな陰謀が動き始め、復讐と権力争いがさらに激化していきます。
第5話のあらすじ
幼い頃の紀伯宰は、罪人として暗く過酷な環境で育ち、日々いじめや虐待に耐えながら生きていました。逃げ場のない絶望の中でも生きることを諦めず、ついには命懸けで牢獄から脱出します。行く当てもなく荒野をさまよっていた彼を救ったのが、名医として知られる博語嵐でした。
博語嵐は、苦難に屈することなく生き抜こうとする紀伯宰の強い意志を見抜き、自らの弟子として迎え入れます。初めて温かな居場所を得た紀伯宰は、師のもとで知識や術を学び、人としての生き方を教えられていきます。この出会いこそが、現在の紀伯宰を形づくる大きな転機となっていました。
その頃、明意は紀伯宰の信頼をさらに勝ち取るため、新たな芝居を仕掛けます。博語嵐の肖像画を取りに行く危険な役目を自ら引き受け、「あなたの代わりに私が行きます」と健気に申し出たのです。本来であれば紀伯宰が止めると読んでいましたが、彼は意外にもその申し出を受け入れます。
戸惑いながらも計画を続けるしかなくなった明意は、慎重に肖像画へ近づきます。しかし、そこには巧妙な罠が仕掛けられていました。肖像画へ手を伸ばした瞬間、噬霊箭が放たれ、二人へ襲い掛かります。
紀伯宰はとっさに明意を守ろうとしますが、明意もまた彼と肖像画を守るため、自ら矢の前へ飛び込みます。鋭い矢は彼女の肩を深く貫き、鮮血が衣を赤く染め上げます。その姿を目の当たりにした紀伯宰は、これまで見せたことのない動揺を隠せませんでした。
翌朝、沐斉柏は新たに司判堂の主事となった司徒嶺を呼び出し、肖像画盗難事件の調査を命じます。しかし司徒嶺は、自分には霊脈がなく危険な任務は務まらないとして固辞します。やむなく沐斉柏は言笑へ命令を変更し、事件の真相を探らせることにします。
言笑は法器を用いて無帰海を詳しく調べ始めますが、明意は肩の傷を必死に隠しながら巧みに受け答えを続けます。言笑は不審な点を感じながらも決定的な証拠を見つけられず、何も得られないまま引き下がるしかありませんでした。
調査が終わると、無理を続けていた明意の傷が悪化します。紀伯宰は自ら薬を塗り、傷口を丁寧に手当てします。さらに彼女が空腹であることを察すると、市場まで足を運び、焼きたての葱油餅を買ってきます。
思いがけない優しさに触れた明意は、幼い頃の記憶を思い出します。青雲大会へ出場するたび、母・鏡舒が必ず焼いてくれた葱油餅。その懐かしい味と温もりが胸によみがえり、思わず涙がこぼれ落ちます。
紀伯宰は肩の痛みがひどくなったのだと勘違いし、心配そうに明意を支えます。明意はその機会を逃さず彼へ寄り添い、自分の気持ちを素直に打ち明けるように振る舞います。そして紀伯宰が「もう君を一人にはしない」と約束すると、明意は心の中で作戦が成功したことを喜ぶのでした。
一方、極星淵では病床に伏す神君を見舞おうとした天璣公主が、言笑に行く手を阻まれます。二人は激しく言い争いますが、その背景には幼い頃からの因縁がありました。
かつて二人は幼なじみとして深い絆で結ばれ、互いに淡い想いを抱いていました。しかし言笑はある日突然、沐斉柏の配下となる道を選び、二人の関係は完全に決裂してしまったのです。
その頃、二十七は独自に調査を進め、博語嵐が「離恨天」と「黄粱夢」を生み出した博氏一族の出身であることを突き止めます。その報告を受けた明意は、紀伯宰と博語嵐の深い師弟関係、そして深淵へ閉じ込められていた人々が、実は無実だった可能性に思い至ります。紀伯宰が歩んできた復讐の道には、自分の知らない真実がまだ数多く隠されていることを実感するのでした。
一方、言笑は沐斉柏へ調査結果を報告します。監視用の窥草を使っても不審な行動は一切見つからず、映し出されたのは紀伯宰と明意が親密に過ごす姿ばかりでした。その様子に沐斉柏は紀伯宰が監視に気付いている可能性を疑い、密偵を引き揚げるよう命じます。
その夜、紀伯宰は師・博語嵐の肖像画の前にひざまずき、静かに復讐を誓います。三日以内に最初の仇へ裁きを下し、その血をもって師を弔うと心に決めるのでした。
やがて極星淵では、新たな青雲大会へ向けた闘士選抜が始まります。天璣公主をはじめ、言笑や孟陽秋ら有力者が見守る中、主役である紀伯宰はいつまで待っても姿を現しません。会場には不安とざわめきが広がります。
そして開始寸前、紀伯宰は明意を伴って悠然と姿を現します。選抜の場へ女性を連れて現れた前代未聞の行動に会場は騒然となり、参加者たちは一斉に非難の声を浴びせます。その光景を目の当たりにした天璣公主は、嫉妬と怒りを隠せず、複雑な思いを胸に紀伯宰を見つめるのでした。
第6話の見どころ
明意が「明意」という身分を手に入れた真相がついに明かされるほか、紀伯宰が張り巡らせていた壮大な計画の一端も明らかになります。さらに、極星淵では天璣公主の大胆な策略をきっかけに、沐斉柏を巡る陰謀が一気に表面化。紀伯宰と沐斉柏の頭脳戦は新たな局面を迎えます。そして最後には明意の命を削る「離恨花」が散り始め、彼女の運命に大きな影を落とす衝撃の展開が待ち受けます。
第6話のあらすじ
物語は二か月前へとさかのぼります。明献は二十七へ食料探しを頼みますが、いつまで待っても戻ってきません。不安になった彼女は自ら森へ向かい、そこで一組の夫婦が息絶えているのを発見します。
周囲を調べると、二人は何者かによって毒殺されていました。供物が置かれたままになっていたことから、亡くなった娘の墓参りへ訪れた矢先に命を奪われたことが分かります。その娘こそ「明意」という女性でした。
誰にも身元を知られていないことを知った明献は、自分の正体を隠して極星淵へ潜入する絶好の機会だと考えます。そして亡き少女・明意の身分を借り、新たな人生を歩み始める決意を固めたのでした。
現在の寿華泮宮では、青雲大会へ向けた闘士選抜が続いていました。紀伯宰は周囲の反対を押し切り、明意のかんざしを自ら身に着けます。その姿を見た天璣公主は複雑な思いを抱きながらも、「そのかんざしを外せたなら、明意にも試合の見学を許す」と条件を提示し、不機嫌なまま席を立ちます。
後を追った孟陽秋と、さらに言笑も天璣のもとへ向かいます。天璣は極星淵の人材不足を憂い、孟陽秋だけでなく言笑にも闘士として参加してほしいと望んでいました。しかし言笑は、自分には霊脈がないことを理由に辞退します。
その直後、思いもよらぬ出来事が起こります。天璣公主が突然苦しみ始め、その場で意識を失って倒れてしまったのです。
孟陽秋は取り乱し、自分の責任だと激しく動揺します。言笑も必死に毒の原因を調べ始めますが、紀伯宰だけは静かに席へ座ったまま動こうとしません。そして隣の明意へ、「どれほど狡猾な狐でも情に流されれば、最後は獲物になる」と意味深な言葉をささやきます。
診察を進めた言笑は驚愕します。天璣は誰かに毒を盛られたのではなく、自ら七種類もの猛毒を服用していたのです。これは言笑が本当に自分を救えるのか試すための危険な賭けでした。
宮廷中の医仙たちは誰一人治療法を見つけられません。しかし言笑だけは迷うことなく解毒薬を調合し、天璣を救うことに成功します。目を覚ました天璣は予定どおり選抜結果を発表し、紀伯宰、言笑、孟陽秋らが正式な闘士として選ばれます。
そこへ長く病に伏せていた神君・沐源風が、弟の沐斉柏に支えられて姿を現します。しかし祝賀ムードは、突然現れた後照によって一変します。
後照は自ら罪を告白し、かつて沈淵で罪人たちを使い、「離恨天」と「黄粱夢」の製造を命じられていたと証言します。ただし黄粱夢だけは製法が欠けていたため完成せず、成功したのは離恨天だけだったと語ります。
沈淵は長年沐斉柏が管理してきた場所でした。そのため沐源風は弟へ厳しい視線を向け、真相を問いただします。
一方、沐斉柏は、これが紀伯宰の仕組んだ罠だと察します。そして後照へ視線を送り、誰かに操られているなら正直に話せと圧力をかけます。しかし後照は、紀伯宰と沐斉柏の双方から板挟みとなり、結局すべての罪を自分一人で背負うことを選びました。
後照が連行されようとしたその時、娘の弱水が姿を現します。彼女は自ら後照の娘であることを明かすだけでなく、「明意の身の上も沈淵の毒作りと深く関わっている」と証言します。
その言葉に明意は大きな衝撃を受けます。自分は紀伯宰を利用しているつもりでしたが、実際には彼が描く巨大な計画の中で動かされていた一人に過ぎなかったことへ気付かされたのです。
正体を守るため、明意は弱水とともに正式な告発者となり、後照の証言を裏付けます。そして紀伯宰も流れに乗り、「後照一人でこれほど大掛かりな計画を実行できるはずがない」と主張し、黒幕は沐斉柏ではないかと暗に追及します。
神君や天璣も真実を語るよう後照へ迫りますが、追い詰められた沐斉柏は密かに言笑へ命令を下します。言笑は法器を作動させ、病弱な沐源風をその場で再び昏倒させてしまいます。
神君の容体悪化によって審議は打ち切られ、事件は中断。後照は仙君の位を剝奪されたうえ、天雷による極刑と元神消滅という厳しい判決を受けることになります。
また、身分の低い者が上位者を告発した罪により、明意と弱水にも「懸刑」が科されることになります。沐斉柏はその隙を突き、紀伯宰を別の用件でその場から遠ざけます。
刑の執行を待つ間、明意は紀伯宰の計算高さに思わず不満を漏らします。しかし弱水は、「紀伯宰は花月夜の女性たちとも清廉潔白な関係で、人を利用するだけの冷酷な男ではない」と静かに語り、彼をかばいます。
その会話の最中、突然妖獣が二人を襲撃します。弱水を守るため、明意は正体が露見する危険を承知で霊力を解放し、妖獣を撃退します。しかし、その代償として体内に刻まれた「離恨花」の花びらが一枚散ってしまいます。
命の残り時間が確実に減り始めたことを悟った明意は、自らに迫る死の足音を静かに受け止めるのでした。
第7話の見どころ
紀伯宰が仕掛けた復讐劇の真相が徐々に明らかになり、後照が隠し続けてきた残酷な秘密が暴かれます。一方で、明意は紀伯宰への疑念を深めながらも、彼の苦悩や優しさに触れ、その心境に変化が生まれ始めます。紀伯宰が抱える罪悪感や、不器用ながら明意へ償おうとする姿も印象的です。そして物語の終盤では、新たな復讐相手・勲名が姿を現し、さらに司徒嶺の動向も加わって、物語は新たな局面へ突入します。
第7話のあらすじ
かつて後照は、一族が次々と命を落とし、後氏の血筋が途絶えようとしている現実に深く苦しんでいました。誰もいない森へ足を運んだ後照は、神樹の前で手のひらを切り裂き、その血を供えて一族存続を願います。
神樹は願いを聞き入れる代わりに、一つの代償を求めます。その契約こそが、後に後照と娘・弱水の悲劇を生み出すことになるのでした。
現在へ戻ると、妖獣との戦いで霊力を使ってしまった明意は、自分が術を使う姿を司徒嶺に見られてしまったことへ気付きます。正体が露見する危険を察した彼女は、とっさに気を失ったふりをしてその場を切り抜けようとします。
知らせを受けた紀伯宰は急いで駆け付け、明意を優しく抱き起こします。目を覚ました明意は、妖獣に襲われたところを司徒嶺に助けられたと説明し、その場を取り繕います。
本当は司徒嶺の記憶を消そうと密かに術を使うつもりでしたが、司徒嶺は自分が彼女を助けたと素直に認め、それ以上何も追及しません。その予想外の対応に、明意は戸惑いを隠せませんでした。
沐斉柏はなお疑念を抱きながらも、司徒嶺の証言を受け入れ、ひとまず妖獣出現の原因を調査すると約束します。
無帰海へ戻ると、二十七は明意の軽率な行動を厳しく叱責します。しかし明意は、弱水を救ったことに後悔はないと答えます。その一方で、後照の告発と妖獣の出現が同時に起きたことへ違和感を覚え、一連の出来事には誰かの意図があるのではないかと考え始めます。
もし沈淵の秘密が徹底的に調べられれば、これ以上罪のない採薬人が犠牲になることもなくなるはずだと、明意は静かに願うのでした。
その夜、紀伯宰は明意の部屋を訪れ、眠りにつくまでそばで看病を続けます。不休が迎えに来るまで彼は静かに寄り添い続けますが、実は明意は眠ったふりをしていました。彼女は紀伯宰が何を考え、どこへ向かおうとしているのか、その本心を見極めようとしていたのです。
一方、司徒嶺は命令を受け、天牢で後照へ天罰を執行します。刑が終わって司徒嶺が立ち去ると、紀伯宰は不休とともに密かに牢へ姿を現します。
紀伯宰は後照へ向かい、「慈悲深い父親を演じながら、実際には娘を犠牲にしただけだ」と冷たく言い放ちます。
その真相はあまりにも残酷なものでした。後氏一族は代々「枯枝の病」に苦しみ、子どもが長く生きられませんでした。血筋を絶やさないため、後照は神樹と契約を結び、娘・弱水を生け贄として差し出す「惑殺」の術を施していたのです。
弱水が見夜草を口にした瞬間、理性を失って神樹へ捧げられ、その命と引き換えに後氏一族へ新たな子孫が授かる仕組みでした。
すべてを暴かれた後照は完全に絶望し、やがて魂そのものが消滅してしまいます。
この一部始終を密かに見届けていた明意は、ようやく紀伯宰の真の目的を理解します。彼は師・博語嵐の仇を討つため、この壮大な計画を何年もかけて進めていたのでした。
部屋へ戻った明意は、自分が受けた「離恨天」の毒も、紀伯宰ではなく別の人物によるものだった可能性を改めて考え始めます。
二十七は紀伯宰へ情が移ることを恐れ、決して惑わされてはならないと忠告します。しかし明意は、紀伯宰が復讐を終えるまでは自分を必要としていることを理解していました。最後に勝つのは、より鋭い剣を持ち、より強い覚悟を持った者だと静かに心を固めます。
その頃、紀伯宰もまた複雑な思いを抱えていました。明意の純粋な気持ちを利用してしまったことに罪悪感を覚え、弱水を安全な場所へ避難させるよう不休へ命じます。そして沐斉柏が次に何を企んでいるのか、先回りして探るよう指示を出します。
不休は、紀伯宰が珍しく後悔している様子を見て荀婆婆へ相談します。荀婆婆は「素直に謝ればいいだけ」と助言しますが、紀伯宰にとって「すまない」の一言は何よりも重く、簡単には口にできませんでした。
悩み抜いた末、紀伯宰は自分なりの償いを決めます。
翌日の朝議では、多くの仙人たちから「黄粱夢」の所在について厳しく追及されます。追い詰められた紀伯宰でしたが、そこへ明意が現れ、「黄粱夢とは私が造った酒の名前です」と機転を利かせて場を収めます。
危機を救われた紀伯宰は、帰りの馬車で手持ちの霊石をすべて明意へ贈ります。表向きは褒美でしたが、本当は彼女を利用してしまったことへの不器用な謝罪でした。
一方、沐斉柏も反撃の準備を進めます。彼は辺境へ派遣していた将軍・勲名を呼び戻します。勲名は、かつて博語嵐を殺害した三人の仇の一人であり、蘇狐族特有の能力によって元神を完全に隠せる危険な人物でした。勲名自身も紀伯宰をまったく恐れておらず、新たな戦いの火蓋が切られようとしていました。
そして明意もまた、自分の正体が司徒嶺に知られている可能性を確かめるため、自ら司判堂へ向かい、司徒嶺の真意を探ろうと決意するのでした。
第8話の見どころ
司徒嶺と明献の意外な過去が明かされ、彼が長年胸に抱いてきた憧れと忠誠心の理由が描かれます。一方、紀伯宰は次なる復讐相手・勲名を討つため新たな作戦を開始し、明意も知らぬ間にその計画へ巻き込まれていきます。さらに、明意が思い切って紀伯宰へ結婚を提案する場面や、嫉妬心を見せる紀伯宰の姿は胸が高鳴る見どころです。恋と復讐、それぞれの想いが交錯し、新章の幕開けを告げる重要な一話となっています。
第8話のあらすじ
幼い頃の司徒嶺は、生まれつき霊脈を持たなかったため、一族から役立たずと見なされ、父や兄たちにも冷たく扱われていました。青雲大会が開かれても、会場へ入る資格すら与えられず、一人で石段に座って祭典を眺めるしかありませんでした。
そんな孤独な司徒嶺へ声を掛けたのが、男装していた明献でした。事情を聞いた明献は彼を哀れみ、「せっかくだから一緒に見よう」と青雲大会の会場へ連れて行きます。
司徒嶺は大切にしていた金色の雲紋が刻まれた腕輪を明献へ貸し与えます。明献はその腕輪を身に着けたまま試合へ臨み、圧倒的な強さで優勝を飾ります。
その瞬間、司徒嶺は目の前にいた人物こそ、七連覇を成し遂げた戦神・明献だったことを知ります。絶望の中で自分へ手を差し伸べてくれた明献は、彼にとって生涯忘れられない憧れの存在となったのでした。
現在、明意は司判堂を訪れます。司徒嶺は長年大切に保管してきた腕輪を取り出し、明献本人である証として彼女へ差し出します。
司徒嶺は、なぜ当時は男装していたのか、なぜ今は明意という別人として女性の姿で暮らしているのか、多くの疑問を抱いていました。しかし彼はあえて理由を問い詰めず、「この秘密は決して誰にも話さない」と静かに約束します。
一方その頃、紀伯宰は弱水を安全な場所まで送り届けていました。命を救われた弱水は感謝の印として貴重な見夜草を贈ります。紀伯宰は受け取りを断ろうとしますが、不休が代わって受け取ったことで、その厚意を無駄にせずに済みました。
夜になると、勲名が密かに司徒嶺のもとを訪ねます。妖獣事件を徹底的に調査するよう命じるだけでなく、不思議な法器を渡し、黄粱夢の在りかまで探らせようとします。
司徒嶺は勲名の目的に不自然さを感じながらも、その場では何も疑問を口にせず、静かに命令を受け入れます。
その頃、紀伯宰もまた勲名を次の復讐相手に定め、花月夜を訪れていました。狐族の浮月へ多額の報酬を支払い、「狐族を確実に討つ方法」を教えてほしいと頼みます。
浮月は、勲名を倒すには彼が最も執着する記憶の中へ入り込み、その幻境で本体を見つけ出すしかないと教えます。
一方、司徒嶺は妖獣調査を名目に無帰海へ入り込み、密かに黄粱夢を探し始めます。しかし、その狙いを見抜いていた明意は、紀伯宰が黄粱夢を隠す霊犀井を守るため、倉庫へ先回りします。
明意は調査へ協力するふりをしながら巧みに時間を稼ぎ、司徒嶺たちを肝心な場所へ近づけません。しかし部下の一人が誤って火事を起こし、倉庫は炎に包まれてしまいます。
明意は悲しみに暮れる演技を見せ、焼け落ちた倉庫を惜しんで涙を流します。
そこへ戻ってきた紀伯宰は、司徒嶺が優しく明意を慰めている場面を目撃します。普段は冷静な紀伯宰でしたが、その様子に思わず嫉妬を覚え、不機嫌な表情を浮かべます。
司徒嶺が帰った後、明意は火事の経緯を説明し、勢いのまま「いっそのこと私と結婚してしまえば、誰も私へ近づけなくなります」と大胆に提案します。
紀伯宰はその言葉を否定せず、曖昧な笑みを浮かべるだけでした。その反応に明意は希望を抱き、二人の距離がまた一歩近づいたことを感じます。
その頃、司徒嶺は喜びを抑え切れず、腹心の浮月へ「ついに明献を見つけた」と報告します。
浮月は笑顔で祝福しながらも、その胸中は複雑でした。現在の明意は紀伯宰の側近であり、彼女を助けることは沐斉柏へ敵対することを意味します。それでも司徒嶺は少しも迷いませんでした。
彼は千虫術を習得した今も霊脈を持たない自分に劣等感を抱き続けており、黄粱夢によって霊脈を得て、いつか明献のような強者となり、今度こそ彼女を守れる存在になりたいと願っていたのです。
一方、勲名は法器が壊されたことをきっかけに花月夜を訪れ、明意の素性を探ろうとします。しかしそこで章台と出会い、その面影が亡き恋人にあまりにも似ていたため、思わず立ち尽くしてしまいます。調査の目的さえ忘れるほど、その姿に心を奪われるのでした。
翌朝、荀婆婆は紀伯宰に代わって宝石や絹織物が詰まった大きな贈り物を明意へ届けます。二十七は紀伯宰が急に優しくなったことを警戒し、「決して彼に心を奪われてはいけない」と何度も忠告します。
さらに二十七は、章台が近く結婚するという知らせを伝えます。親友である章台から何も聞かされていなかった明意は強い違和感を覚え、何か裏があると直感します。
すぐに紀伯宰のもとへ向かった明意は、花月夜へ行かせてほしいと頼み込みます。紀伯宰は、章台の結婚相手こそ勲名であることを見抜いていました。章台と明意の友情を利用すれば勲名へ接近でき、復讐の好機になると判断した紀伯宰は、その申し出を快く受け入れ、自ら明意とともに花月夜へ向かうのでした。

















この記事へのコメントはありません。